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幼なじみからの心配
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早めの夕食を終えて、別邸に戻った頃は、薄闇に今にも切れそうなほど細くなった三日月が浮いていた。
真哉は早速、パパに買ってもらった箱を開け、ゲームに夢中になっている。パパとふたりで可愛いキャラクターをゲットしたと大喜びで、ワイワイ楽しそうだ。
遥香は、その様子を見て、少し困ったなと思った。
これから、おばあの家に行くのに真哉も連れて行きたいからだ。
「直哉さん、城間の家に行って、報告して来ます。スマホ持っていくから何かあったら連絡してね。シンちゃん、ゲーム止めて、おばあに会いにいくよ」
「えー。もっとゲームしたい」
「おばあと陽太に挨拶をしないといけないの。ゲームは、後でも出来るから我慢してね」
「やだっ!シンちゃん、パパとゲームする!」
両手をばたつかせ、抵抗する真哉。その様子を見かねた直哉が助け船を出す。
「シンちゃん、ママと行っておいで、パパとはまた後で遊ぼう」
「やだっ! ゲームする」
よっぽどパパとのゲームが楽しいのか、真哉は聞き分けの無い状態に、ほとほと困り果てる。
遥香は真哉の肩を押さえ、ゆっくり話し掛けた。
「シンちゃん、よく聞いて。今度、シンちゃんはパパとママと一緒に飛行機に乗って遠いところに引越しするの。おばあや陽太と今みたいに会えなくなるから、ありがとうございました。って、ちゃんとご挨拶しないとダメなんだよ」
遥香の言葉を聞いて、真哉はキョトンと目を丸くする。
「おばあとようちゃんに、あえなくなるの?」
会えなくなるのがピンと来ていないのか、真哉は小首をかしげた。
「そうなの。だから、ご挨拶しておきたいの。ママと一緒に行ってくれるよね」
「……うん」
遥香は真哉の手を引き、城間別邸のドアをしめた。ガラス越しに手を振る直哉に、真哉が小さな手を振り返す。
暗くなった砂利道を歩き、城間のおばあの家に向かう。
おばあの家の玄関、そこを照らす丸いウォールライトは温かみのあるオレンジ色。
遥香は引き戸に手をかけた。
しかし、長年支えてくれていた、城間家の人たちに別れの挨拶をするかと思うと、一瞬ためらってしまう。
遥香は左手にはまった指輪に勇気をもらい、ガラガラと引き戸を開ける。
「おばあ、陽太、いる?」
「遥香、どうした?」
部屋から出て来た陽太が訝し気に遥香の様子を伺う。
「陽太、玄関ふさいでねーんで、上がってもらいなさい」
おばあが陽太の後ろからひょっこり顔をだし、笑顔で招き入れえてくれた。
「いまお茶入れてきましょうね」
おばあが、台所へ入って行く。
いつも夕飯を食べる8畳の畳敷きの部屋、卓袱台を挟んで陽太と向かい合わせに座ると緊張してくる。
陽太はいつもの笑顔を真哉に向けた。
「シン、ここに座るか?」
「うん」
胡坐をかいた陽太が、シンを呼び寄せ、膝の上に座らせた。真哉は満面の笑みを浮かべ嬉しそうだ。
家族のように仲の良いふたりを見ていると遥香の勇気がしぼむ。
台所からおばあが戻ってきて、卓袱台の上にコトリとお茶が出された。
「ありがとう、おばあ」
「遥香ちゃん、なんぬ話があるんさ」
いざ言おうとすると緊張する。遥香は膝の上に置いた指輪のある左手に右手を重ね勇気をもらう。
「今、城間別邸に泊まっているお客様の柏木直哉さんですが、真哉の実の父親なんです。彼は5年前に事故に遭って、ずっと会えずにいましたが、今回、いろいろありまして、彼に真哉が息子だと伝える事が出来ました」
