38 / 108
勇者の子供編
謝罪と謝罪
しおりを挟む
スタンピードから数日。
シルバと勇者が、さらに遅れて騎士団も到着し、魔物の群れを広域にわたって殲滅したことによって、スタンピードは終息した。
そして春風の一行、主にユウの活躍により、今回のスタンピードでは奇跡的に死人が出なかった。
怪我人こそあれど、命を失った者はいない。
結果的に見れば、スタンピード防衛は大成功といって間違いないだろう。
そして春風の一行も、この数日間で戦える程度に回復をしていた。
たった1人を除いて。
「「・・・・・」」
あの日から何度目かも分からない沈黙。向かい合うのはいつも2人で、1人は先のスタンピードの功労者であるユウだ。
ユウは意識こそあるものの、首から下の身体が一切動かない超重症で、病室のベッドに横たわりながら応対をしている。
そしてもう1人は日によって違う。今までオッドやズーリンなどパーティメンバーが見舞いに来ており、今日は村長であるフウの番だった。
「・・・ユウ、本当にごめんなさい。」
そして訪問者たちは、決まって哀しい目をしてユウに謝罪をする。
その目線は、あったはずの左腕に注がれているのだ。
「謝らないで下さい。これは僕が選んだことなんです。」
謝罪に対し、ユウは今日も同じ言葉を返す。
「・・・ユウのおかげでこの村は救われた。でも、そのためにあなたの左腕を・・・」
そして誰しもがそう言う。やはり割り切れないのだろう。自分が逆の立場でもきっとそうだ。
だが本当にユウは後悔もしていないし、もちろん誰かを恨んでもいない。だが、みんなはそれでも思うところがあるのだろう。
(こんな時、ゼレやバランだったらどうするんだろう・・・)
そんなことを考えた時、ユウのいる部屋のドアがガラッと開いた。次いですぐ軽い足音を立てながら、村の子供たち3人が飛び込んできたのだった。
「にいちゃん!だいじょうぶか!」
「じいちゃんにやくそうもらってきたんだ!」
「おにいさんの・・・おうでが・・・!」
フウが諌めようとするが、子供たちはユウのベッドから離れようとしない。
その中のシャナという少女が、目に涙を溜めながらゆっくりと話し続けた。
「どうして・・・なくなっちゃったの・・・!」
頭の中で「この村を守ろうと」と考えたとき、ユウは自分が何をすべきか、みんなに何を言うべきかが分かった。
子供たちに優しく笑い、ユウはフウに向かって言う。
「すみません。村の方と、春風の皆を呼んできてくれませんか?」
~~~~~
ほどなくして、春風の一行とフウをはじめとする村人数人がユウの病室に集まった。子供たちもベッドのそばに居る。
「すみません・・・いきなり呼びつけるようなことをして・・・」
「いや、いいんだ。・・・それで、どうした?ユウ。」
未だ悲しい目をしているオッドが、代表して集まった理由を聞く。
一呼吸おき、ユウは話し始めた。
「最初は、どうしたら皆さんの悲しみを払えるのだろう?と考えていました。」
「でもさっきやっと気付いたんです。皆さんを悲しめているのは、他でもない僕自身だったことを。」
オッドが口を挟もうとしたが、そばに居たカノンに制される。
ユウは自分の左腕があった場所を見ながら話を続けた。
「腕が無くなったことが悲しいんじゃない。腕を無くすという選択を、僕がしてしまったことが皆さんを悲しめたって、ようやく気付いたんです。」
そうしてユウは、その場にいた全員を右目で見据えた。
「僕は今後も同じような状況があったら、その時も同じように何かを犠牲にします。でも、それでも・・・・」
「僕も、ごめんなさい。自分だけで背負って、そのせいで皆さんを悲しませてしまいました。大切に思ってくれていたのに、自分で自分を傷つけてごめんなさい・・・!」
そうして首だけを下に倒し、ユウはあのスタンピードから初めて謝罪をする側に立った。自己犠牲の謝罪を。
「違う、お前は立派だった!・・・すまん、ユウ。」
「ユウ・・・頑張ったな。ありがとう、そして、すまない。」
「ユウごめんなさい。そして、皆を守ってくれて本当にありがとう。」
それぞれが思い思いの言葉を返し、ユウのベッドの周りを取り囲む。
悲しい目は少し残っているが、きっと、もう大丈夫だ。
そのやりとりを、3人の男女が病室の外で聞いていた。
黒髪の女性は何かを決意し、白髪の男性は満足したようにその場を後にする。
もう1人の黒髪の男性も、その場に留まりつつ同じように満足した表情で呟いた。
「彼こそが勇者に相応しい」
