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アニエス、そして王都
「おい、おいって!おい、起きろ!」
「おい、生きているのか?」
「第二騎士団の制服だな?何でこんな所に」
──寒い。冷たい。固い。
私、冷たい石畳の上に倒れている?
頭が痛い。顔も痛い。全身痛い。
そして、さっきからうるさい。
……ちょっと待って私は『穴』に
飛び込んだ。
一体どこに転移したの?
今、騒いでいるのは帝国兵?
私は満身創痍だ。
この体じゃ、もう逃げられない。
……どうしよう
目を開けるのが怖い。
誰かに抱き起こされる。
いや、怖い!
「うわ、女なのに顔が……手酷くやられて
いるな。ん?ちょっと待て。
この髪の色は……まさか!」
「うそだろ!……この方はヤバい。とにかく
団長に至急報告しろ!後は医者だ!
誰か毛布を持ってこい!」
「おい、誰か副団長にも連絡しろ!」
ん?団長に副団長?騎士団?帝国の?
恐る恐る目を開ける。
朝靄の中、目に入るのは……赤い騎士服。
騎士が数人、私を心配そうに
覗き込んでいる。
第三騎士団の制服。
「あ、気がついた!大丈夫ですか?」
「おい、毛布だ」
騎士様が毛布を持ってきて、私をくるむ。
え?何で第三騎士団がいるの。
──朝靄。
ああ、夜が明けている。
悪夢のような昨日が、いつの間にか
終わっていた。
辺りを見回す。……嘘。何で?
目の前にプチ・エトワール本店の看板が
見える。
そしてその前には大きな『穴』がある。
ここ、王都じゃないの~!しかも
プチ・エトワールの本店前の『穴』だ。
あの泉の前の『穴』はここに繋がって
いたのね。
呆然とする私。
え~と。とりあえず、帝国から生還した?
第三騎士団の騎士様達が、色々世話して
くれている間、ただぼ~っとしていた。
あまりの事に頭が追い付かない。
年若い少年騎士様が
温かい飲み物を手渡してくれる。
ホットチョコレート!
ホットチョコレート、ホットチョコレート!
お、美味し~い。口の中がズタズタで
目茶苦茶傷にしみるけど、生き返る~。
なんて素晴らしいチョイス。
ありがとう!
なんて、感動に打ち震えていたらドスドスと
足音が近づいて来る。
「アニエス!!」
あ、赤い制服の熊。セドリック兄さんだ。
兄さんが私を見て固まる。
ああまあ、殴られ過ぎて顔が腫れている
もんね。そりゃ驚くわ。
鏡を見なくても、顔を触った感じ、ヤバい
ぐらい顔の形が変わっている。
「お前それ!誰にやられた!!」
セドリック兄さんが大声で怒鳴る。
うわぁ。お怒っているよ。
誰ってねぇ。皇帝と言う名の
クズですけれど。
馬の足音と共に今度は馬に乗った
マルク義兄様が現れた。
馬上で私を視認するとやっぱり固まる。
慌てて、飛び降り駆け寄って来る。
「アニエス……誰にやられた?」
静かに私に尋ねるマルク義兄様。
ああ、温厚なマルク義兄様もお怒りだ。
なんだか現実感がない。
本当にここは王都?
ここに居るのはセドリック兄さんに
マルク義兄様で合っている?
これは夢で目が覚めたら、帝国でまだ
腕輪と鎖に繋がれていたりしないかな?
手に持ったホットチョコレートの入った
カップから伝わる温かさは、現実だと
言っているけれど。
「ここじゃ体が冷える。医者がまだ来ない
なら、ザルツコードの屋敷の方へ来てもら
おう。帰ろう?アニエス」
マルク義兄様がそう言って私に手を伸ばす。
帰る?
