63 / 135
アニエス、ピンクとの遭遇
「それでモニカ・グラガンには逃げられた訳
だな。父親は獄中で不審死か。キナ臭いな」
湯浴みして新しい軍服に着替えたグレン様。
お館様からの報告を受ける。
砦に敵が侵入したのはモニカの仕業だった。
砦の門番がモニカの信奉者で帝国兵を
王都からの極秘の増援部隊と言われ、
信じて通したらしい。お馬鹿さん!
……ああ、大丈夫なの砦の守り。
でもモニカは変に押しの強い子だからなぁ。
自分の都合の良い方向に話しを持っていく
のが上手い。
あの子から嫌われている私は結構、ひどい
目に遇わされたっけ。
「砦の混乱に乗じて逃げたようです。あれは
転移魔法も使えますから……。
申し訳ありません。私の元婚約者が、間諜。
しかも、帝国と休戦したとの偽情報もあれ
が流したものでした。
領民の命を危険に晒すなどお詫びのしよう
がありません。
如何様な処分もお受けします」
頭を下げるお館様。
モニカとは幼い頃からの婚約者。
仲睦まじいと思っていたけれど、違った。
王命で婚約解消になったのが、
きっかけかと思ったら、かなり前から
こちらの情報を流していたみたい。
父親が間諜だったからかな。
でも、その父親も死んだし、彼女は何
を考えて行動しているのだろう。
「モニカ・グラガンに関してはこちらも
帝国の間諜と知っていて泳がせていた。
お前だけの責ではない。
それより砦の中に易々と敵を引き入れた
事の方が問題だろう。
簡単に騙され過ぎだ。
マックス、悪いが面倒をみてやってくれ」
「……また、ですか。もう辺境人の教育は
熊、三匹だけで懲り懲りなんですけどね」
「ま、そう言うな。マリオン、マークにも
手伝わせろ。プリシラも頼む」
「そうねぇ。どこまで意識が向上するかは
分からないけれど努力はするわ」
「さて、残るは……アルフォンス。あれは
どうすればいい?」
グレン様は窓の外に視線を移す。
窓の外の景色一面、ピンク色。
うねうね、にょろにょろ。
ピイちゃん達の群れだ。
今回の攻撃で沢山の魔物を食べた
ピイちゃん達。大増殖しました。
もう、この数は収納できません。
今回も魔物相手に大活躍しました。
火炙りの刑は可哀想。
最初の子達も焼かないで生かしてあげれば
良かった。
この子達は魔物は襲うけれど人は襲わない。
魔物が去った今はただピイ、ピイうるさい
だけの花の群れだ。
「実はすごい存在だと思うけど。何匹か
研究のために貰うよ。
魔物だけに反応し、自己増殖する。
改良によっては防衛結界の代わりにも
なり得ると思う。
今は番犬代わりにとりあえずこのまま放置
でいいよ。害はない。むしろ砦や、国軍の
陣営の護りにもなるだろう。
鳴き声の騒音に関しては俺が防音結界を
張るよ。アニエス、後で俺と引っ込め方を
練習しよう。
本当に君は面白いなぁ」
ピイちゃん達の首の皮が繋がりました。
てっきり焼却処分になるかと思いました。
良かった。
うーん。なんで出したのに引っ込められ
ないんだろう。
まあ、まだ練習もしていないから
今後に期待しよう。
私がグレン様の失踪現場に行くために
父様やラケット将軍、アルフォンス様、
小規模とはいえ、軍勢を組織して黒い森の
手前まで派兵した。
その隙を狙い砦に奇襲をかけられた。
私が『穴』に飛び込み消えた後、伝令鳥で
砦への奇襲攻撃を知り、急ぎ戻ったとの事。
大事に至らなくて本当に良かった。
ただ砦の兵にかなりの負傷者が出た。
治癒魔法が使える者が総動員され治療に
あたる。
砦の広場に負傷者が集められている。
私は治癒魔法が、得意ではないけれど
止血ぐらいはできるので、助手代わりに
アルフォンス様と治療にあたった。
「……アルフォンス様。なんか怪しい人が
いますけど、あれなんでしょうね?」
負傷者を治療する治癒魔法士の中に
スカーフで頬被りした怪しい動きをする
若い女性がいる。
いや、治療は真面目にしているけれど
アルフォンス様や私の前に来ると挙動不審。
なんだろうあれ?
