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きっと、幸せになる。
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続きの言葉が聞きたくて、沙羅は慶太を見つめた。
期待が膨らみトクトクと心臓が早く動き始める。
すると、美幸の声がふたりの間に飛び込んでくる。
「お母さーん、モコモコしたの。鏡みたいに景色が映って面白かったー」
その声に沙羅はハッとして慶太から視線を外し、赤く火照った頬を隠すように両手を添える。
傍まで来た美幸が不思議そうに首をかしげた。
「お母さん、どうしたの?」
「ううん、何でもない」
誤魔化したつもりだが、恥ずかしさも相まって、沙羅の頬はますます赤く染まる。
すると、慶太が助け船をだすように、ゆっくりと話し出した。
「さっき、お墓にお参りした時に、美幸ちゃんのおじいちゃんおばあちゃんにお願いしていた事聞きたい?」
「うん」
美幸は好奇心旺盛な目をキラキラとさせて、大きくうなずいた。
沙羅へ顔を向けた慶太は、心配ないよという風に甘やかに微笑む。
そして、少し屈んで美幸に視線を合わせた。
「美幸ちゃんのお母さんと結婚させてくださいって、お願いしていたんだ」
慶太の言葉に、沙羅は驚きで目を丸くして、言葉もでない。
その横で美幸は、慶太に疑問を投げかける。
「それで、おじいちゃんおばあちゃんは、なんて言っていたの?」
「さあ、なんて言っていたと思う?」
「エヘヘ。きっと、”お母さんを幸せにしてください、よろしく”って、言っていたんじゃないかな?」
そう言って、美幸は顔をくしゃくしゃにして笑い、沙羅にギュッと抱きついた。
その温かさに、沙羅は胸の奥から熱いものがこみ上げて、涙で景色が滲む。
「沙羅、この先なにがあっても、沙羅を裏切らない。大切にする」
真摯な言葉に涙が溢れ出す。沙羅は、わななく口元を両手で押さえながら、何度もうなずいた。
「沙羅、結婚しよう」
慶太は、沙羅の手を取り、その左手の薬指に指輪をはめた。
それは、胸元に輝くダイヤモンドと同じブランド。
プラチナの台にブリリアント カット ダイヤモンドが煌めいている。
「うれ……しい。慶太……ありがとう」
涙でぐちゃぐちゃになった沙羅の顔を、慶太の指がそっと涙を拭う。
「わー、お母さん、すごいキレイ」
「美幸……ありがとう」
多感な時期に母親の再婚は、きっと子供なりの心の葛藤があったに違いない。
母親の幸せを思って、美幸は結婚を認めてくれたのだ。
もしも、美幸が反対したなら、きっと結婚をあきらめただろう。
「お母さんがお兄さんと結婚するって事は、お兄さんが、わたしのお父さんになるの?」
「急に”お父さん”だよって、言われたら誰だって戸惑うと思う。美幸ちゃんとは、”家族”になれたならと思っている。呼びにくければ、お兄さんのままでいいよ」
「うん、それじゃあ、このままお兄さんで。後、お兄さんの苗字は、高良だったと思うけど、わたしも高良になるの?」
美幸の心配は尤もだ。母親の結婚イコール相手の苗字へ変更するのが、自然な流れ。
でも、慶太の導き出した答えは違った。
「美幸ちゃんが同じ苗字になってくれるなら嬉しいよ。でも、美幸ちゃんが今のままの藤井の苗字が良ければ、無理に変えなくてもいいんだ」
「うーん、紀美子さんと同じ苗字なったばかりだから、また変わるのはなぁ」
「ゆっくり考えてから決めていいよ。美幸ちゃんが、どちらを選んでもお母さんと親子である事は変わらないし、俺も美幸ちゃんの事は自分の子供だと思って、大切にすると誓う」
「もう少し考えてから決めていいの?」
「もちろん、美幸ちゃんが大人になってからでもいいよ」
「えー、それだと、わたしも結婚するかも知れないのに遅すぎるー」
あはは、と笑い声が上がる。
うららかな風が吹く。
春の温かな日差しを浴びながら、高校の頃に立ち寄ったこの場所で家族になる約束をした。
そう、心でつながった家族になる。
きっと、幸せになる。
「スイミング・プールの予約時間だよね。行こうよ」
笑顔の美幸が、少し前を歩きだした。
隣を歩く慶太が沙羅に顔を寄せると、爽やかな香水の香りが近づいた。
