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5話 無い物ねだり、そしてお仕置き(★)
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私達が出会ったのは、恐らく一歳か二歳か、もしかしたら赤子の頃だったかもしれない。今となってはハッキリとした記憶はないが、歳が同じだからといって、二人でよく遊んだものだった。小学生の間はまだ、私は「なつくん」とお呼びしていたし、彼も「アリスちゃん」と呼んでくれていた。一体いつからだっただろう──互いの呼び方が変化したのは。
「…………あの、夏牙様」
歩いて帰ると楓様より連絡はあったものの、やはりこんな時間では心配であるのでお迎えに上がった矢先。まさかの告白に遭遇してしまった私は、その場に立ち尽くし動くことができずにいた。
「聞こえていたのか」
「あ……あ……あの……」
夏牙様の顔を見ることなど出来るはずもなく、口の中が少しずつ乾いてゆく。楓様と桜江様の顔を順に見るが、二人共困惑しているご様子。ああ、桜江様に至っては顔色がいつもよりも悪い。私のせいだ……跡取り息子が自分の相手にと名を挙げたのが家の使用人であれば、こんな顔になっても仕方がないというもの。
「冗談で言っているのではない。真面目な話だ」
「でも、だからって夏牙様……」
「夏牙、一旦落ち着きなさい」
割って入ったのは楓様。私に背を向けた楓様は、夏牙様を連れて少し離れた場所へ。私はといえば桜江様に手を捕まれ、屋敷の方へと引かれてゆく。
「あの、桜江様」
「黒部……いえ、アリスちゃん」
「は……!」
「少し話をしましょう」
桜江様に「アリスちゃん」と呼ばれるのは、仕事抜きで私個人に用がある時だけだ。けれど今はそれが少しだけ恐ろしい。きっと桜江様も、楓様だって夏牙様のご意思に反対されるはず。
下手をしたら私、解雇なのでは……。
ここを追われて、三十路超えの女が好条件で働ける所などあるだろうか。体力には自信があるし、資格もまあ……持っていないなとここで気が付く。パソコン関係のものは職務の中で身に付けたし、わざわざ資格などと胡座をかいていたのは不徳のいたすところ。
「あなたは夏牙のこと、どう思ってる?」
「どう、とは……」
「一人の男として、好意はあるのかしら」
「は……あの……」
めちゃくちゃ好意あります! ずっとお慕いしていました! だなんて嘘臭いこと言えばそこら辺の令嬢と同じだと見なされ、引き剥がされる可能性は高いだろう。これだけ見目麗しい跡取り息子だ、狙っている女性は多いのだ
この恋慕が叶うなど夢にも思っていなかったものだから、何と答えるのが正解なのか判断がつかない。
「あんなプレイボーイ、やはり嫌?」
「いえ、そんなことは……! 人として、尊敬しておりますし、お慕いしております」
「結婚しても、もしかしたら女性の噂が絶えないかも」
確かに夏牙様は、遥臣様に比べれば少ないものの、女性との噂は後を絶たない。連れている女性はコロコロ変わるし、どの女性にも良い顔をする、そんな男性だ。だからといって不誠実かと言われればノーだと断言できる。これは私が毎日近くで彼を見ているからわかっていることで、周りの意見など……噂は噂でしかないのだと、事実を知っているからで。
「私は、夏牙様を信頼しております」