陽太は、眉間にしわを寄せ遥香の言葉を聞いている。横にいるおばあは、口に手を当て驚きの表情だ。
「あらあら……」
「その……それで、柏木さんからプロポーズをしてもらいました」
「まあ、おめでとう。遥香ちゃん」
「結局、アイツと東京に行くんだ……」
奥歯を噛みしめるように陽太はうつむき、真哉を見つめる。
陽太の様子に気づいたおばあが、陽太の背中にそっと手を添えた。
「遥香ちゃん、おめでたい話だけれど寂しいさね」
おばあの瞳が潤んでいる。
もしかしたら、おばあも陽太と遥香が結ばれることを望んでいてくれたのかもしれない。
そう思い当たると遥香は申し訳なくなってしまう。
「おばあと陽太には、今までたくさんお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。おばあと陽太が居なければ、一人で真哉を育てていくのは難しかったと思います。どれだけ感謝してもしきれない。今まで本当にありがとうございました」
感謝を込めて、深く頭を下げた。目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛む。
それでも、泣かないようにグッと歯を食いしばった。
「いいさ、いいさ、遥香ちゃんもシンちゃんもうちの子なんだから、幸せになってくれるのが一番さー、な、陽太」
おばあから急に話しを振られた陽太は低い声で「ああ」とだけ呟く。
「それで、城間別邸の予約が柏木さんの後、1週間ぐらい入っていないので、その間に東京にいる和明おじさんの所に柏木さんと一緒に報告とお礼に行って来ようかと思っていて……」
遥香の言葉が言い終わらない内に陽太が驚きの声をあげる。
「親父ん、ところ行くって!?」
「両親亡くなってしまってから、おじさんが親代わりになってくれているから……柏木さんが挨拶したいと言っていまして」
しどろもどろに説明すると、陽太が面白くなさそうに言葉を吐き出す。
「なんだ、早速ノロケかよ。でも、俺はアイツの事が信用ならない。いままで、遥香の事を散々放って置いて、この先大丈夫だなんて思えないんだ」
「陽太……」
「だって、そうだろ。お前がひとりで妊娠した訳じゃないんだ。それなのに、ずっと連絡がなかったなんて、納得できないだろ!」
「それは、直哉さんが事故で……」
「あー、頭ン中じゃわかってんだ。でも、シンが生まれてからずっと遥香がひとりで苦労していたのを知っているだけに許せないんだよ」
5年前、東京から戻った遥香が傷つき涙しているのを見て来た陽太。
自分のために怒り心配してくれている陽太の気持ちが、遥香には温かく、そして、痛かった。
「陽太、私のために心配してくれてありがとう。でも、直哉さんは事故で記憶を失っている間も、必死で空白の時間を取り戻そうとしていくれていたの。だから、今度こそ大丈夫だと思う。それに城間のおじさんに会ったら、沖縄に家を建ててくれるように依頼したいって言ってくれているから、私の事をぞんざいに扱ったりしないと思う」
「はぁー? 東京に家があるんだろ? 遥香のために別荘建てようって話?」
「ぬー? 遥香ちゃん、家建てるの? 上等ねー。アハハ。まだ、山の土地余っとー、好きにつかうといい」
この辺一帯は城間家所有の土地で、確かに土地は余っている。でも、もらうわけにはいかない。
「おじさんに相談してみるね。その時は適正価格でお願いします。後、別邸の管理人の後任を探して欲しいんだけど……」
陽太は、はぁーっ、と深く息を吐き顔を向けた。
「別邸の管理人は誰か探して置くから、心配すんな。知り合いに当たればどうにかなる」
