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七話 六之宮家の夜這い騒動(★)
史乃の部屋を後にした三人は、休憩のため本館一階の使用人室へと向かった。質素な部屋の中央には木製の長机が置かれ、それを挟むように長椅子が鎮座している。
「あ~くそ……」
椅子に腰を下ろし、乱暴に頭を搔いたのは禄郎であった。ジェイクが持って来たグラスの中身を一気に飲み干すと、不満げに頬を膨らませた。
「ずるいだろ、お前らだけ!」
「何がだ。公平にくじで決めようと言ったのはお前だろう?」
「そうだがよ!」
禄郎が睨みつけるのは、隣に腰を下ろした誠だった。長いこと史乃に触れていた誠に、禄郎は恨めしそうに愚痴を垂れている。
「まだ機会はあるだろう。今回のことで終わりというわけではない」
「けどよ……! というか、俺が一番許せないのはお嬢が処女を捧げたお前だジェイク!」
禄郎の向かいに腰を下ろしたジェイクは、形の良い眉を持ち上げながら首を傾げた。
「くじの結果だろう? 日頃の行いが良い奴が、当たりを引くんだよ」
「お嬢のことを一番想っているのは俺なんだ。俺に捧げたほうが、お嬢だって……」
「お嬢様の 膣は、狭くて熱くて最高だったよ」
ジェイクがグラスを机に置いた瞬間、禄郎がジェイクに飛びかかった。ジェイクのシャツとネクタイが歪んで皺を作るが、表情は余裕を保ったままだ。
「お前、いい気になるなよ?」
「どういう意味かな」
「お前のそういうところが……昔っから気に食わないって言ってんだ!」
ジェイクは史乃が五つの時から傍に仕えている。対して禄郎は生家が没落した十二の頃から。幼馴染とはいえ、どう足掻いても縮まらない七年間は深く、禄郎の中でそれは劣等感となっていた。
「てめぇ……!」
ジェイクの表情は変わらない。それは自信の現れでもあった。長年史乃の傍にいることへの誇り、それに僅かな驕り。禄郎はそれらを見抜き、不満を口にしてはこのように突っかるのだ。
「いい加減にしないか、禄郎。ジェイクは今日は……もう手出しが出来ないんだ」
しばらく黙っていた誠が、禄郎の肩を後ろから掴んだ。平生を装ってはいるが、彼とて心中穏やかではなかった。
「だからなんだってんだ……!」
「よく考えろ」
「……なるほどな。確かに駄目だとは言われてないか」
深く息を吸って呼吸を整えた禄郎は、落ち着きを取り戻したのかニヤリと口角を上げた。
「見てろよ。お嬢の心を手にするのは俺だ」
「いや……お嬢の心も体も、これから迎える婿殿のものになるんだが」
誠の言葉が聞こえているのかいないのか、禄郎は部屋から出て行ってしまった。残されたジェイクと誠は、顔を見合わせて眉尻を落とすしかなかった。
◇
三人との儀式の後、再び自慰に励んだ史乃は疲れ果て、午後からは少し眠って体を休めていた。ノックの音で目を覚ました夕方、禄郎が部屋に運んできてくれた食事をゆっくりと完食した史乃は、再び寝台に身を任せていた。食事を食べ少しは体の調子が良くなったようにも思えたが、やはりまだ万全ではない。
(だって……あんなの……)
思い出すだけで全身が火照り、悶えてしまう。ずきんと痺れるのは、足の付け根のもっと上──股の中心の、熱を孕んで湿った蕾。
初めて味わった、あの絶頂に達した時の快感。あれをもう一度体感したくて、自分で自分の体を虐めた。羞恥心はあった、けれど止められなかった。
(確かに気持ちよかったけど……なんだか少し違ったのよね)
寝台の上でごろりと寝返りを打つ。太股の間に右手を差し込み蕾に触れると、ピクンと下半身が反応してしまった。
「あ……ふ、ぅ……」
また、してしまう。この行為は妙に罪悪感が湧く──けれどその罪悪感を踏み倒して一人大きく足を開く行為が、開放的で刺激的で──大きな緊張感があって、得も言われぬ快感を呼ぶのだ。
「は……ぁ……ぁ、あ、あッ……」
大きく開いた股の中心で、秘部が解れて溶けてゆく。浴衣が開けて太股が露わになった。ぐちゅぐちゅと溢れる蜜が指に纏わりつき、尻の谷を伝った──その時。
「……ッ!?」
部屋の扉がノックされた。この叩き方は禄郎だ、恐らく膳を下げに来たのだろう。
「はい」
「お嬢、いいですか?」
「ええ、どうぞ」
布団を頭まですっぽりと被り、何事も無かったかのように禄郎を招き入れる。ばくばくと跳ねる胸は落ち着く様子もなく、早く禄郎が立ち去ることを祈るばかりだ。