そうか、私にはザルツコードの家がある。
帰れる家がまだあるんだな。
でも、兄さん達は……。
母様との思い出の詰まった家。
私を産んで死んだ母様。
私には母様の思い出はない。
セドリック兄さん。
私とはまた受け止め方が違うかもしれない。
伝えなきゃ。
……怖いな。
焼け跡で見た父様の肩を落としたあの姿を
思い出す。辛いな。
悲しむ兄さんを見たくない。
「セドリック兄さん、アシェンティの家。
帝国に火をつけられて……燃えちゃったよ」
「え?!父上は無事か?」
「うん。平気」
「そうか……ならいい。人さえ無事なら」
「兄さんの本も全部燃えちゃったよ」
「また、集めるさ。いい家だったのにな。
……もう、帰れないんだなぁ。でも、父上も
お前も無事。兄さん達も王都でバリバリ
元気で働いている。それが幸せだと思う。
失くしたものは惜しいけれど、
思い出はなくならない。寂しいけれどな」
少し涙声のセドリック兄さん。
そう、もう帰れない。
私があの家を最後に見たのは、あの薬を
盛られて王都に送られた日が最期だ。
次に見た時は燃え落ちた姿になっていた。
寂しい。
ずっと帰りたいと思っていた
アシェンティの家。
父様も、兄さん達も、私にとっても
大切にしていた場所。
燃えてしまっても、ずっと覚えているよ。
セドリック兄さんが頭を撫でてくれる。
ポロリと涙がこぼれた。
ポロポロと次々涙がこぼれる。
家の焼け跡を見た後、帝国に拉致された。
まだ、昨日の出来事。
やっと夜が明けたばかり。
家を失った傷心と帝国から無事に脱出した
安堵。オズワルドに殴られた顔の痛みと
あのクズっぷりに対する怒り。
父様や、マックス義兄様にかけた心配。
きっと今頃、大騒ぎな砦の事を思う。
色々な気持ちがぐちゃ混ぜだ。
グレン様、今頃どうしているだろう。
きっと心配している。
ごめんなさい。
辺境に連絡してもらわないと。
──私は無事です。
今すぐに伝える手段が欲しい。北の辺境まで
最速の伝令鳥でどのくらいかかるのだろう。
「アニエス!」
え?幻聴?
グレン様の声で名前を呼ばれた。
ここは王都。
北の辺境にいるグレン様がたった一晩で
ここまで来られる訳がない。
でも……。
今の声
「アニエス?!」
まただ。今度はすぐ後ろで聞こえる。
「「「「グレン様?!」」」」
セドリック兄さん、マルク義兄様、
第三騎士団の騎士様達の驚いた声が重なる。
グレン様って言った。
うそ、うそ、うそ!
恐る恐る振り向く。
朝靄の中グレン様が立っていた。
私を見て一瞬、驚いた表情になる。
駆け寄ってくるグレン様。
私もよろめきながらグレン様の方へ
歩き出すがつまずいた。転ぶ!
と思ったがグレン様に抱き止められる。
戻ってこれた。
グレン様の腕の中。
「グレン様!グレン様!グレンさまぁ!」
大泣きする私をしっかり抱きしめてくれる
グレン様。
白い軍服が私の血で汚れている。
ごめんなさい。でも……。
ぎゅうぎゅうしがみつく。
もっとしっかり抱きしめて。
気が済むまで泣いた。
途中、立っていられず膝折れした私を
グレン様は抱き上げてくれた。
少し落ち着いた頃、グレン様が頬にそっと
触れる。
「……誰にやられた?」
「……クズに」
「ああ?」
「皇帝と言う名のクズです。オズワルド。
あのクズに目茶苦茶、殴られました」
「そうか。あの馬鹿か。アニエス約束する。
必ず……殺してやるからな?」
「ううん。いい……グレン様の手を煩わせ
たくないです」
私は首を横にふる。
私の返答にグレン様が怒りの形相だ。
魔王降臨。
「アニエス、俺がぶち殺したいんだ」
グレン様の首にしがみつきながら私は彼の
耳元で呟く。
「大丈夫……あいつは私のこの手で……。
ええ、必ず。ぶち殺しますから」
グレン様の顔を見る。
あ、目が真ん丸だ。レア。
「ふ、そうか。なら、手伝う」
ちょっと苦笑するグレン様。
私を抱き上げたまま、くるくると回る。
わ~グレン様のくるくるだ!
これ好き。
思わず笑顔になる私。
「よし。笑ったな」
そう、笑顔で囁くとグレン様は私に
そっと口付けた。
朝靄の王都。私達以外はドン引き。
ちょっとだけ、周りが気になったけれど。
バカップルを許してね。
グレン様。
追いかけて来てくれた。
大好きだよ。
私達は長い、長いキスをした。
止まったはずの涙がまたポロリと流れた。
「おい、生きているのか?」
「第二騎士団の制服だな?何でこんな所に」
──寒い。冷たい。固い。
私、冷たい石畳の上に倒れている?