「あれな?なんだろうな。怪しいにもほどが
あるよな。どうしようか」
やっぱり、アルフォンス様も不審に思って
いました。怪しいもんね。
……もしや、モニカの変装?
あの子も治癒魔法ができたはず。
──怪しい。確かめてみよう。
私はそっと、頬被りの女性の後に立ち、
無言でパッと彼女の被っていたスカーフを
剥がした。悲鳴が上がる。
「や~!何するのよぉ!!」
金髪に赤茶の瞳。嘘でしょう?
両手で今さら顔を隠す彼女。
もう遅い。
もう顔を見ちゃった。
彼女から剥がしたスカーフを握りしめ
呆然とする私。
あ、アルフォンス様も呆然としている。
なんで辺境に彼女がいるの。
「………なんでこんな所にいるのです?
マルクス伯爵令嬢。またアルフォンス様の
追っかけですか?命懸けですね」
残念ピンクことマルクス伯爵令嬢。
ピンクをこよなく愛するアルフォンス様の
追っかけ令嬢。
私はこの人に絡まれて過去二回、『穴』に
落ちている。
大変、縁起の悪いお嬢様だ。
最近姿を見ないのでお嫁にでも行ったかと
思えば、こんな所で遭遇する。
……第二騎士団の制服を来ている。
つまり、今は私と同じ服装。なんか嫌。
でも髪留めがピンクだわ。主張してるなぁ。
「……王太子様に、今は陛下だけれど。
あんたの『穴』落ちの責任をとらされ
たのよ。二度目だから見逃せないって!
私、治癒魔法が使えるから、辺境での
懲罰労働よ。
もう笑いたければ、笑いなさいよ!」
「え?あの後からずっと辺境で労働ですか?
それは罪が重過ぎませんか?
一度目はともかく、二度目は確かに絡まれ
ましたけど別に突き飛ばされた訳でもなく
私が勝手に『穴』に落ちたのに」
そう、バルコニーに大きな『穴』があって
落ちて白竜の所に飛ばされた。
でも、あれのお陰で白竜と話せたし、
グレン様が生贄にならずに済んだ。
まあ、私は死にかけたけれど。
辺境での懲罰労働。
王都の伯爵令嬢が……なんか気の毒。
しかも今の辺境は戦場だ。
お嬢様には辛かろう。
「戦時中だから今すぐには難しいかも知れ
ませんが、私から王都に戻れるように頼ん
でみましょうか?」
すぐに食い付いて来ると思ったけれど
彼女は首を横に振る。
「こんな負傷者が沢山出る状況で王都に
なんて帰れないわよ。
それに私、家を勘当されたから。
もう、平民。もう、辺境で骨を埋めるわ!」
「え?勘当!なんでまた」
「王太子様に直接処罰されたのよ。家の恥。
そりゃ勘当されるわよ。
もう、二度とアルフォンス様にお目にかかれ
ないと諦めていたけれど……。
神様ありがとうございます。また、会えた」
涙ぐむ残念ピンク。
この人本当にアルフォンス様が好きなんだ。
う~ん。頭は残念だけれど。
実はいい子?
でも、報われない恋だなぁ。
アルフォンス様にはアイリスさんがいる。
「あの……実はアルフォンス様には……」
う、言い出し難い。
「他に好きな人がいるんでしょ。知ってる。
アイリス様よね。仕方がないわ。
でも好きなの。遠くで見つめるだけでいい。
少しでも、お話しできたら幸せなの。
アイリス様は王女宮からあまり出て来ない。
アルフォンス様が可哀想。
第二王女様がアイリス様を手放さないのが
悪いのよ!許せない」
あ~。前に姫様の悪口を言ったのは、
そういう理由かぁ。
なんだ。実はいい子だわ。
不器用だなぁ。
うるさく付きまとうからアルフォンス様から
避けられていたものね。
なんか、不憫だ。
「姫様もアルフォンス様とアイリスさんの
ことは気にかけてます。
自分のせいだと気にしてますよ」
「……呪い早く解ければいいのに。解ければ
アルフォンス様が幸せになれるのに……」
──本当にそう。
あれ?バルコニーの『穴』は白竜の所に
繋がっているのかな?
それともやっぱりあの王都郊外の森の木?
青竜はあそこで何をしていたのだろう。
青い魔法陣……ロイシュタール様の目的は
なんだろう?
