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アニエス、グレン、帰還する
「ヒン!ヒン!ブルブル、ヒヒ~ン!」
ん?馬?目が覚めると目の前に馬の顔。
あれ、この子は……グレン様のお馬さん。
名前は確かコルトだっけ。
なんか、必死にグレン様に鼻先をスリスリ
している。
……黒竜に砦に送ってもらったけれど、
私また失神したのね。グレン様は片手で私を
抱き上げ、もう片方の手でお馬さんの
首辺りをポンポンと
軽く叩いている。
お馬さんは大喜びだ。
──そうか。この子もグレン様がいなく
なって心配していたんだ。
すごい喜びよう。
あ、ここ。砦の馬屋だ。
こんな所に『穴』があったんだ。
「ごめんなさい。私また気絶しましたね。
下ろして下さいグレン様」
そっと下ろされるが、腕を軽く引かれた。
グレン様の方へ引き寄せられる。
近づいて来るグレン様の顔。
え?ここでキスする?
唇が重なる。
あ、グレン様のキス。
──気持ちいい。
深い口付けに体の力が抜けそう。
ずっとこうしていたい。
「真っ赤だ。やっぱりタコになるんだな」
唇を離し、にんまり笑うグレン様。
う、やだな。物足りないと思ってしまった。
恥ずかしい。更に赤くなる。
「タコじゃないですぅ!もう!」
ポカスカグレン様の胸を叩く。
グレン様はいい笑顔。
それにしても、白い軍服がズタボロ、
血まみれ。泥だらけ。
本人は元気そうだけれど、本当にもう
体はなんともないのだろうか。
ちよっと心配。
「やっとキスできたな。黒竜の巣で、キス
したくて堪らなかった」
そう、言いながらもう一度、啄むように
口付けられた。
うん。私もしたかった。
「アニエスを補充した事だし、さてやるか」
「ああ、ねぇ。そうですね」
私は空間収納から剣を取り出す。
「お、アニエス、便利だな。俺も空間収納
の修練でもするかな。
いつでも武器を出せるのは安心だろ?」
「そうですよね。ロイシュタール様に襲われ
た時にも武器を持っていれば、もう少し
なんとかなったのに。あれから武器を
持ち歩くようにしたんです」
「あの人か。指輪が発動したんだよな?」
話しながら剣を抜くグレン様。
ヒン、ヒンとお馬さんがもっと撫でろと
鳴いている。
「本当に怖かったですよ」
私も話しながら馬屋の扉を開ける。
「いずれきっちりと仕返しをしないとな?」
斬りかかってきた敵を三人あっという間に
切り捨てる。グレン様。
私も一人蹴りをいれて吹っ飛ばし、もう一人
は斬りかかってきたので返り討ちにする。
ずいぶん敵に入り込まれているなぁ。
これは、中から手引きした奴がいるよね。
砦の中は帝国兵が入り込み、そこかしこで
戦闘になっている。
「グ、グレン様……グレン様だ。グレン様が
戻られたぞ!」
「本当だ!グレン様だ!」
敵に押され気味だった砦の兵達がグレン様に
気がつき歓声を上げ、俄に活気づく。
やっぱり総大将が帰還したのは味方の士気を
爆上がりさせるよね。
「グレン様!!無事かぁ~!!」
敵を薙ぎ倒しながらオレンジ頭の
カーマイン卿が走ってくる。
うわ、また泣いてますよ。
カバリとグレン様に抱きつく。
あ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
「阿呆!男に抱きつかれて嬉しい訳が
ないだろう!さっさと離せカーマイン!」
あ、グレン様がお怒りです。
私の足元まで凍らせるのはやめて下さい。
そして、早く自分達で戦って。
なんで私があなた達を守っているの?
忙しいんですけれど。
「グレン様!生きてる!怒鳴ってる。
怒鳴ってる。やった!怒られたぞ!やった!やった!」
カーマイン卿、怒られて喜んでますけど。
泣きながらグレン様に抱きついたままで。
やっぱり……ムフフオレンジはグレン様が
好きなのかしら。ふ~ん。……ムフフフフ。
「アニエス、寒い事を考えるな!いい加減
離れろカーマイン!」
あ、ひどい。グレン様、ムフフオレンジを
蹴り飛ばした。
「グレン!グレン!グレン!!」
カーマイン卿をやっとの事で引き剥がした
直後にプリシラ様が泣きながら走ってきて
グレン様に抱きつく。
あ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
「生きてた。生きてた。生きてたよ~!
グレン、グレン、グレン!!」
プリシラ様号泣。あ、ちょっともらい泣き。
心配してましたもんね。
あんなに顔色悪くなるまで。
握りしめた手が白くなるまで。ぐすっ。
「プリシラ、心配かけたな。……そろそろ
離れないと吐くぞ。それに後ろで旦那が
嫉妬で泣いているぞ」
あ、お館様が泣いてる。
プリシラ、やっぱりグレン様がいいのか!
