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107.小学校最高学年編23
しおりを挟むナルアの悩みの種は王族の王子か…。同学年でクラスも同じ、そしてナルアに惚れている、か。昔ナルアが首席だったことに突っかかっていた奴だったな、確か。それなりに改心しているようだとウェンは言っていたが…。
まぁ…もともとの性質はそう簡単に変わるものでは無かったということか。ウェンは今は私に代わり、魔道士団長をしていて忙しいだろう。私が直接探るか。
街に出て第四王子についての評判を聞いてみる。しかし、特に問題のある人物ではないらしいな。たまに街に降りてきているが、友達と楽しそうに出かけるだけで、問題を起こすことはないらしい。…大した情報はない、か。もっと近くにいる人物から聞くほうが早いか。
確か同学年の護衛についているやつがいたんだったな。そいつを捕まえてくるか。しかし、城には近づきたくないし、学校から帰ってくるナルアの出迎えも欠かしたくない。となれば、学校に忍び込むか。
門番に立つ軽兵を一応避けて塀の上を越える。まぁ、気配を消しているから気付かれはしないだろうが。懐かしいところだな。大して変わってもいないらしい。まだ授業中のようなので、授業を受けるナルアを窓の外から見させてもらった。
ふむ、卒業後、どんな進路に進むにしても必要になる魔物生態学か。魔物について知っておくことは、命を守ることに直結するからな。とても大切な授業だ。しっかりと知識も頭に入っているようだな。ナルアもリオネルも真剣な顔をしている。
「いいか、このあたりに出る魔物はそう強くないものが多い。しかし、強い魔物が絶対に出ないわけでもない。警戒を怠れば簡単に死ぬこともある。覚えておけ。敵わない相手と相対したら即座に退避を選べ。
たしかリオネルは冒険者の知り合いがいるんだったな。冒険者はどんな心得があるか話してくれ。」
「はい、冒険者の心得は"死なないこと"です。そのためにランクで分けられ、分不相応な依頼は受けられない制度になっています。また如何なる状況に置いても冷静さを求められます。」
「ありがとうリオネル。今リオネルが話してくれたように、町の外に出て魔物と戦う職業で最も重視されるのは自分の命を守ることだ。目指そうと思っている者は肝に銘じておけ。続いて、この辺りの強い魔物について解説する。
この辺りで出る強い魔物、例えばオーガだ。オーガは筋力が発達している上に皮膚も強い。攻撃力も高いしスピードも速い。魔法も斬撃もダメージを与えづらい。そして戦う上で最も注意が必要なのは、オーガには知能があることだ。そのため単調な戦い方はしない。戦いの中でも学んで成長する。油断していたら命は無いと思え。
弱点は、比較的攻撃の通りやすい首や目玉だ。まぁ狙いがバレれば当然防御されるから、攻撃を当てるのは難しくなる。初撃が肝心だ。」
悪くない内容だ。危険性をきちんと伝えつつ、倒すためのポイント、危険な魔物がいる時の森の様子、逃げるための方法。そんな命を守るための行動を指導している。Aクラスは優秀な者が多い反面、戦闘職につく者が多いため将来的な死亡率も低くない。きちんとした指導がされているようで安心だな。
とはいえ、今日の目的は授業の質を確かめることではない。ナルアやリオネルの側に座っている第四王子の護衛をやっている人物だ。授業が終わって出てくるところを…拙い…ナルアにバレたか?
「ねぇ、リオネル!テ…コイルさんがいる気がするんだけど、どう思う?」
「ええ?流石に気のせいでしょ。学校に用なんて無いだろうし」
「そう…だよね…でも確かに匂いが…したんだけどなぁ。」
…怖いくらいの感知能力だな。こと私に関してだけだが。
さっさと用を済ませて帰るとするか。廊下を歩く護衛を捕まえる。捕らえるときに抵抗をしようとしていたが、もう遅い。…些か乱暴にしすぎたきらいがあるが…。仕方がない。手早く終わらせたかったからな。
人目のないところにサッと連れ込む。
「すまんが、少し聞きたいことがある。素直に話してくれれば何も危害は加えない。」
「…目的は…なんですか?」
「目的、か。ナルアを守ること。王族からな。そう…例えば第四王子とか…な。」
「……ヨルク様…ですか…。」
「そうだ。アイツはナルアに何をするつもりだ。」
「何かをなさるつもりは無いようだが…あの諦めの悪さでは、何もしないとは言えません。」
「そうか、それで?なぜ諦めない?」
「……ヨルク様が言うには、第三王子に対抗できるのは自分だけだから、自分がナルアと結婚して守ってやるとかなんとか…」
「…私がいるから問題はない。」
「あの…お強いのはわかりましたが…誰な…」ガララッ!!
「ああっ!!!やっぱり!!テスラさん!!」
入ってきたナルアにガバリと抱きつかれる。それを受け止めて抱き返しておく。可愛らしい笑顔で走ってくる姿はとても可愛い。
「ナルア…やはりバレていたか。」
「えへへ!俺の鼻を誤魔化せると思ったら大間違いですよ!」
「…テス…ラ…テスラと言ったかナルア!」
「え?ええ!?なんでエル拘束されてんの?大丈夫?」
「ああ、すまない。」
「テ…じゃない!コイルさんがやったの?」
「そうだ。少し確かめたいことがあってな。」
「ふぇぇ…でもここまでしなくても…」
後ろ手に拘束した魔法を解いてやる。ナルアとも友達だったらしいな。
「ごめんな、エル。コイルさんがやり過ぎちゃったみたいで…」
「いや、それよりもテスラと言うのは…どういうことだ?」
「ああ…えっと…その…呼び間違えたっていうか…?」
「…そうは見えなかったが…それにその強さ…この国の守護神と呼ばれた元魔道士団長テスラ様とお見受けします。」
「ああ、そうだ。」
「ええっ?!バラしてよかったの?」
「これで情報が敵方にバレたならまた別人になればいい。」
「そんな簡単に…」
「簡単なことだ」
「その、だな。ナルアはそのテスラ様が好きなのか?」
「うん!大好き!」
「そう…か。やはりヨルク様に勝ち目など初めからなかったのだな。…諦めさせるように、善処する。何かあれば報告します。」
「ああ頼む。」
「あ、ありがとうエル」
ふむ、味方に引き込めたようだ。悪くない展開だな。見たところ約束を破るタイプでもなさそうだ。そこまで警戒しなくてもいいだろう。ナルアの気持ちも尊重してくれるようだしな。いい友達を持ったなナルア。
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