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腹黒執事と悪役令嬢
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ここはニール公爵家のサロンでございます。
陽光あふれる、広々としたサロンに格調高いテーブルと椅子が並び、その真ん中の席につかれているのがニール公爵家令嬢メアリー様でございます。しかし、他にお客様はいらっしゃいません。ここにいるのは、執事のわたくしとメアリーお嬢様だけでございます。
メアリーお嬢様のしなやかな指先が今まさにティーカップに伸びようとしています。わたくしは固唾を呑んで見守ります。お嬢様がカップを持たれました。ですが、次の瞬間、お嬢様は金色の美しい髪の毛を揺らし、わたくしが立つ斜め後ろを見上げます。その冷ややかなグリーンエメラルドの瞳と同じく、冷たく、おっしゃったのです。
「セバスチャン、紅茶が熱いわ」
「大変申し訳ございません。ただいま入れ直します」
わたくしは胸に手を当てながら、うやうやしく頭をさげました。
「いえ、セバスチャン。紅茶を入れ直すなど、そんなことをしなくてもいいの。ただ……、ふぅふぅしてくれればいいのです」
メアリーお嬢様はティーカップに視線を下ろしながら、戸惑ったようにおっしゃいます。
「わたくしの勉強不足で申し訳ございません。お嬢様、いったい『ふぅふぅ』とは、どのような行為をすることなのでしょう」
「えっ……、あ……、そ、そうよね、説明しないと。ふうふうと言うのはこう……」
お嬢様は可愛らしい口をとがらせて、説明をしようとしますが、
「も、もういいわ」
と諦めてしまいました。
とてもなんだか恥ずかしかったご様子で、顔を赤くしたお嬢様は、何事もなかったように、わたくしが入れた紅茶のカップに口を付けようとします。
なので、わたくしがお教えすることにしました。
「お嬢様、ふうふうとは、こういうことですね」
今まさに口をつけようとしているお嬢様の紅茶のカップにわたくしは息を吐きかけます。
「ふぅふぅ」
お嬢様のエメラルドグリーンの瞳が大きく開きます。
「!?」
お嬢様の顔とわたくしの顔の距離は、それはそれは近く、わたくしがニコリと笑みをうかべると、お嬢様は顔だけでなく、耳まで真っ赤になられてしまいました。
「セバスチャン……、だ、だめ……。もうダメ。お手上げよ」
お嬢様はわたくしから視線を外して、そうおっしゃるとティーカップをソーサーに戻されてテーブルの上に置かれました。そうして椅子の背もたれに寄りかかり、お嬢様はうつろな目で天井を見上げたのです。
わたくしも同じように天井を見上げました。
豪華なシャンデリアが陽の光に当たり、キラキラと輝いている光は、まるで今のわたくしの心のようでございます。
「こんなの、恥ずかしすぎる……。やっぱり、無理……。わたしには無理」
その声に、わたくしはお嬢様に視線を戻します。お嬢様はうつろな表情で宙を見ておられます。
わたくしは、こう思ったのでございます。
このまま、お嬢様に諦められたら、わたくしの楽しみがなくなるではございませんか。
わたくしは、お嬢様を説得することにしました。
「ですが、よくお考えてみて下さい。メアリーお嬢様は、わたくしを攻略しないといけないのでございましょう」
その言葉に、お嬢様のうつろだった目が、何かを思い出したように焦点が合います。
「あぁ……、そうだった。ああ、どうしよう」
今度は、お嬢様はテーブルに両肘をつけて頭を抱えます。そのように悩まし気に頭を抱えるお嬢様のご様子に、わたくしの口元は緩みます。
なんと楽しいのでしょう。
このように、お嬢様が困られているお姿を一番傍で見られるわたくしは世界一の幸せ者でございます。
しばらくするとお嬢様は、むっくりと頭を持ち上げると、わたくしを見上げます。金色の乱れた髪の間から、見えるグリーンエメラルドの瞳がウルウルしているではございませんか。
