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しおりを挟むベッドの住人である俺は出来ることも無いし、腹も満たされている。話すことくらいしかやることもないので、コクヨウに話しかける。ずっと微笑んでいて若干怖いんだが…。
それにしても確かに猫って体格ではないな。肉食獣と言われれば納得の体躯と身体能力だな。肉食獣の獣人は高位冒険者にも多くいる。それにしてもコクヨウはなんの獣人なんだろうな。今度暇なときに調べよう。
「なぁ、コクヨウ、これからどうすんだ?」
「んー、タカミが言ってたみたいに1回スールエに帰るよ。それから…どうしようね?」
「何かやりたいこととかないのか?」
「やりたいこと?…タカミといられれば何でもいい。」
「そうか…じゃあ旅でもしてみるか?」
「旅…うん、タカミと一緒ならそれもいいかもね。」
「そうか。んじゃ取り敢えず帰ってから調べてみるか。」
「うん」
囲い込んで閉じ込めてしまいたいけど、タカミはそれに耐えられないだろう。タカミの側にいられるなら何でもいい、というのは本心だ。他の人に可愛いタカミのこと見られるのは嫌だけど、楽しそうにしてる笑顔のタカミを見ていたい。
1か所に留まらない旅なら、そんなにタカミの魅力に気付く奴も居ないだろう。それからタカミに認識阻害をかけておけば、タカミの顔なんかを覚えられづらいだろうから、大丈夫かな。
昔タカミにもらった位置情報のわかる魔導具を改良して、本格的に追跡出来るようにしてから旅に出よう。前のやつはその人のいる方向しか分からないからね。でもなかなか複雑な魔導具になるから、僕だけでは難しいかもしれない。魔導具の材料も豊富で優秀な魔導具師も集まっている魔導都市に立ち寄るのもいいかもね。
コクヨウと初めて事に及んでから体調を崩していたが、数日もすれば問題無く動けるようになった。というわけで、世話になった方々に挨拶をして街を出ることになった。冒険者ギルドでSランクパーティーから抜ける手続きをして直ぐに俺とのパーティー登録を行った。
「やはり引き止められませんでしたか…残念です。いつでも歓迎致しますので、いつでもいらして下さいね。」
「ああ、コクヨウが世話になりました。ギルド長」
「ふふっ当然のことですから。」
ギルド長まで出て来てくれるとはなぁ…それだけコクヨウは凄いんだろうが、全く気にも止めない様子だ。そしてSランクパーティーの面々も来てくれている。
「もう行くのだな。」「全く俺達には一切懐かなかったなぁ。コクヨウは。」「そうね、まぁそれでも育成の良い経験になったわ。」
「じゃあ」
たった一言を言い放ち、それ以上口を開こうとしないコクヨウ。まさかとは思うがそれだけなのか?3年も一緒に居たにしてはアッサリし過ぎてないか?そんなもんなのか…?
「…コクヨウ?それだけなのか?」
「ん?うん、これ以上何かある?」
「ん?いや、まぁ良いならいいんだが…。3人とも、コクヨウが世話になった、ありがとう」
「構わない。元気でな。」「おう!仲良くやれよ。」「怪我とかには気を付けなさいね。」
素っ気なさすぎるコクヨウの代わりに頭を下げつつ街をあとにした。
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