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第一章
12 ロナルーク
しおりを挟む何度チャンスを棒に振れば気が済むんだ僕は。はぁ、自分が嫌になる。目の前で二人が話しているのを見ていることしか出来なかった。ちょうど今日の授業は終わりだし、また倉庫でフロスティに話を聞いてもらおう。
荷物をまとめ席を立った時、
「ロナルークさん」
ビクターが話しかけてきた。どうしたんだろう。さっきの授業で何か言い忘れたことでもあるのだろうか。
「ん?」
「ロナルークさんはどうしてアンドリューさんに冷たいんですか?」
直球な質問なだけにダメージがでかかった。ペンダントを強く握りしめる。……分かってる。傍から見て冷たく見えることも、そのままでは迷惑なことも。でもどうしても自分に自信が持てないんだ。僕の気持ちを伝えてもアンドリューが答えてくれる未来が見えない。なら最初から伝えなければ、期待しなければ、傷つくこともないじゃないか。僕の心を何度も救ってきた彼からもし拒絶されたら、僕には……何が残る?才能のある君には…何でも持ってるお前には……僕の気持ちなんてっ……
「その…何かすれ違いがあるなら早めに解決した方がお互いのためだと思うんです。ロナルークさんがもしアンドリューさんを嫌っているとしてもこのままじゃ……」
「お前には関係ないっ!!」
気づいたら声に出ていた。
「どうした?」
アンドリューの声にはっとする。慌てて顔を上げ辺りを見渡す。見られている、クラスメイトにも、アンドリューにも。……頭が真っ白になる。終わった。自分と仲のいい友人に怒る奴なんて…嫌いになるに決まってる。
せめて謝ろう。声の震えがバレないように小声でビクターに謝った。
「……すまない。」
「あ……いえ、僕も余計なことを言いました。」
…はは、許してくれるのか。ますます自分が醜く見える。耐えきれず早足で教室を出た。
急いで倉庫へ向かう。今頃、教室は僕の悪口だらけだろうか。泣いてしまいそうでペンダントを触ろうとした僕は、それが無いことに気がついた。思わず立ち止まる。ポケットを探っても出てこない。さっきまではあったから落としたのは教室だろうか……。戻れない。戻れるはずがない。お守りまで無くしてしまった。ポロリと涙が溢れてくる。慌てて倉庫へ走った。
倉庫に着いた僕は急いでフロスティを召喚する。ボロボロと涙が出ている僕を見て、フロスティは察したようだ。僕の背中に周り、ソファの方へと頭で僕を押してくる。身を任せてソファに座った僕の膝にフロスティは登ってきた。
「それで…何があったの?ロナ」
僕はフロスティに話した。絶えず涙を流しながら話したせいでなかなか時間がかかった。
「あの優しいアンドリューでも、今日はダメかもしれない……っ……絶対、嫌われた……」
「まだ分からないだろ?……謝れば許してくれるよ。」
「でも……目の前にアンドリューがいると、恥ずかしくて……緊張して……」
「そ、そうか。そもそも話せないからこうなっちゃたんだもんね。えっと、直接話せないなら…手紙とかさ、ほら手段は色々あるじゃないか!…ね?」
「…………手紙はどうやって渡すのさ。」
「あ……。誰かにお願いする……とか?」
そんな人全く思い浮かばない。落ち着いてきた涙がまた出てきそうな気がする。僕は肩を落とし、甘えるようにその白い体に顔を埋めた。そんな僕に気づいたのか、フロスティが身を起こし僕の頬を舐めた。
「ロナ、ロナ!僕がいるよ。僕は何があっても君の味方だ。」
「……うん。」
────そんな僕たちをアンドリューが見ているなんて夢にも思わなかった。
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