「……お嬢、お加減は?」
先程座っていた椅子を寝台の横に動かした禄郎は、布団を被った史乃を覗き込む。腰を屈めたところで史乃の姿を見ることは出来ないのだが。
「食事も済ませたし……大丈夫よ」
「本当ですか?」
「ええ」
禄郎がこんなに優しいことは稀であった。史乃を揶揄うことが常であるので、布団にくるまったままの史乃も目を丸くしてしまった。
「体は痛くないですか?」
「お陰様で平気よ」
「よかった」
禄郎の安堵の溜め息に、史乃はあんぐりと口を開いてしまう。
(なんだか禄郎が変よ……? こんな姿、見たことないもの)
布団の中で史乃が混乱していると、突然視界が開けて体が震えた。被っていた布団が引き剥がされ、それを寝台の足元に投げ捨てたのは冷たい眼差しの禄郎だった。
「禄郎……?」
「お嬢、体は平気なんですよね?」
「え……そうね」
「それなら俺に抱かれて下さいよ」
「へ?」
ギ──と寝台が軋み、瞬きした瞬間に眼前に禄郎の姿が。間髪入れず唇が重なり、乱暴な舌が史乃の口内を蹂躙した。
「ふぁッ!? んあッ!?」
「お嬢……」
いつも乱暴なことばかり言う口から漏れるのは、甘く、粘着質のある吐息。口内を犯す禄郎の舌使いは、先程よりも巧みで。頭のてっぺんから甘い蜜を被ったかのように蕩け、史乃の体は次第に禄郎に絆されていった。
「なんで……んッ……はぁ……ろくろぉ……」
禄郎がこのような行為に走る理由が史乃には見当たらないのだ。先程儀式は一旦終わったはず──それなのに。
「目の間でお嬢があんな風に犯されて……終われるわけがないんですよ」
禄郎の両手が史乃の浴衣の胸元に伸びる。共衿に手を掛けた禄郎は、指を内側に差し込むとそこを握りしめ、大きく横に引いた。
「きゃあっ!」
「……え?」
目の前に零れ落ちた豊かな乳房に、禄郎の動きが止まる。それもそのはず、彼は着痩せしやすい史乃の胸がこんなにも豊満だとは知らず。先程の儀式で誠はによって遮られて見えず仕舞だったのだから。
「お嬢……胸、これ……え……?」
「な、なあに……?」
「デカすぎません?」
ふわりと包みこまれたかと思いきや、すぐに禄郎の五指が乳房に沈んだ。指は閉じては開き、それを何度も繰り返し──柔らかさを堪能しているようで。
「禄郎ッ……恥ずかしい……待って……一回待って……」
「できるわけ……」
「やッ! あんッ!」
立ち上がった右の乳首に吸い付かれ、背中が仰け反った。両手でしつこく揉みしだかれ、伸びてきた禄郎の右手の指先に反対側の乳首が捕まった。
「やだ……なんで……あッ!」
「だから、我慢の限界なんですって」
れろ──と、舌先だけでちまちまと乳首を弄くられ、史乃の呼吸が乱れてゆく。
「ずっと、ずーっと我慢してたんです。この時をどれだけ願ったか」
「え……禄郎?」
「だからお嬢、一緒に気持ちよくなりましょうね」
ぐにゃりと歪んだ禄郎の顔は可逆的で。怯んで動くことの出来ない史乃の小さな体は、少しだけ震えていた。
「震えてるんですか? かーわいい」
「え……あ……」
何度も胸を喰んだ禄郎は、遂にはその先端に歯を立てた。赤い歯型が史乃の乳頭に残り、禄郎は満足げにその周りを舐め回す。
「早く下にいきたいんですよね」
「し……た……」
「どれ……へぇ、どろどろじゃないですか」
無遠慮に伸びてきた禄郎の右手が、史乃の秘部を捏ね回す。ぐちゅぐちゅと泥濘んでいるのは、恐らく自分で触っていたせいもある。
「そんなに俺が欲しかったんです?」
「ち……ちが……!」
だというのに禄郎は、史乃が自分を求めて濡れていたのだと思い込んでいるようだ。繰り返し行っていた自慰を知られてしまうのは絶対に避けたいところであるので、このまま勘違いしていてほしいと願いばかりだ。
「じゃ……遠慮なく」
「あ……待って……禄郎ッ……!」
「んッ……はぁッ……美味い」
押し開かれた股の真ん中に、禄郎が顔を埋めている。先程の誠とは違う、少し乱暴な舌の動きに、史乃の足がビクビクと痺れ出す。
「やッ! あッ! あぁッ! だめぇッ! 待って!」
「こんなの見せられて……これ以上我慢できるわけねえんですわ」
史乃の太股を押さえつけたまま、禄郎は焦らすように彼女の足の付け根を舐め回す。眼前のご馳走に、喉を何度も鳴らした。
「お嬢、いいですよね?」