「案山子!ちょっと大丈夫?あんた顔色悪い
わよ。少し休んだら?」
……案山子ね?どうせ田舎者ですよ。
ふふ。もう、あだ名で定着してるんだなぁ。
案山子ね。ふふふ。
──休めって?確かに疲れたな。
なんか可笑しい。残念ピンクに労られる日が
くるなんて。ふふふ。
「マルクス伯爵令嬢、私の名前はアニエス
です。案山子ではありませんよ」
「はい、はいアニエス様。私はもう伯爵令嬢
じゃございません。ただのドーラよ」
「様はいりません。ではドーラ、私は疲れた
ので休ませてもらいますね。
私の代わりにアルフォンス様の助手を
お願いできますか?」
「え!?嘘でしょう!え?アルフォンス様と
一緒に働けるの?一生の記念にする!
ありがとう!案山子、じゃなくてアニエス」
笑顔の残念ピンクじゃなくて、ドーラは
ものすごく可愛いかった。
ごめんなさい。アイリスさん。
叶わない恋にほんの少しだけ、思い出を
下さい。
アルフォンス様にドーラを引き会わせる。
困惑顔のアルフォンス様。
でも、私より優秀な助手ですよ。
ほら、作業効率がさっきより上がった。
私は広場から少し離れた場所で、
一生懸命働くドーラを微笑ましく見ていた。
……疲れた。壁に寄りかかっていたが辛い。
ここ数日、寝てなかったから眠い。
その場に座り込む。
ああ、駄目。こんな所で寝たら駄目。
──でも、眠い。
私は、うとうとと眠りに落ちていった。
だな。父親は獄中で不審死か。キナ臭いな」
湯浴みして新しい軍服に着替えたグレン様。
お館様からの報告を受ける。
砦に敵が侵入したのはモニカの仕業だった。
砦の門番がモニカの信奉者で帝国兵を
王都からの極秘の増援部隊と言われ、
信じて通したらしい。お馬鹿さん!
……ああ、大丈夫なの砦の守り。
でもモニカは変に押しの強い子だからなぁ。
自分の都合の良い方向に話しを持っていく
のが上手い。
あの子から嫌われている私は結構、ひどい
目に遇わされたっけ。
「砦の混乱に乗じて逃げたようです。あれは
転移魔法も使えますから……。
申し訳ありません。私の元婚約者が、間諜。
しかも、帝国と休戦したとの偽情報もあれ
が流したものでした。
領民の命を危険に晒すなどお詫びのしよう
がありません。
如何様な処分もお受けします」
頭を下げるお館様。
モニカとは幼い頃からの婚約者。
仲睦まじいと思っていたけれど、違った。
王命で婚約解消になったのが、
きっかけかと思ったら、かなり前から
こちらの情報を流していたみたい。
父親が間諜だったからかな。
でも、その父親も死んだし、彼女は何
を考えて行動しているのだろう。
「モニカ・グラガンに関してはこちらも
帝国の間諜と知っていて泳がせていた。
お前だけの責ではない。
それより砦の中に易々と敵を引き入れた
事の方が問題だろう。
簡単に騙され過ぎだ。
マックス、悪いが面倒をみてやってくれ」
「……また、ですか。もう辺境人の教育は
熊、三匹だけで懲り懲りなんですけどね」
「ま、そう言うな。マリオン、マークにも
手伝わせろ。プリシラも頼む」
「そうねぇ。どこまで意識が向上するかは
分からないけれど努力はするわ」
「さて、残るは……アルフォンス。あれは
どうすればいい?」
グレン様は窓の外に視線を移す。
窓の外の景色一面、ピンク色。
うねうね、にょろにょろ。
ピイちゃん達の群れだ。
今回の攻撃で沢山の魔物を食べた
ピイちゃん達。大増殖しました。
もう、この数は収納できません。
今回も魔物相手に大活躍しました。
火炙りの刑は可哀想。
最初の子達も焼かないで生かしてあげれば
良かった。
この子達は魔物は襲うけれど人は襲わない。
魔物が去った今はただピイ、ピイうるさい
だけの花の群れだ。
「実はすごい存在だと思うけど。何匹か
研究のために貰うよ。
魔物だけに反応し、自己増殖する。
改良によっては防衛結界の代わりにも
なり得ると思う。
今は番犬代わりにとりあえずこのまま放置
でいいよ。害はない。むしろ砦や、国軍の
陣営の護りにもなるだろう。