まるで捨てられた子犬のようで、わたくしは心がトキメキます。
「助けてセバスチャン……」
お嬢様の言葉は儚げでなんと麗しいことでしょう。
「その悲壮感に溢れているお顔といったら……。ククククッ」
「ちょっと、セバスチャン……、笑っている場合じゃないのよ」
お嬢様に睨まれてしまいました。懐かしい目です。人を見下し、暴言を吐き、以前のお嬢様と同じ目つきでゾクゾクいたします。
「大変失礼しました。つい心の声が漏れ出てしまいました。そうでございますね。お嬢様は、乙女ゲームの悪役令嬢メアリー・ニール様に生まれ変わられたのですから」
「そう……、そうなのよ」
メアリーお嬢様から、このような突拍子もない話を聞かされたのは三日前のことでした。
お嬢様のお部屋でいつものように紅茶を注ぎおわりました。すると、お嬢様はわたくしに紅茶の入ったカップをぶちまけたのです。
「あなたは本当に役立たずね! 紅茶の一杯もまともに入れられないなんて本当に無能で役立たずの執事だわ!」
「大変もうしわけございません」
わたくしはお嬢様からいつものように熱い紅茶を顔に掛けられながら、ポトポトと雫を垂らしながら、うやうやしく頭を下げました。
お嬢様が席を立たれる仕草をしたので、わたくしはすぐに背もたれに手を掛けたときです。
お嬢様が立ち上がろうとして、お嬢様はあらぬ方向に椅子から床へおすべりになられそうになります。ご自分のドレスの裾を踏まれてバランスを崩されたようでございました。
咄嗟に、わたくしは、お嬢様に差し出した手を……、引っ込めました。
ゴン――。
鈍い音がしました。
お嬢様は頭から床に倒れられたのです。
その後、お医者様がいらっしゃって、お嬢様の治療に当たられました。当然わたくしはクビになる覚悟をして自分の部屋で荷物をまとめておりました。
すると、その日の夜、使用人たちの館に、メアリーお嬢様がこっそりと忍び込まれたのでございます。
頭から手拭いを被り、鼻に結び目をしたお姿はまるでコソ泥のようでございます。
「お、お嬢様!?」
「シッ!」
お嬢様は人差し指を立ててわたくしに静かにするようにおっしゃいました。
そして、こうおっしゃるのです。
「私、悪役令嬢だったの。助けてセバスチャン」
このお方は、本当にお嬢様でございましょうか――。
わたくしの表情が物語っていたのでしょう。
お嬢様は頭から手拭いを取られます。やはり、そのお姿はお嬢様でした。
「お嬢様、悪い夢でも見られたのですか? それとも頭の打ちどころが悪かったのでしょうか」
わたくしは不安げに尋ねました。
お嬢様はゆっくりと首を横にふります。
「ううん、そんなことじゃないの。このままでは私、バッドエンドになっちゃう。どうすればいいの、セバスチャン」
お嬢様はやはり頭を強く打たれたようです。
「お嬢様、わたくしにはどうすることはできません。やはり、これはわたくしに対する天罰なのでしょう。日ごろからお嬢様に対する恨みが、お嬢さまが転ぶとわかっていましたのに、咄嗟にわたくしは手を差し伸べるどころか、手を引っ込めて、お嬢様が無様に倒れるようすを喜んで見ていたのですから」
「え? 倒れるのを助けるどころか……、手を引っ込めたって?」
お嬢様は驚いたようにおっしゃいました。
そのあと、お嬢様からどれだけの罵詈雑言を浴びせられるか覚悟をしておりました。
ですが、以外にもお嬢様はこうおっしゃったのです。
「そうよね……。これまでのメアリー・ニールの言動は酷いものだった。とくにセバスチャンに対する当たり方もきつかったし……。でもね、前世の記憶をもどしたから、ね、信じて。これまでのわたしと違うから。手伝って、セバスチャン」
わたくしの手をぎゅっと握ります。
ですが、すぐにお嬢様は自分の取った行動に、ハッとしたように手を放して、顔を赤くされました。
これまでのお嬢様とは全く別人のように見えました。
「あ、ごめんなさい」
なんと! お嬢様が謝られたではございませんか。あり得ないことです! 信じられません!