シルバと勇者が、さらに遅れて騎士団も到着し、魔物の群れを広域にわたって殲滅したことによって、スタンピードは終息した。
そして春風の一行、主にユウの活躍により、今回のスタンピードでは奇跡的に死人が出なかった。
怪我人こそあれど、命を失った者はいない。
結果的に見れば、スタンピード防衛は大成功といって間違いないだろう。
そして春風の一行も、この数日間で戦える程度に回復をしていた。
たった1人を除いて。
「「・・・・・」」
あの日から何度目かも分からない沈黙。向かい合うのはいつも2人で、1人は先のスタンピードの功労者であるユウだ。
ユウは意識こそあるものの、首から下の身体が一切動かない超重症で、病室のベッドに横たわりながら応対をしている。
そしてもう1人は日によって違う。今までオッドやズーリンなどパーティメンバーが見舞いに来ており、今日は村長であるフウの番だった。
「・・・ユウ、本当にごめんなさい。」
そして訪問者たちは、決まって哀しい目をしてユウに謝罪をする。
その目線は、あったはずの左腕に注がれているのだ。
「謝らないで下さい。これは僕が選んだことなんです。」
謝罪に対し、ユウは今日も同じ言葉を返す。
「・・・ユウのおかげでこの村は救われた。でも、そのためにあなたの左腕を・・・」
そして誰しもがそう言う。やはり割り切れないのだろう。自分が逆の立場でもきっとそうだ。
だが本当にユウは後悔もしていないし、もちろん誰かを恨んでもいない。だが、みんなはそれでも思うところがあるのだろう。
(こんな時、ゼレやバランだったらどうするんだろう・・・)
そんなことを考えた時、ユウのいる部屋のドアがガラッと開いた。次いですぐ軽い足音を立てながら、村の子供たち3人が飛び込んできたのだった。
「にいちゃん!だいじょうぶか!」
「じいちゃんにやくそうもらってきたんだ!」
「おにいさんの・・・おうでが・・・!」
フウが諌めようとするが、子供たちはユウのベッドから離れようとしない。
その中のシャナという少女が、目に涙を溜めながらゆっくりと話し続けた。
「どうして・・・なくなっちゃったの・・・!」
頭の中で「この村を守ろうと」と考えたとき、ユウは自分が何をすべきか、みんなに何を言うべきかが分かった。
子供たちに優しく笑い、ユウはフウに向かって言う。
「すみません。村の方と、春風の皆を呼んできてくれませんか?」
~~~~~
ほどなくして、春風の一行とフウをはじめとする村人数人がユウの病室に集まった。子供たちもベッドのそばに居る。
「すみません・・・いきなり呼びつけるようなことをして・・・」
「いや、いいんだ。・・・それで、どうした?ユウ。」
未だ悲しい目をしているオッドが、代表して集まった理由を聞く。
一呼吸おき、ユウは話し始めた。
「最初は、どうしたら皆さんの悲しみを払えるのだろう?と考えていました。」
「でもさっきやっと気付いたんです。皆さんを悲しめているのは、他でもない僕自身だったことを。」
オッドが口を挟もうとしたが、そばに居たカノンに制される。
ユウは自分の左腕があった場所を見ながら話を続けた。
「腕が無くなったことが悲しいんじゃない。腕を無くすという選択を、僕がしてしまったことが皆さんを悲しめたって、ようやく気付いたんです。」
そうしてユウは、その場にいた全員を右目で見据えた。
「僕は今後も同じような状況があったら、その時も同じように何かを犠牲にします。でも、それでも・・・・」
「僕も、ごめんなさい。自分だけで背負って、そのせいで皆さんを悲しませてしまいました。大切に思ってくれていたのに、自分で自分を傷つけてごめんなさい・・・!」
そうして首だけを下に倒し、ユウはあのスタンピードから初めて謝罪をする側に立った。自己犠牲の謝罪を。
「違う、お前は立派だった!・・・すまん、ユウ。」
「ユウ・・・頑張ったな。ありがとう、そして、すまない。」
「ユウごめんなさい。そして、皆を守ってくれて本当にありがとう。」
それぞれが思い思いの言葉を返し、ユウのベッドの周りを取り囲む。
悲しい目は少し残っているが、きっと、もう大丈夫だ。
そのやりとりを、3人の男女が病室の外で聞いていた。
黒髪の女性は何かを決意し、白髪の男性は満足したようにその場を後にする。
もう1人の黒髪の男性も、その場に留まりつつ同じように満足した表情で呟いた。
「彼こそが勇者に相応しい」
0
あなたにおすすめの小説
《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる