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第1章 追放と目覚め 、スライムの中の少女
第01話 勇者パーティー追放
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王都の広場。
朝の光に照らされ、空気は凛としていた。
普段であれば人々の活気と希望が満ちるはずのその場所は、しかし、ガルドにとって――人生で最も残酷な舞台となった。
彼の胸に吹いているのは、冷たい風だけ。
その冷たさは外気のものではなく、心の奥底から湧き上がる、凍えるような絶望だった。
――掲示板の中央。
そこには、彼の名前と共に、大仰な文字で【通知】が貼られていた。
墨で力強く書かれたその文字は、彼の存在を公衆の面前で晒しまるで恥辱の烙印を押すかのようだった。
「……本当に……俺、もういらないんだな」
かすれた独り言が、自分でも情けなく、弱々しく聞こえた。喉の奥がひりつく。
だが、それが今の自分のすべてだった。
パーティーの足手まといで、誰からも必要とされない――出来損ないの召喚士。
人々の視線が突き刺さる。
広場を行き交う噂好きの商人たち、高慢な顔をした通りすがりの貴族、そして物見高い野次馬たち。
その誰もが、好奇と嘲りの入り混じった目で彼を見ていた。
憐れむ視線は一つもない。まるで彼が、晒し者の見世物であるかのように。
ガルドは唇を噛みしめ、口の中に血の味が広がる。
顔を上げ、勇者パーティーの面々を縋るような思いで見つめた。
「……アレス、何かの間違いじゃないのか?俺はまだ、みんなと一緒に……この旅を、最後まで……」
必死だった。
情けなくとも、まだ彼らに見捨てられたくなかった。
最後の希望に縋りたかった。
嘗ては仲間だった者たちの顔に、微かでもいい情が残っていないかと願った。
だが、アレスは冷たかった。
その目はまるで、感情を失った人形のようだった。
「ガルド。もう決まったことだ。無駄な抵抗はやめろ……お前は、我々の目指す高みにはついて来れない。正直なところ、足手まといだ」
その言葉は、研ぎ澄まされた剣の切っ先よりも鋭く、ガルドの心を深く切り裂いた。
アレスの鋼の瞳に、かつて共に戦った仲間への情けや友情の影は微塵もなかった。
あるのは、冷徹な判断だけ。
「これ以上、魔力の低い召喚士に頼るわけにはいかない。俺たちの旅はこれからさらに過酷になる。お前の存在はリスクが付きすぎるんだ」
それが、勇者としての『正しさ』なのだろうか?
目的のためには、些細な感情は切り捨てる。
効率と勝利を最優先する。
だが――正しさだけでは、人の心は救えない。
その言葉はあまりに冷え切っていて、人の温かさとはかけ離れていた。
「……そ、そんな言い方ないだろっ!俺だって……俺だって、できることは!」
つい声を荒げた瞬間、魔導士ゼノスが鼻で笑った。
その嘲笑が、広場の空気に響く。
「なに怒ってんだよ無能が。現実見ろよガルド。お前ここ最近、まともに役に立ったか?一匹でも魔物倒したことあるか?ああ?」
ゼノスは嘲笑を隠さず、唾を吐き捨てるように言葉を続ける。
その言葉は、ガルドの最も痛いところを突いていた。
「お前が召喚したのって、せいぜい猫の使い魔と、あの、ぷよぷよしたスライム一匹だったっけ? 笑えるな。精霊でも魔獣でもねぇ、ただのゴミクズみてぇなもんだ!お前はこのパーティーに、何の価値ももたらさない!」
ガルドは唇を強く噛む。
悔しさで奥歯が軋む。反論したかった。
自分なりに努力してきたこと。
パーティーの邪魔にならないよう、必死に食らいついてきたこと。
――だが、何も言い返せなかった。
ゼノスの言葉はあまりにも辛辣で悪意に満ちていたが、悲しいかな、それが事実だったからだ。
「お前の代わりなんて、いくらでもいるさ。王都には精霊使いも、強力な魔術師も、有能な使役師も掃いて捨てるほどいる。召喚士なんて、希少なだけで結局は無能だ」
存在そのものを否定されるような言葉に、ガルドの全身から力が抜けていく。
「……うるさい」
小さく呟いた言葉は、広場の喧騒に掻き消され、誰にも届かなかった。
彼の絶望は、ますます孤立感を深めて――ただひとり、セフィアだけが違っていた。