そして、その必死なご様子にわたくしもお嬢様の話を真剣に耳を傾けるようと思ったのでございます。
それから詳しく話を聞けば、お嬢様は前世の記憶を持ったまま生まれ変わったとおっしゃいました。自分はヒロインをイジメる悪役令嬢。悪役令嬢とは、ヒロインに嫌がらせをする敵役とのことで、ヒロインとくっつきそうなお相手との邪魔するのです。ヒロインのお相手には、王子や騎士団長のご子息、中にはギャングのボスの息子、そしてわたくし、悪役令嬢に仕える執事セバスチャンがいるらしく、そのヒロインと攻略相手の仲を裂くのが悪役令嬢の役目だとお嬢様はおっしゃるのです。
驚くことに、話は進んでいるらしく、ヒロインのアイリ様とおっしゃる一般人のお嬢様はすでに貴族学園に編入済みらしく、そして、そのアイリ様は今のところ、学園内で攻略対象の誰とも親しくなっている様子はない、とのことでした。
「それはね――、セバスチャンを攻略相手としているからなのよ」
メアリーお嬢様は沈んだ声でおっしゃいました。もしヒロインのアイリ様とセバスチャンがエンディングを迎えたのなら、ニール公爵家はおしまいだとおっしゃるのです。
そしてセバスチャン攻略の恋愛フラグが立つのは、明日、このサロンということでした。
日ごろから執事のセバスチャンを虐めている、ニール公爵家の令嬢は自宅のサロンでクラスメイトを呼んでお茶会をする。それがヒロイン・アイリ様とセバスチャンとの初めての出会い。そのときにメアリーお嬢様が皆の前でセバスチャンに恥をかかせる。そんな酷い扱いをされているわたくしに、ヒロインのアイリ様が優しく接する。こうして二人は徐々に接近し、外でも会うようになり、わたくしセバスチャンはアイリ様と恋に落ちる。その後、セバスチャンはヒロインのアイリ様をイジメる公爵令嬢メアリーに反撃にでる。セバスチャンはニール公爵家の不正をつぎつぎと暴き、その内容は、領民たちから徴収した王家に納めるための税金の横領、王宮の修繕費の使い込み、そして他国へ情報を流している裏切り。それらのことをセバスチャンはすべて公表し、ニール公爵家の崩壊へとつながるらしいのです。それを回避するためには、わたくしセバスチャンがヒロインのアイリ様という女性に惚れない様にしないといけないということでした。なので、わたくしが明日ヒロインのアイリ様にする、ふぅふぅを先にこちらで使ってしまって、わたくしセバスチャンがヒロインのアイリ様に恋をするのを阻止するのだと話し合ったばかりなのです。
「ですがお嬢様、本当に私がそのアイリ様というお嬢様にふうふうをするのでしょうか」
自分で言うのもなんですが、わたくしのような腹黒で、意地悪な執事が初めて会うお嬢様にふうふうなど……、考えにくいのです。
それに一番大切な、肝心なことをお嬢様は気づかれてなさそうでした――。
「そうよ、セバスチャン。明日、セバスチャンとヒロインのアイリちゃんがすることを、今日中にしないといけないの……。でも、それが難儀なところ。前世の記憶があるから、こんなことやあんなことが逆にできないのよね。あんな恥ずかしいことをリアルにするなんて……、ああ、絶対できない」
お嬢様は何やら猫背になって、右手を動かしながらぶつぶつおっしゃいます。
「そりゃゲームだったら、ボタンを押して話をすすめるだけじゃない。それが、黒髪イケメン執事が目の前にいて、しかも、吸い込まれそうな切れ長の黒い瞳で、ずば抜けた妖艶な雰囲気を出されたら、もう……、ああ、クラクラ」
お嬢様はオデコに手を当て、まるで熱があるような仕草をされていました。
「大丈夫ですか、お嬢様」
「ああ、セバスチャン、平気よ。こっちを見ないで。その視線がダメ、妖艶すぎる流し目は止めて。ズッキュンズッキュン、わたしの胸がずっと苦しいの」
なんと……、わたくしがお嬢様を苦しめていたとは……。
「でしたら、なおさら、もっと頑張らねばなりませんね」
「はっ?」
「いえ、またもや心の声が漏れ出てしまい……」
どうもわたくしの口角が上がっていたようで、わたくしの考えがお嬢様に通じたのか、お嬢様が睨みを利かせながら頬を膨らまします。その頬をつつきたくなりましたが、ぐっと我慢します。
