【完結済】新妻サーシャは、堅物な旦那様に愛されたくて……迷走中!

こうしき

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7話 濁った本音(★)

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 窓を開けて廊下に飛び込んだシナブルは、執務室の扉を開けると、取り外した通信機と腕時計を机に叩きつけた。ノックもせずにアンナの私室へと駆け込むと、ベッドルームから荒い息遣いが聞こえてくる。

「……姫!」
「はぁッ……はぁッ……はぁッ……」
「姫!」
「シナブル……」

 ベッドの上でシーツを握りしめるアンナは、汗だくであった。涙と混じって、胸元はじっとりと濡れていた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
「大丈夫です姫、傍におります」
「ごめんなさい……!」
「姫」
「ううっ……ごめんなさい……ごめんなさい……あたしが……弱いせいで皆が! どうして、どうして……!」
「姫!」
「シナブル……あたし……あなたに、頼りすぎだわ……」
「問題ありません。エリック様がご不在時は、俺が……あなた様を」

 シナブルはベッドに腰を下ろすと、アンナの身体を抱きしめた。しっとりと汗ばんだ首筋に鼻を埋め、その香りを吸い込むと彼女の頭を子供のように撫でつけた。

「大丈夫です、きちんと消します」

 貪るように唇を重ねると、シナブルはアンナの頬を包みこんだ。力なく歪んだままの唇をこじ開けて口内に舌を捩じ込むと、弱りきった舌を絡め取った。

「ん……」
「……姫」 
「んッ……は……ぁ……」
「……姫」 
「ん゙ッ……!」

 身体を抱えて膝に乗せ、耳から首筋にかけて唇を落とすが、アンナの涙がそれだけで止まるはずなどなかった。

「う……うぅ……嫌……嫌……お願い、シナブル……」
「はい」

 何度も、何度も唇を重ね合わせる。絡まる舌に、零れ落ちる吐息。抱きしめる腕に、力が籠もる。

「……すぐに……欲しいの」
「え?」

 腕を緩めて少しだけ距離を取り、アンナの顔を見る。まだ涙は流れているものの──……求める顔に、欲情している自分がいた。

「あの……」
「お願い……」

 やけになったように、アンナはシナブルの下半身に顔を埋めた。ズボンの上からすんすんと香りを嗅ぎ、撫で回す。

「ん……」
「姫……あの……」
「もしかして、駄目なの?」
「まさか」

 シナブルがベルトを外すと、下着の上からアンナはその香りを更に嗅いだ。ちゅ、と唇を落とすとすぐにシナブルが下着を剥ぎ取り上着を抜いだ。

「いい?」
「はい」

 先程までの濃厚な口づけで既に準備の整った下半身に互いに触れ、アンナは下着を脱ぎ捨てシナブルの腰に跨った。

「……ごめんなさい」
「姫……」
「はッ……はッ……ああッ……シナブル……!」

 ゆったりと、ゆったりとシナブルは腰を揺する。アンナの涙を親指で拭い、何度も唇を重ねた。時折彼女の唇が、自分の首──喉仏にかけて押し付けられるのが、嬉しくて堪らない。

「あ……あぁッ……あ……」

 次第に蕩けてゆくアンナの表情から、目が離せない。悪夢を消し去り、快楽だけを求める彼女を、早く堕してしまいたかった。

「あ……あ……あ……はぁッ……ゆっくりなの、気持ちいい……」
「気持ちいいですか?」
「きもちいい……ぜんぶ、きもちいい……」

 アンナの寝巻きのワンピースを剥ぎ取り、胸元に唇を落とす。下着に押し込まれた豊満な胸が、苦しそうに揺れる。少しずつ、少しずつ腰の動きを早めながら、シナブルはベスト脱ぎ、唇を重ね、ネクタイを解き、唇を重ね、シャツを脱ぎ──全てを脱ぎ去るとようやく、アンナの下着を剥ぎ取り、彼女の腰を両手で掴んだ。

「あ……あ……あッ……!」
「動きますよ」
「激しく……するの?」
「ええ」

 耳元で囁き、首の側面から後ろにかけて吸い付くと、次第に激しく腰を振った。キュッと締まったアンナの腰が、快楽を求めて揺れていた。  


(俺を求めて……姫が自ら……腰を)


 この光景に興奮しない筈などなかった。乱暴に頭を掴み、そのままベッドへと押し倒す。

「はッぅ、うッあ、あ……ああッ! ああんッ! あッあッあッ……♡」
「アンナ……」
「シナ……ブル……あ……あッ……!」
「アンナ……」
「きもちいい……きもち、ぃ……あ゙……ん゙ぅ゙ッ!! ん゙ぅ゙ッ!! はぁッ……はぁッ……イクッ……!!」