「はッ……は……ぅ……」
「こっちだってこんな状態なんですから」
バサバサと脱衣を始めた禄郎の股の真ん中で立ち上がるものに、史乃は目を疑った。苦しそうにズボンの中に押し込められていたそれは、ぶるんと解放されると同時に、史乃の眼前に突きつけられた。
(ふ……太い……! ジェイクのも誠のも凄かったけど、これ……)
長さは他の二人ほどではないかもしれない──が、太いのだ。果たしてこれは自分の膣に収まるのだろうか。
「たっぷり犯してあげるんで、もう少し待って下さいよね」
「ひゃ……い……」
「そんな声で……煽らないで下さいよ。で、どこを虐めてほしいんですか?」
「あッ……は、うぅッ!」
体を丸めて史乃の股の間に顔を埋めた禄郎の両親指が、小陰唇をぐいと横に開く。せがむように空を喰む膣口に、ゆっくりと中指を挿し込んだ。
「ああ……ああ……あぅッ……!」
「奥? それとも入口?」
「ぃッ……!? あぁッ! あッああッ! そんなに……混ぜたらッ……!」
「達する?」
長い指が繰り返し、繰り返し──緩急をつけながら、ずぶずぶな窟を掻き回す。
「ううう~ッ! ああッ! あッ! ふあぁッ! い……クッ!! イグッ!! う~! イッちゃう……!!」
「はっ……まだまだ」
「やだぁッ……だめぇ……! うぁッ! はぅッ!!」
史乃の目が朧気に揺れ始める。快感で意識が飛んでしまいそうなのだ。
「お嬢、起きて」
「う……ぁ……」
「かわいい……もう無理、挿れますね」
「ま……って……!」
「へぇ、逃げるんだ」
ぐるぐると視界が回る中、史乃は寝台の上を這い、床に滑り落ちた。のろのろと立ち上がって壁に寄りかかったところで、禄郎に捕まってしまった。
「なんで逃げるんです?」
「く……ぅ……あ……」
ガタンと追いやられたのはアーチ型の窓の前。禄郎が窓掛けを横に引くので、史乃の乳房は窓硝子に押し当てられてしまう。
「心の……じゅ、準備が」
「心の準備?」
「だって……私たち、幼馴染で……喧嘩ばかりで……こんなっ……! こんなの……!」
「俺はずっとこうしたかったんですよ」
背後から両胸を鷲掴みにされ、史乃の腰が砕ける。突き出した臀部に陰茎を擦り付けた禄郎は、史乃の乳首を摘んで何度も捻り上げた。
「俺はね、お嬢。物心ついた頃からずーっとこうしたかったんだ。それなのに、目の前でアイツが……お嬢の処女を奪った」
「え……?」
「ずっと好きだったんだ、史乃」
史乃、と禄郎に呼ばれたのは何年ぶりだっただろうか。思ってもみなかった不意打ちに、史乃の胸は跳ね上がる。その刹那──禄郎の両手が史乃の腰をぐいと引き上げた。全開になった膣口に、吸い込まれるように陰茎が沈んでゆく。
「ぅ……あああ……ああ……! やッ……ろく、ろ、だめ、ああんッ!」
挿入された肉棒に体が喜び、まるで蜜窟がしゃぶりついているようだ。滴る愛液は涎のようで、口いっぱいに頬張った隙間からとろとろと滴り落ちる。
「はッ……狭っ……!」
「うぁ……ろくろ……だめ……」
「どうですか……気持ちいいいでしょ……」
史乃の右足をぐいと持ち上げた禄郎は、無遠慮に腰を打ち付ける。ヒクヒクと痙攣する史乃の上半身には、禄郎の歯型がまた一つ──二つと増えてゆく。
「あぁ……はぅ゙ッ! ううッ……う~ッ!」
禄郎が腰を打ち付ける度に、ガタガタと窓硝子が音を立てる。手のひらと乳房を窓硝子に押し当てたままの史乃の腰を、禄郎はぐいと掴んで持ち上げた。
「あぁッ……!」
「ほら……自分で腰を……って、俺が言うまでもなくって感じですね」
直立不動なままの禄郎に対し、史乃は自ら腰を振る。禄郎の陰茎を使って、まるで自慰でもするかのような姿に、禄郎の口角がニッと上がった。
「はぁッ……お嬢ッ……駄目って言いながら……気持ちいいんですね」
「そ……れは……!」
「心の準備がようやく整ったってことですかね」
「そうね……きっとそうよ……」
自分の行いを思い返し、顔が熱を持った。ふと冷静になれば、自分は何ということをしていたのだろうと羞恥が勝り、顔を伏せてしまった。
(だって……! こんなに気持ちいいなんて……思ってなかったんだもの……!)
先程初めてジェイクと交わった時にあった体の痛みは消えており、今史乃が享受するのは男と交わる快感だけなのだ。
(だからって……私ったら自分で腰を……! なんて淫らなことを……!)