「申し訳ございません」
お嬢様は深くため息をつかれました。
「それにね、セバスチャン。この辺りで、客観的にこの状況を見ている自分がいるのよね」
「この辺りでございますか?」
「そうそう」
お嬢様はそう言いながら、自分の右上の何もない空間に手を伸ばして、宙をつかみます。
「ここに、俯瞰で見ている自分がいるのよ。相手の恋愛フラグを潰すために、アイリちゃんの恋の邪魔をしていいのか。本当にここまでする必要があるのか、自分のやっていることが恥ずかしくないのかって囁いてくる自分がいるんだもの」
お嬢様は半泣き状態です。
しかし、これは困りました。泣かれるなら、わたくしが泣かせたい。勝手に泣かれたら困れます。でも、もし、お嬢さまが涙をこぼされるようになられたら、わたくしがその涙を一滴残らず、わたくしのキスで……。
おおっと、妄想が過ぎました。
そうです、まずはお嬢様にやる気を起こしてもらわないといけません。お嬢様も十分ご自分のやるべきことを理解されているはずです。ただ罪悪感をお持ちの様なので、わたくしはもう一度、お嬢様の背中を押すために、客観的にお嬢様のご自身が置かれている状況をもう一度説明する必要がありました。
「メアリーお嬢様にお尋ねします。ヒロインのアイリ様とわたくしのハッピーエンドの後はどうなるのでしょうか」
「そりゃニール公爵家は終わりよ。お父様とお母さま、そしてわたしもギロチンに掛けられるんだから」
「ですよね、お嬢様。やはり一番確実なのは、メアリーお嬢様がわたくしを攻略することでございます。相手の恋愛フラグさえ先に終えていれば、物語は違う方向へ進むのでしょう」
「うん。たぶん……」
「でしたら、アイリ様には諦めてもらいましょう。その方の恋路を邪魔するのと、ご自身のギロチンを天秤に考えてください」
「そ、そうよね」
「はい。明日、こちらのサロンにいらっしゃるヒロインのアイリ様が行う、わたくしに対する恋愛フラグを事前にすべてへし折ることで、当日、アイリ様とわたくしの恋愛フラグは立たなくなり、物語は違う方向へ進むわけでございます」
「うん、わかった。明日、うちで開催するお茶会にヒロインのアイリちゃんが来る。だから、そのイベントに起こることを今日、全部、わたしとセバスチャンでしてしまう。それこそ、先手必勝! 事前に恋愛フラグ潰し!」
この突拍子もないことを計画したのはわたくしでございます。しかし、お嬢様はもっと大切なことをおわかりになられていない様子。
「もう一度お尋ねしますが、わたくしが明日、アイリ様にふうふうするのですよね」
わたくしは聞き返すとお嬢様はちょっと自信がなくなったようです。
「え? 違ったかな……、アイリちゃんが膝にケガをして、そこでふうふうするんだっけ?」
「では、こうしないといけませんね」
わたくしはお嬢様の前にかしづき、
「お嬢様、失礼」
ドレスを膝までたくし上げ、
「ふうふう」
と膝に息を吹きかけます。
「ああ、もう、ほんと、こんなにドキドキしたら、心臓がもたない」
お嬢様は椅子の背もたれでとろけるような表情で、悶えています。
「ちょっと意地悪をしていました」
「え?」
「お嬢様はわたくしとマリアさんがハッピーエンドになるのを恐れられています」
「そうよ、だってそのハッピーエンドが、ニール公爵家も巻き込まれる最悪なバッドエンドですもの。それだけは阻止しないと」
「ですが、お嬢様は肝心なことがぬけているのです」
「え? 抜けている? うーん、なんだろう……」
「わたくしの気持ちです」
「セバスチャンの気持ち?」
「はい。もうわたくしには、愛してやまない人ができました」
「ちょ、ちょっと、まって。ええ、どうすれば……、いや、アイリちゃんとセバスチャンが結ばれないってことならいいけど……、でもちょっとまって、なんだか心が苦しい。なに、この胸のどきどきは――。ねぇ、教えて、セバスチャンの好きな人って」
「わたくしの心は……、すでにあなたのもの。メアリーお嬢様のことで満たされています。どのようなご令嬢がいらっしゃっても心は動きません」
「ほ、ほんとうに!? だって、これまでセバスチャンのことをイジメていたのに」
