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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第80話 ルカの師匠イライゼン・モーヒュー
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「私は恥ずかしい」
円形の間を出た途端、ルカがポツリとそう言った。
「どうしたんだい? 突然」
「いえ、ハバンさんがサミオンペイナーを助けに向かったとき、私は彼女が痛めつけられて己を知るのがいいと考えていました。しかしそれは間違いだったのです」
辛そうな表情でルカは胸の前で拳を握り込む。
「理不尽な暴力から弱き者を救うのがヨトゥナのナイトの使命です。それを忘れて私はあのような愚かなことを考えてしまいました。それが恥ずかしいのです」
「けれど君の考えも間違ってはいない。あれが命を奪い合う戦いの場だったら、彼女は死んでいた。戦場ではない場所で己の弱さを知れたのは彼女にとって良いことだったと思うよ」
「そうかもしれません。けれど私の考えはヨトゥナのナイトではありませんでした。自分が未熟者であると痛感して……悔しい思いです」
「そうか」
なんとも意識の高い少年だ。ヨトゥナの教えをとても大切にしているというのもあるだろうが、彼の心がとても高潔なのだと思った。
「そう思いつめないほうがいい。君はまだ若いんだ。失敗をしても、それを経験にしていくらでも成長をできるんだからさ。今回の件も成長できるきっかけになっと思えばいいんだよ」
「ハバンさん……」
言葉を聞いて納得できたのか、ルカは安らかな表情で俺を見上げていた。
「あなたは立派です。私はあなたのような素晴らしいナイトになりたいと思います」
「大袈裟だな君は」
まっすぐなこの少年は、自分のようにかはともかくとして、きっと良いナイトになると思った。
「ふむ。ならばハバンよ、ルカに師事をしてやったらよい」
「えっ? 師事?」
「そ、それは願っても無いことですっ! ぜひ私に師事をしていただけないでしょうかっ?」
膝をついてこうべを垂れるルカを前に俺は戸惑う。
「師事って……なにを教えたらいいんだ?」
師事するのは構わない。しかし経験が無いのでなにを教えたらいいのか……。
「ハバンがルカに教えたいことを教えればよい。そしてそうすることでハバン自身も成長をすることじゃろう」
「教えることで自分も成長……」
言わんとすることがわからないでもない。
「わかった。君の成長を助けてやれるならば、できるだけのことをさせてもらおう」
「あ、ありがとうございますっ!」
跪いたままルカは深く頭を下げた。
真面目で礼儀正しい少年だ。そして高い意識を持っている。
彼に対して自分が満足な教えを与えられるのか俺は不安であった。
「まあそんなに畏まらなくてもいいから。立ち上がって」
恭しく頭を下げているルカを立ち上がらせようと声をかけていると……。
「――なにをしているんだルカ?」
「うん?」
かけられた声にそちらを向くと、そこにいたのはヨトゥナのナイトの衣装を着た女だった。
長い黒髪に鋭い目つきをしたその若い女は、妙に落ち着きのある雰囲気を醸し出しており、外見よりも年かさな印象を受けた。
「サ、サンパーイライゼン師匠っ」
「イライゼン?」
確かルカの師匠で、任務で夕方には戻って来るとは聞いていたが。
立ち上がったルカがイライゼンの側へ赴く。
「お戻りでしたか師匠」
「ああ、たったいま戻ったところだ。これからゼナイエ様に任務の報告へ赴くところだが……」
イライゼンの鋭い視線がこちらへ向けられる。
「彼らは何者だ? 子供のほうはナイトのようだが、仮面の男はなんだ?」
訝し気な目で見られた俺は居心地の悪いような気分になった。
やっぱりこの仮面姿は目立つ。
「こちらの方たちはサミオンツクナ様と、そのお弟子のサンパーハバンさんです」
「サミオンツクナとサンパーハバン? 聞いたことがないな」
