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第22話、魔王
しおりを挟む「それより、『勇者召喚』の事、聞きたかったんじゃなかったかの?」
「あ」
カリーナの言葉を聞いたルーナは反応してしまい、そのまま背を向けて歩き出し始めている彼女の後を追いかけるようにしながら動き出す。
が、ルフトが倒れている事を思いだしたので彼の方に視線を向けると、身体が少しだけ浮いており、こちらに向かってきている。
「……カリーナ、ルフト様を運んでる感じ?」
「このぐらいの初級魔術は簡単に使えるからのォ」
ヒヒっと笑いながら答えるカリーナを見た後、再度ルフトに視線を向ける。
相変わらず気を失っており、ぐったりとしているが、息もしているので別に死んでいないと言う事はわかっているが、それでも浮いている姿は想像出来ない。
「ついでにルーナ、そのクラウスと言う男は何故この村に来たのじゃ?」
「『聖女』の求婚を断ったら命狙われるぐらい追い詰められてボロボロになりながら逃げてきたんだって言ってたよ」
「ほぉ、今回の『聖女』は『魔女』かえ」
「清らかな心の持ち主じゃなかったんだってクラウス様が言っていたけど……そんな人が『聖女』に慣れるの?」
「……『神』と言うものは色々いるからの」
苦々しい顔をしながら答えるカリーナの姿を、ルーナは静かに見つめる。
言ってみれば、トワイライト王国が『聖女召喚』と言うモノを行った事で歯車は狂ってしまった、と言って良いのかもしれない。
実際、『魅了』と言う魔術に犯されている者たちが何人か居るとクラウスが言っていたぐらい、彼はギリギリまで追い詰められ、信じていた友人にも裏切られた状態だ。
それほど人の人生を狂わせる『聖女』とは一体どんな人物なのか、ルーナはもしかしたらこれから関わる相手なのではないだろうかと思いつつ、出来れば関わりたくない気持ちになりながら、身体を身震いさせた。
「でも、どうしてトワイライト王国は、その『聖女召喚』を行ったの?」
「ルーナ、『魔王』と言うのはわかるか?」
「本で読んだことはあるから一応知ってる」
「……この世界には『魔王」と言うモノが嘗て存在した」
『魔王』――この世界を闇に染める、『悪』のような存在。
嘗て、この世界にもその『魔王』と言うモノが存在していると、ルーナは教会にある古びた童話の本で読んだ事があった。その時のルーナはまだ幼い事もあり、その話を聞いてすぐさま信じてしまったが。
今となっては御伽話のような存在になっているのだが、その御伽話が現実にあったと言う事をカリーナが言ったのだ。
「え、魔王っていたの!?てっきりボクは御伽話だと思ってたんだけど……」
「現実にあった事じゃよ。その時、異世界から召喚された『勇者』とその仲間たちが戦い、『勇者』の命と引き換えに『魔王』を倒したのじゃ」
「……でもそれと今回のトワイライト王国とはどんな関係があるの?」
「――最近、『魔王』が現れたって話が持ち上がっているらしい」
その言葉を聞き、ルーナは目を見開く。
御伽話だと思っていた事が、現実になったと言う事なのだろうかという事だ。
驚いた顔をしているルーナの事を無視しながら、カリーナは話を続ける。
「本当かどうかはわしにはわからん。だが、確かに最近この付近も異常気象なようなモノが出始めている……森の精霊たちがそのように言っていたわい」
「……聞いてないよ、それ」
「きっと、シリウスとサーシャの二人が阻止していたのであろう。お前に悟られないように。それほど、大事にされていると言う事じゃ」
「……つまり、二人は知っていたのか。相変わらずだなあの二人は……」
サーシャとシリウスの二人はどうやらその噂を知っていたらしい。
カリーナの言葉を聞いたルーナは静かに息を吐きながら、サーシャとシリウスの顔を思い浮かべていた。
あの二人は時々ルーナに内緒にして行動する時が時々ある。多分、心配かけたくないからと言う理由もあるのだと思うのだが。
この村は閉鎖的に隠されている村だ。
だからこそ、情報が入ってくる事もあれば入ってこない時もある。ルーナは『魔王』の情報は知らなかったので、驚くことしかできない。
しかし、ルーナはその『魔王』の事よりも、異常気象の件の方が気になってしまった。
「異常気象って、例えばどんな事が?」
「魔物が活発していると言うかのォ……最近凶暴化しているのがよく見られる。トワイライト王国はそれを危惧して『聖女召喚』を行ったようじゃが……うまくはいっていないようじゃ……『魔王』に対しての対策が全く行われておらん。その聖女がハーレムみたいなものを作っているとなる、とな」
「……だね」
クラウスの言葉から『魔王』と言う言葉が出ていない。出ているのは、『魅了』と『聖女』と言う言葉のみ。
『トワイライト王国の聖女』はどうやらそのようなところに行くつもりもないら氏く、『聖女』と言う仕事もしていないのであると納得出来る。
「もし、御伽話のような『魔王』だったら、御伽話のようにこの世界を滅ぼそうとするのかな?」
「さぁな……じゃが、これだけは言える」
「え?」
「トワイライト王国は『魔王』の手によって、滅んだ方がその国の為なのかもしれん
なぁ」
ヒヒっと笑いながら答えるカリーナの言葉に対し、ルーナは否定と言う言葉が出てこないまま、カリーナの後を静かについていった。
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