ごちゃごちゃと考えている間にも、禄郎は史乃の肩をぐいっと掴む。後ろからでたらめに史乃の口を吸ったかと思えば、直後に激しく腰を打ち付けられた。
「ああああッ! あああッ! ろくろ……ぅ、あ゙ッ! あ゙ッ! イクイクイクッ……!!」
「何度でもイカせてやる」
「うぁぁッ! あぅ゙ッ! いッううッ! イグぅッ! はぁッ……イクから、あ、あ、ああ……!!」
顎が天井を向き、曝け出された喉元に禄郎が音を立てて吸い付いた。
「お嬢、腰が砕けていませんか?」
「はッ……う……あ……!」
「本当にこの体で、バスガールが出来ますかね」
「ひぅッ……」
だらりと弛緩する史乃の体。禄郎は小さな体を左脇に抱え、そのまま寝台に押し倒した。
(だめ……きもちいぃ……あたまがフワフワする……)
禄郎は、うつ伏せとなった史乃の腰を掴み上げ、丹念に腰に唇を落とした。
「ろくろぉ……はぁッ……いれて……ちょうだい……」
史乃の言葉に、禄郎の口角が弧を描く。両手で鷲掴みにした臀部をぐいと横に引き、快楽を求めて脈打つとろとろな蜜窟をじっと見つめた。
「ふ……俺のモノでこんなに蕩けて」
「ひッ……ぁ……ぅ、あ゙ッ!」
臀部を掻き分けて勢いよく挿入を果たし──しつこく腰を打ち付ける。寝台が軋み、史乃の嬌声が次第に大きくなってゆく。
「お嬢……バスガールと当主、両方とも出来るって言ってましたよね」
「あッあッあッまた……やだ……またイクッ……イッ……ぐ、あああッ!!」
「出来ますか? こんな……蕩けた体で」
寝台の上で史乃の上半身が激しく揺れる。床についた膝はがくがくと震え、次第に足が開いていった。
「はぁッ……お嬢……俺だけを見て……俺の子を孕んで」
「え……ろく、ろぅッ……?」
「 膣で……イク……お嬢の……ッ……膣に出したい……!」
逃さないと言わんばかりに、禄郎の手に力が籠もる。腰をがっちりと押さえつけられた史乃が、自由に動くことは叶わない。
「え……え……出したらだめ! 禄郎……!」
左腕を背中に回し、なんとか禄郎の腕に手が届く。固い手首に触れるが、止まってくれるはずもなく。
「やぁッ……だ……! やだぁッ! まって……待ってよ……!」
「孕んで……孕んで、孕んで、孕んで史乃……!」
荒々しく打ち付けられる腰に、史乃の右腕の力が抜ける。かくんと折れ曲がり、寝台に顔面から突っ伏してしまった。
「ううッ! んううう! はぅッ……い、い……イクッ……!!」
「孕んで……孕んで……孕んで孕んで孕んで……!」
「おねがい……ほんと、ぅ……本当にまッ──!」
「あ……駄目だ、イク……!」
禄郎の顔に余裕がなくなってきた──その時だった。部屋の扉が乱暴に開き、踏み込んでき来たのは誠だった。
「今のは聞き捨てならないな」
開口一番にそう告げた誠は、寝台の上で絡まる二人との距離を一気に詰める。片膝を乗せて禄郎の左肩を乱暴に掴んだ。
「離れろ」
「は……なんでお前に命令されなきゃ……」
「離れろよ」
低く、威嚇するような誠の声に、流石の禄郎も身を引いた。濡れた陰茎がぬ──と顔を出し、解き放たれた史乃の体は吸い込まれるように寝台に倒れてゆく。
「おっと」
史乃は既の所で誠に両肩を掴まれた。そっと寝台に横たわった史乃は、ゆっくりと目線を上に動かした。
「……誠?」
「はい。お嬢様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫……」
誠の無骨な手が史乃の頬を撫でる横で、禄郎が不満げに舌を打つ。その様子を見た誠は、盛大な溜め息をついた。
「お嬢様。どうしてこのようなことになったのか、お聞きしても?」
優しく史乃に問いかけた誠の視線は禄郎へと移り、威圧するように彼を睨みつけた。まるで「お前は何も言うな」と釘を差しているようだ。
「ろ、禄郎が急に……私のことが好きだったと言い出して、それで……!」
「受け入れたと?」
「ち、違うの!」
この説明では、史乃が自ら進んで禄郎を受け入れたと取られかねない。
(でも……嫌ではなかった……それを上手く説明できないわ)
頭が上手く回ってくれない。全身に残る快楽の余韻は、史乃の心身を掴んで離さない。
「わ、私も……その、何ていうか……上手く説明出来ないのだけれど……」
「……ふむ」
「こんなに気持ちの良いことがあるなんて、知らなくて……動揺しているの」
「なるほど」
誠は納得したのか、何度か小さく頷くと史乃の頬を両手で包み込んだ。
「つまりは……禄郎に急に迫られて動揺はしたものの、行為の気持ちよさに酔ってしまったと?」
「……そういうことになるのかも」
「なるほど」
