王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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竜と『穴』

黒竜に『穴』の事を尋ねた。
お前は知らなかったかと言われた。
知る訳がないでしょう。
私的には竜じゃなくて人だもの。
黒竜から教えてもらわなければ
知りようがない。

なんだかなぁ。私の人生。
知らないところで好き勝手に滅茶苦茶に
されている。

生まれたばかりで自分の預かり知らない
私怨のために、竜の血が混じった騎士の血
を飲まされたのが始まり。
幼い頃から勝手に竜の血と魔力を与えられ、
婚姻鱗を食べさせられた。
魔力が上がり過ぎて死にかけたと
言っていたよね。

覚えがない。
死にかけたせいで記憶にないの?
それとも幼いせいで記憶に残らなかった?
青竜の事も一度しか見た覚えがない。
大体、金竜の末裔って何?
父様や兄達もそうなの?
おまけに家族に一服盛られて勝手に養子に
出された。

何一つ私が望んだものじゃない。
ほとんど竜って何?自覚ないよ。私は人。
あ~もう、やんなってきた。
それで?『穴』はなんなのよ。
さっさと話しなさいよ。

「チビすけ、怒ってる?顔が怖いぞ」

「こんだけ人生狂わされてヘラヘラしてる
方がおかしいでしょう。
いいから、『穴』の事を教えて」

しゅんとした顔の黒竜。
知らない。そんな顔されても。

「まあ、簡単にいえば竜の通り道だ。
本来の目的は巣穴から外界を繋ぐ通路
なんだ。通路を使って移動したり、
欲しいものを手に入れるために使うんだ。
俺が巣穴にいたまま、そこの小僧を
引っ張り込んだようにな」

小僧って、グレン様?
まあ、黒竜からしたら小僧か。
グレン様が小僧。ちょっと面白い。
グレン小僧様。ぷぷ。

「転移魔法とは違うのか?」

質問しながらグレン様は私の頬をつねる。
なぜ?

「転移魔法は一瞬だけ、空間を繋ぐんだ。
『穴』は繋がったままなんだよ。
言わば竜の生活道路みたいなもんだな。
活発な奴なら、そこら中『穴』だらけに
なるな。だから竜が住んでいる地域は
転移魔法がしずらくなる。
空間を繋ぐのに『穴』が邪魔するから」

「要するにモグラの穴と一緒って事?」

「確かに似たようなもんだが、モグラ……。
モグラ扱いか。なんか嫌だな。それ」

「なんで私は『穴』に落ちるの?他の人は
圧死するのに」

「他の人間が圧死するのは、通行権がない
からだろうな。そもそも竜の道だ。
本来なら作った本人にしか通れないんだ。
アニエスは黒、赤、青の竜の婚姻鱗を食べて
いる。
仮の番として通行権があるんだろうよ。
だから、俺の『穴』……う~ん。俺は道と
呼んでいるからなんか嫌だな『穴』って
なんかモグラになったみたいで。
……よせ。その冷たい視線。
え~と、アニエスには俺の『穴』と
赤と青の『穴』を
通る権利がある訳だ」

……通るっていうより落ちるんですけど。
しかも毎回気絶する。
通行権があるならもう少し優しい設計に
して欲しい。


「王都の『穴』からワイバーンやゴブリン、
火焔熊に帝国兵が転移してきたのは
どういう仕組みなの?」

「最初から荷物の運搬用に作った『穴』
なんだろう。通すものにその『穴』限定の
通行権を与えるんだ。輸送用の『穴』は
他の奴にも見えるしな。通行用のは他人には
見えないから区別がつくよ」

「帝国には赤竜が従っていたな。
王都の『穴』は赤竜が作ったものだとして、
魔物が帝国の指示通りに使役されているの
は、なぜなんだ?」

ああ、それ私も思いました。
なんで魔物は帝国の手先になっているの。

「北辺境には数家族、金竜の末裔がいると
言ったろう。アニエスの他にも竜化しそうな
奴がいたんだよ。
そいつが帝国に付いたんだろう。
金竜には魔物を操る能力があるんだ。
末裔にも時折受け継ぐ子供が生まれる。
アニエスも魔物の氾濫スタンピードの時に無意識に使ったろう?」

