俺に冷たい同級生は影で泣いてました

ahiru

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第一章

2 アンドリュー

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エルメリア王国は広大な領土を有し、海や森など豊かな自然に恵まれた国である。しかし、その自然の中には多種多様な魔物が棲息せいそくしており、まれに近隣の街へと現れることもある。何百年もの間、人々は魔物と戦い、国を守るため剣と魔法の力を磨いてきた。優れた者には爵位が与えられ、王より土地を任されることもあった。

俺が生まれたダグラス侯爵家は、エルメリア王国の国境を守り統治を任されている、いわゆる騎士の家系だ。
国境付近の山には魔物が多く出没し、領地の街の警備や魔物の討伐は、我が家の騎士団が担っている。

俺──アンドリュー・スチュワート・ダグラスは、そんな侯爵家の次男として生まれた。
長男のルベン兄様は、濡羽色ぬればいろの髪に琥珀色の目を持つ。対して俺は、緋色の髪に黒茶の瞳。お互いに、両親の特徴を半分ずつ受け継いだ容姿だ。

侯爵家の跡取りとして幼い頃から教育を受けてきた兄様は、学業も剣術もとにかく優秀で、自慢の兄だ。
俺は三歳の頃から、そんな兄様に憧れて剣の修行を始めた。


「アンディ、剣はなんのためにあると思う?」


「はい、ルベン兄さま! おそろしい まものを たおすためです!」


剣の鍛錬を始めて半年ほど経った頃。筋がいいと褒められて調子に乗っていた俺は、意気揚々と手を挙げて、兄様の問いに答えた。


「ふふっ……ん~、半分正解だね。」


「は、はんぶん……?」


膝をついて目線を合わせた兄様は、驚いて固まった俺の頭を優しく撫でた。そして俺の手を握りながら、家に代々伝わる教えを語ってくれた。


「剣は……力は、誰かを助けるためにあるんだよアンディ。魔物に襲われる民や、大切な人を助ける。それが我が家の騎士団の務めなんだ。“強き力は、弱き者を救うためにある”──これが、うちの家訓さ。」


「たすける……わぁ~、かっこいい! 兄さま、かっこいい!」


「え、僕? ふふっ、ありがとう。」


こうして俺は、ますます剣術にのめり込んでいった。
鍛錬は楽しかった。体力作りは辛かったし、父様や兄様にはまだ到底敵わないけれど……きっと二人が規格外なだけ。



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