「それは承諾を得たということでいいのかしら」
「ご命令を下さい。自分の意志で動くのは、昔からどうも苦手で」
「ずっとこういう仕事をさせていたのは私達だものね……悪いことをしたわ」
それは違うと即座に否定はしたが、桜江様の言うことは確かに的を射ていた。細かな段取りは自分で組んでいるにしても、今日はこれ、と下りてくる仕事に対しては、自分で考えて動くことは少なかった。
こうなるとやはり再就職は難しいような気が……! マルチタスクは得意だけれど、でも、だからって──
「私は反対じゃないのよ、寧ろ賛成。あなたにならば、夏牙を任せられると思ってる」
「でも、楓様はどう思っていらっしゃるか」
「反対はしないと思うけれど? ただ、あの人のことだから……跡継ぎは早めに、くらいは考えているかも」
「あと、つぎ……」
跡継ぎ。夏牙様はこの家を継がれるお方。そうなれば相手となる女性は、必ず子を産まなければならないのだ。
「まだ結婚もしていないのに、子供の話なんてごめんなさいね。マタハラって言われても仕方がないかもしれないけれど……でも、我が家の長男と結婚するってことは、そういうことなのよアリスちゃん」
賛成と言ってくれたにも関わらず、三十二にもなって、あと何人産めるのかと問い詰められている気がしてくる。大きな家なのだから、そういう話が出るのは普通のことで、仕方のないこと。そうなれば──やはりここは身を引いて若い令嬢に席を譲るべきなのだ。
「私は……皆様が望まれるほど、跡継ぎを残せないかもしれません。もっと若い方にお任せするのが適任かと思います」
「そう……残念、だけど……いいの?」
この家のことを考えるのであれば、自分の気持よりも優先すべきことは決まっている。それならば潔く身を引くべき──なのに、胸のあたりがズキズキと痛む。神経痛だろうか。
「夏牙が他の女性と家庭を築く姿を、側で見ることに……本当に耐えられる?」
「それは……」
それは──果たしてどうだろう。
──ある時から少しずつ膨らみ始める奥様のお腹。そこで気づくのだ……ああ、この方が孕ませたのかと。いやらしい妄想で頭の中はパンパンに膨れ上がるが、同時にそれは虚しくも思えた。愛しい人が、自分ではない誰かと睦み合う。目の前で。
そうなった場合は、きっと耐えられない……辞めるしかない、この仕事を。
愛しい人と、大切な仕事。それを同時に失うのかと思うと、急に恐ろしくなった。
「待ってくれ!」
「あら夏牙」
嫌だな、と俯いたその時、後方から駆けてくる夏牙様の姿が。息を切らしているお姿が珍しく、じっと見つめてしまう。急いでここまで来てくださったことが伝わってきて、ときめいてしまった。
「ハァッ……父さんと話してきた……。跡継ぎが問題なんだろう?」
「こちらも同じ話をしていたわ」
桜江様が振り返ったその時、夏牙様の後ろから楓様が駆けてくるお姿が見えた。少し苦しそうに前屈みになり、膝に手をつき肩で息をなっさっていた。
「それならば、早々に黒部を孕ませれば問題ないということなんだろう?」
「あなた……親の前でなんてことを」
「言い出したのはそっちじゃないか。なあ、黒部」
夏牙様の口から飛び出したとんでもないワードに興奮気味の私は、きっと今……人に見せられないような顔をしているだろう。それなのに話しかけられても困るというものだ。
だって……私を孕ませると仰ったのよ!?