「今のお嬢様が好きなのです」
「じゃ、わたしたちって両想い?」
「では、お嬢様もわたくしに……?」
「うん、大好き、大好き、セバスチャンが大好き!」
なんと嬉しい事でしょう。
ですが、これで終わりではありません。だってわたくしは、とても意地悪なのです。
ここでハッピーエンドだなんてもったいない。お嬢様にもっともっと意地悪して、可愛らしいお嬢様に恥ずかしいことをたくさんさせるつもりです。
たしか、次の恋愛フラグは……、キスでしたね。
「さあ、お嬢様、目を閉じて……」
陽光あふれる、広々としたサロンに格調高いテーブルと椅子が並び、その真ん中の席につかれているのがニール公爵家令嬢メアリー様でございます。しかし、他にお客様はいらっしゃいません。ここにいるのは、執事のわたくしとメアリーお嬢様だけでございます。
メアリーお嬢様のしなやかな指先が今まさにティーカップに伸びようとしています。わたくしは固唾を呑んで見守ります。お嬢様がカップを持たれました。ですが、次の瞬間、お嬢様は金色の美しい髪の毛を揺らし、わたくしが立つ斜め後ろを見上げます。その冷ややかなグリーンエメラルドの瞳と同じく、冷たく、おっしゃったのです。
「セバスチャン、紅茶が熱いわ」
「大変申し訳ございません。ただいま入れ直します」
わたくしは胸に手を当てながら、うやうやしく頭をさげました。
「いえ、セバスチャン。紅茶を入れ直すなど、そんなことをしなくてもいいの。ただ……、ふぅふぅしてくれればいいのです」
メアリーお嬢様はティーカップに視線を下ろしながら、戸惑ったようにおっしゃいます。
「わたくしの勉強不足で申し訳ございません。お嬢様、いったい『ふぅふぅ』とは、どのような行為をすることなのでしょう」
「えっ……、あ……、そ、そうよね、説明しないと。ふうふうと言うのはこう……」
お嬢様は可愛らしい口をとがらせて、説明をしようとしますが、
「も、もういいわ」
と諦めてしまいました。
とてもなんだか恥ずかしかったご様子で、顔を赤くしたお嬢様は、何事もなかったように、わたくしが入れた紅茶のカップに口を付けようとします。
なので、わたくしがお教えすることにしました。
「お嬢様、ふうふうとは、こういうことですね」
今まさに口をつけようとしているお嬢様の紅茶のカップにわたくしは息を吐きかけます。
「ふぅふぅ」
お嬢様のエメラルドグリーンの瞳が大きく開きます。
「!?」
お嬢様の顔とわたくしの顔の距離は、それはそれは近く、わたくしがニコリと笑みをうかべると、お嬢様は顔だけでなく、耳まで真っ赤になられてしまいました。
「セバスチャン……、だ、だめ……。もうダメ。お手上げよ」
お嬢様はわたくしから視線を外して、そうおっしゃるとティーカップをソーサーに戻されてテーブルの上に置かれました。そうして椅子の背もたれに寄りかかり、お嬢様はうつろな目で天井を見上げたのです。
わたくしも同じように天井を見上げました。
豪華なシャンデリアが陽の光に当たり、キラキラと輝いている光は、まるで今のわたくしの心のようでございます。
「こんなの、恥ずかしすぎる……。やっぱり、無理……。わたしには無理」
その声に、わたくしはお嬢様に視線を戻します。お嬢様はうつろな表情で宙を見ておられます。
わたくしは、こう思ったのでございます。
このまま、お嬢様に諦められたら、わたくしの楽しみがなくなるではございませんか。
わたくしは、お嬢様を説得することにしました。
「ですが、よくお考えてみて下さい。メアリーお嬢様は、わたくしを攻略しないといけないのでございましょう」
その言葉に、お嬢様のうつろだった目が、何かを思い出したように焦点が合います。
「あぁ……、そうだった。ああ、どうしよう」
今度は、お嬢様はテーブルに両肘をつけて頭を抱えます。そのように悩まし気に頭を抱えるお嬢様のご様子に、わたくしの口元は緩みます。
なんと楽しいのでしょう。
このように、お嬢様が困られているお姿を一番傍で見られるわたくしは世界一の幸せ者でございます。