「わがまま言ってごめんね。ありがとう陽太」
「ん……、でも、シンも居なくなったら寂しくなるな」
陽太の膝の上にいる真哉は何も言わずに、陽太の顔を見ていた。
その真哉の頭を大きな手で優しく撫でた陽太の目は、赤く充血していて涙をこらえているのがわかる。
雰囲気を察したおばあが明るい声をだす。
「また、いつでも会えるさ。家族なんだから」
おばあが家族として扱ってくれるが、遥香の心に刺さる。
嬉しくて、そして、いざ離れると思うと寂しさが胸に押し寄せてくる。
「ねー。シンちゃん、ようちゃんとおばあにあえなくなるのやだなぁ」
「そうだな。俺もシンに会えなののは嫌だよ」
「我が儘言って、ごめんね。父が亡くなって、城間のおじさんを始め、おばあや陽太が家族として接していてくれたから、頑張ってやってこれた。真哉を育てられたのもみんなのおかげ、本当にありがとう。家族って言ってもらえてどれだけ救われたか……」
そこまで言うと、感極まってこらえていた涙が、遥香の瞳からポロポロと流れだす。
「遥香ちゃん、ここが実家だと思っていつでも帰っておいで」
「そうだ、東京が合わなかったらすぐに帰ってくればいいんだ」
おばあの瞳も陽太の瞳も涙で濡れていた。
生まれ育った大好きな沖縄を離れても、帰る場所がココにあるとふたりは言ってくれている。
血は繋がっていないけれど、家族の絆を確かに感じた。
サンダルを履いた遥香と真哉をおばあと陽太が玄関まで出てきて見送ってくれている。
「おばあ、陽太、ありがとう。明後日、東京に行く前にもう一度、真哉を連れて挨拶にくるね」
「シンちゃん、撫でぃとーちゅん(撫でておかないと)」
おばあが、目じりにしわを寄せアハハと笑いながら真哉のほっぺを皺のある手で包んだ。
「あはは、おばあ、くすぐったいよ」
「ありがとう陽太。真哉と一緒にまた来るね」
「ああ、またな」
陽太に手を振り、背を向けた。
涙が溢れないように見上げた空には今にも切れそうな細い三日月と満天の星が浮かんでいる。
きらきらと煌めく夜空の下、遥香は歩きだした。
真哉は早速、パパに買ってもらった箱を開け、ゲームに夢中になっている。パパとふたりで可愛いキャラクターをゲットしたと大喜びで、ワイワイ楽しそうだ。
遥香は、その様子を見て、少し困ったなと思った。
これから、おばあの家に行くのに真哉も連れて行きたいからだ。
「直哉さん、城間の家に行って、報告して来ます。スマホ持っていくから何かあったら連絡してね。シンちゃん、ゲーム止めて、おばあに会いにいくよ」
「えー。もっとゲームしたい」
「おばあと陽太に挨拶をしないといけないの。ゲームは、後でも出来るから我慢してね」
「やだっ!シンちゃん、パパとゲームする!」
両手をばたつかせ、抵抗する真哉。その様子を見かねた直哉が助け船を出す。
「シンちゃん、ママと行っておいで、パパとはまた後で遊ぼう」
「やだっ! ゲームする」
よっぽどパパとのゲームが楽しいのか、真哉は聞き分けの無い状態に、ほとほと困り果てる。
遥香は真哉の肩を押さえ、ゆっくり話し掛けた。
「シンちゃん、よく聞いて。今度、シンちゃんはパパとママと一緒に飛行機に乗って遠いところに引越しするの。おばあや陽太と今みたいに会えなくなるから、ありがとうございました。って、ちゃんとご挨拶しないとダメなんだよ」
遥香の言葉を聞いて、真哉はキョトンと目を丸くする。
「おばあとようちゃんに、あえなくなるの?」
会えなくなるのがピンと来ていないのか、真哉は小首をかしげた。
「そうなの。だから、ご挨拶しておきたいの。ママと一緒に行ってくれるよね」
「……うん」
