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アニエス、白竜と邂逅す
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……冷たい。寒い。
あれ?私どうしたんだっけ?
冷たい石の感触。体が痛い。
目を開けると薄暗い洞窟の様な所にいた。
あれ?さっきまで舞踏会にいたのに。
ああ、また『穴』に落ちたんだ。
頭がはっきりしてくる。
もう、残念ピンクとかかわると
ロクなことがないな。
もう、二度とかかわりたくない。
今度はどこに跳ばされたんだろう。
とりあえず今度は、木の上ではなかった
ようだ。起き上がって辺りを見回すと
静かにこちらを見る赤い双眸と視線が合う。
長い白い髪に赤い瞳の女性が私を見ていた。
私は女性の異様な姿に驚く。
年の頃は私と余り変わらない。
あどけなさのある可愛い顔。
長い足首まで伸びた白い髪に赤い瞳。
半裸の華奢な体には首と両手、両足に
太い鎖が幾重にも巻かれ、後ろの大岩に
繋がれている。
そして腹部には金色に光る剣が二本
刺し込まれ背中に突き抜けていた。
さらに帯状の赤く光る術式が何本も
ゆっくりとくるくる彼女の周りを
回っている。
足元にはやはり赤く光る魔法陣がいくつも
描かれ重なり合っている。
何これ?気持ち悪い。
そして誰これ?
女性は小首を傾げる。
「生贄が放り込まれるにはまだ早いはず。
お前はなぜここに来た?」
幼子のような可愛い声が逆に怖い。
なぜって私に分かるわけないでしょう。
さっきまで舞踏会で踊ってたのに。
私は首をぶんぶん振る。
生贄って?
私、なんかヤバい所に跳ばされたんじゃ。
ふいに首とお腹に何かが巻き付き絞め
上げられる。苦しい。女性の脇腹から
複数の触手のような物が伸びてきて私を
捕らえていた。
そのまま強い力で女性の間近まで引き寄せ
られる。
何本もの触手がうねうねと私に絡み付く。
いや~!怖い、怖い。気持ち悪い!
この白いヤツ怖いよ。よし。コイツの事は
ホラーホワイトと命名しよう。
息がかかるほどの距離。彼女は無言で
私を観察する。
そして長い舌で私の頬をベロリと舐めた。
ひいいい~つ!!何で舐めるの?
私美味しくないから!
しかも、舌長いよ!絶対人じゃない。
「甘いな。お前旨そうだな」
「あの、私はたぶん美味しくないです!」
いや、今旨そうと言った?
やっぱりヤバい所に跳ばされたんだ!
どうする?逃げる?
いや、どこに?
戦う?いや、そもそもコレって何者なの。
さっき生贄って言ってたよね。
何か祀られてる者かも。
無闇にやっちゃっていいのだろうか。
半ば恐慌状態に陥りながらあれこれ考え
ていると白髪の女性が何度も首を傾げ
私を見つめる。
「王族以外喰らわないと言うておったが
……旨そうなのがいる。喰ってもよいか?」
はい?王族しか喰わないって……。
ちょっと!誰を食べる気なの!
まさか姫様じゃないでしょうね!!
「王族を生贄に望まれるのですか?」
「そうじゃ。私は王族しか喰わない」
「王族は数が少ないんですよ。絶滅したら
どうするんですか。国が滅びます!
大体、あんなによい方達を食べるなんて!
なんてこと言うんですか!!」
「大丈夫。繁殖の機会は与えている。
喰らうのも生贄の魔力の強さによるが
二十年から五十年に一人だ。
数百年そうしてきた。
国は滅んではおらぬだろう?
今度の生贄が供されるまであと三年。
まだ先だ。腹はすいておるが我慢するか。
でもお前旨そう。味見ぐらいしてよいか?」
こいつ、数百年王族を食べてきたの?
一体何人食べたの?
いや三年後の生贄って……誰を食べるの?
姫様、王太子様、アーサー殿下、グレン様。
親しい王族の方達の顔を思い浮かべる。
冗談でしょ。あの方達を食べるの?