その青い瞳は、どこか泣きそうな色をしていた。
彼女の顔には、はっきりと苦痛が浮かんでいる。
「ガルド……っ、ごめんなさい……」
彼女の口が、何かを言いかける。
震える手が、僅かに彼へと――助けを求めるように――伸びかけた。
その細い指先がガルドの服の袖に触れる寸前だった。
「セフィア、余計な情けは無用だ」
アレスの一言で、その手はピタリと止まる。
アレスの視線に怯えるように、セフィアは手を引っ込め、そっと視線を逸らした。
彼女はもう、口を開くことすらできず、ただ唇を強く噛みしめるしかなかった。
その姿は、まるで檻に閉じ込められた鳥のよう。
ガルドは、彼女の微かな抵抗と、その後の諦めを見て取った。
(ああ、俺は……誰からも必要とされてないんだな。どこにも、俺の居場所なんて、最初からなかったんだ)
そう思った瞬間、ガルドの胸の奥で、張り詰めていた糸がプツリと音を立てて切れた。
心のどこかが、静かに――そして確実に――砕け散ったようだった。
希望の光が、完全に消え失せた。
言い訳も、懇願も、もう意味がない。
この場所は、彼の存在を拒絶していた。
ガルドはゆっくりと踵を返す。
足取りは重い。
だが、もう迷いはなかった。
「なあ! これで自分が無能だってわかったか!?せいぜい故郷に帰って畑でも耕して生きろよ、落ちこぼれ召喚士!二度と俺たちの前に現れるんじゃねえぞ!」
背後でゼノスが嘲笑う。
その言葉は、最後のトドメのように、ガルドの背中に突き刺さった。
だが、もう立ち止まらない。
立ち止まれば、きっと感情が爆発して、大声で泣き叫んでしまうから。
彼の瞳は、すでに乾ききっていた。
王都の巨大な門が、重々しく、鈍い音を立てて閉じるのが聞こえる。
その音は、まるで過去との決別の鐘のように、ガルドの耳に深く響いた。
「……もう二度と、この場所には戻らない」
風が、乾いた唇をかすめる。
その呟きだけが、彼の胸に秘めた唯一の決意だった。
――それは、絶望の果てに生まれた、新たな誓いだった。
朝の光に照らされ、空気は凛としていた。
普段であれば人々の活気と希望が満ちるはずのその場所は、しかし、ガルドにとって――人生で最も残酷な舞台となった。
彼の胸に吹いているのは、冷たい風だけ。
その冷たさは外気のものではなく、心の奥底から湧き上がる、凍えるような絶望だった。
――掲示板の中央。
そこには、彼の名前と共に、大仰な文字で【通知】が貼られていた。
墨で力強く書かれたその文字は、彼の存在を公衆の面前で晒しまるで恥辱の烙印を押すかのようだった。
「……本当に……俺、もういらないんだな」
かすれた独り言が、自分でも情けなく、弱々しく聞こえた。喉の奥がひりつく。
だが、それが今の自分のすべてだった。
パーティーの足手まといで、誰からも必要とされない――出来損ないの召喚士。
人々の視線が突き刺さる。
広場を行き交う噂好きの商人たち、高慢な顔をした通りすがりの貴族、そして物見高い野次馬たち。
その誰もが、好奇と嘲りの入り混じった目で彼を見ていた。
憐れむ視線は一つもない。まるで彼が、晒し者の見世物であるかのように。
ガルドは唇を噛みしめ、口の中に血の味が広がる。
顔を上げ、勇者パーティーの面々を縋るような思いで見つめた。
「……アレス、何かの間違いじゃないのか?俺はまだ、みんなと一緒に……この旅を、最後まで……」
必死だった。
情けなくとも、まだ彼らに見捨てられたくなかった。
最後の希望に縋りたかった。
嘗ては仲間だった者たちの顔に、微かでもいい情が残っていないかと願った。
だが、アレスは冷たかった。
その目はまるで、感情を失った人形のようだった。
「ガルド。もう決まったことだ。無駄な抵抗はやめろ……お前は、我々の目指す高みにはついて来れない。正直なところ、足手まといだ」
その言葉は、研ぎ澄まされた剣の切っ先よりも鋭く、ガルドの心を深く切り裂いた。
アレスの鋼の瞳に、かつて共に戦った仲間への情けや友情の影は微塵もなかった。
あるのは、冷徹な判断だけ。
「これ以上、魔力の低い召喚士に頼るわけにはいかない。俺たちの旅はこれからさらに過酷になる。お前の存在はリスクが付きすぎるんだ」
それが、勇者としての『正しさ』なのだろうか?