鳴き声の騒音に関しては俺が防音結界を
張るよ。アニエス、後で俺と引っ込め方を
練習しよう。
本当に君は面白いなぁ」
ピイちゃん達の首の皮が繋がりました。
てっきり焼却処分になるかと思いました。
良かった。
うーん。なんで出したのに引っ込められ
ないんだろう。
まあ、まだ練習もしていないから
今後に期待しよう。
私がグレン様の失踪現場に行くために
父様やラケット将軍、アルフォンス様、
小規模とはいえ、軍勢を組織して黒い森の
手前まで派兵した。
その隙を狙い砦に奇襲をかけられた。
私が『穴』に飛び込み消えた後、伝令鳥で
砦への奇襲攻撃を知り、急ぎ戻ったとの事。
大事に至らなくて本当に良かった。
ただ砦の兵にかなりの負傷者が出た。
治癒魔法が使える者が総動員され治療に
あたる。
砦の広場に負傷者が集められている。
私は治癒魔法が、得意ではないけれど
止血ぐらいはできるので、助手代わりに
アルフォンス様と治療にあたった。
「……アルフォンス様。なんか怪しい人が
いますけど、あれなんでしょうね?」
負傷者を治療する治癒魔法士の中に
スカーフで頬被りした怪しい動きをする
若い女性がいる。
いや、治療は真面目にしているけれど
アルフォンス様や私の前に来ると挙動不審。
なんだろうあれ?
「あれな?なんだろうな。怪しいにもほどが
あるよな。どうしようか」
やっぱり、アルフォンス様も不審に思って
いました。怪しいもんね。
……もしや、モニカの変装?
あの子も治癒魔法ができたはず。
──怪しい。確かめてみよう。
私はそっと、頬被りの女性の後に立ち、
無言でパッと彼女の被っていたスカーフを
剥がした。悲鳴が上がる。
「や~!何するのよぉ!!」
金髪に赤茶の瞳。嘘でしょう?
両手で今さら顔を隠す彼女。
もう遅い。
もう顔を見ちゃった。
彼女から剥がしたスカーフを握りしめ
呆然とする私。
あ、アルフォンス様も呆然としている。
なんで辺境に彼女がいるの。
「………なんでこんな所にいるのです?
マルクス伯爵令嬢。またアルフォンス様の
追っかけですか?命懸けですね」
残念ピンクことマルクス伯爵令嬢。
ピンクをこよなく愛するアルフォンス様の
追っかけ令嬢。
私はこの人に絡まれて過去二回、『穴』に
落ちている。
大変、縁起の悪いお嬢様だ。
最近姿を見ないのでお嫁にでも行ったかと
思えば、こんな所で遭遇する。
……第二騎士団の制服を来ている。
つまり、今は私と同じ服装。なんか嫌。
でも髪留めがピンクだわ。主張してるなぁ。
「……王太子様に、今は陛下だけれど。
あんたの『穴』落ちの責任をとらされ
たのよ。二度目だから見逃せないって!
私、治癒魔法が使えるから、辺境での
懲罰労働よ。
もう笑いたければ、笑いなさいよ!」
「え?あの後からずっと辺境で労働ですか?
それは罪が重過ぎませんか?
一度目はともかく、二度目は確かに絡まれ
ましたけど別に突き飛ばされた訳でもなく
私が勝手に『穴』に落ちたのに」
そう、バルコニーに大きな『穴』があって
落ちて白竜の所に飛ばされた。
でも、あれのお陰で白竜と話せたし、
グレン様が生贄にならずに済んだ。
まあ、私は死にかけたけれど。
辺境での懲罰労働。
王都の伯爵令嬢が……なんか気の毒。
しかも今の辺境は戦場だ。
お嬢様には辛かろう。
「戦時中だから今すぐには難しいかも知れ
ませんが、私から王都に戻れるように頼ん
でみましょうか?」
すぐに食い付いて来ると思ったけれど
彼女は首を横に振る。
「こんな負傷者が沢山出る状況で王都に
なんて帰れないわよ。
それに私、家を勘当されたから。
もう、平民。もう、辺境で骨を埋めるわ!」
「え?勘当!なんでまた」
「王太子様に直接処罰されたのよ。家の恥。
そりゃ勘当されるわよ。
もう、二度とアルフォンス様にお目にかかれ
ないと諦めていたけれど……。
神様ありがとうございます。また、会えた」
涙ぐむ残念ピンク。
この人本当にアルフォンス様が好きなんだ。
う~ん。頭は残念だけれど。
実はいい子?