「はい。サミオンツクナ様とハバンさんは……」
ルカがこれまでの経緯を話す。
「……なるほど。彼が君の命を」
こちらへと歩いて来たイライゼンが右手を差し出してくる。
「イライゼン・モーヒューだ。教え子の助命に礼を言わせてもらおう」
「ハバン・ニー・ローマンドだ。よろしく」
差し出されている手を握る。
大きくはないが、しかしやわではない感触。戦士の手だ。
「デズター・デルガモットを倒した男か。かなりの強者なんだな」
「師匠が優れているおかげだよ」
「師匠……」
イライゼンの目が眼下へと向く。
「ツクナじゃ。握手はいい。そういう文化では育っていないからの」
「君がサミオンなのか?」
「ゼナイエよりも歳は上じゃ。おかしなことではないじゃろう」
「まあ……そうだな」
と、納得の言葉を口にするも、彼女の目には疑義の色が浮かぶ。
ゼナイエという前例があるとはいえ、こんな小さな子供がナイトの最高位と信じ難いのはしかたのないことだとは思う。
「丁度よいから話しておこう。ゼナイエにはすでに話してあるが、ルカをツクナのもとで使役させてもらう。よいな?」
「サミオンの君が決めたことならばサンパーの私が口を出せることではない」
「それとルカをハバンに師事させる。師のお前としてはおもしろくないじゃろうが、ルカを成長させるためじゃ。構わんな?」
「サミオンの意志ならばなにも言えることはない」
やや不服そうではあるが、イライゼンはツクナの言葉に頷いた。
「サンパーイライゼン師匠、申し訳ありません。あなたの弟子でありながら他の方から教えをいただくなど、本来ならばあってはならないことだとは承知しておりますが……」
「ルカ」
イライゼンがルカの肩に手を置く。
「その……いや、私に遠慮をしなくていい。私はあまり師匠には向いていないからな。お前を十分に育てられていないと思っていたところだ」
「そ、そんな。戦うことなどできなかった私にズァーグの扱いや剣術を教えてくれたのはあなたです。師匠には言葉では言い表せないほどの強い感謝を胸に感じております」
「そう思ってくれるのならば嬉しい。……うん。ではな」
と、イライゼンは背中を向けて去って行く。
その背はどうにも物悲しく感じられた。
円形の間を出た途端、ルカがポツリとそう言った。
「どうしたんだい? 突然」
「いえ、ハバンさんがサミオンペイナーを助けに向かったとき、私は彼女が痛めつけられて己を知るのがいいと考えていました。しかしそれは間違いだったのです」
辛そうな表情でルカは胸の前で拳を握り込む。
「理不尽な暴力から弱き者を救うのがヨトゥナのナイトの使命です。それを忘れて私はあのような愚かなことを考えてしまいました。それが恥ずかしいのです」
「けれど君の考えも間違ってはいない。あれが命を奪い合う戦いの場だったら、彼女は死んでいた。戦場ではない場所で己の弱さを知れたのは彼女にとって良いことだったと思うよ」
「そうかもしれません。けれど私の考えはヨトゥナのナイトではありませんでした。自分が未熟者であると痛感して……悔しい思いです」
「そうか」
なんとも意識の高い少年だ。ヨトゥナの教えをとても大切にしているというのもあるだろうが、彼の心がとても高潔なのだと思った。
「そう思いつめないほうがいい。君はまだ若いんだ。失敗をしても、それを経験にしていくらでも成長をできるんだからさ。今回の件も成長できるきっかけになっと思えばいいんだよ」
「ハバンさん……」
言葉を聞いて納得できたのか、ルカは安らかな表情で俺を見上げていた。
「あなたは立派です。私はあなたのような素晴らしいナイトになりたいと思います」
「大袈裟だな君は」
まっすぐなこの少年は、自分のようにかはともかくとして、きっと良いナイトになると思った。
「ふむ。ならばハバンよ、ルカに師事をしてやったらよい」
「えっ? 師事?」
「そ、それは願っても無いことですっ! ぜひ私に師事をしていただけないでしょうかっ?」
膝をついてこうべを垂れるルカを前に俺は戸惑う。