誠はいつもこうやって史乃の心中を察して意見を汲んでくれる。時々心の中を見透かされているようで恐ろしくなることもあるが、きっとこれが彼の特技なのだろう。
「もう一つお聞きしても?」
「なあに?」
誠の顔が、ぐっと史乃に迫った。驚いて身を捩ると、追従してくる大きな体。
「まだ、したいですか?」
「そ……それは」
「私としたいと、お思いですか?」
目を合わすことができない。それもそうだ、自分を押し倒している男にこのようなことを聞かれて、簡単に返事が出来るはずもない。
「お嬢様、本当のお気持ちを聞かせて下さい」
「それは……!」
「否定的なお答えでしたら、我々は直ぐにこの部屋から出ていきますので、ご安心下さい」
「ええっと……」
史乃の目が盛大に泳ぐ。本当の気持ちなど、二人を前に言えるはずがない。
(端ない女だって思われてしまうもの)
史乃にも、二人の主人としての矜持があった。けれど、だからこそ嘘をつきたくないという本音だってある。
「お嬢様。私は、お嬢様がどのようにお答えになっても服従致します」
誠の、逃げ道を作ってくれるような優しい物言いに、史乃の胸の奥が熱くなる。やはりここは主人として、毅然な態度で本心を伝えることが二人のためになるのではないだろうか。
「私は……!」
史乃の声が僅かに震える。泳いでいた視線を正面に戻し、ゆっくりとその視界に誠を招き入れる。
「あ~くそ……」
椅子に腰を下ろし、乱暴に頭を搔いたのは禄郎であった。ジェイクが持って来たグラスの中身を一気に飲み干すと、不満げに頬を膨らませた。
「ずるいだろ、お前らだけ!」
「何がだ。公平にくじで決めようと言ったのはお前だろう?」
「そうだがよ!」
禄郎が睨みつけるのは、隣に腰を下ろした誠だった。長いこと史乃に触れていた誠に、禄郎は恨めしそうに愚痴を垂れている。
「まだ機会はあるだろう。今回のことで終わりというわけではない」
「けどよ……! というか、俺が一番許せないのはお嬢が処女を捧げたお前だジェイク!」
禄郎の向かいに腰を下ろしたジェイクは、形の良い眉を持ち上げながら首を傾げた。
「くじの結果だろう? 日頃の行いが良い奴が、当たりを引くんだよ」
「お嬢のことを一番想っているのは俺なんだ。俺に捧げたほうが、お嬢だって……」
「お嬢様の 膣は、狭くて熱くて最高だったよ」
ジェイクがグラスを机に置いた瞬間、禄郎がジェイクに飛びかかった。ジェイクのシャツとネクタイが歪んで皺を作るが、表情は余裕を保ったままだ。
「お前、いい気になるなよ?」
「どういう意味かな」
「お前のそういうところが……昔っから気に食わないって言ってんだ!」
ジェイクは史乃が五つの時から傍に仕えている。対して禄郎は生家が没落した十二の頃から。幼馴染とはいえ、どう足掻いても縮まらない七年間は深く、禄郎の中でそれは劣等感となっていた。
「てめぇ……!」
ジェイクの表情は変わらない。それは自信の現れでもあった。長年史乃の傍にいることへの誇り、それに僅かな驕り。禄郎はそれらを見抜き、不満を口にしてはこのように突っかるのだ。
「いい加減にしないか、禄郎。ジェイクは今日は……もう手出しが出来ないんだ」
しばらく黙っていた誠が、禄郎の肩を後ろから掴んだ。平生を装ってはいるが、彼とて心中穏やかではなかった。
「だからなんだってんだ……!」
「よく考えろ」
「……なるほどな。確かに駄目だとは言われてないか」
深く息を吸って呼吸を整えた禄郎は、落ち着きを取り戻したのかニヤリと口角を上げた。
「見てろよ。お嬢の心を手にするのは俺だ」
「いや……お嬢の心も体も、これから迎える婿殿のものになるんだが」
誠の言葉が聞こえているのかいないのか、禄郎は部屋から出て行ってしまった。残されたジェイクと誠は、顔を見合わせて眉尻を落とすしかなかった。
◇
三人との儀式の後、再び自慰に励んだ史乃は疲れ果て、午後からは少し眠って体を休めていた。ノックの音で目を覚ました夕方、禄郎が部屋に運んできてくれた食事をゆっくりと完食した史乃は、再び寝台に身を任せていた。食事を食べ少しは体の調子が良くなったようにも思えたが、やはりまだ万全ではない。
(だって……あんなの……)
思い出すだけで全身が火照り、悶えてしまう。ずきんと痺れるのは、足の付け根のもっと上──股の中心の、熱を孕んで湿った蕾。
初めて味わった、あの絶頂に達した時の快感。あれをもう一度体感したくて、自分で自分の体を虐めた。羞恥心はあった、けれど止められなかった。
(確かに気持ちよかったけど……なんだか少し違ったのよね)
寝台の上でごろりと寝返りを打つ。太股の間に右手を差し込み蕾に触れると、ピクンと下半身が反応してしまった。
「あ……ふ、ぅ……」