「え゙っ……いや、夏牙様……サラッととんでもないことを言っておきながら、普通に話しかけられても困ります」
「とんでもなかったか?」
「はい」
これだからプレイボーイは、と呆れる皆を尻目に、夏牙様は更に私を説得せんと距離を詰める。
「好きでもない令嬢と結婚はしたくない。ずっと好きだった黒部とでないと無理だ」
「そんなこと……急に言われましても……!」
近い近い近い近い! 一体どれだけ近づく気!? 体が触れてしまいそうな距離に、思わず後ずさってしまう。
「何故逃げる?」
「近いのです! 勘弁してください! すぐにお返事など出来ません!」
心が現状に追いつかない。この場で答えをすぐに出せるほど、私は肝の座った女ではなかった。となれば取るべき行動は一つ。
「申し訳ありません! 退勤いたします! お疲れ様でした!」
「ここでか!?」
「お屋敷ももう見えますし! 私は不要かと! 失礼いたします!」
足の速さには自信がある。自室まで逃げ帰ればこちらのものだろう。きっと夏牙様は諦めて部屋までは追って来ない筈だろうから。
三人から逃げ切った私は、足早に自室を目指す。流石に夜分に廊下を駆け自室を目指すのは憚られたし、何より追手の来る気配が皆無であった。
あれだけ迫ってきて下さったのに……ここまで来ては下さらないのね。
無い物ねだり甚だしい。自分から逃げたくせに、私はなんと傲慢な女なのか。これは仕置きが必要であると自室に鍵をかけ、ベッドの上で姿勢を正した。
夏牙様は……私を、は……孕ませると仰っていた。
どういうおつもりで、あんなことを仰ったのか。きっと……いや、確実に家の後継ぎのことを考えてのことなのだろうけれど、事務的に犯され、孕ませられるのも……まあ……なんというか……。
「……堪らないのでは」
頭の中が妄想で膨れ上がってゆく。きっと夏牙様は脱いだら凄いタイプだろう。スーツの上からでもわかるのだ、鍛え上げられたあの肉体。女性経験は豊富だろうし、ありとあらゆるテクニックで私は犯され、絶頂に何度も達するのだろう。
「やば、 涎……」
妄想の中の夏牙様は、いつもに増して優しいのだ。体がどんどん熱くなってゆく。我慢ができなくなり立ち上がると、秘密のボックスの鍵を開けた。
よし、シンプルなやつにしよう。
ガサゴソと箱を漁り、取り出したのは紫色の、指を少し曲げたような形状のスティックだ。充電があるのを確認してベッドへと戻る。サッとズボンを脱ぎ去れば、妄想のお陰で下半身が濡れていることがわかった。
仕置が必要だから……ショーツの上から、ね。
反省中の身である、しかし自慰はしたくなるもの、これは仕方がないのだ。うんうんと無理矢理己を納得させ、バイブのスイッチを押した。
「はっ、ん゙……! あ゙……!」
指先で触られているような形状に、びくりと腰が跳ねる。陰核を擦るように撫でると、もっと……もっと欲しくなってしまう。
だめ、我慢ができない──!
仕置は早々に終了し、ショーツのすきまからバイブを挿し込む。入口を探り当て、ぐいと奥に押し込むと大きな声が出てしまい、無理矢理口元を押さえた。
「なつきさまっ……! あッあッぁ゙……なつ、きさま……! うぁ゙ッ、はッ……あ、あ、あ、ぁ゙ッ!」
先程の夏牙様の発言のせいで、彼に犯されていると妄想しながら励んでしまうのは仕方のないことで。ねっとりと濡れたショーツを左手でかき分け、右手はバイブの振動を強くするためにスイッチを何度か押した。
「まってこれ……ぁ゙……は……あッあッあぁッ! ぅ゙、んッん゙ッン゙~~ッ!!」