そんなことが許される訳がない。
「何で王族を食べるの?」
「契約だから」
「契約?」
「互いの血の交わりをもって契約する。
それがお前達が望んだことだ」
互いの血の交わりって……いや、あなた
一方的に食べちゃってますけど。
「あの、食べちゃったらお互いの血は
交わらないのではないでしょうか」
「知らぬ。互いの血を交換し合うが
私の血の毒に生贄が堪えられずに
どうしても死ぬ。
もったいないから喰らう。それだけだ」
「もったいないって……そんな残飯処理
みたいに王族食べないで下さいよ」
「知らぬ。私が望んだことではない。
お前達が勝手に私を繋いだ。
騙し討ちしたうえ、剣で刺し貫き
魔法陣で封じられた。
そのくせ契約を完結させる力がない。
せめてもの情けで力ある者を
指名してやっているのにいつも死ぬ」
「力ある者を指名する?」
「契約を完結できそうな力ある者が
育つと神殿の神官に託宣する。
この者は生贄に選ばれた故に
繁殖させよと。十年の時間を与える」
「十年の猶予……繁殖?」
「子供を作らねば次の生贄が途絶える。
生贄を喰わねば私は飢えて死ぬ。
私が死ねばこの国の防御結界は消える。
未完結な契約は破綻し
術式の暴走を起こすだろう。国が滅びる。
私はそれを望まない。だから喰らう。
契約が成されるまで」
「防御結界……あなたは白竜?伝説やお伽噺ではなかったのね」
「伝説?お伽噺?私はここにいる」
「契約が成されたらどうなるのですか?」
「私の自我は消える。お前達の望みの通り
のただの道具になる。
だが、私を生かすための生贄は私が死ぬ
まで続くだろう。そして私が老いて死ねば
この国は滅ぶ」
なにそれ?なんとかならないの?
何でこんなことになっているの。
「なんとか術式を解除できないのですか?」
「できるならばもうやっている」
それはごもっとも。
ああ~なんとかならないの!
自分の頭の悪さを呪う。
いや、呪うなら数百年前の白竜を捕まえた
誰だかわからない奴だろう。
何てことしてくれたんだ。
一人、食べて二十年から五十年と
言っていた。
次の生贄が三年後。次の生贄……。
契約を完結できる力ある者。
今、この国で一番魔力が強いのは
………グレン様。
まさかグレン様なんじゃ。
あの金色の瞳を思い出す。
とにかく怖いのに、やたら絡んでくる
困った人。
でも、なんだかやたらと私に甘い。
グレン様の匂いを思い出す。
怖いのに、ものすごくいい匂いがする。
腕輪が外れたら怖くなくなった。
怖くなくなったら
ただ私に甘い、いい匂いの人だ。
そして、一緒に剣を振るった。
互いに同調していく動きに微笑む
グレン様。
あの穏やか笑顔。
駄目だ。駄目だ。絶対駄目だ!
震えながら白竜に問う。
「次の生贄は誰ですか?」
「グレン・リード・エルドバルドと
言ったか。強い魔力持ち。上手くいけば
契約を成せるかもしれぬ。駄目でもあの
魔力だ百年は次の生贄はいらぬ。
ふふふ、さぞや美味だろうよ」
ああ、やっぱり。グレン様か。
あと三年……ということは七年前には
自分が生贄になることを知っていた?
鉛を飲み込んだように胃の腑が重い。
「グレン様は……絶対に不味いと思います!
あの、性格ですよ。食べたらお腹を
壊しますから!」
「ほう、知り合いか。奴が喰われるのは
嫌か?ならばお前でも良いぞ。
お前、旨そうだから」
えっ?私。
私か。グレン様や姫様が喰われるより
いいかも。
「王族でなくても良いのですか?」
「王族より魔力の高い者などそうはいない。
だがお前はその条件を満たしている。
ことを始めたのはこの国の王族だ。
責任をとらすためにも奴らから生贄を
選んできたが……。
でも、本当にお前旨そうだから。
今、喰ってもいいならお前でもいいぞ」
「ちなみに私を食べたら、どのくらい
お腹がもちますか?」
「そうじゃな。ざっと百年から百五十年と
いったところかの。お前、グレンとやら
よりも魔力が強いぞ。しかも旨そう」
旨そう、旨そう、うるさいな。
よだれ垂らしてそうだよ白竜!