目的のためには、些細な感情は切り捨てる。
効率と勝利を最優先する。
だが――正しさだけでは、人の心は救えない。
その言葉はあまりに冷え切っていて、人の温かさとはかけ離れていた。
「……そ、そんな言い方ないだろっ!俺だって……俺だって、できることは!」
つい声を荒げた瞬間、魔導士ゼノスが鼻で笑った。
その嘲笑が、広場の空気に響く。
「なに怒ってんだよ無能が。現実見ろよガルド。お前ここ最近、まともに役に立ったか?一匹でも魔物倒したことあるか?ああ?」
ゼノスは嘲笑を隠さず、唾を吐き捨てるように言葉を続ける。
その言葉は、ガルドの最も痛いところを突いていた。
「お前が召喚したのって、せいぜい猫の使い魔と、あの、ぷよぷよしたスライム一匹だったっけ? 笑えるな。精霊でも魔獣でもねぇ、ただのゴミクズみてぇなもんだ!お前はこのパーティーに、何の価値ももたらさない!」
ガルドは唇を強く噛む。
悔しさで奥歯が軋む。反論したかった。
自分なりに努力してきたこと。
パーティーの邪魔にならないよう、必死に食らいついてきたこと。
――だが、何も言い返せなかった。
ゼノスの言葉はあまりにも辛辣で悪意に満ちていたが、悲しいかな、それが事実だったからだ。
「お前の代わりなんて、いくらでもいるさ。王都には精霊使いも、強力な魔術師も、有能な使役師も掃いて捨てるほどいる。召喚士なんて、希少なだけで結局は無能だ」
存在そのものを否定されるような言葉に、ガルドの全身から力が抜けていく。
「……うるさい」
小さく呟いた言葉は、広場の喧騒に掻き消され、誰にも届かなかった。
彼の絶望は、ますます孤立感を深めて――ただひとり、セフィアだけが違っていた。
その青い瞳は、どこか泣きそうな色をしていた。
彼女の顔には、はっきりと苦痛が浮かんでいる。
「ガルド……っ、ごめんなさい……」
彼女の口が、何かを言いかける。
震える手が、僅かに彼へと――助けを求めるように――伸びかけた。
その細い指先がガルドの服の袖に触れる寸前だった。
「セフィア、余計な情けは無用だ」
アレスの一言で、その手はピタリと止まる。
アレスの視線に怯えるように、セフィアは手を引っ込め、そっと視線を逸らした。
彼女はもう、口を開くことすらできず、ただ唇を強く噛みしめるしかなかった。
その姿は、まるで檻に閉じ込められた鳥のよう。
ガルドは、彼女の微かな抵抗と、その後の諦めを見て取った。
(ああ、俺は……誰からも必要とされてないんだな。どこにも、俺の居場所なんて、最初からなかったんだ)
そう思った瞬間、ガルドの胸の奥で、張り詰めていた糸がプツリと音を立てて切れた。
心のどこかが、静かに――そして確実に――砕け散ったようだった。
希望の光が、完全に消え失せた。
言い訳も、懇願も、もう意味がない。
この場所は、彼の存在を拒絶していた。
ガルドはゆっくりと踵を返す。
足取りは重い。
だが、もう迷いはなかった。
「なあ! これで自分が無能だってわかったか!?せいぜい故郷に帰って畑でも耕して生きろよ、落ちこぼれ召喚士!二度と俺たちの前に現れるんじゃねえぞ!」
背後でゼノスが嘲笑う。
その言葉は、最後のトドメのように、ガルドの背中に突き刺さった。
だが、もう立ち止まらない。
立ち止まれば、きっと感情が爆発して、大声で泣き叫んでしまうから。
彼の瞳は、すでに乾ききっていた。
王都の巨大な門が、重々しく、鈍い音を立てて閉じるのが聞こえる。
その音は、まるで過去との決別の鐘のように、ガルドの耳に深く響いた。
「……もう二度と、この場所には戻らない」
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