また、してしまう。この行為は妙に罪悪感が湧く──けれどその罪悪感を踏み倒して一人大きく足を開く行為が、開放的で刺激的で──大きな緊張感があって、得も言われぬ快感を呼ぶのだ。
「は……ぁ……ぁ、あ、あッ……」
大きく開いた股の中心で、秘部が解れて溶けてゆく。浴衣が開けて太股が露わになった。ぐちゅぐちゅと溢れる蜜が指に纏わりつき、尻の谷を伝った──その時。
「……ッ!?」
部屋の扉がノックされた。この叩き方は禄郎だ、恐らく膳を下げに来たのだろう。
「はい」
「お嬢、いいですか?」
「ええ、どうぞ」
布団を頭まですっぽりと被り、何事も無かったかのように禄郎を招き入れる。ばくばくと跳ねる胸は落ち着く様子もなく、早く禄郎が立ち去ることを祈るばかりだ。
「……お嬢、お加減は?」
先程座っていた椅子を寝台の横に動かした禄郎は、布団を被った史乃を覗き込む。腰を屈めたところで史乃の姿を見ることは出来ないのだが。
「食事も済ませたし……大丈夫よ」
「本当ですか?」
「ええ」
禄郎がこんなに優しいことは稀であった。史乃を揶揄うことが常であるので、布団にくるまったままの史乃も目を丸くしてしまった。
「体は痛くないですか?」
「お陰様で平気よ」
「よかった」
禄郎の安堵の溜め息に、史乃はあんぐりと口を開いてしまう。
(なんだか禄郎が変よ……? こんな姿、見たことないもの)
布団の中で史乃が混乱していると、突然視界が開けて体が震えた。被っていた布団が引き剥がされ、それを寝台の足元に投げ捨てたのは冷たい眼差しの禄郎だった。
「禄郎……?」
「お嬢、体は平気なんですよね?」
「え……そうね」
「それなら俺に抱かれて下さいよ」
「へ?」
ギ──と寝台が軋み、瞬きした瞬間に眼前に禄郎の姿が。間髪入れず唇が重なり、乱暴な舌が史乃の口内を蹂躙した。
「ふぁッ!? んあッ!?」
「お嬢……」
いつも乱暴なことばかり言う口から漏れるのは、甘く、粘着質のある吐息。口内を犯す禄郎の舌使いは、先程よりも巧みで。頭のてっぺんから甘い蜜を被ったかのように蕩け、史乃の体は次第に禄郎に絆されていった。
「なんで……んッ……はぁ……ろくろぉ……」
禄郎がこのような行為に走る理由が史乃には見当たらないのだ。先程儀式は一旦終わったはず──それなのに。
「目の間でお嬢があんな風に犯されて……終われるわけがないんですよ」
禄郎の両手が史乃の浴衣の胸元に伸びる。共衿に手を掛けた禄郎は、指を内側に差し込むとそこを握りしめ、大きく横に引いた。
「きゃあっ!」
「……え?」
目の前に零れ落ちた豊かな乳房に、禄郎の動きが止まる。それもそのはず、彼は着痩せしやすい史乃の胸がこんなにも豊満だとは知らず。先程の儀式で誠はによって遮られて見えず仕舞だったのだから。
「お嬢……胸、これ……え……?」
「な、なあに……?」
「デカすぎません?」
ふわりと包みこまれたかと思いきや、すぐに禄郎の五指が乳房に沈んだ。指は閉じては開き、それを何度も繰り返し──柔らかさを堪能しているようで。
「禄郎ッ……恥ずかしい……待って……一回待って……」
「できるわけ……」
「やッ! あんッ!」
立ち上がった右の乳首に吸い付かれ、背中が仰け反った。両手でしつこく揉みしだかれ、伸びてきた禄郎の右手の指先に反対側の乳首が捕まった。
「やだ……なんで……あッ!」
「だから、我慢の限界なんですって」
れろ──と、舌先だけでちまちまと乳首を弄くられ、史乃の呼吸が乱れてゆく。
「ずっと、ずーっと我慢してたんです。この時をどれだけ願ったか」
「え……禄郎?」
「だからお嬢、一緒に気持ちよくなりましょうね」
ぐにゃりと歪んだ禄郎の顔は可逆的で。怯んで動くことの出来ない史乃の小さな体は、少しだけ震えていた。
「震えてるんですか? かーわいい」
「え……あ……」
何度も胸を喰んだ禄郎は、遂にはその先端に歯を立てた。赤い歯型が史乃の乳頭に残り、禄郎は満足げにその周りを舐め回す。
「早く下にいきたいんですよね」
「し……た……」
「どれ……へぇ、どろどろじゃないですか」
無遠慮に伸びてきた禄郎の右手が、史乃の秘部を捏ね回す。ぐちゅぐちゅと泥濘んでいるのは、恐らく自分で触っていたせいもある。
「そんなに俺が欲しかったんです?」
「ち……ちが……!」
だというのに禄郎は、史乃が自分を求めて濡れていたのだと思い込んでいるようだ。繰り返し行っていた自慰を知られてしまうのは絶対に避けたいところであるので、このまま勘違いしていてほしいと願いばかりだ。
「じゃ……遠慮なく」
「あ……待って……禄郎ッ……!」
「んッ……はぁッ……美味い」
押し開かれた股の真ん中に、禄郎が顔を埋めている。先程の誠とは違う、少し乱暴な舌の動きに、史乃の足がビクビクと痺れ出す。