ああ、私の人生。
白竜に食べられて終わるのか。
なんの解決にもならないけど
百年時間稼ぎができるならその間に
誰かがなんとかしてくれるかも。
それにグレン様が食べれるのは嫌だ。
「そんなにおいしそうなら、どうぞ私を
召し上がって下さいませ」
「いいのか、喰らっても」
「おいしいかどうか分かりませんけど」
「大丈夫。お前、絶対旨いから」
白竜がうっとりとしながら笑う。
私は目を瞑る。
ああ…。
もう一度生家の家族に会いたかったな。
姫様は私が突然いなくなったら
泣くだろうな。
オーウェン義父様にもう一度、頭を
撫でて欲しい。
お義母様と買い物に行きたい。
アイリスさん。アルマさん。
アルフォンス様。色々な人の顔が
浮かんでくる。
グレン様、鬱陶しいけど。
あなたの笑顔好きでしたよ。
いつまでも笑顔でいられますように
祈るように思う。
目を瞑ってじっとしていると肩口に
鋭い牙をたてられる。
痛みとともに血を啜る音がする。
血とともに魔力がどんどん吸いとられる。
……意識が薄れてくる。
あれ?私、馬鹿だな。
ただで喰われないで契約に挑めば
よかったのではないか?
ええーと。血を混ぜると言った?
白竜の血を飲めばいいの?
ああでも、もう無理……。もう、力が
残ってない。私って馬鹿。
薄れていく意識の中、白竜の声を
聞いた。
「懐かしい。旨いと思ったらこいつの血。
あの人の魔力が混ざっている。
黒竜の血の契約者か。
黒竜、会いたい。もう一度。
……これ全部喰らったら怒られるな。
もったいないけど残す」
黒竜……ああ、あの大きい蜥蜴さん。
いつも美味しい飴玉をくれるの。
懐かしいな。
白竜、大きい蜥蜴さんの知り合いなの?
「……待って白竜。私は何年稼げました?
まだ、グレン様も食べるの?」
「ほう、まだ口がきけるのか。
お前、旨かった。百年は他の生け贄は
いらない。全部喰らったらあの人に
怒られる。もったいないけどお前残す。
お前、もういらない」
私を捕らえていた触手にポイと投げられる。
えっ?ポイ捨てするのはやめて下さい。
地面に激突かと思えばずぶずぶと私の体は
地面に沈んでいく。
怖い。どうなるの。
顔半分沈んだところで
暗転する。私の意識はそこで途絶えた。
あれ?私どうしたんだっけ?
冷たい石の感触。体が痛い。
目を開けると薄暗い洞窟の様な所にいた。
あれ?さっきまで舞踏会にいたのに。
ああ、また『穴』に落ちたんだ。
頭がはっきりしてくる。
もう、残念ピンクとかかわると
ロクなことがないな。
もう、二度とかかわりたくない。
今度はどこに跳ばされたんだろう。
とりあえず今度は、木の上ではなかった
ようだ。起き上がって辺りを見回すと
静かにこちらを見る赤い双眸と視線が合う。
長い白い髪に赤い瞳の女性が私を見ていた。
私は女性の異様な姿に驚く。
年の頃は私と余り変わらない。
あどけなさのある可愛い顔。
長い足首まで伸びた白い髪に赤い瞳。
半裸の華奢な体には首と両手、両足に
太い鎖が幾重にも巻かれ、後ろの大岩に
繋がれている。
そして腹部には金色に光る剣が二本
刺し込まれ背中に突き抜けていた。
さらに帯状の赤く光る術式が何本も
ゆっくりとくるくる彼女の周りを
回っている。
足元にはやはり赤く光る魔法陣がいくつも
描かれ重なり合っている。
何これ?気持ち悪い。
そして誰これ?
女性は小首を傾げる。
「生贄が放り込まれるにはまだ早いはず。
お前はなぜここに来た?」
幼子のような可愛い声が逆に怖い。
なぜって私に分かるわけないでしょう。
さっきまで舞踏会で踊ってたのに。
私は首をぶんぶん振る。
生贄って?
私、なんかヤバい所に跳ばされたんじゃ。
ふいに首とお腹に何かが巻き付き絞め
上げられる。苦しい。女性の脇腹から
複数の触手のような物が伸びてきて私を
捕らえていた。
そのまま強い力で女性の間近まで引き寄せ
られる。
何本もの触手がうねうねと私に絡み付く。
いや~!怖い、怖い。気持ち悪い!
