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230.ダンジョン探索3
しおりを挟む簡潔に言えば俺達は無事に40階層のボスを倒すことに成功していた。大きな怪我もなく、下の階層に降りる。その後も順調に下の階層に降りていき、遂に50階層…ダンジョンボスの扉の前にたどり着いていた。
「ここで最後だ。気を抜くなよ。」
「おう」「はい」「はい!」
俺は使命なんて大層なもの背負っているつもりはないし、危険な目にだって合いたくない。それでも…この現実の世界で、人が死ぬのも見たくない。自分だけが逃げおおせることはきっと簡単だ。それでもそう出来ないのは、俺が他の人よりも強いと知っているから。
俺に何か特別な力があるのならこの都市の人を救わせてほしい。俺とテスラさんがイチャついてても暖かく見守ってくれた人達なのだ。直接の関わりはなくても、やさしい人たちだと知っている。
他の国よりもこの魔術学園都市が一番ヤバイってことは分かるし…。魔物が溢れたときに対応できる人も圧倒的に少ない上、実力者たちも国に帰ってしまっている。スタンピードを防げるのは俺達だけなんだ。
…そんなことをつらつらと考えても、嫌な感じが拭えない。扉の向こうの圧倒されるくらいの魔力…凝縮された禍々しさ、とでも言えばいいのか…死の気配がする。冷や汗が額を伝う。身体が震える。
「…ナルア、大丈夫だ。必ず守る。」
「うん…俺もテスラさんを守る。」
テスラさんに手を握られると、その温もりに震えが収まっていく。この人が居てくれるのなら大丈夫。大丈夫だ。
「行けそうか?気合い入れて行こうぜ」
「行きましょう。」
「うん」「ああ」
ゆっくりと扉に手をかける。扉が開くと熱風のように吹き荒れる濃密な魔力を含む風。扉の中には、10m超の真っ黒なドラゴンが鎮座していた。閉じていた目をゆっくりと開き、俺達の姿を認めると、咆哮をあげる。
「GURUAAAAAA!!」
「ドラゴンの弱点は逆鱗だと言われている。狙っていくぞ」
「「はい!」」「おう!」
「近接戦は気をつけろ!ドラゴンは魔力を駆使するのも上手いからな」
「おう!」「はい!」
だいぶ頭上に確かに逆鱗らしい場所を確認することができた。しかしそこを狙って魔法を打っても結界に阻まれる。確かに結界を破壊しているからいくらドラゴンといえど魔力を消費している筈だ。
ドラゴンの魔力が空になるまで付き合うしかないか?
だがそれだとこちらが持たない。こちらの攻撃は的確に阻まれて、全くダメージを与えられていない上に、爪や歯の攻撃力は簡単に鉄だろうが破壊してしまうほどの威力がある。
現に先程、リオネルが不意に尾の攻撃を受けてしまった際に事前に預けていた魔導具が発動したが、簡単に結界が破壊された。リオネルは無事だったが、一撃でも攻撃を貰うのはやばい。
なんとか…ドラゴンの結界を超えて攻撃しなければ…
ツェルトさんとリオネルが陽動しながら俺達から攻撃を逸らしてくれている。ヘルメスの魔法陣のように俺も魔法に漢字を組み込めばもっと攻撃力は高められる。
俺が得意なのは雷…雷で強い攻撃…
ドラゴンの結界を…鱗を…貫通してダメージを与えられるような攻撃。そもそも雷は体内の水に影響を与えられるから、体内にダメージを与えやすい筈だ。出来るだけダメージを与えられる魔法陣の構成…
電圧、貫通、攻撃力、時間…今までの勘でバランスを調整する。
「ナルア、やれるか?」
「うん…多分出来る。テスラさん、出来れば体内に打ち込みたい」
とはいったものの、傷を負ってもいないドラゴン。取り敢えず一撃入れる必要がある。硬い外郭を破らないと行けないからね。ここはヘルメスの力を借りることにしよう。
ヘルメスが残した魔法陣の中で、数少ない攻撃魔法。炎系統の魔法らしいが、特殊な魔法陣になっており、時間差で氷魔法が発動する。その温度差によってダメージを与える、といったもののようだ。また、攻撃後敵の防御力を低下させる効果も期待出来る。
「リオネル、ツェルトさん!引いて!」
「おう!」「うん」
かなりの魔力を持っていかれる感じがしたが、無事に魔法陣が発動する。ヘルメスの魔法陣は見事に結界を破壊し、ドラゴンに直撃した。そして逆鱗を見事に抉ってみせた。次に冷やされたことで硬い鱗も少し傷ついたようだ。
凍って固まりかけたが、体内に炎を有しているだけあってそこまで効かなかったようだが、動きは緩慢になった。しかし直ぐに自分の体に向かって炎を吐きかけ、氷を溶かしてしまった。
しかしドラゴンがそうしている内に俺の雷魔法の準備も完了した。
「くらえー!!」
「GYAOOOO!!」
今まで羽虫程度に思っていた俺達にダメージを与えられて、流石に本気になったようだ。これで倒れてくれないと…不味いかも。嫌な予感に反して、ドラゴンは地面に倒れ付してくれた。
「……やったの…?」
「終わったか?」
……何だこの圧倒的フラグ!!!
倒した魔物は消える筈だがまだ消えていない…ということはまだ生きている。確認のためにリオネルとツェルトさんが近づいてしまっている。
「危ない!!!離れて!」
「「っ!」」
二人は飛び退いたが運悪く、リオネルがドラゴンの爪の攻撃を受けて壁に叩きつけられる。駆け寄ろうとした俺をテスラさんが引き止める。そしてテスラさんが助けに向かってくれた。リオネルは恐らくテスラさんに任せれば大丈夫だ。
なんとかとどめを刺さないと…けど…俺の魔力は殆ど使い切ってしまっている。だとしたら俺に残されているのは近接戦闘のみだ。
「ノエル!サポート!」
「了解ご主人!影縫い!!」
一瞬ではあったが、ノエルの魔法によって動きが止まる。装備していた短剣を大きく鋭い瞳に向かって振りぬく。目を潰されたドラゴンは暴れたが、直ぐに力無く横たわる。
まだ生きているのでは…?とドキリとしたが、流石に倒すことが出来たらしい。消えゆくドラコンを見つつ、ようやく終わったのだと理解する。
「はっ…はぁ……おわった…リオネル!!」
「ぐっ…ナ、ルア…だい…じょぶ…だよ」
「ナルア、リオネルは命に別状はない。暫くは療養だろうが…」
「そっか…良かった…良かったよぉ…ふぇ…うぅ…」
泣いている俺を抱き締めてくれるテスラさん。いつもの安心する香り…。痛そうに顔を顰めているものの、リオネルは出血なども少なめで、骨が折れているが、大丈夫らしい。
「ま、リオネルは俺が背負って行くぜ。」
「ツェルトさんは怪我ないですか?」
「おう、まぁちょっと毛が焼けて禿ができたぐらいだ。」
「ポーションはいるか?」
「そうだな…だが無駄遣いしていいような状況じゃねぇからな。万が一に備えようぜ。」
「…それもそうだな…地上がどうなっているかも分からない。」
「落ち着いたところで、ダンジョンをクリアして外出ようぜ」
「ああ」
「はい」「そうですね」
皆…生きててよかった…。
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