でも、報われない恋だなぁ。
アルフォンス様にはアイリスさんがいる。
「あの……実はアルフォンス様には……」
う、言い出し難い。
「他に好きな人がいるんでしょ。知ってる。
アイリス様よね。仕方がないわ。
でも好きなの。遠くで見つめるだけでいい。
少しでも、お話しできたら幸せなの。
アイリス様は王女宮からあまり出て来ない。
アルフォンス様が可哀想。
第二王女様がアイリス様を手放さないのが
悪いのよ!許せない」
あ~。前に姫様の悪口を言ったのは、
そういう理由かぁ。
なんだ。実はいい子だわ。
不器用だなぁ。
うるさく付きまとうからアルフォンス様から
避けられていたものね。
なんか、不憫だ。
「姫様もアルフォンス様とアイリスさんの
ことは気にかけてます。
自分のせいだと気にしてますよ」
「……呪い早く解ければいいのに。解ければ
アルフォンス様が幸せになれるのに……」
──本当にそう。
あれ?バルコニーの『穴』は白竜の所に
繋がっているのかな?
それともやっぱりあの王都郊外の森の木?
青竜はあそこで何をしていたのだろう。
青い魔法陣……ロイシュタール様の目的は
なんだろう?
「案山子!ちょっと大丈夫?あんた顔色悪い
わよ。少し休んだら?」
……案山子ね?どうせ田舎者ですよ。
ふふ。もう、あだ名で定着してるんだなぁ。
案山子ね。ふふふ。
──休めって?確かに疲れたな。
なんか可笑しい。残念ピンクに労られる日が
くるなんて。ふふふ。
「マルクス伯爵令嬢、私の名前はアニエス
です。案山子ではありませんよ」
「はい、はいアニエス様。私はもう伯爵令嬢
じゃございません。ただのドーラよ」
「様はいりません。ではドーラ、私は疲れた
ので休ませてもらいますね。
私の代わりにアルフォンス様の助手を
お願いできますか?」
「え!?嘘でしょう!え?アルフォンス様と
一緒に働けるの?一生の記念にする!
ありがとう!案山子、じゃなくてアニエス」
笑顔の残念ピンクじゃなくて、ドーラは
ものすごく可愛いかった。
ごめんなさい。アイリスさん。
叶わない恋にほんの少しだけ、思い出を
下さい。
アルフォンス様にドーラを引き会わせる。
困惑顔のアルフォンス様。
でも、私より優秀な助手ですよ。
ほら、作業効率がさっきより上がった。
私は広場から少し離れた場所で、
一生懸命働くドーラを微笑ましく見ていた。
……疲れた。壁に寄りかかっていたが辛い。
ここ数日、寝てなかったから眠い。
その場に座り込む。
ああ、駄目。こんな所で寝たら駄目。
──でも、眠い。
私は、うとうとと眠りに落ちていった。
あなたにおすすめの小説
番は君なんだと言われ王宮で溺愛されています
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私ミーシャ・ラクリマ男爵令嬢は、家の借金の為コッソリと王宮でメイドとして働いています。基本は王宮内のお掃除ですが、人手が必要な時には色々な所へ行きお手伝いします。そんな中私を番だと言う人が現れた。えっ、あなたって!?
貧乏令嬢が番と幸せになるまでのすれ違いを書いていきます。
愛の花第2弾です。前の話を読んでいなくても、単体のお話として読んで頂けます。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。
その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。
婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。
孤独な結婚生活を送る中。
ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。
始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。
他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。
そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。
だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。
それから一年ほどたった冬の夜。
カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。
そこには彼の想いが書かれてあった。
月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。
カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。
※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。
※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。
稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
呪われた黒猫と蔑まれた私ですが、竜王様の番だったようです
シロツメクサ
恋愛
ここは竜人の王を頂点として、沢山の獣人が暮らす国。
厄災を運ぶ、不吉な黒猫──そう言われ村で差別を受け続けていた黒猫の獣人である少女ノエルは、愛する両親を心の支えに日々を耐え抜いていた。けれど、ある日その両親も土砂崩れにより亡くなってしまう。
不吉な黒猫を産んだせいで両親が亡くなったのだと村の獣人に言われて絶望したノエルは、呼び寄せられた魔女によって力を封印され、本物の黒猫の姿にされてしまった。
けれど魔女とはぐれた先で出会ったのは、なんとこの国の頂点である竜王その人で──……
「やっと、やっと、見つけた──……俺の、……番……ッ!!」
えっ、今、ただの黒猫の姿ですよ!? というか、私不吉で危ないらしいからそんなに近寄らないでー!!
