黒豹拾いました

おーか

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執事に連れられていったのは、この宿の最高級の部屋だった。中に入れば、上品で腹の底が見えない感じの高貴な方がいた。表面上は優しそうな風貌ではあるが、油断ならない。何せ貴族のトップに君臨しているのだ。腹芸には長けているだろうよ…。

こうして俺達もここに連れて来られている訳だしな。公爵様か、まさか冒険者の身分で拝謁することになるなんてな…。俺達が入室すると、わざわざ立ち上がりこちらに挨拶をする。

「召喚に応じていただき感謝する。コクヨウ殿、タカミ殿。私はグリンデル公爵家が、当主ヨハネ・グリンデルです。」

「どーも。Aランク冒険者のタカミです。」

「…コクヨウ」

「…少々長い話になります、お座りください。」

「「…」」

着席を促され、俺達は警戒しながらも、公爵の正面に腰掛ける。警戒を崩さない俺達に苦笑しつつも、それを口に出すことなく、自らの用件を話し始めた。

「今回このように不躾にお呼びたてしてしまったのは、私の娘のことが原因なのです。数ヶ月前、娘は突然体調を崩しました。それが長引くので、おかしいと思い我が街の治癒師に見せました。それで治ると思っていた。…しかし、思ったような結果は得られませんでした。治癒師でも回復させることが出来なかった…。そして原因を探らせました。原因は分かりました…

娘は…娘は呪われている。その呪いを解くためには、通常の方法では駄目でした。解呪師によれば、貴方方が持ってきた砂漠に咲く花…水晶花が必要だと…その水晶花、貴方方に取って来て頂きたい。」

「…なぜ俺達に?失礼だが、貴方のように権力も金もあるなら簡単なことだろう。」

「それは…敵対している派閥に弱みを見せる訳にはいかないからだ。おおっぴらに水晶花なんて貴重な物を求めれば、何かあったのだと晒すようなものだ。加えて…あの砂漠で生き残れる人材は簡単には見つからないのですよ。」

「そうか…まぁ事情は分かった。」

「…何故僕達に目を付けた?」

「大量の砂漠の素材をギルドに持ち込まれたでしょう。ならばあの砂漠を探索可能だということに他ならない。私が提供できる報酬は、貴方たちの後ろ盾になることと金銭です。」

「コクヨウ、どうするんだ?」

「…他を当たってくれ。その依頼を受けるメリットを感じない。」

「っ…そうですか…。それでは諦めるしかありません…。」

「公爵様…引き下がってはお嬢様の命は…」

「あぁ、もう時間がない。他に依頼を引き受けてくれる者も見つけられぬだろうな。仕方あるまい…貴族に生まれた以上は命を狙われることもある。娘は運が悪かった…」

公爵様と執事さんが悲痛な顔をする。可愛がっている娘さんなのだろう。流石にこれは演技では無さそうだからな。コクヨウは断ったが、俺が頼めば多分引き受けてくれる。

「……なぁコクヨウ、どうしても嫌?」

「なんで?タカミ」

「いや、あの伯爵子息、ぶっ潰してくれるならいいかなって。」

「ああ、宿の従業員が言ってたってやつ、でも僕強いし、絶対捕まらないよ?」

「そうかもだけど…お前に降りかかる危険は少ない方がいい、だろ?」

「…タカミ、そこまで僕のこと思ってくれるなんて嬉しい。わかったよ。受けるよ、依頼。」

「あ、ありがとうございます!タカミ殿が言う伯爵子息についてはすぐに対処いたします。水晶花についての情報提供をさせて頂きます。」

「ああ、聞いておこう。」

こうして秘密裏に公爵様の依頼を引き受けることになった。水晶花のアイテムランクはAだが、周りの環境故に相当手に入れるのは難しい。街に辿り着いたのにまた砂漠に戻ることになるとはな。





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