遥香は真哉の手を引き、城間別邸のドアをしめた。ガラス越しに手を振る直哉に、真哉が小さな手を振り返す。
暗くなった砂利道を歩き、城間のおばあの家に向かう。
おばあの家の玄関、そこを照らす丸いウォールライトは温かみのあるオレンジ色。
遥香は引き戸に手をかけた。
しかし、長年支えてくれていた、城間家の人たちに別れの挨拶をするかと思うと、一瞬ためらってしまう。
遥香は左手にはまった指輪に勇気をもらい、ガラガラと引き戸を開ける。
「おばあ、陽太、いる?」
「遥香、どうした?」
部屋から出て来た陽太が訝し気に遥香の様子を伺う。
「陽太、玄関ふさいでねーんで、上がってもらいなさい」
おばあが陽太の後ろからひょっこり顔をだし、笑顔で招き入れえてくれた。
「いまお茶入れてきましょうね」
おばあが、台所へ入って行く。
いつも夕飯を食べる8畳の畳敷きの部屋、卓袱台を挟んで陽太と向かい合わせに座ると緊張してくる。
陽太はいつもの笑顔を真哉に向けた。
「シン、ここに座るか?」
「うん」
胡坐をかいた陽太が、シンを呼び寄せ、膝の上に座らせた。真哉は満面の笑みを浮かべ嬉しそうだ。
家族のように仲の良いふたりを見ていると遥香の勇気がしぼむ。
台所からおばあが戻ってきて、卓袱台の上にコトリとお茶が出された。
「ありがとう、おばあ」
「遥香ちゃん、なんぬ話があるんさ」
いざ言おうとすると緊張する。遥香は膝の上に置いた指輪のある左手に右手を重ね勇気をもらう。
「今、城間別邸に泊まっているお客様の柏木直哉さんですが、真哉の実の父親なんです。彼は5年前に事故に遭って、ずっと会えずにいましたが、今回、いろいろありまして、彼に真哉が息子だと伝える事が出来ました」
陽太は、眉間にしわを寄せ遥香の言葉を聞いている。横にいるおばあは、口に手を当て驚きの表情だ。
「あらあら……」
「その……それで、柏木さんからプロポーズをしてもらいました」
「まあ、おめでとう。遥香ちゃん」
「結局、アイツと東京に行くんだ……」
奥歯を噛みしめるように陽太はうつむき、真哉を見つめる。
陽太の様子に気づいたおばあが、陽太の背中にそっと手を添えた。
「遥香ちゃん、おめでたい話だけれど寂しいさね」
おばあの瞳が潤んでいる。
もしかしたら、おばあも陽太と遥香が結ばれることを望んでいてくれたのかもしれない。
そう思い当たると遥香は申し訳なくなってしまう。
「おばあと陽太には、今までたくさんお世話になって感謝の気持ちでいっぱいです。おばあと陽太が居なければ、一人で真哉を育てていくのは難しかったと思います。どれだけ感謝してもしきれない。今まで本当にありがとうございました」
感謝を込めて、深く頭を下げた。目頭が熱くなり、鼻の奥がツンと痛む。
それでも、泣かないようにグッと歯を食いしばった。
「いいさ、いいさ、遥香ちゃんもシンちゃんもうちの子なんだから、幸せになってくれるのが一番さー、な、陽太」
おばあから急に話しを振られた陽太は低い声で「ああ」とだけ呟く。
「それで、城間別邸の予約が柏木さんの後、1週間ぐらい入っていないので、その間に東京にいる和明おじさんの所に柏木さんと一緒に報告とお礼に行って来ようかと思っていて……」
遥香の言葉が言い終わらない内に陽太が驚きの声をあげる。
「親父ん、ところ行くって!?」
「両親亡くなってしまってから、おじさんが親代わりになってくれているから……柏木さんが挨拶したいと言っていまして」
しどろもどろに説明すると、陽太が面白くなさそうに言葉を吐き出す。
「なんだ、早速ノロケかよ。でも、俺はアイツの事が信用ならない。いままで、遥香の事を散々放って置いて、この先大丈夫だなんて思えないんだ」
「陽太……」