「やッ! あッ! あぁッ! だめぇッ! 待って!」
「こんなの見せられて……これ以上我慢できるわけねえんですわ」
史乃の太股を押さえつけたまま、禄郎は焦らすように彼女の足の付け根を舐め回す。眼前のご馳走に、喉を何度も鳴らした。
「お嬢、いいですよね?」
「はッ……は……ぅ……」
「こっちだってこんな状態なんですから」
バサバサと脱衣を始めた禄郎の股の真ん中で立ち上がるものに、史乃は目を疑った。苦しそうにズボンの中に押し込められていたそれは、ぶるんと解放されると同時に、史乃の眼前に突きつけられた。
(ふ……太い……! ジェイクのも誠のも凄かったけど、これ……)
長さは他の二人ほどではないかもしれない──が、太いのだ。果たしてこれは自分の膣に収まるのだろうか。
「たっぷり犯してあげるんで、もう少し待って下さいよね」
「ひゃ……い……」
「そんな声で……煽らないで下さいよ。で、どこを虐めてほしいんですか?」
「あッ……は、うぅッ!」
体を丸めて史乃の股の間に顔を埋めた禄郎の両親指が、小陰唇をぐいと横に開く。せがむように空を喰む膣口に、ゆっくりと中指を挿し込んだ。
「ああ……ああ……あぅッ……!」
「奥? それとも入口?」
「ぃッ……!? あぁッ! あッああッ! そんなに……混ぜたらッ……!」
「達する?」
長い指が繰り返し、繰り返し──緩急をつけながら、ずぶずぶな窟を掻き回す。
「ううう~ッ! ああッ! あッ! ふあぁッ! い……クッ!! イグッ!! う~! イッちゃう……!!」
「はっ……まだまだ」
「やだぁッ……だめぇ……! うぁッ! はぅッ!!」
史乃の目が朧気に揺れ始める。快感で意識が飛んでしまいそうなのだ。
「お嬢、起きて」
「う……ぁ……」
「かわいい……もう無理、挿れますね」
「ま……って……!」
「へぇ、逃げるんだ」
ぐるぐると視界が回る中、史乃は寝台の上を這い、床に滑り落ちた。のろのろと立ち上がって壁に寄りかかったところで、禄郎に捕まってしまった。
「なんで逃げるんです?」
「く……ぅ……あ……」
ガタンと追いやられたのはアーチ型の窓の前。禄郎が窓掛けを横に引くので、史乃の乳房は窓硝子に押し当てられてしまう。
「心の……じゅ、準備が」
「心の準備?」
「だって……私たち、幼馴染で……喧嘩ばかりで……こんなっ……! こんなの……!」
「俺はずっとこうしたかったんですよ」
背後から両胸を鷲掴みにされ、史乃の腰が砕ける。突き出した臀部に陰茎を擦り付けた禄郎は、史乃の乳首を摘んで何度も捻り上げた。
「俺はね、お嬢。物心ついた頃からずーっとこうしたかったんだ。それなのに、目の前でアイツが……お嬢の処女を奪った」
「え……?」
「ずっと好きだったんだ、史乃」
史乃、と禄郎に呼ばれたのは何年ぶりだっただろうか。思ってもみなかった不意打ちに、史乃の胸は跳ね上がる。その刹那──禄郎の両手が史乃の腰をぐいと引き上げた。全開になった膣口に、吸い込まれるように陰茎が沈んでゆく。
「ぅ……あああ……ああ……! やッ……ろく、ろ、だめ、ああんッ!」
挿入された肉棒に体が喜び、まるで蜜窟がしゃぶりついているようだ。滴る愛液は涎のようで、口いっぱいに頬張った隙間からとろとろと滴り落ちる。
「はッ……狭っ……!」
「うぁ……ろくろ……だめ……」
「どうですか……気持ちいいいでしょ……」
史乃の右足をぐいと持ち上げた禄郎は、無遠慮に腰を打ち付ける。ヒクヒクと痙攣する史乃の上半身には、禄郎の歯型がまた一つ──二つと増えてゆく。
「あぁ……はぅ゙ッ! ううッ……う~ッ!」
禄郎が腰を打ち付ける度に、ガタガタと窓硝子が音を立てる。手のひらと乳房を窓硝子に押し当てたままの史乃の腰を、禄郎はぐいと掴んで持ち上げた。
「あぁッ……!」
「ほら……自分で腰を……って、俺が言うまでもなくって感じですね」
直立不動なままの禄郎に対し、史乃は自ら腰を振る。禄郎の陰茎を使って、まるで自慰でもするかのような姿に、禄郎の口角がニッと上がった。
「はぁッ……お嬢ッ……駄目って言いながら……気持ちいいんですね」
「そ……れは……!」
「心の準備がようやく整ったってことですかね」
「そうね……きっとそうよ……」
自分の行いを思い返し、顔が熱を持った。ふと冷静になれば、自分は何ということをしていたのだろうと羞恥が勝り、顔を伏せてしまった。
(だって……! こんなに気持ちいいなんて……思ってなかったんだもの……!)
先程初めてジェイクと交わった時にあった体の痛みは消えており、今史乃が享受するのは男と交わる快感だけなのだ。
(だからって……私ったら自分で腰を……! なんて淫らなことを……!)
