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しおりを挟む部屋を出て降りていくと、そこには三人の人物がこちらを待ち構えていた。勿論コクヨウのパーティーメンバーだ。俺がコクヨウのことを頼んだ時からあまり変わっていないように見える。
「コクヨウ、昨日は突然駆け出したかと思えば、彼の元に駆けつけていたんだな。」
「…タカミ、行こー?」
少し咎めるように、パーティーリーダーの大人っぽい人が声をかける。そして華麗にそれをスルーして俺を引っ張っていこうとするコクヨウ。流石に引き止めた。…しかし…これはコクヨウを一度叱っておかなくてはいけないかもな…。
「いやいや、駄目だろ。ええと、お久しぶりです。コクヨウが色々すみません…」
「いや、構わねぇぜ。けどよぉ、ギルド騒ぎになってたぜ。」
「久しぶり。私達がギルドについた時にはもうみんな凄い騒ぎようだったわよ。タカミさんも気を付けてね。」
「気をつける…?」
「ああ、コクヨウは容姿が優れているからな。その上能力値も高いと来た。多くの人間が彼の恋人の座を狙っている訳だ。だからタカミさんは危ないかもしれない。」
「大丈夫だよ。タカミのことは絶対に僕が守るから。」
「自分の身くらい自分で守れるっつーの。心配すんなコクヨウ。」
「むぅ…駄目。守らせて。絶対に目離さないから。」
「いや、そりゃ無理があんだろ。俺はAランク試験、お前はSランク試験があんだろうが。」
「でも…」
「あーはいはい。良い子だから。やることはちゃんとやれ。周りに迷惑かけんじゃねぇよ。」
「はい…」
少しキツめになってしまったが、言い聞かせるように言えばちゃんと頷く。しゅんと下がった尻尾や耳がきちんと反省していることを教えてくれる。俺の言うことは素直に聞いてくれて助かるぜ…。だからこそ、コクヨウのやる事にあんまり口出さないようにしてんだが。
「それで、ギルドに行くんだな?」
「ああ、行く。アンタらもか?」
「ああ、共に行くことにしよう。」
「おう」
俺の腕に纏わり付くようにしがみついているコクヨウをそのままに、ギルドへ向かう。コクヨウのほうが大きくなったので、歩き辛いが振りほどくことはしない。腕から伝わる体温が温かい。
ギルドに到着し、周りがざわつき、騒然とする中受付の前に立つ。コクヨウのあまりの豹変ぶりに驚いているらしく、「あの冷酷王子が…」「あれってまじで本人!?」「てかあの男見ない顔だけど誰だよ」などの声が聞こえる。
俺でさえこれだけ聞こえるのだから、獣人で耳の良いコクヨウにはもっと聞こえているだろうに、当の本人は全く意に介さない。俺にベッタリとくっついたまま離れない。
「お前聞いてこいよ!!」
「絶対に嫌だ。凍りたくねえ!!お前が行けよ!」
「俺も嫌だ!アイツの恐ろしさは身を持って知ってんだよ。」
事情を知りたいが、声をかけるのは嫌なようで、声をかける役を押し付けあっている。まぁ声を掛けてこないならそれでいい。取り敢えず受付でAランク試験登録を済ませよう。
受付嬢も唖然とした顔でコクヨウを見つめ、そして満面の笑みを浮かべるコクヨウに見惚れ、暫し固まっていた。はっとして、表面上には隙のない笑顔を取り戻す。
「…コホンッ…失礼致しました。ご用件お伺い致します。」
「Aランク試験を受けたい。」
「畏まりました。それでは冒険者証を。確認が取れ次第、お手続させて頂きますので、ギルド内で…いえ中の個室でお待ちください。」
「…あー、そのほうが良さそうだな。分かった。」
周りを振り返ってみれば、興味津々っといった様子で俺達を冒険者達が待ち構えていた。受付嬢は気を利かせてくれたのだろう。甘えさせて貰おう。
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