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第27話 嵐のあと、そして――※
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ようやく嵐が過ぎ去った空に、白く澄んだ月が昇っていた。
風は湿気を含んでいたが、肌に触れるそれは優しく――まるで、騒がしかった数日を静かに鎮めようとしているかのようだった。
あれから数日。
穏やかな日常が戻ってきたかのように、何事もない日常が続いている。
カイン邸のバルコニーに月明かりに照らされながら、二人の影が淡く並んでいる。
「……これで全部、終わったのかな」
ユリウスの小さな声が、夜気に溶けていく。
遠くから、静かに波の音が聞こえた。
隣に立つカインは、ゆっくりと空を見上げながら答える。
「いや……まだ終わっていない。エドガーのことも完全には片づいていない」
その声に、わずかな苛立ちと警戒の色が滲んでいた。
けれど、ユリウスはそれに微笑んで返す。
肩をすくめ、少しだけカインに寄り添うように近づいた。
「……でも、今くらいは、少しくらい休んでもいいと思いませんか?」
横顔を見上げながら、そう囁く。
「走りっぱなしじゃ、どこにも辿り着けないと思いますけど?」
「……敬語」
「え?」
「その敬語みたいな話し方、やめてほしい。俺の前だけは気軽にしゃべってくれても――」
「フフ、カインがそういうならそうするよ」
笑ながら答えるユリウスの前に、カインは、しばらく沈黙した。
風が、彼の髪をふわりと撫でる。
やがて――その視線が、そっとユリウスの方へ向けられる。
「……隣」
「え?」
「……お前が、隣に居るから、大丈夫だ」
「っ……!」
短く、けれど確かに響いたその言葉に、ユリウスの胸が小さく脈打つ。
さっきまでのざらついた空気が、ふいにほどけた気がした。
カインの手が、ゆっくりと動いた。
そして、そっとユリウスの手に重なる。
しかし、ユリウスは拒むと言う事をしなかった。
手と手が結ばれたその感触は、どこまでも温かかった。
震えていた指先が、ようやく行き先を見つけたように、相手に重なる。
この手は、もう何かから逃げるためのものではない。
誰かに縋るためのものでもない――ともに歩くための手だ。
「……これからは、ちゃんと並んで歩けるかな」
ユリウスがぽつりと呟く。
それは自問のようでもあり、願いのようでもあった。
カインは短く笑った。
「俺の歩幅は、お前に合わせる」
その言葉に、ユリウスはわずかに眉をひそめる。
「……それ、遠回しに足が遅いって言ってないか?」
「違う」
即座に返される声が、ひどく穏やかで――優しかった。
「――お前が迷わないように、ちゃんと隣で歩くって意味だ」
その一言に、何も言い返せなくなってしまう。
ふいに、胸がきゅっと締めつけられる。
「……ほんと、そういうのだけ上手くなったよな」
照れ隠しのように呟くと、カインは黙って、繋いでいた手を引いた。
その手が、まっすぐにユリウスの頬に添えられる。
「ユリウス」
名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。
そのまま、カインの唇がそっと触れる。
一度、また一度。
まるで呼吸を確かめるように、優しく、何度も。
「ん……カイン……どうした?」
「確認してるだけだ」
囁き声と共に、キスはさらに深くなる。
角度を変え、重ねるたびに熱が移っていく。
「ん、……っ、ふ……カイン……っ」
吐息の隙間からこぼれ落ちる声。
唇を離したと思えば、今度は顎先から喉元、鎖骨へと口づけが降りていく。
「……やだ、そんな……くすぐったいよ」
「嘘だ……くすぐったい顔じゃない」
笑いを含んだ声とともに、カインの手がユリウスの背中を撫でる。
服の上からでも感じ取れる、しっとりとした掌の熱。
「……キス、しすぎだっ……」
「俺は、全然足りない、んっ」
そう言って、また口づける。
ユリウスの唇が、何度もやわらかく吸われて、少しずつ赤く染まっていく。
舌先が絡んでくる。
逃げても、すぐに追いかけてくる。
吸って、舐めて、啄んで――
「……ふ、ぁ……ん、……んんっ……」
唇の端から、甘い声が零れた。
すぐに指で口元を隠そうとしたが、カインに手首を掴まれ、阻まれる。
「そのまま、聞かせてくれ……お前の声」
「っ……や、恥ずかし……っ」
それでも、逃げることはできなかった。
瞳を見つめられて、熱いキスを重ねられて、息もできないほどに満たされていく。
服の隙間から、カインの手が滑り込む。
背中を撫で、腰をなぞり、ゆっくりと下へ――
「……や、だ……ちょっと、待て……っ」
「ダメだ……ユリウスの全部、確かめたい」
掠れた声で、でも真剣な目で。
その眼差しに、心まで裸にされる気がした。
カインの唇が胸元へ落ちていく。
舌が肌をなぞり、敏感な部分をそっと吸われる。
「……っ、ふ、んんっ……」
声が、止まらなかった。
肩を震わせ、ベッドの上で指先がシーツを掴む。
「……ユリウス。……愛してる」
「……ばか……っ……そんな顔で言うなよ……」
「どんな顔?」
「……優しい、顔で……っ」
そのまま、再び唇が重なる。
深く、深く、まるでお互いを飲み込むように。
