王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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アニエス、また穴に落ちる

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太子殿下の視線が痛い 。でもグレン様は
涼しい顔だ。

「何だアルバート。マチルダの隣にいなくて
いいのか?」

「気分が悪そうだったから下がらせた。
どうせ派手なことをするなら
もっと、早くやれ。後で見損ねたとマチルダ
に拗ねられるのは面倒だ」

「気分が悪い?大丈夫なのか」

「悪阻だ。香水の匂いが駄目らしい。
休めば大丈夫だろう。
やあ、子リスちゃん。
エリザベートがいつも世話になっているね。
今夜は美しいドレス姿を見れて嬉しいよ。
楽しんでいるところをすまないが少し、
グレンを借りてもよいかな?」

ええ、少しと言わず永遠に借りてくれても
かまいませんとも。
近くで見るとこの二人似てる。
容姿といい雰囲気といい。肉食獣系。
黒豹が二匹いるよ。
あ、これ不敬だわ。

「はい。私はそちらで控えております」

私はとびきりいい笑顔でグレン様を送り
出した。去り際に不機嫌そうなグレン様に
頬をつねられたのは何故だろう。解せぬ。

とりあえず、やっと自由だ。
ふふふ、ようやく料理にありつける。
私は嬉々として料理を口にしていた。

そういえば、気にしていた元婚約者も元養家
の関係者も誰もいないな。
何だ気にして損した。

ああ、お料理が美味しい。うっとりと料理を
堪能していると後ろから声をかけられた。
振り向くと嫌な奴等が立っていた。

「田舎者の案山子がこんな所で何をして
いるのかしら」

げっ、今夜もピンクですか。残念ピンク
ことマルクス伯爵令嬢が取り巻きのご令嬢
を従えていた。

今夜のドレスはやけに眩しい
キラキラピンクですね。
ピンク色に罪はないけどピンクが嫌いになり
そうです。
  
 二年前に彼女達に突き飛ばされて『穴』に
落ちて木にぶら下がったことを思い出し
思わず遠い目になる。

「何よ。その顔。ちょっと何で貴女が
グレン様にエスコートされているのよ。
アルフォンス様だけじゃなくてグレン様まで
誑かすつもり?一体何様なのよ!!」

何様って一年前から侯爵令嬢様ですが。

義父のオーウェン様、実は侯爵様でした。
何で奥様と町中のこじんまりしたお屋敷に
住んでいるのか謎です。
いつも町中をふら、ふらしているし。
我が義父ながら謎多い人物です。

「何でエスコートされているのでしょうね」

──ええ。何で私はグレン様相手に勝てる
見込みの少ない勝負をしたんですかね。
あの時の自分の頭を叩いてやりたい。
結局、賭けに負けてこんな所で残念ピンクに
絡まれる羽目になっている。私の馬鹿、馬鹿。

「質問に質問で答えないでちょうだい!!」

キャンキャンうるさいなぁ。
ほら、目立ってしまっている。グレン様、
グレン様のエスコートでも
『何か言ってくる身の程知らず』は
いましたね。さすが残念ピンクです。

「ここでは目立ちます。あちらへ」

私は近くのバルコニーに彼女達を誘導する。
バルコニーのガラス戸を手で押し一歩足を
踏み出したその瞬間、頭が真っ白になる。
バルコニーに大きな『穴』があった。

「ええ、えええ~。ウソ~!!」

私は穴に吸い込まれていった。

そして暗転する。わたしの意識は
そこで途切れた。









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