「だって、そうだろ。お前がひとりで妊娠した訳じゃないんだ。それなのに、ずっと連絡がなかったなんて、納得できないだろ!」
「それは、直哉さんが事故で……」
「あー、頭ン中じゃわかってんだ。でも、シンが生まれてからずっと遥香がひとりで苦労していたのを知っているだけに許せないんだよ」
5年前、東京から戻った遥香が傷つき涙しているのを見て来た陽太。
自分のために怒り心配してくれている陽太の気持ちが、遥香には温かく、そして、痛かった。
「陽太、私のために心配してくれてありがとう。でも、直哉さんは事故で記憶を失っている間も、必死で空白の時間を取り戻そうとしていくれていたの。だから、今度こそ大丈夫だと思う。それに城間のおじさんに会ったら、沖縄に家を建ててくれるように依頼したいって言ってくれているから、私の事をぞんざいに扱ったりしないと思う」
「はぁー? 東京に家があるんだろ? 遥香のために別荘建てようって話?」
「ぬー? 遥香ちゃん、家建てるの? 上等ねー。アハハ。まだ、山の土地余っとー、好きにつかうといい」
この辺一帯は城間家所有の土地で、確かに土地は余っている。でも、もらうわけにはいかない。
「おじさんに相談してみるね。その時は適正価格でお願いします。後、別邸の管理人の後任を探して欲しいんだけど……」
陽太は、はぁーっ、と深く息を吐き顔を向けた。
「別邸の管理人は誰か探して置くから、心配すんな。知り合いに当たればどうにかなる」
「わがまま言ってごめんね。ありがとう陽太」
「ん……、でも、シンも居なくなったら寂しくなるな」
陽太の膝の上にいる真哉は何も言わずに、陽太の顔を見ていた。
その真哉の頭を大きな手で優しく撫でた陽太の目は、赤く充血していて涙をこらえているのがわかる。
雰囲気を察したおばあが明るい声をだす。
「また、いつでも会えるさ。家族なんだから」
おばあが家族として扱ってくれるが、遥香の心に刺さる。
嬉しくて、そして、いざ離れると思うと寂しさが胸に押し寄せてくる。
「ねー。シンちゃん、ようちゃんとおばあにあえなくなるのやだなぁ」
「そうだな。俺もシンに会えなののは嫌だよ」
「我が儘言って、ごめんね。父が亡くなって、城間のおじさんを始め、おばあや陽太が家族として接していてくれたから、頑張ってやってこれた。真哉を育てられたのもみんなのおかげ、本当にありがとう。家族って言ってもらえてどれだけ救われたか……」
そこまで言うと、感極まってこらえていた涙が、遥香の瞳からポロポロと流れだす。
「遥香ちゃん、ここが実家だと思っていつでも帰っておいで」
「そうだ、東京が合わなかったらすぐに帰ってくればいいんだ」
おばあの瞳も陽太の瞳も涙で濡れていた。
生まれ育った大好きな沖縄を離れても、帰る場所がココにあるとふたりは言ってくれている。
血は繋がっていないけれど、家族の絆を確かに感じた。
サンダルを履いた遥香と真哉をおばあと陽太が玄関まで出てきて見送ってくれている。
「おばあ、陽太、ありがとう。明後日、東京に行く前にもう一度、真哉を連れて挨拶にくるね」
「シンちゃん、撫でぃとーちゅん(撫でておかないと)」
おばあが、目じりにしわを寄せアハハと笑いながら真哉のほっぺを皺のある手で包んだ。
「あはは、おばあ、くすぐったいよ」
「ありがとう陽太。真哉と一緒にまた来るね」
「ああ、またな」
陽太に手を振り、背を向けた。
涙が溢れないように見上げた空には今にも切れそうな細い三日月と満天の星が浮かんでいる。
きらきらと煌めく夜空の下、遥香は歩きだした。
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