うつ伏せになり、枕に口元を押し当てて声を抑え込む。早々に達してしまった……尻を突き上げうつ伏せたままの体勢の、なんと無様なことか。おまけにバイブは未だ膣の中で振動を続けている。
「はぁ……ちょ、ま……これ、もっと強くなるの……かなっ……て、あ、あ、あ、あ、あ無理ッむ゙り゙ぃぃぃい゙い゙い゙イクイクイクイグッ……!!」
新発見だ。今までは力尽き抜き取り、スイッチオフしていたのだが、まさか……もう一段回化けるとは。
「はぁッ……夏牙様……夏牙様……私は……一体どうすれば」
ふと我に返るこの瞬間が、どうしようもなく虚しいのだが、まあ慣れたもの。けれど今回はいつもと状況が違うのだ。あんなことの後で、私は一体何を。
けれどこれが私だもの。誰にも言えないけれど。
着替えと片付けを済ませ、シャワーを浴びた。先程使ったバイブの感想を追加で書かねばならない。シャワーを浴びながら溜めた湯船にゆったりと浸かり、手足を伸ばす。スマートフォンで明日の天気とスケジュールを確認した後、目的のページへとアクセスをした。
「…………あの、夏牙様」
歩いて帰ると楓様より連絡はあったものの、やはりこんな時間では心配であるのでお迎えに上がった矢先。まさかの告白に遭遇してしまった私は、その場に立ち尽くし動くことができずにいた。
「聞こえていたのか」
「あ……あ……あの……」
夏牙様の顔を見ることなど出来るはずもなく、口の中が少しずつ乾いてゆく。楓様と桜江様の顔を順に見るが、二人共困惑しているご様子。ああ、桜江様に至っては顔色がいつもよりも悪い。私のせいだ……跡取り息子が自分の相手にと名を挙げたのが家の使用人であれば、こんな顔になっても仕方がないというもの。
「冗談で言っているのではない。真面目な話だ」
「でも、だからって夏牙様……」
「夏牙、一旦落ち着きなさい」
割って入ったのは楓様。私に背を向けた楓様は、夏牙様を連れて少し離れた場所へ。私はといえば桜江様に手を捕まれ、屋敷の方へと引かれてゆく。
「あの、桜江様」
「黒部……いえ、アリスちゃん」
「は……!」
「少し話をしましょう」
桜江様に「アリスちゃん」と呼ばれるのは、仕事抜きで私個人に用がある時だけだ。けれど今はそれが少しだけ恐ろしい。きっと桜江様も、楓様だって夏牙様のご意思に反対されるはず。
下手をしたら私、解雇なのでは……。
ここを追われて、三十路超えの女が好条件で働ける所などあるだろうか。体力には自信があるし、資格もまあ……持っていないなとここで気が付く。パソコン関係のものは職務の中で身に付けたし、わざわざ資格などと胡座をかいていたのは不徳のいたすところ。
「あなたは夏牙のこと、どう思ってる?」
「どう、とは……」
「一人の男として、好意はあるのかしら」
「は……あの……」
めちゃくちゃ好意あります! ずっとお慕いしていました! だなんて嘘臭いこと言えばそこら辺の令嬢と同じだと見なされ、引き剥がされる可能性は高いだろう。これだけ見目麗しい跡取り息子だ、狙っている女性は多いのだ
この恋慕が叶うなど夢にも思っていなかったものだから、何と答えるのが正解なのか判断がつかない。
「あんなプレイボーイ、やはり嫌?」
「いえ、そんなことは……! 人として、尊敬しておりますし、お慕いしております」
「結婚しても、もしかしたら女性の噂が絶えないかも」
確かに夏牙様は、遥臣様に比べれば少ないものの、女性との噂は後を絶たない。連れている女性はコロコロ変わるし、どの女性にも良い顔をする、そんな男性だ。だからといって不誠実かと言われればノーだと断言できる。これは私が毎日近くで彼を見ているからわかっていることで、周りの意見など……噂は噂でしかないのだと、事実を知っているからで。