「師事って……なにを教えたらいいんだ?」
師事するのは構わない。しかし経験が無いのでなにを教えたらいいのか……。
「ハバンがルカに教えたいことを教えればよい。そしてそうすることでハバン自身も成長をすることじゃろう」
「教えることで自分も成長……」
言わんとすることがわからないでもない。
「わかった。君の成長を助けてやれるならば、できるだけのことをさせてもらおう」
「あ、ありがとうございますっ!」
跪いたままルカは深く頭を下げた。
真面目で礼儀正しい少年だ。そして高い意識を持っている。
彼に対して自分が満足な教えを与えられるのか俺は不安であった。
「まあそんなに畏まらなくてもいいから。立ち上がって」
恭しく頭を下げているルカを立ち上がらせようと声をかけていると……。
「――なにをしているんだルカ?」
「うん?」
かけられた声にそちらを向くと、そこにいたのはヨトゥナのナイトの衣装を着た女だった。
長い黒髪に鋭い目つきをしたその若い女は、妙に落ち着きのある雰囲気を醸し出しており、外見よりも年かさな印象を受けた。
「サ、サンパーイライゼン師匠っ」
「イライゼン?」
確かルカの師匠で、任務で夕方には戻って来るとは聞いていたが。
立ち上がったルカがイライゼンの側へ赴く。
「お戻りでしたか師匠」
「ああ、たったいま戻ったところだ。これからゼナイエ様に任務の報告へ赴くところだが……」
イライゼンの鋭い視線がこちらへ向けられる。
「彼らは何者だ? 子供のほうはナイトのようだが、仮面の男はなんだ?」
訝し気な目で見られた俺は居心地の悪いような気分になった。
やっぱりこの仮面姿は目立つ。
「こちらの方たちはサミオンツクナ様と、そのお弟子のサンパーハバンさんです」
「サミオンツクナとサンパーハバン? 聞いたことがないな」
「はい。サミオンツクナ様とハバンさんは……」
ルカがこれまでの経緯を話す。
「……なるほど。彼が君の命を」
こちらへと歩いて来たイライゼンが右手を差し出してくる。
「イライゼン・モーヒューだ。教え子の助命に礼を言わせてもらおう」
「ハバン・ニー・ローマンドだ。よろしく」
差し出されている手を握る。
大きくはないが、しかしやわではない感触。戦士の手だ。
「デズター・デルガモットを倒した男か。かなりの強者なんだな」
「師匠が優れているおかげだよ」
「師匠……」
イライゼンの目が眼下へと向く。
「ツクナじゃ。握手はいい。そういう文化では育っていないからの」
「君がサミオンなのか?」
「ゼナイエよりも歳は上じゃ。おかしなことではないじゃろう」
「まあ……そうだな」
と、納得の言葉を口にするも、彼女の目には疑義の色が浮かぶ。
ゼナイエという前例があるとはいえ、こんな小さな子供がナイトの最高位と信じ難いのはしかたのないことだとは思う。
「丁度よいから話しておこう。ゼナイエにはすでに話してあるが、ルカをツクナのもとで使役させてもらう。よいな?」
「サミオンの君が決めたことならばサンパーの私が口を出せることではない」
「それとルカをハバンに師事させる。師のお前としてはおもしろくないじゃろうが、ルカを成長させるためじゃ。構わんな?」
「サミオンの意志ならばなにも言えることはない」
やや不服そうではあるが、イライゼンはツクナの言葉に頷いた。
「サンパーイライゼン師匠、申し訳ありません。あなたの弟子でありながら他の方から教えをいただくなど、本来ならばあってはならないことだとは承知しておりますが……」
「ルカ」
イライゼンがルカの肩に手を置く。
「その……いや、私に遠慮をしなくていい。私はあまり師匠には向いていないからな。お前を十分に育てられていないと思っていたところだ」
「そ、そんな。戦うことなどできなかった私にズァーグの扱いや剣術を教えてくれたのはあなたです。師匠には言葉では言い表せないほどの強い感謝を胸に感じております」
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