虐げられて右腕を失った仮面の王子 天才幼女に機械の右腕をもらってたくさんの異世界(宇宙、現代、ファンタジー世界など)で不幸な者たちを救う

渡 歩駆

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第1の異世界ー右腕を失った仮面の王子

第13話 自動車教習シミュレーター

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 ……次の日、俺はソファーに座って妙な兜を被らされていた。

「な、なんだこれは?」
「シミュレーターに使うヘッドギアじゃ」
「ヘッドギア……は被ってるこれのことか。シミュレーターって?」
「現実ではなく、仮想で行うということじゃ」
「そ、そうか」

 全然わからん。

「ハバンにはデュロリアンの運転を覚えてもらう」
「運転? あのジドウシャってやつを俺が動かすのか?」
「特殊な操作は覚えなくてよい。運転だけできればいいんじゃ」
「お、俺にできるかな?」

 あれが動くことさえ未だに理解できないのだ。
 自分で動かすことなどできる気がしない。

「大丈夫じゃ。今から最大で3か月間、みっちりと特訓させてやるからの」
「さ、3か月? あのデュロリアンを使ってか?」
「いや、あれは次の異世界に向かっておるから使えん」
「えっ? じゃあどうするんだ? それに次の異世界にはあと2日で着くんだろ? 今から3か月じゃ、当分は運転で役に立つことはできなそうだけど……」
「だからこのシミュレーターを使うんじゃ」

 ヘッドギアから伸びる紐みたいなものの束をパソコンに繋いでツクナはポチポチ操作する。

「どういうことだ?」
「それはシミュレーションが始まってから説明するのじゃ」

 始まるって、なにがどうなるんだろう? やっぱり全然わからない。

「では始めるぞ。目を瞑れ」
「うん」

 言われて目を瞑る。

「開いてよいぞ」
「ん? もう?」

 瞑って一瞬ののちに目を開く。と、

「えっ?」

 目の前には見知らぬ光景が広がっていた。

 なにもない。真っ白な場所だ。

「ツ、ツクナっ? どこにいるんだっ?」
「ここじゃ」
「えっ? ん? どこ?」
「ここじゃ」

 足元を見ると、手の平に乗りそうな小さなツクナがそこにいた。

「な、なんでそんなに小さいんだ?」
「このツクナは本物ではないからじゃ」
「どういうことだ?」
「まあつまりここは現実でないということで、夢の中とでも思えばよい」
「ゆ、夢の中か……」

 夢にしては現実感がある。

「ツクナを肩に乗せるのじゃ」
「うん? ああ」

 左手に乗せた小さなツクナを右肩へと乗せる。

「ここでの3か月は現実での半日じゃ」
「3か月が半日?」
「頭が感じる時間を圧縮して、シミュレーション内の3か月を半日にするのじゃ。まあやろうと思えばもっと圧縮できるんじゃけど、やり過ぎると脳に負担がかかるからの」
「な、なんだかわからんが……」
「わからんでもよい。ここに3か月いても、現実では半日しか経たんと信じればよい。まさかツクナの言うことを疑うことは無いじゃろ?」
「それはもちろんだけれど。ここでどうやってジドウシャの運転をするんだ? なにも無いぞ」

 ここにあるのは真っ白い大地と空だけだ。ジドウシャなど影も形も無い。

「慌てるな。今そこに出す」

 ツクナの指が虚空を叩くと、

「おわぁっ!?」

 目の前にジドウシャ、デュロリアンが出現した。

「まずはなにもないところを走ってみよ。慣れてきたら他の自動車も行き交う仮想の町を走ってもらう。一応、基本的な道交法も学んでもらったほうがよいな」
「ド、ドウコウホウ?」
「安心せい。自動車の動かし方と必要な道交法など、どんなアホンダラでも覚えることができる。賢いハバンならば2週間もあれば十分じゃろ」
「か、賢いかどうかはわからないけど」

 まあツクナがそう言うならばそうなんだろう。
 不安だったが、ちょっと自信がついた。

「さあデュロリアンに乗るのじゃ。練習開始じゃぞ」
「おう」

 言われた通り俺はデュロリアンに乗り込み、運転の練習を始めた。

 ……

「……はっ」

 目を開くと前に見えたのは見覚えのある光景だった。

「も、戻ったのか?」
「うむ」

 眼前でイスに座っているツクナが振り返ってこちらを見ていた。

「どれくらい経ったんだ?」
「2時間くらいかの。シミュレーション内ではだいたい2週間じゃ」」
「そうか」

 なんだか妙な感じだ。このヘッドギアを被ってから2週間経った感覚はあるのに、実際は2時間しか経っていないとは……。

「運転はできるようになったみたいじゃな」
「ああ。ばっちりだ。道交法もな」

 親指を立てて見せると、ツクナは満足そうに頷く。

「最大3ヶ月はかかると想定しておったが、2週間で終わらせてくるとはの。たいしたものじゃ。うむ。では飯にするかの。丁度、昼時じゃ」
「うん」

 ヘッドギアをはずしてもらい、昼飯をいただくことにした。
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