そして、耳元で囁く。
「沙羅、愛してる」
【本編・終 このあと番外編あります】
期待が膨らみトクトクと心臓が早く動き始める。
すると、美幸の声がふたりの間に飛び込んでくる。
「お母さーん、モコモコしたの。鏡みたいに景色が映って面白かったー」
その声に沙羅はハッとして慶太から視線を外し、赤く火照った頬を隠すように両手を添える。
傍まで来た美幸が不思議そうに首をかしげた。
「お母さん、どうしたの?」
「ううん、何でもない」
誤魔化したつもりだが、恥ずかしさも相まって、沙羅の頬はますます赤く染まる。
すると、慶太が助け船をだすように、ゆっくりと話し出した。
「さっき、お墓にお参りした時に、美幸ちゃんのおじいちゃんおばあちゃんにお願いしていた事聞きたい?」
「うん」
美幸は好奇心旺盛な目をキラキラとさせて、大きくうなずいた。
沙羅へ顔を向けた慶太は、心配ないよという風に甘やかに微笑む。
そして、少し屈んで美幸に視線を合わせた。
「美幸ちゃんのお母さんと結婚させてくださいって、お願いしていたんだ」
慶太の言葉に、沙羅は驚きで目を丸くして、言葉もでない。
その横で美幸は、慶太に疑問を投げかける。
「それで、おじいちゃんおばあちゃんは、なんて言っていたの?」
「さあ、なんて言っていたと思う?」
「エヘヘ。きっと、”お母さんを幸せにしてください、よろしく”って、言っていたんじゃないかな?」
そう言って、美幸は顔をくしゃくしゃにして笑い、沙羅にギュッと抱きついた。
その温かさに、沙羅は胸の奥から熱いものがこみ上げて、涙で景色が滲む。
「沙羅、この先なにがあっても、沙羅を裏切らない。大切にする」
真摯な言葉に涙が溢れ出す。沙羅は、わななく口元を両手で押さえながら、何度もうなずいた。
「沙羅、結婚しよう」
慶太は、沙羅の手を取り、その左手の薬指に指輪をはめた。
それは、胸元に輝くダイヤモンドと同じブランド。
プラチナの台にブリリアント カット ダイヤモンドが煌めいている。
「うれ……しい。慶太……ありがとう」
涙でぐちゃぐちゃになった沙羅の顔を、慶太の指がそっと涙を拭う。
「わー、お母さん、すごいキレイ」
「美幸……ありがとう」
多感な時期に母親の再婚は、きっと子供なりの心の葛藤があったに違いない。
母親の幸せを思って、美幸は結婚を認めてくれたのだ。
もしも、美幸が反対したなら、きっと結婚をあきらめただろう。
「お母さんがお兄さんと結婚するって事は、お兄さんが、わたしのお父さんになるの?」
「急に”お父さん”だよって、言われたら誰だって戸惑うと思う。美幸ちゃんとは、”家族”になれたならと思っている。呼びにくければ、お兄さんのままでいいよ」
「うん、それじゃあ、このままお兄さんで。後、お兄さんの苗字は、高良だったと思うけど、わたしも高良になるの?」
美幸の心配は尤もだ。母親の結婚イコール相手の苗字へ変更するのが、自然な流れ。
でも、慶太の導き出した答えは違った。
「美幸ちゃんが同じ苗字になってくれるなら嬉しいよ。でも、美幸ちゃんが今のままの藤井の苗字が良ければ、無理に変えなくてもいいんだ」
「うーん、紀美子さんと同じ苗字なったばかりだから、また変わるのはなぁ」
「ゆっくり考えてから決めていいよ。美幸ちゃんが、どちらを選んでもお母さんと親子である事は変わらないし、俺も美幸ちゃんの事は自分の子供だと思って、大切にすると誓う」
「もう少し考えてから決めていいの?」
「もちろん、美幸ちゃんが大人になってからでもいいよ」
「えー、それだと、わたしも結婚するかも知れないのに遅すぎるー」
あはは、と笑い声が上がる。
うららかな風が吹く。
春の温かな日差しを浴びながら、高校の頃に立ち寄ったこの場所で家族になる約束をした。
そう、心でつながった家族になる。
きっと、幸せになる。
「スイミング・プールの予約時間だよね。行こうよ」
笑顔の美幸が、少し前を歩きだした。
隣を歩く慶太が沙羅に顔を寄せると、爽やかな香水の香りが近づいた。
そして、耳元で囁く。
「沙羅、愛してる」
【本編・終 このあと番外編あります】
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