頭が痛い。顔も痛い。全身痛い。
そして、さっきからうるさい。
……ちょっと待って私は『穴』に
飛び込んだ。
一体どこに転移したの?
今、騒いでいるのは帝国兵?
私は満身創痍だ。
この体じゃ、もう逃げられない。
……どうしよう
目を開けるのが怖い。
誰かに抱き起こされる。
いや、怖い!
「うわ、女なのに顔が……手酷くやられて
いるな。ん?ちょっと待て。
この髪の色は……まさか!」
「うそだろ!……この方はヤバい。とにかく
団長に至急報告しろ!後は医者だ!
誰か毛布を持ってこい!」
「おい、誰か副団長にも連絡しろ!」
ん?団長に副団長?騎士団?帝国の?
恐る恐る目を開ける。
朝靄の中、目に入るのは……赤い騎士服。
騎士が数人、私を心配そうに
覗き込んでいる。
第三騎士団の制服。
「あ、気がついた!大丈夫ですか?」
「おい、毛布だ」
騎士様が毛布を持ってきて、私をくるむ。
え?何で第三騎士団がいるの。
──朝靄。
ああ、夜が明けている。
悪夢のような昨日が、いつの間にか
終わっていた。
辺りを見回す。……嘘。何で?
目の前にプチ・エトワール本店の看板が
見える。
そしてその前には大きな『穴』がある。
ここ、王都じゃないの~!しかも
プチ・エトワールの本店前の『穴』だ。
あの泉の前の『穴』はここに繋がって
いたのね。
呆然とする私。
え~と。とりあえず、帝国から生還した?
第三騎士団の騎士様達が、色々世話して
くれている間、ただぼ~っとしていた。
あまりの事に頭が追い付かない。
年若い少年騎士様が
温かい飲み物を手渡してくれる。
ホットチョコレート!
ホットチョコレート、ホットチョコレート!
お、美味し~い。口の中がズタズタで
目茶苦茶傷にしみるけど、生き返る~。
なんて素晴らしいチョイス。
ありがとう!
なんて、感動に打ち震えていたらドスドスと
足音が近づいて来る。
「アニエス!!」
あ、赤い制服の熊。セドリック兄さんだ。
兄さんが私を見て固まる。
ああまあ、殴られ過ぎて顔が腫れている
もんね。そりゃ驚くわ。
鏡を見なくても、顔を触った感じ、ヤバい
ぐらい顔の形が変わっている。
「お前それ!誰にやられた!!」
セドリック兄さんが大声で怒鳴る。
うわぁ。お怒っているよ。
誰ってねぇ。皇帝と言う名の
クズですけれど。
馬の足音と共に今度は馬に乗った
マルク義兄様が現れた。
馬上で私を視認するとやっぱり固まる。
慌てて、飛び降り駆け寄って来る。
「アニエス……誰にやられた?」
静かに私に尋ねるマルク義兄様。
ああ、温厚なマルク義兄様もお怒りだ。
なんだか現実感がない。
本当にここは王都?
ここに居るのはセドリック兄さんに
マルク義兄様で合っている?
これは夢で目が覚めたら、帝国でまだ
腕輪と鎖に繋がれていたりしないかな?
手に持ったホットチョコレートの入った
カップから伝わる温かさは、現実だと
言っているけれど。
「ここじゃ体が冷える。医者がまだ来ない
なら、ザルツコードの屋敷の方へ来てもら
おう。帰ろう?アニエス」
マルク義兄様がそう言って私に手を伸ばす。
帰る?