しばらくするとお嬢様は、むっくりと頭を持ち上げると、わたくしを見上げます。金色の乱れた髪の間から、見えるグリーンエメラルドの瞳がウルウルしているではございませんか。
まるで捨てられた子犬のようで、わたくしは心がトキメキます。
「助けてセバスチャン……」
お嬢様の言葉は儚げでなんと麗しいことでしょう。
「その悲壮感に溢れているお顔といったら……。ククククッ」
「ちょっと、セバスチャン……、笑っている場合じゃないのよ」
お嬢様に睨まれてしまいました。懐かしい目です。人を見下し、暴言を吐き、以前のお嬢様と同じ目つきでゾクゾクいたします。
「大変失礼しました。つい心の声が漏れ出てしまいました。そうでございますね。お嬢様は、乙女ゲームの悪役令嬢メアリー・ニール様に生まれ変わられたのですから」
「そう……、そうなのよ」
メアリーお嬢様から、このような突拍子もない話を聞かされたのは三日前のことでした。
お嬢様のお部屋でいつものように紅茶を注ぎおわりました。すると、お嬢様はわたくしに紅茶の入ったカップをぶちまけたのです。
「あなたは本当に役立たずね! 紅茶の一杯もまともに入れられないなんて本当に無能で役立たずの執事だわ!」
「大変もうしわけございません」
わたくしはお嬢様からいつものように熱い紅茶を顔に掛けられながら、ポトポトと雫を垂らしながら、うやうやしく頭を下げました。
お嬢様が席を立たれる仕草をしたので、わたくしはすぐに背もたれに手を掛けたときです。
お嬢様が立ち上がろうとして、お嬢様はあらぬ方向に椅子から床へおすべりになられそうになります。ご自分のドレスの裾を踏まれてバランスを崩されたようでございました。
咄嗟に、わたくしは、お嬢様に差し出した手を……、引っ込めました。
ゴン――。
鈍い音がしました。
お嬢様は頭から床に倒れられたのです。
その後、お医者様がいらっしゃって、お嬢様の治療に当たられました。当然わたくしはクビになる覚悟をして自分の部屋で荷物をまとめておりました。
すると、その日の夜、使用人たちの館に、メアリーお嬢様がこっそりと忍び込まれたのでございます。
頭から手拭いを被り、鼻に結び目をしたお姿はまるでコソ泥のようでございます。
「お、お嬢様!?」
「シッ!」
お嬢様は人差し指を立ててわたくしに静かにするようにおっしゃいました。
そして、こうおっしゃるのです。
「私、悪役令嬢だったの。助けてセバスチャン」
このお方は、本当にお嬢様でございましょうか――。
わたくしの表情が物語っていたのでしょう。
お嬢様は頭から手拭いを取られます。やはり、そのお姿はお嬢様でした。
「お嬢様、悪い夢でも見られたのですか? それとも頭の打ちどころが悪かったのでしょうか」
わたくしは不安げに尋ねました。
お嬢様はゆっくりと首を横にふります。
「ううん、そんなことじゃないの。このままでは私、バッドエンドになっちゃう。どうすればいいの、セバスチャン」
お嬢様はやはり頭を強く打たれたようです。
「お嬢様、わたくしにはどうすることはできません。やはり、これはわたくしに対する天罰なのでしょう。日ごろからお嬢様に対する恨みが、お嬢さまが転ぶとわかっていましたのに、咄嗟にわたくしは手を差し伸べるどころか、手を引っ込めて、お嬢様が無様に倒れるようすを喜んで見ていたのですから」
「え? 倒れるのを助けるどころか……、手を引っ込めたって?」
お嬢様は驚いたようにおっしゃいました。
そのあと、お嬢様からどれだけの罵詈雑言を浴びせられるか覚悟をしておりました。
ですが、以外にもお嬢様はこうおっしゃったのです。
「そうよね……。これまでのメアリー・ニールの言動は酷いものだった。とくにセバスチャンに対する当たり方もきつかったし……。でもね、前世の記憶をもどしたから、ね、信じて。これまでのわたしと違うから。手伝って、セバスチャン」
わたくしの手をぎゅっと握ります。
ですが、すぐにお嬢様は自分の取った行動に、ハッとしたように手を放して、顔を赤くされました。
これまでのお嬢様とは全く別人のように見えました。
「あ、ごめんなさい」
なんと! お嬢様が謝られたではございませんか。あり得ないことです! 信じられません!
