王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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グレン、堕ちる

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「ハーピィにワイバーン、オークの群れか」

また、魔物が主戦力だ。
帝国は人と魔物の混合軍。
だが日毎、人の割合が減っている。
罠の臭いがプンプンする。

砦に向かってくる敵襲を迎え打つ。
プリシラの防衛結界の切れた砦。
他の者が防衛結界を張ってはいるが
プリシラほどの強度はない。
ワイバーンやハーピィを近付けさせるのは
危険だ。
近くにいたオレンジ頭に声をかける。

「砦に近づけるなよ」

「はあ?あんた誰に向かって言ってるんだ」

真っ二つになったワイバーンが墜ちてくる。
皆、慌てて避ける。
ワイバーンの血の雨が降る。
アホか、カーマイン。少しは周りに気遣え。

降り落ちて来るワイバーンの血を氷結魔法で
凍らせ、風魔法で敵陣に叩き込む。
無数の毒の氷の飛礫が容赦なく敵を襲う。
お、これは効率がいいな。

カーマインが風魔法でワイバーンを
ぶった斬る。
俺が血飛沫を凍らせ敵に叩き込む。
カーマインのアホの後始末をしているだけで
敵が減る。
お得感満載だ。

ラケットも雷撃でワイバーンを仕留めて
いる。こちらは黒焦げだ。
蔦蔓でキャッチし黒焦げのワイバーンを
敵陣に叩き込む。

オークの群れにアシェンティの熊父が
大剣をブンブン振り回し嬉々として暴れ
回っている。
おっさん楽しそうだな。

国軍も辺境伯軍も数日の小休止が効いた
のか元気に暴れている。

ジリジリと敵が下がり始める。
黒い森付近まで陣を下げてきた。

深追いは危険だ。
黒い森は魔物の森だ。中から何が出るか
分からない。
子供の頃にこの森には何度もキャンプの
訓練で放り込まれたので、
恐ろしさは肌で知っている。
深追いするなと皆に命じる。
青い伝令鳥が飛び交う。

敵は黒い森を背にそれ以上前に出てこない。
かといって撤退もしない。膠着状態。
前に出る事を禁じた自軍の兵達がそろそろ
焦れている。
罠臭い。
森から何か来そうだ。
撤退命令を出す。

──が、遅かった。

「人がいます!」

兵達に動揺が走る。
ゆっくりと敵を伺いながら後退していると
森に近い村から大勢の村人が穀物の収穫を
しているのが目に入る。

──砦に避難させたはずの領民がなぜ?

アシェンティの熊父がドスドスと村へ
駆けて行く。

「やられました。休戦に入ったと偽の情報
が領民の間にばら蒔かれています。
村の奴等、冬を前に作物の収穫が諦められ
なかったようで、休戦中に収穫しようと
したようです。女、子供も大勢います」

アシェンティの熊父が無念そうに言う。
砦の内側に敵がいたか。
──来るな。

「敵に包囲されています!」

敵に包囲されるのまでは分かるが。
一体、何が来る?
この程度の敵の包囲なら、領民を庇っても
何とかなる。
だが……。

「何だあれは!」

国軍の兵がざわつく。
辺境伯両軍の兵は呆然としていた。
黒い森の方から何か大きな生き物が
飛んで来る。

「竜だ。竜だぁ!!」

赤い竜が空から飛来する。
胸に剣が三本刺さった赤い大きな竜が
口を開けている。

──ブレスが来る!
ファイアブレス!!
俺は氷結魔法と風魔法を同時に繰り出す。
炎を凍らせ風で吹き飛ばす。
赤い伝令鳥を無数に飛ばす。

──総員退避命令。
何があっても振り返らず逃げろ!

国軍は一斉に退避を始めるが辺境伯領軍の
動きが鈍い。

「阿呆ども、とっとと逃げろ!」

「村人を置いて逃げられません!」

女、子供、老人は今からでは避難は間に
合わない。分かっている。

「俺が残る。命令ださっさと逃げろ!」

次々にブレスが飛んで来る。
お前らまで庇う余裕はない。さっさと
逃げろよ。無駄死にするぞ!

赤竜に電撃攻撃と風魔法の攻撃が命中する。
ラケットとカーマインだ。

「阿呆!お前らも退避しろ!!」

「は!やだね。竜と戦えるチャンスなんて
そうはないだろう!」

クソ。カーマイン……後で絶対に締め上げ
てやる。
ヤバい、頭の中で警報が鳴る。

「アイザック、アシェンティ、辺境伯領軍
を下げろ。命令だ!こんな人数庇える
余裕はない!退避しろ!!
ラケット!カーマインを下げろ!!」

俺の咆哮にやっと皆が動き出す。
遅い。
どこまでやれる?
何が来る?

ファイアブレスは防げるが……。
ふと、アニエスがくれたお守りの手巾を
思い出す。
赤竜が吐いていたブレスは黒かった。
ブレスの吐かれた先の地面は
広範囲に陥没していた。
あれ何だ?
局所的な攻撃じゃない?
広範囲の攻撃?
対峙した赤竜の口が黒い!

──来た!!

とっさに村へ防衛結界を張る。
赤竜に向かって行くカーマイン、
そしてそれを止めようとするアシェンティが
目に入る。
あ、あの馬鹿ども!
蔦蔓でカーマインと熊を捕獲し放り投げた。
その直後、物凄い衝撃が体を走る。

自分の防御が遅れた。
黒いエネルギー波。
地面がどんどん陥没する。
その場から全く動けない。
強い熱量と圧力
骨がバキバキと音をたてて折れていく。
気の遠くなるような痛み。
薄れ行く意識の中。
アニエスの泣き顔が浮かぶ。
悪い、約束守れない。

最後に見るアニエスの顔が泣き顔。
──笑った顔が見たいのに。

俺の意識はそこで途絶えた。



















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