俺に冷たい同級生は影で泣いてました

ahiru

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第一章

3 アンドリュー

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十六歳になった俺は、サンベルッフ学園に入学した。

サンベルッフ学園は、完全寮制の剣術や魔術といった戦闘技術に特化した教育機関で、実技の授業も多い。貴族と平民が混じり合うため、校則で「学園内は原則 身分に関わらず皆平等である」と定められている。完全実力主義ということだろう。また、サンベルッフ学園は実際に森に行く実習等の危険なことが多いため学生の八割が男性。

俺は将来的に結婚するか、正式に家の騎士団の一員となるか決めかねている状態だった。この国では後継者ではない次男は余計な揉め事が起きないように結婚するなら男性と、が一般的。
だからこそ、いい出会いを探しつつ自分の実力を知れるこの学園は今の自分にぴったりの場所だった。

入学して三ヶ月。
俺は教えを胸に、困っている人がいればなるべく手を差し伸べるように心がけてきた。
それで感謝されることは素直に嬉しいし、そのおかげか、クラスメイトのほとんどが友好的に接してくれている。

早朝に日課のジョギングを終えシャワーを浴びた俺は身支度を整え食堂に向かった。食堂に入ってすぐ、壁際の席に座る見知った二人を見つけ声をかけた。


「おはようダリル、ビクター。」


「おはよ~。」


「おはようございます。」


眠いのか机に伏せていたダリルは軽く顔を上げた。隣に座るビクターは軽く礼をして作業の手を止めた。
二人は学園で知り合った中でも特に気の抜ける友人だ。

ジェファソン伯爵家の長男ダリル。
彼はブルーグレーの前髪が目を隠し、表情が読みにくく見えるが話してみれば陽気な性格でノリがいい。ダリルとは寮が隣室だった。軽く挨拶したのがきっかけで何かと一緒に行動することが多くなった。

そしてビクター。
彼は赤みがかった茶髪を軽く整えリーフグリーンの目に銀縁メガネをかけている。食堂で一人だったところに声をかけた。平民ながら、学園教授に魔術の才能を見出され学費を免除されている。その代わりその教授にはこき使われているらしい。

どうやら二人は俺が来るのを待ってくれていたようだ。
二人に軽く感謝して三人で食事を取りに行った。
この食事は学費に含まれていて朝昼夜の三食、好きな時間に食べることが出来る。メニューも豊富でなかなか美味しい。ビクターは毎回キラキラした目をして美味しい美味しいと食べている。

ダリルは朝に弱くあまり食べないからいつも果物と眠気覚ましのコーヒーだけ。ビクターはガレットとサラダに紅茶、デザートにヨーグルト。俺は日替わりのパンとオムレツとスープを頼んだ。
食事を受けとり窓際のテーブルに座って食べ始めた。
ほとんど食べ終わった頃、何か確かめるように後ろを向いたビクターは声のボリュームを抑えて話しかけてきた。


「アンドリューさんまたにらまれてますよ、何したんです?」


「何もしてないから困ってるんだよ…。」


「ははっ、人気者は大変だ。」


ダリルは笑ってるがこれは俺のここ最近のちょっとした悩みだ。にらんでくるのは俺の斜め後ろの席に座るロナルーク。

同じクラスのロナルーク・イーモン・ウィーデン。彼は魔術に特化したウィーデン侯爵家の三男。光が当たると白く輝く藍白あいじろの髪にターコイズブルーの瞳。優美な色に中性的な顔立ちも相まって、月の使者のようだと噂されている。

入学当初は俺も似たようなことを思っていた。正直見た目はめちゃくちゃ好みだ。が、話した途端にイメージは崩れ落ちた。



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