「……ノエルは、俺が竜だから、嫌なのかな。猫には恐ろしく感じるのかも。ノエルが望むなら、体中の鱗を剥いでもいいのに。それで一生人の姿でいたら、ノエルは俺にも自分から近付いてくれるかな。懐いて、あの可愛い声でご飯をねだってくれる?」
「……この周辺に、動物一匹でも、近づけるな。特に、絶対に、雄猫は駄目だ。もしもノエルが……番として他の雄を求めるようなことがあれば、俺は……俺は、今度こそ……ッ」
王様の傍に厄災を運ぶ不吉な黒猫がいたせいで、万が一にも何かあってはいけない! となんとか離れようとするヒロインと、そんなヒロインを死ぬほど探していた、何があっても逃さない金髪碧眼ヤンデレ竜王の、実は持っていた不思議な能力に気がついちゃったりするテンプレ恋愛ものです。
世界観はゆるふわのガバガバでつっこみどころいっぱいなので何も考えずに読んでください。
※ヒロインは大半は黒猫の姿で、その正体を知らないままヒーローはガチ恋しています(別に猫だから好きというわけではありません)。ヒーローは金髪碧眼で、竜人ですが本編のほとんどでは人の姿を取っています。ご注意ください。
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!
【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする
冬馬亮
恋愛
出会いは、ブライトン公爵邸で行われたガーデンパーティ。それまで婚約者候補の顔合わせのパーティに、一度も顔を出さなかったエレアーナが出席したのが始まりで。
彼女のあまりの美しさに、王太子レオンハルトと宰相の一人息子ケインバッハが声をかけるも、恋愛に興味がないエレアーナの対応はとてもあっさりしていて。
優しくて清廉潔白でちょっと意地悪なところもあるレオンハルトと、真面目で正義感に溢れるロマンチストのケインバッハは、彼女の心を射止めるべく、正々堂々と頑張っていくのだが・・・。
王太子妃の座を狙う政敵が、エレアーナを狙って罠を仕掛ける。
忍びよる魔の手から、エレアーナを無事、守ることは出来るのか?
彼女の心を射止めるのは、レオンハルトか、それともケインバッハか?
お話は、のんびりゆったりペースで進みます。
毒吐き蛇侯爵の、甘い呪縛
卯崎瑛珠
恋愛
カクヨム中編コンテスト 最終選考作品です。
第二部を加筆して、恋愛小説大賞エントリーいたします。
-----------------------------
「本当は優しくて照れ屋で、可愛い貴方のこと……大好きになっちゃった。でもこれは、白い結婚なんだよね……」
ラーゲル王国の侯爵令嬢セレーナ、十八歳。
父の命令で、王子の婚約者選定を兼ねたお茶会に渋々参加したものの、伯爵令嬢ヒルダの策略で「強欲令嬢」というレッテルを貼られてしまう。
実は現代日本からの異世界転生者で希少な魔法使いであることを隠してきたセレーナは、父から「王子がダメなら、蛇侯爵へ嫁げ」と言われる。
恐ろしい刺青(いれずみ)をした、性格に難ありと噂される『蛇侯爵』ことユリシーズは、王国一の大魔法使い。素晴らしい魔法と結界技術を持つ貴族であるが、常に毒を吐いていると言われるほど口が悪い!
そんな彼が白い結婚を望んでくれていることから、大人しく嫁いだセレーナは、自然の中で豊かに暮らす侯爵邸の素晴らしさや、身の回りの世話をしてくれる獣人たちとの交流を楽しむように。
そして前世の知識と魔法を生かしたアロマキャンドルとアクセサリー作りに没頭していく。
でもセレーナには、もう一つ大きな秘密があった――
「やりたいんだろ? やりたいって気持ちは、それだけで価値がある」
これは、ある強い呪縛を持つ二人がお互いを解き放って、本物の夫婦になるお話。
-----------------------------
カクヨム、小説家になろうでも公開しています。