この白いヤツ怖いよ。よし。コイツの事は
ホラーホワイトと命名しよう。
息がかかるほどの距離。彼女は無言で
私を観察する。
そして長い舌で私の頬をベロリと舐めた。
ひいいい~つ!!何で舐めるの?
私美味しくないから!
しかも、舌長いよ!絶対人じゃない。
「甘いな。お前旨そうだな」
「あの、私はたぶん美味しくないです!」
いや、今旨そうと言った?
やっぱりヤバい所に跳ばされたんだ!
どうする?逃げる?
いや、どこに?
戦う?いや、そもそもコレって何者なの。
さっき生贄って言ってたよね。
何か祀られてる者かも。
無闇にやっちゃっていいのだろうか。
半ば恐慌状態に陥りながらあれこれ考え
ていると白髪の女性が何度も首を傾げ
私を見つめる。
「王族以外喰らわないと言うておったが
……旨そうなのがいる。喰ってもよいか?」
はい?王族しか喰わないって……。
ちょっと!誰を食べる気なの!
まさか姫様じゃないでしょうね!!
「王族を生贄に望まれるのですか?」
「そうじゃ。私は王族しか喰わない」
「王族は数が少ないんですよ。絶滅したら
どうするんですか。国が滅びます!
大体、あんなによい方達を食べるなんて!
なんてこと言うんですか!!」
「大丈夫。繁殖の機会は与えている。
喰らうのも生贄の魔力の強さによるが
二十年から五十年に一人だ。
数百年そうしてきた。
国は滅んではおらぬだろう?
今度の生贄が供されるまであと三年。
まだ先だ。腹はすいておるが我慢するか。
でもお前旨そう。味見ぐらいしてよいか?」
こいつ、数百年王族を食べてきたの?
一体何人食べたの?
いや三年後の生贄って……誰を食べるの?
姫様、王太子様、アーサー殿下、グレン様。
親しい王族の方達の顔を思い浮かべる。
冗談でしょ。あの方達を食べるの?
そんなことが許される訳がない。
「何で王族を食べるの?」
「契約だから」
「契約?」
「互いの血の交わりをもって契約する。
それがお前達が望んだことだ」
互いの血の交わりって……いや、あなた
一方的に食べちゃってますけど。
「あの、食べちゃったらお互いの血は
交わらないのではないでしょうか」
「知らぬ。互いの血を交換し合うが
私の血の毒に生贄が堪えられずに
どうしても死ぬ。
もったいないから喰らう。それだけだ」
「もったいないって……そんな残飯処理
みたいに王族食べないで下さいよ」
「知らぬ。私が望んだことではない。
お前達が勝手に私を繋いだ。
騙し討ちしたうえ、剣で刺し貫き
魔法陣で封じられた。
そのくせ契約を完結させる力がない。
せめてもの情けで力ある者を
指名してやっているのにいつも死ぬ」
「力ある者を指名する?」
「契約を完結できそうな力ある者が
育つと神殿の神官に託宣する。
この者は生贄に選ばれた故に
繁殖させよと。十年の時間を与える」
「十年の猶予……繁殖?」
「子供を作らねば次の生贄が途絶える。
生贄を喰わねば私は飢えて死ぬ。
私が死ねばこの国の防御結界は消える。
未完結な契約は破綻し
術式の暴走を起こすだろう。国が滅びる。
私はそれを望まない。だから喰らう。
契約が成されるまで」
「防御結界……あなたは白竜?伝説やお伽噺ではなかったのね」
「伝説?お伽噺?私はここにいる」
「契約が成されたらどうなるのですか?」
「私の自我は消える。お前達の望みの通り
のただの道具になる。
だが、私を生かすための生贄は私が死ぬ
まで続くだろう。そして私が老いて死ねば
この国は滅ぶ」
なにそれ?なんとかならないの?
何でこんなことになっているの。
「なんとか術式を解除できないのですか?」
「できるならばもうやっている」
それはごもっとも。
ああ~なんとかならないの!