息を奪うキスが続き、身体の奥がじわじわと熱を帯びていく。
時間も、音も、すべてが遠のいていくようだった。
風は湿気を含んでいたが、肌に触れるそれは優しく――まるで、騒がしかった数日を静かに鎮めようとしているかのようだった。
あれから数日。
穏やかな日常が戻ってきたかのように、何事もない日常が続いている。
カイン邸のバルコニーに月明かりに照らされながら、二人の影が淡く並んでいる。
「……これで全部、終わったのかな」
ユリウスの小さな声が、夜気に溶けていく。
遠くから、静かに波の音が聞こえた。
隣に立つカインは、ゆっくりと空を見上げながら答える。
「いや……まだ終わっていない。エドガーのことも完全には片づいていない」
その声に、わずかな苛立ちと警戒の色が滲んでいた。
けれど、ユリウスはそれに微笑んで返す。
肩をすくめ、少しだけカインに寄り添うように近づいた。
「……でも、今くらいは、少しくらい休んでもいいと思いませんか?」
横顔を見上げながら、そう囁く。
「走りっぱなしじゃ、どこにも辿り着けないと思いますけど?」
「……敬語」
「え?」
「その敬語みたいな話し方、やめてほしい。俺の前だけは気軽にしゃべってくれても――」
「フフ、カインがそういうならそうするよ」
笑ながら答えるユリウスの前に、カインは、しばらく沈黙した。
風が、彼の髪をふわりと撫でる。
やがて――その視線が、そっとユリウスの方へ向けられる。
「……隣」
「え?」
「……お前が、隣に居るから、大丈夫だ」
「っ……!」
短く、けれど確かに響いたその言葉に、ユリウスの胸が小さく脈打つ。
さっきまでのざらついた空気が、ふいにほどけた気がした。
カインの手が、ゆっくりと動いた。
そして、そっとユリウスの手に重なる。
しかし、ユリウスは拒むと言う事をしなかった。
手と手が結ばれたその感触は、どこまでも温かかった。
震えていた指先が、ようやく行き先を見つけたように、相手に重なる。
この手は、もう何かから逃げるためのものではない。
誰かに縋るためのものでもない――ともに歩くための手だ。
「……これからは、ちゃんと並んで歩けるかな」
ユリウスがぽつりと呟く。
それは自問のようでもあり、願いのようでもあった。
カインは短く笑った。
「俺の歩幅は、お前に合わせる」
その言葉に、ユリウスはわずかに眉をひそめる。
「……それ、遠回しに足が遅いって言ってないか?」
「違う」
即座に返される声が、ひどく穏やかで――優しかった。
「――お前が迷わないように、ちゃんと隣で歩くって意味だ」
その一言に、何も言い返せなくなってしまう。
ふいに、胸がきゅっと締めつけられる。
「……ほんと、そういうのだけ上手くなったよな」
照れ隠しのように呟くと、カインは黙って、繋いでいた手を引いた。
その手が、まっすぐにユリウスの頬に添えられる。
「ユリウス」
名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。
そのまま、カインの唇がそっと触れる。
一度、また一度。
まるで呼吸を確かめるように、優しく、何度も。
「ん……カイン……どうした?」
「確認してるだけだ」
囁き声と共に、キスはさらに深くなる。
角度を変え、重ねるたびに熱が移っていく。
「ん、……っ、ふ……カイン……っ」
吐息の隙間からこぼれ落ちる声。
唇を離したと思えば、今度は顎先から喉元、鎖骨へと口づけが降りていく。
「……やだ、そんな……くすぐったいよ」
「嘘だ……くすぐったい顔じゃない」
笑いを含んだ声とともに、カインの手がユリウスの背中を撫でる。
服の上からでも感じ取れる、しっとりとした掌の熱。
「……キス、しすぎだっ……」
「俺は、全然足りない、んっ」
そう言って、また口づける。
ユリウスの唇が、何度もやわらかく吸われて、少しずつ赤く染まっていく。
舌先が絡んでくる。
逃げても、すぐに追いかけてくる。
吸って、舐めて、啄んで――
「……ふ、ぁ……ん、……んんっ……」
唇の端から、甘い声が零れた。
すぐに指で口元を隠そうとしたが、カインに手首を掴まれ、阻まれる。
「そのまま、聞かせてくれ……お前の声」
「っ……や、恥ずかし……っ」
それでも、逃げることはできなかった。
瞳を見つめられて、熱いキスを重ねられて、息もできないほどに満たされていく。
服の隙間から、カインの手が滑り込む。
背中を撫で、腰をなぞり、ゆっくりと下へ――
「……や、だ……ちょっと、待て……っ」
「ダメだ……ユリウスの全部、確かめたい」
掠れた声で、でも真剣な目で。
その眼差しに、心まで裸にされる気がした。
カインの唇が胸元へ落ちていく。
舌が肌をなぞり、敏感な部分をそっと吸われる。
「……っ、ふ、んんっ……」
声が、止まらなかった。
肩を震わせ、ベッドの上で指先がシーツを掴む。
「……ユリウス。……愛してる」
「……ばか……っ……そんな顔で言うなよ……」
「どんな顔?」
「……優しい、顔で……っ」
そのまま、再び唇が重なる。
深く、深く、まるでお互いを飲み込むように。
息を奪うキスが続き、身体の奥がじわじわと熱を帯びていく。
時間も、音も、すべてが遠のいていくようだった。
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