 時折唇を重ねると、苦しげに唸る姿が堪らないのだ。もっと、もっと堕して、乱れて、もっと歪んでほしかった。

「あ……あ……ぅ……」

 ぐい、とアンナの足を抱え込み、上へと引き上げる。彼女の尻が浮き、踵はシナブルの肩に乗った。

「あ……これ……ちょっと……」
「よく、見えます」
「やだ……!」

 アンナの秘部が眼下に広がる体位に、シナブルの口元が思わず歪む。それを見てアンナはごくりと唾を飲むが、直後打ち付けられる腰に、甘い声が止めどなく零れてしまう。

「ぃ゙……あ……あッ! これ、だめッ……て、奥が……は、う、う、うぅッ! くッ……あ……あ……あ……♡」
「アンナ……」
「はッ……はッ……ま゙ッ……て、あ゙ッ! 奥、おく、おぐだめッ…………これ、だ、めぁ……あ゙ぁッ……! いちばん、おくだからぁッ……! いちばん、おぐは、だめって……だめぇ……なの……あ゙んッ……んああああ……!! あああ……イクぅ……イクぅ!! やだ、やだぁ、こわれる、こわれ、る、こわれるッ…………ぅッぅッぅッぐぅ……♡♡♡」

 陰茎を抜き取りアンナの足を下ろすと、だらしなく開いたまま、閉じる気配もない。彼女の愛液でべったりと濡れた太腿に唇を落とし、髪を撫でながら胸をそっと揉んだ。

「はぁッ……シナブル……」
「はい」
「…………あ」
 
 アンナがパッと口を大きく開く。それは──……合図。シナブルは困惑しながらもアンナに跨り、彼女の口元に股間を近づけ、ベッドのヘッドボードを握り締めた。

「はぅ、う~ッ……!」

 アンナの舌が伸びるのは、太腿の内側であった。下から少しずつ舐め進めると、舌先が陰嚢に達した。優しくつつくと、シナブルがもぞもぞと身を捩らせる。

「うぅッ……く、ぅあ、ああッ! あッ! ひめ……」
「ん……」
「ひぅッ! ふ、ぅッあ……ひ、め……ぁ゙……!」

 陰嚢を咥えて優しく喰むと、シナブルが情けない声を上げた。観念して脱力し、そのままアンナに身を任せた。

「んぐッ……ぅあ、あ゙……きもち、ぃ゙……ひめ゙、ぇ……あ、あ、あ、ひめッ、ぅ……! く、う~~ッ! あ゙……」
「ここも、好きでしょ」
「ふ、う、うぁッ! あ゙ッ!? んあッ! ああ……あ……!」

 手の中で陰嚢を転がしながら、陰茎との境目に吸い付くと、びくんと跳ね上がる大きな身体。陰嚢の裏をそっと撫でながら亀頭を甘噛みすると、もっと、と求めるように、びくんと腰が跳ねる。陰茎を掴んで激しく しごくと、下りてくるのは泣き出しそうな声。

「うぁッ! うああッ! ひッ……ぃ゙ゔッ! ぃ゙、ぃ゙……あッ……はぅッ! だめ、ひめ、やめて、くださ……だめ……!」
「んぅ……だめ。すき……シナブルの、好きだもん……もう少し」
「あああ……ああ……はあ、ッあ、あッあッ……いッいッくぅ……いッ……!」 

 先端をちゅ、と吸い上げながら、竿の部分を更に しごく。がくがくと自ら腰を振ろうとする様子に見惚れながら、アンナは手の動きを早めて、そして。

「出る、でるッ! もう、出る……いく、イ……ク……イク……あ、ああ、あ、あああアンナぁぁッ……!!」
「ん゙ッ!」

 口内のものを飲み干し、口元についたものは手の甲で拭い、アンナはシナブルの腰に抱きついた。揃ってベッドに尻餅をつく。アンナの涙は──止まっていた。

「はぁッ……はぁッ……すみません……!」
「いいわよ、よくあることじゃない」
「よくは……ありません……俺は……」
「気にしなくていいのに」

 薄汚い欲望が、シナブルの脳裏を掠める。いつもこうされると、決まって掠める欲望だ。

「……あの、姫」
「なに?」
「あの」
「ん?」
「不躾なことを訊くのですが」
「なに?」
「あの……」
「怒らないから言いなさいよ」

 横たわったアンナにつられて、シナブルも横たわる。彼女の方から自分に抱きついてくれる喜びを噛み締めながら、おずおずと口を開いた。

「エリック様のものも飲むのか、お聞きしても構いませんか……?」 
「はぁっ!?」
「すみません!」
「……あの人、駄目っていうのよ」
「……意外です」
「でしょ?」
「独占欲が強そうですのに」
「あなたも、独占欲が強いの?」
「いや……それは…………はい」