「私は、夏牙様を信頼しております」
「それは承諾を得たということでいいのかしら」
「ご命令を下さい。自分の意志で動くのは、昔からどうも苦手で」
「ずっとこういう仕事をさせていたのは私達だものね……悪いことをしたわ」
それは違うと即座に否定はしたが、桜江様の言うことは確かに的を射ていた。細かな段取りは自分で組んでいるにしても、今日はこれ、と下りてくる仕事に対しては、自分で考えて動くことは少なかった。
こうなるとやはり再就職は難しいような気が……! マルチタスクは得意だけれど、でも、だからって──
「私は反対じゃないのよ、寧ろ賛成。あなたにならば、夏牙を任せられると思ってる」
「でも、楓様はどう思っていらっしゃるか」
「反対はしないと思うけれど? ただ、あの人のことだから……跡継ぎは早めに、くらいは考えているかも」
「あと、つぎ……」
跡継ぎ。夏牙様はこの家を継がれるお方。そうなれば相手となる女性は、必ず子を産まなければならないのだ。
「まだ結婚もしていないのに、子供の話なんてごめんなさいね。マタハラって言われても仕方がないかもしれないけれど……でも、我が家の長男と結婚するってことは、そういうことなのよアリスちゃん」
賛成と言ってくれたにも関わらず、三十二にもなって、あと何人産めるのかと問い詰められている気がしてくる。大きな家なのだから、そういう話が出るのは普通のことで、仕方のないこと。そうなれば──やはりここは身を引いて若い令嬢に席を譲るべきなのだ。
「私は……皆様が望まれるほど、跡継ぎを残せないかもしれません。もっと若い方にお任せするのが適任かと思います」
「そう……残念、だけど……いいの?」
この家のことを考えるのであれば、自分の気持よりも優先すべきことは決まっている。それならば潔く身を引くべき──なのに、胸のあたりがズキズキと痛む。神経痛だろうか。
「夏牙が他の女性と家庭を築く姿を、側で見ることに……本当に耐えられる?」
「それは……」
それは──果たしてどうだろう。
──ある時から少しずつ膨らみ始める奥様のお腹。そこで気づくのだ……ああ、この方が孕ませたのかと。いやらしい妄想で頭の中はパンパンに膨れ上がるが、同時にそれは虚しくも思えた。愛しい人が、自分ではない誰かと睦み合う。目の前で。
そうなった場合は、きっと耐えられない……辞めるしかない、この仕事を。
愛しい人と、大切な仕事。それを同時に失うのかと思うと、急に恐ろしくなった。
「待ってくれ!」
「あら夏牙」
嫌だな、と俯いたその時、後方から駆けてくる夏牙様の姿が。息を切らしているお姿が珍しく、じっと見つめてしまう。急いでここまで来てくださったことが伝わってきて、ときめいてしまった。
「ハァッ……父さんと話してきた……。跡継ぎが問題なんだろう?」
「こちらも同じ話をしていたわ」
桜江様が振り返ったその時、夏牙様の後ろから楓様が駆けてくるお姿が見えた。少し苦しそうに前屈みになり、膝に手をつき肩で息をなっさっていた。
「それならば、早々に黒部を孕ませれば問題ないということなんだろう?」
「あなた……親の前でなんてことを」
「言い出したのはそっちじゃないか。なあ、黒部」
夏牙様の口から飛び出したとんでもないワードに興奮気味の私は、きっと今……人に見せられないような顔をしているだろう。それなのに話しかけられても困るというものだ。
だって……私を孕ませると仰ったのよ!?
