王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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グレン、甘い夜?

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砦の前で陣営を張る国軍。
帰還した事を報告する俺。
皆が歓声を上げ俺の帰還を喜んでくれた。
わーわー!と歓声。グレン様!と呼ばれ、
おかえりなさい!と色々な声を掛けられる。
その歓声に混じって、少し離れた所から
ピイピイと大合唱が聞こえる。

アニエスの豆達だ。
一面のピンクの花畑。ゆらゆら、うねうね
と怪しい動きの花の群れ。
魔物がいなくなったので、黄色いアヒル足
は動かず、そのままの場所に静止。
留まったままだ。
あの初デートの折りに俺の蔦蔓を真似しよう
として出来た偶然の産物。
あまりの魔法センスに大笑いしたが……。

あれが大活躍したらしい。
魔物を捕らえて捕食し、自己増殖する。
改良次第では防衛結界の代わりにも成り得る
との話に呆然とする。

白竜を解放した後の道筋の一つになると
アルフォンスは言う。
まじか。
あれが救世主になるのか?
あれがか?
見れば見るほど怪しい。
ピイピイ鳴くからピイちゃん。
アニエスらしい安直なネーミングが笑える。

アルフォンスは嬉々としてアニエスの豆達の
研究を始めた。
ああなると、しばらくアルフォンスは使い物
にならない。研究馬鹿にも困ったものだ。

砦に戻り、アニエスを探す。
プリシラとマックスに聞いたら広場で
負傷者の治療をアルフォンスとしている
という。
さすがのアルフォンスも負傷者を放って
研究はしなかったか。エライ、エライ。
とりあえず、褒めておこう。

広場まで来た。負傷者が沢山いる。
マークがいた。
しかし、ザルツコードの五人兄弟は同じ顔。
オーウェンにそっくりだ。
少しずつ瞳の色が違うので、近くに寄って
瞳を確認しないと誰だか分からない。
もっと髪型を変えるとか、色を変えるとか
工夫してくれ。確認するのが面倒だ。

「マーク、治癒魔法で駆り出されたか。
ご苦労だな。アニエスを見なかったか?」

「あれ?さっきまで、アルフォンスと治療
にあたっていましたけれど……変だな。
姿が見えませんね。アルフォンスは別の
女性を助手にしてますね。探しますか?」

マークは治療中だ。
手を借りるのは自分で探してからにしよう。

「いや、アルフォンスに尋ねる。悪いな。
忙しいのに煩わせて」

「いえ、アニエスの所在を確認できて
いませんでした。申し訳ありません」

「いい。別の仕事中だ。そっちに集中しろ」

さて、アルフォンスの奴。なんでアニエス
と一緒にいない?
アルフォンスと今一緒にいるのは……確か、
アニエスを『穴』に落としてアルバートに
処罰された奴だな。
何でまたそんな奴と一緒にいる?

「アルフォンス、アニエスはどこだ?」

治療中のアルフォンスに声を掛ける。

「ああ、疲れたから少し休憩するって
そこに座って……あ、嘘だろ。
あんな所で寝てるよ。ヤバい風邪引くぞ」

アルフォンスが指差した方を見ると壁に
寄りかかって階段に座って寝ているアニエス
が目に入る。
何であんな所で寝ているんだよ。

近づいてアニエスに声をかけるが起きない。
すう、すうと寝息をたてている。
だが、顔色が悪い。
頬や首に触れると冷たい。嫌な感じだ。
声をかけながら体を揺するが目覚めない。
そのまま抱き上げて、アルフォンスの所に
連れていく。

「心配ない。眠っているだけだ。
ただ、アニエスはここに来る前に魔力枯渇
して、充分回復していない。
なのに辺境まで馬で早駆けして無理したし、
野宿だったし、お前が心配でここ数日、
あまり寝ていない。それに……。
青竜に襲われたのもショックだったみたい
で毎晩うなされていたよ。
体力的に限界だ。悪い。もっと早く
休ませればよかった。
ドーラがアニエスを休ませてくれたんだ。
顔色が悪いって、代わりに俺の助手を
してくれた」

ぺこりと助手の令嬢が俺に頭を下げる。
……この令嬢。なんだかアニエスと関係改善
したようだ。まあ、ならいいか。
しかし、アニエス。相当無理をしたな。
何をしても起きない。

「砦にこいつの部屋が用意されていたな?
とりあえずそこに連れていって休ませる。
温めないと……体が冷たい」

「そうだな。ゆっくり休ませてやれよ。
側にいてやれよ。可哀想なぐらい、
うなされるんだ。
目が覚めた時にいてやらないとな。
俺が付いていたのに、こんなになるまで
無理させてすまない」

「いや、アニエスのことだ。どうせ限界まで
ヘラヘラ笑っていたろうから、分からなくて
も仕方がない」

アルフォンスと別れアニエスの部屋に
向かう。
途中でプリシラに声をかけられた。

「彼女、見つかったのね。あら、寝ている。
少し、顔色悪いかしら?」

「辺境に来るのにかなり無理したらしい。
部屋で休ませる。着替えを頼みたい。
侍女を寄越してくれないか?」

「うん。うん。分かった。任しておいて。
ベテランに行ってもらうから。
グレン、あなたも少し休めば?治癒されて
いるけど、本当は大怪我したのよね?
体は大丈夫なの?
魔力が前と違うよね。前より強くなって
いるのに、前みたいに気持ち悪くないのが
不思議なんだけど……。
なぜだか理由に心当たりがある?」

「あるな。ま、推測だが。詳しい事は
はっきりしたら、話す。
そうだな、俺も休ませてもらおうか。
……確かに少し疲れた」

「彼女と同じ部屋でいいかしら。心配だから
側に付いていたいでしょう?」

「ああ、頼む」

アニエスの部屋に行き、ベッドに横たわ
らせる。頭を撫でるが反応はない。
侍女が三人来た。
アニエスの着替えを頼む。

「お嬢様の着替えの間、隣室に軽食が用意
してあります。グレン様、よろしければ
お召し上がり下さい」

軽食か……少し胃に入れて置くか。
ありがたく食べた。
サンドイッチとシフォンケーキ。
チョコレートソースはないが初デートを
思い出し、思わず口元がほころぶ。
また、二人で出掛けたい。
あれは楽しかった。

アニエスの着替えが終わり侍女が退室する。
さて、腹もくちた事だし。
寝るか。

すう、すうと穏やかな寝息のアニエス。
上掛けを捲り、静かに横に潜り込もう
として固まる。

「……プリシラよ。お前もか」

横たわるアニエスがピンクのすごいエロい
夜着を着せられている。

……体の力が抜けそうだ。

なんなんだ。俺の周りの女どもは何を考えて
いるのだろう。
みんなで俺で遊びやがって。

しばらくガン見した後、アニエスを丁寧に
上掛けでくるむ。
上掛けの上からギュっと抱きしめた。

……よしよし我慢強いぞ。エライなお前も。
自分の下半身を褒める。

……いつまでも、こんな事をされたら
体に悪い気がする。

覚えてろよ。プリシラめ。


甘い、甘い。アニエスの匂い。
薄く開いた唇にそっと口付ける。

長い夜になりそうだ。
俺は長い、長いため息をついた。



















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