「あの唄を歌ってワイーバーンを操ったとか
いうやつ?あれ、金竜由来なんだ」

自分じゃ覚えてないんだけどね。
グレン様はむずかしい顔だ。

「帝国に付いた末裔は北方辺境伯領の者か?」

「さっきそう言ったろう?アニエスが嫌って
た奴がいたろう。あれだよ。あれ」

……私が嫌ってた奴?
そんなの一人しかいないよ。
私の幼馴染み。

「モニカ?モニカが金竜の末裔なの?
え、王都を襲った魔物はモニカが操って
いるの?嘘でしょ。だって彼女はお館様の
幼い頃からの婚約者だったのに……」

「モニカ・グラガンか?親子揃って帝国の
間諜として砦で拘束されているはずだが。
もし、そいつが魔物を操るほどの魔力持ち
なら『穴』も作れるのか?」

え?モニカが間諜?グレン様の言葉に
驚く。ええ~誰も教えてくれなかったよ。

「北方辺境は俺の縄張りだから、無理だな。
赤竜や青竜なら可能性はあるが」

「そうか。なら他にも砦の中に敵がいるな。
砦に避難していた領民に休戦したと偽情報
を流した奴がいる」

「グレン様、モニカは転移魔法が使えます。
ひょっとしたらもう、逃げているかも。
確認した方が良いと思います」

そう、辺境には私の他にも転移魔法が使える
人間が結構いる。
あ、ひょっとしたら転移魔法を使える人は
金竜の末裔なのかな?
でも、うちのマリック兄さんは使えないな。
全員が能力を引き継ぐ訳ではないのか。
まあ、そりゃそうか。

「……砦が不安だな。戻るか。黒竜、俺達を
戻してくれないか?」

グレン様が黒竜に言う。
うん。確かに心配。
でも、まだまだ聞きたい事が山の様にある
のに。それに七年ぶりに会えたばかりで
また別れるの?
私、プリプリ怒ってちゃんと『なんで?』
と、黒竜の話を聞いていない。
もっと話したい。
このまま、また会えなかったら悲しい。

「一度、戻るね黒竜。……また、会える?」

黒竜は少し困った様に笑う。

「俺の事、怒っているんじゃないのか。
もう、会いたくないとか言わないのか?」

あ~。勝手に血と魔力を飴玉にして私に
与えたり、婚姻鱗を食べさせた事ね。
怒ってるよ。でも、
ま、もういいや。
今更怒っても仕方ないし、
………友達だしね。

「怒っているけど、もういいや。
また来るね黒竜。また、話を聞かせて」

「分かった。また、ここに来たいと思ったら
『穴』を見つけて飛び込め。
この辺りの『穴』はここに繋がっている。
お前と小僧には通行権を付けた。いつでも
ここに来れるからな」

「うん。ありがとう。ところで砦に行き
たいんだけれど……。ここ、どこ?」

「ん?ああ、砦の真下だな」

「「え?」」

私とグレン様の声が重なる。
え?黒竜の巣って砦の下にあったの?
それいつから?
私はここに初めて来たわよ?

「竜の巣の上には建物が建つことが多いんだ。
漏れた魔力がその上にいる奴等の力を底上げ
するようで、神殿だの宮殿だの城だのが
勝手にできるんだよ。俺は砦がてきる前から
ここに住んでいるのに」

……成る程、パワースポットな訳ね。

「砦に『穴』はあるか?そこから戻れるか?」

「あるぞ。今、送ってやるよ。またな。
また、来いよ。ガキども」

え?体か何かに吸い込まれるような感覚。
グレン様が私を抱き抱える。
え?──気が遠くなる。また気絶するの私。

暗転する。

私の意識はそこで途絶えた。











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