黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
124 / 130

124

しおりを挟む





コクヨウの頑張りで、たった一回の遠征で今回の騎士団の指導は終わりでいいらしい。俺何もしてないけどいいのか?まぁ一番偉い公爵様が良いって言うんだから大丈夫なんだろう。

獣人たちの隷属魔法の解読も進んでいるらしく、一月もあれば魔法の無効化が出来るだろうと報告をもらっている。もう俺の手を離れたことだし、勝手にやってくれていいんだがな。獣人達は今は公爵様の計らいで、問題なく生活できているそうだ。

暇になった俺達は、公爵領の都市部へ繰り出していた。公爵達へは公爵領の見学と言っているが、ただのデートだ。

まぁ、それは公爵様やミシェルさんもわかっている事だろう。何はともあれ公爵家の許可も出た。案内をつけようかと聞かれたが、断らせて貰った。二人きりのほうが気楽だし、何よりデートだからな。

「わぁ…格好いい人…」「声かけようかな!」「イケメン!」

そんな声が聞こえてくるが、騒がれている当の本人であるコクヨウは俺のことしか見えていないらしい。相変わらずモテやがるな、全く。まぁモテるからと言って浮気の心配は皆無すぎて嫉妬する気にもならない訳だが。

今もご機嫌に尻尾を揺らし、俺の腕に擦りついている。俺よりデカいくせに可愛いんだよな、こいつ。

「んふふ!ねぇねぇ、どうする?タカミは何見たい?」

「んー、そうだな、取り敢えず飯。」

「ふふふ!了解、美味しそうなところ探すね。」

「おう」

あ…俺達の前に女の子が立ち塞がった。

「あ、あの!これからご飯なら…その…ご、御一緒しても良いですか?」

「……」

コクヨウは完全に無視して、俺の手を引く。尻尾も俺の腰にガッチリ回ってる。こりゃあ相当怒ってるかもな…。女の子が引いてくれりゃいいんだが、見た感じ諦めてなさそうだし無理そうだな。

「あの!貴方に話しかけてるんですけど!!ねぇ!!」

「触るんじゃねぇよ。」

コクヨウの服を掴もうとしたのを威圧して止める。ピタリと動きを止めたかと思えばブルブルと震えてその場に崩れ落ちる。流石に腕無くなったら可哀想だもんな。俺が止めてなきゃ、コクヨウはそれくらいやる。基本的に俺以外には本当に冷酷な対応をとるからな。まぁ、これくらいで済んで良かったと思ってほしいところだ。

「っ!///」

「あ?」

「……」

「ふっ照れてんのか?コクヨウ、可愛いなぁ。」

「だって…僕を守ってくれるタカミ格好良かったんだもん。」

「そうかよ///」

真っ直ぐに褒められると俺まで照れるだろうが。俺達はお互い顔を熱くしながらも、その場を後にした。




道に座り込んで、取り残されていた女は二人が悠々と立ち去るのを見送って暫くしてようやく身体の自由を取り戻した。そしてポツリと愚痴を溢す。

「…なんなのよ…」

「はははっ!嬢ちゃんは知らなかったようだがな、獣人は一途なんだぜ?良かったな、五体満足でいられて。」

まさか独り言に答えが返ってくるとは思わなかったけれど、傍らに立っていたのはあの一連の騒動を見ていた男だった。それにしても訳のわからないことを言っている。

「どういう意味よ…」

「そのままの意味だ。獣人の隣の男が止めてくれてなきゃ、お前、殺されててもおかしくなかったぜ?あの獣人の男、相当の腕前だ。」

「え?…ほん…きで…言ってるの?冗談でしょう?こんな町中でそんなことして許される訳ない…じゃない…」

「それはどうだろうな?正当防衛、とかなんとでもなるだろうよ。先に手を出したのは嬢ちゃんの方なんだからな。」

「…わ、私は…なにも…」

「ははは!ま、ナンパするにしても相手は選べや。助かったこと、あの男に感謝した方がいいぜ。それを教えといてやろうと思って待ってただけだから、じゃあな。」

男は嘘を言っているようには思えなかった…。本当に命の危機だったの…?ようやく実感が湧いてきて、収まったはずの震えが先程よりも大きくなって戻ってくる。もう…もう男なんて懲り懲りよ!!

その後女は可愛らしい女の子と幸せになったとか。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

処理中です...