自分の頭の悪さを呪う。
いや、呪うなら数百年前の白竜を捕まえた
誰だかわからない奴だろう。
何てことしてくれたんだ。
一人、食べて二十年から五十年と
言っていた。
次の生贄が三年後。次の生贄……。
契約を完結できる力ある者。
今、この国で一番魔力が強いのは
………グレン様。
まさかグレン様なんじゃ。
あの金色の瞳を思い出す。
とにかく怖いのに、やたら絡んでくる
困った人。
でも、なんだかやたらと私に甘い。
グレン様の匂いを思い出す。
怖いのに、ものすごくいい匂いがする。
腕輪が外れたら怖くなくなった。
怖くなくなったら
ただ私に甘い、いい匂いの人だ。
そして、一緒に剣を振るった。
互いに同調していく動きに微笑む
グレン様。
あの穏やか笑顔。
駄目だ。駄目だ。絶対駄目だ!
震えながら白竜に問う。
「次の生贄は誰ですか?」
「グレン・リード・エルドバルドと
言ったか。強い魔力持ち。上手くいけば
契約を成せるかもしれぬ。駄目でもあの
魔力だ百年は次の生贄はいらぬ。
ふふふ、さぞや美味だろうよ」
ああ、やっぱり。グレン様か。
あと三年……ということは七年前には
自分が生贄になることを知っていた?
鉛を飲み込んだように胃の腑が重い。
「グレン様は……絶対に不味いと思います!
あの、性格ですよ。食べたらお腹を
壊しますから!」
「ほう、知り合いか。奴が喰われるのは
嫌か?ならばお前でも良いぞ。
お前、旨そうだから」
えっ?私。
私か。グレン様や姫様が喰われるより
いいかも。
「王族でなくても良いのですか?」
「王族より魔力の高い者などそうはいない。
だがお前はその条件を満たしている。
ことを始めたのはこの国の王族だ。
責任をとらすためにも奴らから生贄を
選んできたが……。
でも、本当にお前旨そうだから。
今、喰ってもいいならお前でもいいぞ」
「ちなみに私を食べたら、どのくらい
お腹がもちますか?」
「そうじゃな。ざっと百年から百五十年と
いったところかの。お前、グレンとやら
よりも魔力が強いぞ。しかも旨そう」
旨そう、旨そう、うるさいな。
よだれ垂らしてそうだよ白竜!
ああ、私の人生。
白竜に食べられて終わるのか。
なんの解決にもならないけど
百年時間稼ぎができるならその間に
誰かがなんとかしてくれるかも。
それにグレン様が食べれるのは嫌だ。
「そんなにおいしそうなら、どうぞ私を
召し上がって下さいませ」
「いいのか、喰らっても」
「おいしいかどうか分かりませんけど」
「大丈夫。お前、絶対旨いから」
白竜がうっとりとしながら笑う。
私は目を瞑る。
ああ…。
もう一度生家の家族に会いたかったな。
姫様は私が突然いなくなったら
泣くだろうな。
オーウェン義父様にもう一度、頭を
撫でて欲しい。
お義母様と買い物に行きたい。
アイリスさん。アルマさん。
アルフォンス様。色々な人の顔が
浮かんでくる。
グレン様、鬱陶しいけど。
あなたの笑顔好きでしたよ。
いつまでも笑顔でいられますように
祈るように思う。
目を瞑ってじっとしていると肩口に
鋭い牙をたてられる。
痛みとともに血を啜る音がする。
血とともに魔力がどんどん吸いとられる。
……意識が薄れてくる。
あれ?私、馬鹿だな。
ただで喰われないで契約に挑めば
よかったのではないか?
ええーと。血を混ぜると言った?
白竜の血を飲めばいいの?
ああでも、もう無理……。もう、力が
残ってない。私って馬鹿。
薄れていく意識の中、白竜の声を
聞いた。
「懐かしい。旨いと思ったらこいつの血。
あの人の魔力が混ざっている。
黒竜の血の契約者か。
黒竜、会いたい。もう一度。
……これ全部喰らったら怒られるな。
もったいないけど残す」
黒竜……ああ、あの大きい蜥蜴さん。
いつも美味しい飴玉をくれるの。
懐かしいな。
白竜、大きい蜥蜴さんの知り合いなの?
「……待って白竜。私は何年稼げました?
まだ、グレン様も食べるの?」
「ほう、まだ口がきけるのか。
お前、旨かった。百年は他の生け贄は
いらない。全部喰らったらあの人に
怒られる。もったいないけどお前残す。
お前、もういらない」
私を捕らえていた触手にポイと投げられる。
えっ?ポイ捨てするのはやめて下さい。
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【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
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名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
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◇◇◇◇
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※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
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