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しおりを挟むこの街に辿り着いて冒険者ギルドに入ろうとしているところで、早速コクヨウに遭遇した。もしかして…くらいには思っていたが、まさかこんなにも直ぐに会うことになるとは思っても見なかった。
突然誰かに抱き締められて驚いたが、それが誰かはすぐにわかった。俺にとっては嗅ぎなれた、安心できる香りがしたからだ。最後に会ったときの記憶よりも育っている…。俺の背を追い越し、随分と大きくなったらしい。頭一つ分は違うな。感慨深い。
そしてぽろぽろと涙を流すコクヨウの顔をそっと袖で拭ってやったが、次々に流れる涙の前ではあまり効果は無かったようだが…。
そろそろここから退いた方がいいな。ギルドの前だし邪魔になっている。人も集まっているし。
「コクヨウ、場所変えるぞ」
「…ん…ねぇ…手」
「おう、繋いでやる」
「えへへ」
涙を流しながらも笑ってみせるコクヨウは可愛かった。ぎゅっと握られた手を俺も握り返す。涙を乱暴に拭ったコクヨウは泣き止んでくれたようだった。良かった…。コクヨウの泣き顔は胸が痛いからな。
「タカミ…宿はもう決めたの?」
「いや、まだだ。オススメのとこ教えてくれ。」
「うん、分かったよ。こっち」
自信満々で俺を連れて歩いてくれるコクヨウ。頼もしくなったな。話すのは後にして、取り敢えずさっさと場所を移しちまおう。コクヨウも有名になったようで沢山の視線が飛んでくるし。
「ここだよ!今僕が泊まってるところ。タカミも僕の部屋でいいでしょ?」
「いや、別に部屋取るぜ?」
「え?なんで…?駄目だよ。一緒に居て。」
「…分かった」
俺よりも背が高いし、こんなに逞しいのにどうしてこんなに可愛いんだ?コクヨウのおねだり顔に俺はすぐに折れ、コクヨウの部屋に連れ込まれることになった。なんというか、格式高い感じの宿に連れてこられたな。…1泊幾らするんだ…?俺の財布大丈夫か?今からでも別の宿に…
「おかえりなさいませ。コクヨウ様。…そちらのお連れ様は…」
「僕の大事な人。僕の部屋に泊めるから追加料金は僕に請求して。食事は…いらない」
「いや、俺自分の分は自分で払うぜ?」
「駄目。僕が払う。とにかく部屋で話そ?ね?」
「…仕方ねぇな…分かった」
「それではお部屋のこちら鍵になります。」
俺達にそれぞれ一つずつ鍵が手渡された。コクヨウに宿代を持ってもらうのは流石に情けない。後で説得して払わせてもらおう。部屋の中も整っていて広く、寝心地の良いベッドが置かれていた。
「取り敢えず座ってよ。飲み物出すから」
「おう。ありがとな。」
脇に置かれていた丸机と椅子。そこに座り、コクヨウが飲み物を用意してくれるのを待つ。暫しして、コクヨウが俺の前に茶を置き、対面の椅子にかける。
「…ふぅ…美味いな」
「ふふっ良かったタカミが好きそうだな、と思ってたんだ。本当はお土産にする予定だったんだけど…タカミが俺のこと迎えに来てくれるなんて嬉しい!!」
「あ?迎えに来た訳じゃねぇけど…」
「え?…じゃあ何しに来たのさ!」
「それはAランク試験を受ける為だ。」
「Aランク試験?そっか!Aランクになるんだねタカミ!凄い!」
「ははっお前はもうすぐSランクだろ?全然凄くねぇよ。」
「むぅ…そんなことない!すごいよ!タカミは凄い!」
「…そうか。」
「ところで、あの条件、忘れてないよね?タカミ」
「…ああ、ちゃんと覚えているが…お前が広い世界を見て、それでも俺を選ぶ確率は低いと思ってたぜ。」
「タカミのバカ…僕はずっとタカミと過ごすためだけに頑張ってきたのに…」
「…すまん…」
「タカミはなんでAランク試験受ける気になったの?」
「あ?それは…お前が…もし…広い世界を見ても俺を選んでくれるなら…隣に立っても恥ずかしくない様にならねぇと駄目だと思ってな。」
「…それは…僕の為ってことで合ってる?」
「…おう」
「んふふ!!物凄く嬉しい!!大好きタカミ!!」
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