そして、その必死なご様子にわたくしもお嬢様の話を真剣に耳を傾けるようと思ったのでございます。
それから詳しく話を聞けば、お嬢様は前世の記憶を持ったまま生まれ変わったとおっしゃいました。自分はヒロインをイジメる悪役令嬢。悪役令嬢とは、ヒロインに嫌がらせをする敵役とのことで、ヒロインとくっつきそうなお相手との邪魔するのです。ヒロインのお相手には、王子や騎士団長のご子息、中にはギャングのボスの息子、そしてわたくし、悪役令嬢に仕える執事セバスチャンがいるらしく、そのヒロインと攻略相手の仲を裂くのが悪役令嬢の役目だとお嬢様はおっしゃるのです。
驚くことに、話は進んでいるらしく、ヒロインのアイリ様とおっしゃる一般人のお嬢様はすでに貴族学園に編入済みらしく、そして、そのアイリ様は今のところ、学園内で攻略対象の誰とも親しくなっている様子はない、とのことでした。
「それはね――、セバスチャンを攻略相手としているからなのよ」
メアリーお嬢様は沈んだ声でおっしゃいました。もしヒロインのアイリ様とセバスチャンがエンディングを迎えたのなら、ニール公爵家はおしまいだとおっしゃるのです。
そしてセバスチャン攻略の恋愛フラグが立つのは、明日、このサロンということでした。
日ごろから執事のセバスチャンを虐めている、ニール公爵家の令嬢は自宅のサロンでクラスメイトを呼んでお茶会をする。それがヒロイン・アイリ様とセバスチャンとの初めての出会い。そのときにメアリーお嬢様が皆の前でセバスチャンに恥をかかせる。そんな酷い扱いをされているわたくしに、ヒロインのアイリ様が優しく接する。こうして二人は徐々に接近し、外でも会うようになり、わたくしセバスチャンはアイリ様と恋に落ちる。その後、セバスチャンはヒロインのアイリ様をイジメる公爵令嬢メアリーに反撃にでる。セバスチャンはニール公爵家の不正をつぎつぎと暴き、その内容は、領民たちから徴収した王家に納めるための税金の横領、王宮の修繕費の使い込み、そして他国へ情報を流している裏切り。それらのことをセバスチャンはすべて公表し、ニール公爵家の崩壊へとつながるらしいのです。それを回避するためには、わたくしセバスチャンがヒロインのアイリ様という女性に惚れない様にしないといけないということでした。なので、わたくしが明日ヒロインのアイリ様にする、ふぅふぅを先にこちらで使ってしまって、わたくしセバスチャンがヒロインのアイリ様に恋をするのを阻止するのだと話し合ったばかりなのです。
「ですがお嬢様、本当に私がそのアイリ様というお嬢様にふうふうをするのでしょうか」
自分で言うのもなんですが、わたくしのような腹黒で、意地悪な執事が初めて会うお嬢様にふうふうなど……、考えにくいのです。
それに一番大切な、肝心なことをお嬢様は気づかれてなさそうでした――。
「そうよ、セバスチャン。明日、セバスチャンとヒロインのアイリちゃんがすることを、今日中にしないといけないの……。でも、それが難儀なところ。前世の記憶があるから、こんなことやあんなことが逆にできないのよね。あんな恥ずかしいことをリアルにするなんて……、ああ、絶対できない」
お嬢様は何やら猫背になって、右手を動かしながらぶつぶつおっしゃいます。
「そりゃゲームだったら、ボタンを押して話をすすめるだけじゃない。それが、黒髪イケメン執事が目の前にいて、しかも、吸い込まれそうな切れ長の黒い瞳で、ずば抜けた妖艶な雰囲気を出されたら、もう……、ああ、クラクラ」
お嬢様はオデコに手を当て、まるで熱があるような仕草をされていました。
「大丈夫ですか、お嬢様」
「ああ、セバスチャン、平気よ。こっちを見ないで。その視線がダメ、妖艶すぎる流し目は止めて。ズッキュンズッキュン、わたしの胸がずっと苦しいの」
なんと……、わたくしがお嬢様を苦しめていたとは……。
「でしたら、なおさら、もっと頑張らねばなりませんね」
「はっ?」
「いえ、またもや心の声が漏れ出てしまい……」
どうもわたくしの口角が上がっていたようで、わたくしの考えがお嬢様に通じたのか、お嬢様が睨みを利かせながら頬を膨らまします。その頬をつつきたくなりましたが、ぐっと我慢します。
「申し訳ございません」
お嬢様は深くため息をつかれました。
「それにね、セバスチャン。この辺りで、客観的にこの状況を見ている自分がいるのよね」
「この辺りでございますか?」
「そうそう」
お嬢様はそう言いながら、自分の右上の何もない空間に手を伸ばして、宙をつかみます。