「え゙っ……いや、夏牙様……サラッととんでもないことを言っておきながら、普通に話しかけられても困ります」
「とんでもなかったか?」
「はい」
これだからプレイボーイは、と呆れる皆を尻目に、夏牙様は更に私を説得せんと距離を詰める。
「好きでもない令嬢と結婚はしたくない。ずっと好きだった黒部とでないと無理だ」
「そんなこと……急に言われましても……!」
近い近い近い近い! 一体どれだけ近づく気!? 体が触れてしまいそうな距離に、思わず後ずさってしまう。
「何故逃げる?」
「近いのです! 勘弁してください! すぐにお返事など出来ません!」
心が現状に追いつかない。この場で答えをすぐに出せるほど、私は肝の座った女ではなかった。となれば取るべき行動は一つ。
「申し訳ありません! 退勤いたします! お疲れ様でした!」
「ここでか!?」
「お屋敷ももう見えますし! 私は不要かと! 失礼いたします!」
足の速さには自信がある。自室まで逃げ帰ればこちらのものだろう。きっと夏牙様は諦めて部屋までは追って来ない筈だろうから。
三人から逃げ切った私は、足早に自室を目指す。流石に夜分に廊下を駆け自室を目指すのは憚られたし、何より追手の来る気配が皆無であった。
あれだけ迫ってきて下さったのに……ここまで来ては下さらないのね。
無い物ねだり甚だしい。自分から逃げたくせに、私はなんと傲慢な女なのか。これは仕置きが必要であると自室に鍵をかけ、ベッドの上で姿勢を正した。
夏牙様は……私を、は……孕ませると仰っていた。
どういうおつもりで、あんなことを仰ったのか。きっと……いや、確実に家の後継ぎのことを考えてのことなのだろうけれど、事務的に犯され、孕ませられるのも……まあ……なんというか……。
「……堪らないのでは」
頭の中が妄想で膨れ上がってゆく。きっと夏牙様は脱いだら凄いタイプだろう。スーツの上からでもわかるのだ、鍛え上げられたあの肉体。女性経験は豊富だろうし、ありとあらゆるテクニックで私は犯され、絶頂に何度も達するのだろう。
「やば、 涎……」
妄想の中の夏牙様は、いつもに増して優しいのだ。体がどんどん熱くなってゆく。我慢ができなくなり立ち上がると、秘密のボックスの鍵を開けた。
よし、シンプルなやつにしよう。
ガサゴソと箱を漁り、取り出したのは紫色の、指を少し曲げたような形状のスティックだ。充電があるのを確認してベッドへと戻る。サッとズボンを脱ぎ去れば、妄想のお陰で下半身が濡れていることがわかった。
仕置が必要だから……ショーツの上から、ね。
反省中の身である、しかし自慰はしたくなるもの、これは仕方がないのだ。うんうんと無理矢理己を納得させ、バイブのスイッチを押した。
「はっ、ん゙……! あ゙……!」
指先で触られているような形状に、びくりと腰が跳ねる。陰核を擦るように撫でると、もっと……もっと欲しくなってしまう。
だめ、我慢ができない──!
仕置は早々に終了し、ショーツのすきまからバイブを挿し込む。入口を探り当て、ぐいと奥に押し込むと大きな声が出てしまい、無理矢理口元を押さえた。
「なつきさまっ……! あッあッぁ゙……なつ、きさま……! うぁ゙ッ、はッ……あ、あ、あ、ぁ゙ッ!」
先程の夏牙様の発言のせいで、彼に犯されていると妄想しながら励んでしまうのは仕方のないことで。ねっとりと濡れたショーツを左手でかき分け、右手はバイブの振動を強くするためにスイッチを何度か押した。
「まってこれ……ぁ゙……は……あッあッあぁッ! ぅ゙、んッん゙ッン゙~~ッ!!」
うつ伏せになり、枕に口元を押し当てて声を抑え込む。早々に達してしまった……尻を突き上げうつ伏せたままの体勢の、なんと無様なことか。おまけにバイブは未だ膣の中で振動を続けている。
「はぁ……ちょ、ま……これ、もっと強くなるの……かなっ……て、あ、あ、あ、あ、あ無理ッむ゙り゙ぃぃぃい゙い゙い゙イクイクイクイグッ……!!」
新発見だ。今までは力尽き抜き取り、スイッチオフしていたのだが、まさか……もう一段回化けるとは。
「はぁッ……夏牙様……夏牙様……私は……一体どうすれば」
ふと我に返るこの瞬間が、どうしようもなく虚しいのだが、まあ慣れたもの。けれど今回はいつもと状況が違うのだ。あんなことの後で、私は一体何を。
けれどこれが私だもの。誰にも言えないけれど。
着替えと片付けを済ませ、シャワーを浴びた。先程使ったバイブの感想を追加で書かねばならない。シャワーを浴びながら溜めた湯船にゆったりと浸かり、手足を伸ばす。スマートフォンで明日の天気とスケジュールを確認した後、目的のページへとアクセスをした。
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