ごちゃごちゃと考えている間にも、禄郎は史乃の肩をぐいっと掴む。後ろからでたらめに史乃の口を吸ったかと思えば、直後に激しく腰を打ち付けられた。
「ああああッ! あああッ! ろくろ……ぅ、あ゙ッ! あ゙ッ! イクイクイクッ……!!」
「何度でもイカせてやる」
「うぁぁッ! あぅ゙ッ! いッううッ! イグぅッ! はぁッ……イクから、あ、あ、ああ……!!」
顎が天井を向き、曝け出された喉元に禄郎が音を立てて吸い付いた。
「お嬢、腰が砕けていませんか?」
「はッ……う……あ……!」
「本当にこの体で、バスガールが出来ますかね」
「ひぅッ……」
だらりと弛緩する史乃の体。禄郎は小さな体を左脇に抱え、そのまま寝台に押し倒した。
(だめ……きもちいぃ……あたまがフワフワする……)
禄郎は、うつ伏せとなった史乃の腰を掴み上げ、丹念に腰に唇を落とした。
「ろくろぉ……はぁッ……いれて……ちょうだい……」
史乃の言葉に、禄郎の口角が弧を描く。両手で鷲掴みにした臀部をぐいと横に引き、快楽を求めて脈打つとろとろな蜜窟をじっと見つめた。
「ふ……俺のモノでこんなに蕩けて」
「ひッ……ぁ……ぅ、あ゙ッ!」
臀部を掻き分けて勢いよく挿入を果たし──しつこく腰を打ち付ける。寝台が軋み、史乃の嬌声が次第に大きくなってゆく。
「お嬢……バスガールと当主、両方とも出来るって言ってましたよね」
「あッあッあッまた……やだ……またイクッ……イッ……ぐ、あああッ!!」
「出来ますか? こんな……蕩けた体で」
寝台の上で史乃の上半身が激しく揺れる。床についた膝はがくがくと震え、次第に足が開いていった。
「はぁッ……お嬢……俺だけを見て……俺の子を孕んで」
「え……ろく、ろぅッ……?」
「 膣で……イク……お嬢の……ッ……膣に出したい……!」
逃さないと言わんばかりに、禄郎の手に力が籠もる。腰をがっちりと押さえつけられた史乃が、自由に動くことは叶わない。
「え……え……出したらだめ! 禄郎……!」
左腕を背中に回し、なんとか禄郎の腕に手が届く。固い手首に触れるが、止まってくれるはずもなく。
「やぁッ……だ……! やだぁッ! まって……待ってよ……!」
「孕んで……孕んで、孕んで、孕んで史乃……!」
荒々しく打ち付けられる腰に、史乃の右腕の力が抜ける。かくんと折れ曲がり、寝台に顔面から突っ伏してしまった。
「ううッ! んううう! はぅッ……い、い……イクッ……!!」
「孕んで……孕んで……孕んで孕んで孕んで……!」
「おねがい……ほんと、ぅ……本当にまッ──!」
「あ……駄目だ、イク……!」
禄郎の顔に余裕がなくなってきた──その時だった。部屋の扉が乱暴に開き、踏み込んでき来たのは誠だった。
「今のは聞き捨てならないな」
開口一番にそう告げた誠は、寝台の上で絡まる二人との距離を一気に詰める。片膝を乗せて禄郎の左肩を乱暴に掴んだ。
「離れろ」
「は……なんでお前に命令されなきゃ……」
「離れろよ」
低く、威嚇するような誠の声に、流石の禄郎も身を引いた。濡れた陰茎がぬ──と顔を出し、解き放たれた史乃の体は吸い込まれるように寝台に倒れてゆく。
「おっと」
史乃は既の所で誠に両肩を掴まれた。そっと寝台に横たわった史乃は、ゆっくりと目線を上に動かした。
「……誠?」
「はい。お嬢様、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫……」
誠の無骨な手が史乃の頬を撫でる横で、禄郎が不満げに舌を打つ。その様子を見た誠は、盛大な溜め息をついた。
「お嬢様。どうしてこのようなことになったのか、お聞きしても?」
優しく史乃に問いかけた誠の視線は禄郎へと移り、威圧するように彼を睨みつけた。まるで「お前は何も言うな」と釘を差しているようだ。
「ろ、禄郎が急に……私のことが好きだったと言い出して、それで……!」
「受け入れたと?」
「ち、違うの!」
この説明では、史乃が自ら進んで禄郎を受け入れたと取られかねない。
(でも……嫌ではなかった……それを上手く説明できないわ)
頭が上手く回ってくれない。全身に残る快楽の余韻は、史乃の心身を掴んで離さない。
「わ、私も……その、何ていうか……上手く説明出来ないのだけれど……」
「……ふむ」
「こんなに気持ちの良いことがあるなんて、知らなくて……動揺しているの」
「なるほど」
誠は納得したのか、何度か小さく頷くと史乃の頬を両手で包み込んだ。
「つまりは……禄郎に急に迫られて動揺はしたものの、行為の気持ちよさに酔ってしまったと?」
「……そういうことになるのかも」
「なるほど」
誠はいつもこうやって史乃の心中を察して意見を汲んでくれる。時々心の中を見透かされているようで恐ろしくなることもあるが、きっとこれが彼の特技なのだろう。
「もう一つお聞きしても?」
「なあに?」
誠の顔が、ぐっと史乃に迫った。驚いて身を捩ると、追従してくる大きな体。
「まだ、したいですか?」
「そ……それは」
「私としたいと、お思いですか?」
目を合わすことができない。それもそうだ、自分を押し倒している男にこのようなことを聞かれて、簡単に返事が出来るはずもない。
「お嬢様、本当のお気持ちを聞かせて下さい」
「それは……!」
「否定的なお答えでしたら、我々は直ぐにこの部屋から出ていきますので、ご安心下さい」
「ええっと……」
史乃の目が盛大に泳ぐ。本当の気持ちなど、二人を前に言えるはずがない。
(端ない女だって思われてしまうもの)
史乃にも、二人の主人としての矜持があった。けれど、だからこそ嘘をつきたくないという本音だってある。
「お嬢様。私は、お嬢様がどのようにお答えになっても服従致します」
誠の、逃げ道を作ってくれるような優しい物言いに、史乃の胸の奥が熱くなる。やはりここは主人として、毅然な態度で本心を伝えることが二人のためになるのではないだろうか。
「私は……!」
史乃の声が僅かに震える。泳いでいた視線を正面に戻し、ゆっくりとその視界に誠を招き入れる。
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