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64.小学校編27
しおりを挟む一応披露は終えたので、魔力障壁を解除しようとする。すると視界の端に炎魔法がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。慌てて、消えかけた魔力障壁に魔力を込め直す。
慌てて張っただけの魔力障壁は、飛んできた初めの一発の炎魔法がぶつかると、パリンという音とともにあっけなく割れてしまう。次々に魔法がとめどなく飛んでくるのが見えているが…何も動けないまま…攻撃魔法がスローモーションのようにゆっくりと迫ってくる。
もう無理だというところまで来て、やっと身体が動く。出来るだけ身を守るために、身をかがめる。俺に危機が迫ったことで、1歳の誕生日のときにテスラさんに猫耳につけてもらったイヤーカフがその効果を発揮する。
今まで危険な目に合うこともなく平和に生きてきたので、込められた魔法はそのまま残されていた。俺の周りに魔力障壁が展開され、攻撃魔法から守ってくれる。
「ナルア!!!!」
「ナルア!!」
「ナルアくん!!」
「っ…!…大丈夫…だったみたい…」
駆け寄ってきたテスラさんにかなりの力で抱きすくめられる。そして側にいたリオネルは魔法の飛んできた方に向かって立ち、俺を守るように剣を構える。ウェンさんもその隣に並び立つ。
「良かった……でも…許さない…僕…本気で怒ってる」
「俺も絶対許さないっすよ?例え王族でも…」
「ナルア…」
三人とも殺意の篭もった目で兎の王子を睨みつけている。当の睨みつけられた本人は、テスラさんの術式に込められていた、反撃を喰らっているらしく激しく苦しみの声を上げている。
「うがあああああ!!!」
「なっ!?何が起こっておるのだ…エルミ!!エルミ!誰か回復魔法を!!」
「「「「「……」」」」」
王様の呼びかけに魔道士団員たちは何も答えることなく、ただただ静観していた。どちらに非があるかなど明白だったのだ。自分たちの大事な団長が可愛がっている子を攻撃した奴を助けてやる理由などない。
「……なんてことを……」
第一王子だけがこの事態の重大さを明確に感じ取っていた。先程まではまだ可能性がある程度だったが、こんなことがあっては…テスラ団長は本格的に国を捨てる…。父王が…きちんとエルミを罰するならば…あるいはまだ希望はあるか?
いや……父上はエルミを罰しはしないだろう…。この国はテスラ団長のおかげで平和だったようなものだ。はぁ…私には王族としての責任がある…。それがなければ私もさっさと国を捨ててしまいたいものだ…。
私が何かした訳ではないが、王族であるが故に纏めて私にも殺気が向かって来ている。あんな馬鹿兎を擁護などするつもりは全く無いが…。
「テスラさん…守ってくれてありがと」
「ああ…無事で良かった…ナルア…」
訓練場の中央にいる二人に向かって1歩踏み出す。魔道士団員、ナルアを囲む三人から一際強い殺意を向けられる……ひやりとした感覚。背筋や額に汗が流れる。その緊張感から手足は冷え切っている。もう1歩踏み出せば確実に死ぬ…。もう少し近づきたかったが…そこで頭を下げる。
「第三王子が大変申し訳無いことをした…!!止められなくてすまない」
「いえ…第一王子殿下が悪い訳ではないので…」
きちんと謝罪してくれた王子に驚きつつも返事をする。テスラさん、リオネル、ウェンさんの警戒は全く緩んでいないけれど。
「テスラさん…俺帰りたい」
「ああ…そうだな。帰ろうか。ナルア」
「うん」
「ウェン、リオネル、帰るぞ。」
「はいっす…」「はい」
ウルたちには申し訳ないけれど、多分俺達がここに居たらずっとどうにもならないだろうし。取り敢えず帰ろう。
「テスラ団長、ティナ迎えに行ってくるっす」
「ああ」
「すぐに合流するっす」
「ああ」
「リオネル、トールを迎えに行ってくれるか?」
「はい」
「任せた」
ウェンさんとリオネルと一旦別れて、親しい関係の人を取り敢えず集めるようだ。テスラさんと二人きりになって、王城を出ると少しだけ安心して、テスラさんに身を預けた。
「ナルア、無理はしなくていい。…怖い思いをさせた…」
「ううん、テスラさんなら守ってくれるって思ってました」
「…そうか…取り敢えず、家に帰ったら新しいイヤーカフを新調しよう。」
「はい」
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