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第23話、大罪を犯した勇者の話。
しおりを挟むトワイライト王国は滅んだ方が良いのかもしれない。
カリーナの言葉を聞いて、ルーナは別に興味と言うモノを持てない。
元々興味を持つ事には積極的なルーナだったが、どうもトワイライト王国関連についてはルーナは部外者と言う立ち位置だからなのかもしれない。
ただ、クラウスが立っている、それだけの事だ。
現在、トワイライト王国での関係者はクラウスとルフトのみ、この村に居る。
サーシャが今、隣国に居る第一王子にコンタクトを取るために、森から出て行ってしまっている。
ただ、それだけの事のはずなのに、何故か、胸が痛い。
カリーナから、『魔王』、『勇者召喚』の話を聞いている時からだ。
胸がとてもざわつき、何かの雑音と、何かの『記憶』がルーナの頭の中をぐちゃぐちゃにかき乱している感じがしたからだ。
『――ナ、オマ、ハ』
「……?」
微かに頭の中で誰かの声が響いたような気がしたと同時に、今度は頭の中に浮かんできたのは少しだけ若いシリウスの顔だった。
何故シリウスの顔が出てきたのかわからないが、その 周りには炎と、鉄の匂いが微かに鼻につく。
まるで、記憶を思い出させないかのような――。
「――ルーナ」
「ッ!」
カリーナの声が聞こえてきたので驚いたまま顔を上げると、真剣な顔をしながらルーナに目を向けている老婆の姿があった。
「あ……ぼ、ボク、何か変な感じになってた?」
「なってたわけじゃないが、いつもと様子が違っていたからのォ……何か、思い出したか?」
「……ごめん、わからない」
「そうか」
何か一瞬、ルーナの頭の中で記憶が流れていくかのような感覚だったのだが、カリーナに声をかけられたと同時に全て消えてしまったかのように、思い出さなくなってしまった。
ルーナは静かに額を軽く抑えるようにしながら、再度考える。
今、自分は一体、何かを思い出そうとしていたのだろうか?
いつものように、夢を見るかのような感覚――ルーナは一体、何を思い出すつもりだったのだろうかと言う気持ちになりながら、息を静かに吐いた。
最近、クラウスがこの森に来てから、トワイライト王国の話、『勇者召喚』の話を聞いてから、どうも自分の中での様子がおかしいと感じている。
何故なのか全くわからないのだが、とにかくそれは今ではないと感じたので、ルーナはカリーナに声をかける。
「カリーナ……魔王の話は分かった。『勇者召喚』の話を、聞かせて?」
「……わしが知る限りになるが、構わないか?」
「うん、平気」
「……『勇者召喚』と言うのは、さっきも言った通り、別世界の人間をこちらの世界に召喚するために、今は禁忌とされる魔術の一種だ。ある国では、何人もの魔術師を生贄にして召喚儀式を行ったと言う例もある……わしが知る限りのある小国では、一人の少年が召喚され、『勇者』と崇められた」
小国の話は簡単だが聞いた事はある。
また、この前シリウスが簡単に同じような話をしていた。
しかし、カリーナはその小国の話をすると同時に、何処か悲しそうな顔をしているようにも見えたのは気のせいだろうか?
杖の力が微かに強くなっているように見えつつも、カリーナは話を続ける。
「しかし、だれしもその召喚された存在が、『聖人』とは限らん」
嫌そうな顔を見せつつカリーナは話し続けており、ルーナもそれに賛同する。
「外形は綺麗でも、中身はどす黒い奴とか居るからなー」
「お前やあのクソ坊主のような男の事もそうじゃがの」
「……否定はしない」
ルーナは自分の性格がかなり悪いと言う事はわかっているし、シリウスも中身は真っ黒なのだから否定はしないであろう。それぐらい、二人は性格がねじ曲がっていると言う証拠である。
例え、『勇者』として崇められる存在でも、『勇者』が正義の味方とも限らない。人間と言う存在は、心を除く事など出来ないのだから。
「トワイライト王国の『聖女』もそのような感じなのじゃろう?」
「クラウス様が言うには、そんな感じみたい。好きな男を魅了して、気に食わなかったら殺すって感じの性格らしい」
「『聖女』なのに?」
「『聖女』だから好き勝手出来るんじゃない?」
呆れた顔をしながら答えるカリーナに対し、ため息を吐きつつトワイライト王国の の『聖女』って一体どんな人物なのだろうかと、多少興味を持ったのだが、ルーナが興味を持ったのは聖女ではなく、勇者の方だ。
「カリーナ。その小国で召喚された『勇者』はどんな悪い事をしたの?」
「……わしは聞いただけじゃよ。噂を耳にしただけじゃ……その『勇者』は、大罪を犯したのだ」
「……大罪?」
一体どんなことをしたのか首をかしげながら問いかけると、カリーナは息を静かに吐いた後、まっすぐな瞳でルーナに言った。
「その『勇者』は小国の王、妃、王国のやつらと民を全て殺し、目的である人物を自分のモノにしようとしたのじゃよ」
まるで欲のように、欲しかったものを手に入れたい為に。
その話を聞いたルーナは何も答える事が出来ず、ただ、胸が静かに締め付けられた感覚を覚えた。
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