とか言いながら泣いてる。
いや、それは私も困る。
もう、みんな自分で戦って。
なんで私しか戦ってないの!
お館様の周りの敵も火炎魔法で火ダルマ
にする。
「あれ?気持ち悪くない。吐き気がない。
え?どうして?あなたグレンだよね。
間違いないよね。本物だよね?
なんで抱きついても魔力酔いしないの?」
困惑するプリシラ様。
ああ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
「おそらく、死にかけたせいで魔力の質が
変わったんだろう。とりあえず離せ。な?」
プリシラ様がグレン様から渋々離れる。
その直後、ドスドスとうちの父様が
敵を薙ぎ倒し、泣きながら走って来る。
ガバリとグレン様に抱きつく父様。
ああ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
もーいい加減にして!
自分で戦ってよ!と思ったら、
私の周りの敵が一斉に燃え上がる。
あ、……ヤバい。マックス義兄様だ。
「君はまた、勝手に一人で動いたね?」
ああ、やっぱりお怒りだ。
心配かけてごめんなさい。
「ごめんなさい。マックス義兄様」
「無事ならいい。グレン様を見つけてくれ
たんだね。すごいよ、アニエス。
君が消えた時はどうしようかと思ったけど。
良かった。二人とも無事で……」
マックス義兄様に抱きしめられる。
心配かけてごめんなさい。
「マックス、アニエスから離れろ!」
あ、グレン様がお怒りだ。
やだ。嫉妬?嫉妬ですか?ちょっと嬉しい。
その後も次々グレン様に抱きつく人が続出。
もう、みんな戦闘中なのにね。
なんだかんだで、砦の中の敵はすべて討ち
とった。
もみくちゃにされるグレン様。
ちょっと面映ゆい顔。ふふ。
「グレン!やっぱり生きてたな!はは!」
アルフォンス様も砦に戻って来ていた。
満面の笑みだ。
「アルフォンス、悪いな。俺のせいで、
辺境まで来させて。
王都を離れたくなかっただろう?」
「いや、お前の無事な姿が見れたんだ。
来た甲斐があったさ」
爽やかにハグする二人。絵になる。
後ろでラケット将軍が静かに泣いている。
グレン様、みんなに慕われていますね。
──良かった。この人が失われなくて。
みんなのところに帰って来れて。
グレン様も私も無事に砦に帰還した。
ん?馬?目が覚めると目の前に馬の顔。
あれ、この子は……グレン様のお馬さん。
名前は確かコルトだっけ。
なんか、必死にグレン様に鼻先をスリスリ
している。
……黒竜に砦に送ってもらったけれど、
私また失神したのね。グレン様は片手で私を
抱き上げ、もう片方の手でお馬さんの
首辺りをポンポンと
軽く叩いている。
お馬さんは大喜びだ。
──そうか。この子もグレン様がいなく
なって心配していたんだ。
すごい喜びよう。
あ、ここ。砦の馬屋だ。
こんな所に『穴』があったんだ。
「ごめんなさい。私また気絶しましたね。
下ろして下さいグレン様」
そっと下ろされるが、腕を軽く引かれた。
グレン様の方へ引き寄せられる。
近づいて来るグレン様の顔。
え?ここでキスする?
唇が重なる。
あ、グレン様のキス。
──気持ちいい。
深い口付けに体の力が抜けそう。
ずっとこうしていたい。
「真っ赤だ。やっぱりタコになるんだな」
唇を離し、にんまり笑うグレン様。
う、やだな。物足りないと思ってしまった。
恥ずかしい。更に赤くなる。
「タコじゃないですぅ!もう!」
ポカスカグレン様の胸を叩く。
グレン様はいい笑顔。
それにしても、白い軍服がズタボロ、
血まみれ。泥だらけ。
本人は元気そうだけれど、本当にもう
体はなんともないのだろうか。
ちよっと心配。
「やっとキスできたな。黒竜の巣で、キス
したくて堪らなかった」
そう、言いながらもう一度、啄むように
口付けられた。
うん。私もしたかった。
「アニエスを補充した事だし、さてやるか」
「ああ、ねぇ。そうですね」
私は空間収納から剣を取り出す。
「お、アニエス、便利だな。俺も空間収納
の修練でもするかな。
いつでも武器を出せるのは安心だろ?」
「そうですよね。ロイシュタール様に襲われ
た時にも武器を持っていれば、もう少し
なんとかなったのに。あれから武器を
持ち歩くようにしたんです」
「あの人か。指輪が発動したんだよな?」
話しながら剣を抜くグレン様。
ヒン、ヒンとお馬さんがもっと撫でろと
鳴いている。
「本当に怖かったですよ」
私も話しながら馬屋の扉を開ける。
「いずれきっちりと仕返しをしないとな?」
斬りかかってきた敵を三人あっという間に
切り捨てる。グレン様。
私も一人蹴りをいれて吹っ飛ばし、もう一人
は斬りかかってきたので返り討ちにする。
ずいぶん敵に入り込まれているなぁ。
これは、中から手引きした奴がいるよね。
砦の中は帝国兵が入り込み、そこかしこで
戦闘になっている。
「グ、グレン様……グレン様だ。グレン様が
戻られたぞ!」
「本当だ!グレン様だ!」
敵に押され気味だった砦の兵達がグレン様に
気がつき歓声を上げ、俄に活気づく。
やっぱり総大将が帰還したのは味方の士気を
爆上がりさせるよね。
「グレン様!!無事かぁ~!!」
敵を薙ぎ倒しながらオレンジ頭の
カーマイン卿が走ってくる。
うわ、また泣いてますよ。
カバリとグレン様に抱きつく。
あ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
「阿呆!男に抱きつかれて嬉しい訳が
ないだろう!さっさと離せカーマイン!」
あ、グレン様がお怒りです。
私の足元まで凍らせるのはやめて下さい。
そして、早く自分達で戦って。
なんで私があなた達を守っているの?
