傷だらけの騎士を手当てしたら、惚れられ、連れていかれ、そして溺愛されました。お願いですからやめてください!?

桜塚あお華

文字の大きさ
15 / 50

第15話、目を覚ました男はちょっとめんどくさいので、黙らせてもらっても大丈夫ですかクラウス様?

しおりを挟む

 朝日が、とてもまぶしいと感じてしまったのは、多分自分だけなのかもしれない。

 いつもの夢を今日は珍しく見なかった気がしたルーナが目を開け、欠伸をして交互に視線を向ける。
 隣に居るクラウスは気持ちよさそうに眠っており、何故かルーナの服の袖を掴んで離そうとしていない。
 振り払ってみようかなと思ったルーナは行動を移してみたのだが、クラウスの力は予想以上に強かった。
 呆れた顔をしながら、今度は反対側の、ケガをしている方に視線を向けてみる。
 ルフトと呼ばれている男のケガの確認をし、熱が出ていないか確認。

「……うん、これなら後少しで目が覚めそうだな」

 自分の事を天使だのなんだの言っていたこの男のケガはなんとか大丈夫と確認したルーナは起き上がりながら身体をゆっくり伸ばし、骨をうならせる。
 二人を起こさないようにしながら軽く体の運動をしていると、それに気づいたシリウスが欠伸をしながら起き上がった。

「よう、早い目覚めだなルーナ」
「おはようクソ神父……良く眠れた?」
「だいぶな……鎮痛剤もどきみたいなやつはあるか?」
「作れば数分で出来るけど、やっぱ少しケガしてたの?」
「ああ……この男、腕は良かったからな」

 ため息を吐きながら寝ているルフトに視線を向けながら、ルーナが作る薬を要求してくるシリウス。
 ルーナはシリウスを手招きし、近くに座らせると、軽く身体をチェックする為にに触り、擦り傷などを確認する。

「神父がうまく隠してきていたし、遠目だったからボクも気づかなかったけど、腹部のここと、足のここ、打撲してるね。痣が出来てるから数日痛いよ?」
「そうしなきゃ、止められなかったからな」
「……強いのはわかっていたけど、ボクが知る限り、こんな感じになる神父は新鮮かもね。それぐらい、ルフトってやつ、強かった?」
「……トワイライト王国っつーのは、昔は武力を力を入れている国だったという事は知っている。俺の姉さん……姉貴がよく話してた」
「……一度でいいから、クソ神父のお姉さんに会ってみたかったな」
「……」

 シリウスには姉がいる――いや、居たと言って良い存在だ。
 ルーナはシリウスの姉がどんな人なのか、全く聞いた事ないのだが、その事を話すと必ず黙ってしまうからである。
 言葉がなくなってしまったシリウスにこれ以上何を問いかけても絶対にその件については話す事はない。長年一緒に居た仲だからこそ、知り尽くしている事だ。

「服めくって。とりあえず、塗り薬はしとく」
「ああ、頼む」
「頼んだのはボクだからね、気にしなくていいよ」

 向こうに行くように仕向けたのはルーナだからこそ、少しだけ負い目がある。
 服をめくったシリウスの打撲痕に塗り薬を簡単に塗った後、すぐに飲めるように用意してある約束で鎮痛剤もどきの飲み薬を完成させた。

「それ飲んで今日は一日安静。お酒も運動もダメ」
「……酒もだめ?」
「ダメ」

 飲酒がダメだという事に少しだけ落ち込んでしまったシリウスの姿に、ルーナはフフっと笑いながら彼の肩を軽く叩き、クラウス達がそろそろ起きるだろうと思って視線を向け、硬直した。

 そこには、膝をついて神に祈るような体制をしているルフト・コンティネイトが姿を見せたのである。

 驚いた顔をして硬直しているルーナと、同じようにその姿を見て驚いているシリウスは固まったまま目をそらす事が出来ない。
 と言うよりこの男は何をやっているのだろうかと、まず問いかけたいぐらいだ。

「え、えっと、あの……」

 どうしたら良いのかわからず、とりあえず声をかけながら返事を待とうとするのだが、うまく言葉が出なかった。
 慌てるように手を軽く振り回していた瞬間、突然大きな手がルーナの手を鷲掴みにするように掴んできたので、ルーナ、そしてシリウスの二人は驚いた顔をして目の前のルフトを見る。

 彼の顔はすごく、輝いていたと言って良いだろう。

「て、天使様!!」

「「……は?」」

 突然、ルーナは目の前の男に天使様と言われてしまい、返答が出来なかった。
 やはりこの男はどう見ても怪しくて、そして胡散臭い匂いがするのは、自分たちだけなのだろうか、と。
 しかし、曇りなき瞳が輝いているので、間違いではないと思いたい。
 青ざめた顔をしながら一歩後ろに下がりたかったのだが、目の前の男はルーナの手を強く握りしめており、下がらせないようにしている。
 これは非常にまずい状態ではないだろうかと、青ざめた顔でルーナは隣に居るシリウスに視線を向けたのだが、そこにはシリウスの姿がない。
 めんどくさい、と言う気持ちになったシリウスはルーナに任せて逃亡したのである。

(あ、あのクソ神父ゥ!!)

 ルーナは改めて、育ての親である男、シリウスに恨みを持ったのである。

「やはり、夢ではなかった……あなたは、天の使いである天使、様なのですよね!?」
「……ええー」
「傷を治し、優しく私に笑いかける姿は、とても素敵で、綺麗で、可愛らしくて……私の心はあなたに鷲掴みにされてしまいました!!どうか天使様、この哀れな私をお許しください!!」
「……」

 何を言っているのか全く理解できないルーナは思わずクラウスが寝ている方向に視線を向けると、クラウスは既に起きており、そしてルフトの姿を見てドン引きしている姿があった。
 ルーナはクラウスに問いかける。

「……あの、クラウス様」
「……なんだ、ルーナ」

「……黙らせてもらっても、大丈夫ですかこの人?」

 笑いながらそのように発言したルーナに肯定したクラウスは拳を握りしめ、そのままルフトを容赦なくぶん殴る光景があったのだった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

知りませんでした?私再婚して公爵夫人になりました。

京月
恋愛
学生時代、家の事情で士爵に嫁がされたコリン。 他国への訪問で伯爵を射止めた幼馴染のミーザが帰ってきた。 「コリン、士爵も大変よね。領地なんてもらえないし、貴族も名前だけ」 「あらミーザ、知りませんでした?私再婚して公爵夫人になったのよ」 「え?」

聖女の任期終了後、婚活を始めてみたら六歳の可愛い男児が立候補してきた!

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
23歳のメルリラは、聖女の任期を終えたばかり。結婚適齢期を少し過ぎた彼女は、幸せな結婚を夢見て婚活に励むが、なかなか相手が見つからない。原因は「元聖女」という肩書にあった。聖女を務めた女性は慣例として専属聖騎士と結婚することが多く、メルリラもまた、かつての専属聖騎士フェイビアンと結ばれるものと世間から思われているのだ。しかし、メルリラとフェイビアンは口げんかが絶えない関係で、恋愛感情など皆無。彼を結婚相手として考えたことなどなかった。それでも世間の誤解は解けず、婚活は難航する。そんなある日、聖女を辞めて半年が経った頃、メルリラの婚活を知った公爵子息ハリソン(6歳)がやって来て――。

処理中です...