 フフッとアンナが吹き出すので、堪らずその顔を胸に押し付けた。こんな汚い本音を告げた顔など、見られたくなかった。

「答えたくないなら、訊かなきゃいいのに」
「だって……」
「はいはい…………ありがとね、シナブル」
「いえ」
「ありがとう……でもごめんね、あなた寝てたでしょ」
「いえ?」
「髪が下りてるじゃない」
「寝てはいませんでしたよ」

 妻に懇願されて、ようやく交わっていた最中でしたなどとは言える筈もなく。それどころか、未だアンナに妻を迎えたことを報告していなかった。この空気でそれを告げるほど、愚かではなかったが。

「ごめんね……いつもあなたに頼ってばかりで……」
「何度も申し上げておりますが、俺は……この役目を光栄に思っております」
「……光栄なだけ?」
「姫が苦しんでらっしゃるのに、露骨に嬉しいと喜ぶのも……違うかと」
「……嬉しいの?」
「はい。あなた様をお慕いしておりますと、以前お伝えしました。慕う方に求められることは、どのような形であれ嬉しいものです」
「あたしもそうなのかもしれない……」
「姫?」

 ずっと見つめ合っていた視線が逸らされ、そのままアンナは目を閉じてしまった。

「何でもない」
「もう一度言って下さい」

 瞼が持ち上がる。ちらりとシナブルを見やるが、すぐに逸らしてしまった。この言葉を伝えて良いものか、躊躇ってしまうのだ。

「……あなたにばかり抱かれていると、自分の気持ちがわからなくなるの」
「……」
「この気持ちはあなたの腕の中だけなのだと、そう思っているつもりなのに」
「……」
「ふとした拍子にあたしは……壊れてしまいそうで……んッ……は……あ……」
「姫……!」
「んッ……まだ、だめよ……!」

 こんなことを言われてしまえば、もう一度彼女を、今よりももっと激しく抱きたいと思ってしまうのは自然なことで。唇を重ねて求めるが、「まだだめ」という言葉に、止まるしかなかった。

「俺は……それは……」 
「ごめんなさい、変なこと言ったわ。忘れて」
「そんな、俺は……」


(……エリック様がお許しになっているとはいえ、いつまでもこのままではいけないと……姫への想いを、感情を断ち切るつもりで婚姻したというのに俺は……本音ではこの関係を、終わらせたくない。本当にクズだな)


「なに?」
「いえ……その、俺があなた様を愛しいと想う気持ちに、変わりはありません」
「シナブル……。ねえ、朝まで一緒に……いてくれる?」
「勿論です」
「目が覚めたとき、隣にいてくれる?」
「はい」

 唇が重なり、互いの身体に手が伸びる。アンナの胸に吸い付いたところでシナブルは一旦顔を上げた。

「どうかした?」
「あの、姫。時々確認しないと不安になるのですが」
「……ん?」
「その、避妊は……本当にしなくて良いのですか」

 五年前、二人は国王エドヴァルド二世から子を成すよう命令を受けていた時期があった── 血眼病けつがんびょうが流行し、一族はおろか国民諸共滅びかけたあの時期だ。

「あの時……お腹の子が駄目になってしまったこと、覚えてる?」
「忘れる筈などありません」
「あの時もそうだったし、今もそうだけど……年齢的なこともあるんだろうけど、あたし、妊娠しにくいのよ、多分。あれから……何ともないし……」
「……」
「だから、いいのよ、どっちでも」

 まだ若過ぎるということか、それとも相性の問題なのか。確かに今まで何度も交わったが、アンナにそのような気配はない。

「俺に、原因があるのかもしれません」
「それだと、エリックにも原因があるってことになるわよ?」
「そうですが……」
「いいのよ別に。跡継ぎとか、考えたくもない」
「……はい」

 夜が深くなってきた。部屋に置き去りにした妻はどうしているだろうか。頭の片隅でそんなことを考えつつも、シナブルはアンナの奥深くに、身を沈めた。


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