忙しいんですけれど。
「グレン様!生きてる!怒鳴ってる。
怒鳴ってる。やった!怒られたぞ!やった!やった!」
カーマイン卿、怒られて喜んでますけど。
泣きながらグレン様に抱きついたままで。
やっぱり……ムフフオレンジはグレン様が
好きなのかしら。ふ~ん。……ムフフフフ。
「アニエス、寒い事を考えるな!いい加減
離れろカーマイン!」
あ、ひどい。グレン様、ムフフオレンジを
蹴り飛ばした。
「グレン!グレン!グレン!!」
カーマイン卿をやっとの事で引き剥がした
直後にプリシラ様が泣きながら走ってきて
グレン様に抱きつく。
あ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
「生きてた。生きてた。生きてたよ~!
グレン、グレン、グレン!!」
プリシラ様号泣。あ、ちょっともらい泣き。
心配してましたもんね。
あんなに顔色悪くなるまで。
握りしめた手が白くなるまで。ぐすっ。
「プリシラ、心配かけたな。……そろそろ
離れないと吐くぞ。それに後ろで旦那が
嫉妬で泣いているぞ」
あ、お館様が泣いてる。
プリシラ、やっぱりグレン様がいいのか!
とか言いながら泣いてる。
いや、それは私も困る。
もう、みんな自分で戦って。
なんで私しか戦ってないの!
お館様の周りの敵も火炎魔法で火ダルマ
にする。
「あれ?気持ち悪くない。吐き気がない。
え?どうして?あなたグレンだよね。
間違いないよね。本物だよね?
なんで抱きついても魔力酔いしないの?」
困惑するプリシラ様。
ああ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
「おそらく、死にかけたせいで魔力の質が
変わったんだろう。とりあえず離せ。な?」
プリシラ様がグレン様から渋々離れる。
その直後、ドスドスとうちの父様が
敵を薙ぎ倒し、泣きながら走って来る。
ガバリとグレン様に抱きつく父様。
ああ~後ろに敵がぁ。
仕方がないので私が処理する。
もーいい加減にして!
自分で戦ってよ!と思ったら、
私の周りの敵が一斉に燃え上がる。
あ、……ヤバい。マックス義兄様だ。
「君はまた、勝手に一人で動いたね?」
ああ、やっぱりお怒りだ。
心配かけてごめんなさい。
「ごめんなさい。マックス義兄様」
「無事ならいい。グレン様を見つけてくれ
たんだね。すごいよ、アニエス。
君が消えた時はどうしようかと思ったけど。
良かった。二人とも無事で……」
マックス義兄様に抱きしめられる。
心配かけてごめんなさい。
「マックス、アニエスから離れろ!」
あ、グレン様がお怒りだ。
やだ。嫉妬?嫉妬ですか?ちょっと嬉しい。
その後も次々グレン様に抱きつく人が続出。
もう、みんな戦闘中なのにね。
なんだかんだで、砦の中の敵はすべて討ち
とった。
もみくちゃにされるグレン様。
ちょっと面映ゆい顔。ふふ。
「グレン!やっぱり生きてたな!はは!」
アルフォンス様も砦に戻って来ていた。
満面の笑みだ。
「アルフォンス、悪いな。俺のせいで、
辺境まで来させて。
王都を離れたくなかっただろう?」
「いや、お前の無事な姿が見れたんだ。
来た甲斐があったさ」
爽やかにハグする二人。絵になる。
後ろでラケット将軍が静かに泣いている。
グレン様、みんなに慕われていますね。
──良かった。この人が失われなくて。
みんなのところに帰って来れて。
グレン様も私も無事に砦に帰還した。
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カクヨム、小説家になろうでも公開しています。