「ここに、俯瞰で見ている自分がいるのよ。相手の恋愛フラグを潰すために、アイリちゃんの恋の邪魔をしていいのか。本当にここまでする必要があるのか、自分のやっていることが恥ずかしくないのかって囁いてくる自分がいるんだもの」
お嬢様は半泣き状態です。
しかし、これは困りました。泣かれるなら、わたくしが泣かせたい。勝手に泣かれたら困れます。でも、もし、お嬢さまが涙をこぼされるようになられたら、わたくしがその涙を一滴残らず、わたくしのキスで……。
おおっと、妄想が過ぎました。
そうです、まずはお嬢様にやる気を起こしてもらわないといけません。お嬢様も十分ご自分のやるべきことを理解されているはずです。ただ罪悪感をお持ちの様なので、わたくしはもう一度、お嬢様の背中を押すために、客観的にお嬢様のご自身が置かれている状況をもう一度説明する必要がありました。
「メアリーお嬢様にお尋ねします。ヒロインのアイリ様とわたくしのハッピーエンドの後はどうなるのでしょうか」
「そりゃニール公爵家は終わりよ。お父様とお母さま、そしてわたしもギロチンに掛けられるんだから」
「ですよね、お嬢様。やはり一番確実なのは、メアリーお嬢様がわたくしを攻略することでございます。相手の恋愛フラグさえ先に終えていれば、物語は違う方向へ進むのでしょう」
「うん。たぶん……」
「でしたら、アイリ様には諦めてもらいましょう。その方の恋路を邪魔するのと、ご自身のギロチンを天秤に考えてください」
「そ、そうよね」
「はい。明日、こちらのサロンにいらっしゃるヒロインのアイリ様が行う、わたくしに対する恋愛フラグを事前にすべてへし折ることで、当日、アイリ様とわたくしの恋愛フラグは立たなくなり、物語は違う方向へ進むわけでございます」
「うん、わかった。明日、うちで開催するお茶会にヒロインのアイリちゃんが来る。だから、そのイベントに起こることを今日、全部、わたしとセバスチャンでしてしまう。それこそ、先手必勝! 事前に恋愛フラグ潰し!」
この突拍子もないことを計画したのはわたくしでございます。しかし、お嬢様はもっと大切なことをおわかりになられていない様子。
「もう一度お尋ねしますが、わたくしが明日、アイリ様にふうふうするのですよね」
わたくしは聞き返すとお嬢様はちょっと自信がなくなったようです。
「え? 違ったかな……、アイリちゃんが膝にケガをして、そこでふうふうするんだっけ?」
「では、こうしないといけませんね」
わたくしはお嬢様の前にかしづき、
「お嬢様、失礼」
ドレスを膝までたくし上げ、
「ふうふう」
と膝に息を吹きかけます。
「ああ、もう、ほんと、こんなにドキドキしたら、心臓がもたない」
お嬢様は椅子の背もたれでとろけるような表情で、悶えています。
「ちょっと意地悪をしていました」
「え?」
「お嬢様はわたくしとマリアさんがハッピーエンドになるのを恐れられています」
「そうよ、だってそのハッピーエンドが、ニール公爵家も巻き込まれる最悪なバッドエンドですもの。それだけは阻止しないと」
「ですが、お嬢様は肝心なことがぬけているのです」
「え? 抜けている? うーん、なんだろう……」
「わたくしの気持ちです」
「セバスチャンの気持ち?」
「はい。もうわたくしには、愛してやまない人ができました」
「ちょ、ちょっと、まって。ええ、どうすれば……、いや、アイリちゃんとセバスチャンが結ばれないってことならいいけど……、でもちょっとまって、なんだか心が苦しい。なに、この胸のどきどきは――。ねぇ、教えて、セバスチャンの好きな人って」
「わたくしの心は……、すでにあなたのもの。メアリーお嬢様のことで満たされています。どのようなご令嬢がいらっしゃっても心は動きません」
「ほ、ほんとうに!? だって、これまでセバスチャンのことをイジメていたのに」
「今のお嬢様が好きなのです」
「じゃ、わたしたちって両想い?」
「では、お嬢様もわたくしに……?」
「うん、大好き、大好き、セバスチャンが大好き!」
なんと嬉しい事でしょう。
ですが、これで終わりではありません。だってわたくしは、とても意地悪なのです。
ここでハッピーエンドだなんてもったいない。お嬢様にもっともっと意地悪して、可愛らしいお嬢様に恥ずかしいことをたくさんさせるつもりです。
たしか、次の恋愛フラグは……、キスでしたね。
「さあ、お嬢様、目を閉じて……」
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