そうか、私にはザルツコードの家がある。
帰れる家がまだあるんだな。
でも、兄さん達は……。
母様との思い出の詰まった家。
私を産んで死んだ母様。
私には母様の思い出はない。
セドリック兄さん。
私とはまた受け止め方が違うかもしれない。
伝えなきゃ。
……怖いな。
焼け跡で見た父様の肩を落としたあの姿を
思い出す。辛いな。
悲しむ兄さんを見たくない。
「セドリック兄さん、アシェンティの家。
帝国に火をつけられて……燃えちゃったよ」
「え?!父上は無事か?」
「うん。平気」
「そうか……ならいい。人さえ無事なら」
「兄さんの本も全部燃えちゃったよ」
「また、集めるさ。いい家だったのにな。
……もう、帰れないんだなぁ。でも、父上も
お前も無事。兄さん達も王都でバリバリ
元気で働いている。それが幸せだと思う。
失くしたものは惜しいけれど、
思い出はなくならない。寂しいけれどな」
少し涙声のセドリック兄さん。
そう、もう帰れない。
私があの家を最後に見たのは、あの薬を
盛られて王都に送られた日が最期だ。
次に見た時は燃え落ちた姿になっていた。
寂しい。
ずっと帰りたいと思っていた
アシェンティの家。
父様も、兄さん達も、私にとっても
大切にしていた場所。
燃えてしまっても、ずっと覚えているよ。
セドリック兄さんが頭を撫でてくれる。
ポロリと涙がこぼれた。
ポロポロと次々涙がこぼれる。
家の焼け跡を見た後、帝国に拉致された。
まだ、昨日の出来事。
やっと夜が明けたばかり。
家を失った傷心と帝国から無事に脱出した
安堵。オズワルドに殴られた顔の痛みと
あのクズっぷりに対する怒り。
父様や、マックス義兄様にかけた心配。
きっと今頃、大騒ぎな砦の事を思う。
色々な気持ちがぐちゃ混ぜだ。
グレン様、今頃どうしているだろう。
きっと心配している。
ごめんなさい。
辺境に連絡してもらわないと。
──私は無事です。
今すぐに伝える手段が欲しい。北の辺境まで
最速の伝令鳥でどのくらいかかるのだろう。
「アニエス!」
え?幻聴?
グレン様の声で名前を呼ばれた。
ここは王都。
北の辺境にいるグレン様がたった一晩で
ここまで来られる訳がない。
でも……。
今の声
「アニエス?!」
まただ。今度はすぐ後ろで聞こえる。
「「「「グレン様?!」」」」
セドリック兄さん、マルク義兄様、
第三騎士団の騎士様達の驚いた声が重なる。
グレン様って言った。
うそ、うそ、うそ!
恐る恐る振り向く。
朝靄の中グレン様が立っていた。
私を見て一瞬、驚いた表情になる。
駆け寄ってくるグレン様。
私もよろめきながらグレン様の方へ
歩き出すがつまずいた。転ぶ!
と思ったがグレン様に抱き止められる。
戻ってこれた。
グレン様の腕の中。
「グレン様!グレン様!グレンさまぁ!」
大泣きする私をしっかり抱きしめてくれる
グレン様。
白い軍服が私の血で汚れている。
ごめんなさい。でも……。
ぎゅうぎゅうしがみつく。
もっとしっかり抱きしめて。
気が済むまで泣いた。
途中、立っていられず膝折れした私を
グレン様は抱き上げてくれた。
少し落ち着いた頃、グレン様が頬にそっと
触れる。
「……誰にやられた?」
「……クズに」
「ああ?」
「皇帝と言う名のクズです。オズワルド。
あのクズに目茶苦茶、殴られました」
「そうか。あの馬鹿か。アニエス約束する。
必ず……殺してやるからな?」
「ううん。いい……グレン様の手を煩わせ
たくないです」
私は首を横にふる。
私の返答にグレン様が怒りの形相だ。
魔王降臨。
「アニエス、俺がぶち殺したいんだ」
グレン様の首にしがみつきながら私は彼の
耳元で呟く。
「大丈夫……あいつは私のこの手で……。
ええ、必ず。ぶち殺しますから」
グレン様の顔を見る。
あ、目が真ん丸だ。レア。
「ふ、そうか。なら、手伝う」
ちょっと苦笑するグレン様。
私を抱き上げたまま、くるくると回る。
わ~グレン様のくるくるだ!
これ好き。
思わず笑顔になる私。
「よし。笑ったな」
そう、笑顔で囁くとグレン様は私に
そっと口付けた。
朝靄の王都。私達以外はドン引き。
ちょっとだけ、周りが気になったけれど。
バカップルを許してね。
グレン様。
追いかけて来てくれた。
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