歪な戦士の異世界転生録 〜授かった【変換】スキルが尖り過ぎてて異常な性能を得る〜

チャド丸

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真の勇者編

アランという男

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「冒険者殿、この度は我が娘を助けていただきありがとうございます」
恰幅の良い男に会釈程度に頭を下げられるアラン。
サシャを助けたあとアランは、馬車が行こうとしていた街までサシャを連れて行った。

向かっていたのはサシャの実家で、目の前のこの男はそこの主、すなわちサシャの父親だった。
なんでもサシャはお見合いに出ていて、その帰りに襲われたそうだった。

「して、お礼なのですが・・・言い難いのでございますが私共も、馬や兵士を殺され少し痛手でして・・・」
「・・・見捨てたら寝覚めが悪いと、勝手にやったことだ。礼など気にしないでくれ」
アランがそういうと、男は露骨に喜色を見せる。

(助けたのがジィファであれば、この男は是が非でも礼金を捻出したのだろうな)
ニヤつく男をよそに、アランはそう考える。
魔王討伐を終えた直後のアランは、今までの人生で一番荒んでいた。

何かがある度に「これがジィファだったら・・・」と考えて、自分を卑下している。
わざわざこんな辺境の地まで単独足を運んだのも、ジィファがいないところにしばらく逃げたくなったからだ。

ジィファは今も、魔王討伐の祭典に勇者として招待され、各地への凱旋を行っている。
もちろんその待遇の差はジィファが悪いのではない。ジィファも、それどころか王もアランを全てのイベントなどに同席させようとした。

だが、古きを重んじる頭の固い一部の上層貴族が猛反対をした。今までのしきたりに倣えと。
結果としてアランは同席を認められず、しばらくの間放浪をすることとした。
その放浪の旅に出て数日、近隣で荒々しい気配を感じて駆けつけると、先の現場に出くわしたのだ。

「いやいやそれでは恩人に対する面目がたちませぬ。せめて我が屋敷で食事でもとっていってくだされ」
貴族の男は取り繕ったように、そう提案してきた。
お金を払う気は無いが、お礼だけで済ませて変な噂がたつのも嫌なのだろう。
思うところがありつつもアランは了承した。

~~~

その日の晩、アランは貴族の家で食事をとっていた。とても豪華とは言えない、貴族の食事のなかでも質素なもの。
ジィファだったらこんな食事でなく・・・という思考に支配されそうになるのを、安っぽいワインを飲みこんで誤魔化した。

アランの他にその場にいたのは男2人と女4人。
男はサシャの父とその息子、女はサシャとサシャの母、それにサシャの上か下か分からないが姉妹2人だ。

小さなカチャカチャとした音だけが流れるなか、サシャの父親が口を開いた。
「サシャよ、そういえばどうだったのだ?縁談は?」
心底どうでもいいように問いかける父に対し、サシャは申し訳なさそうに答える。

「・・・申し訳ございませんお父様、今回もお断りされてしまいました」
「またか・・・まぁよい。末娘であり目の見えないお前にはハナからまともな縁談なぞ期待しとらんからな。良い平民でも見つけたら、嫁いで行って構わんぞ」
「ちょっとお父様、見つけたらなんて意地が悪いですわよ」
こりゃ失敬、と言いながら笑うアランとサシャ以外の家族たち。

腐っていると思った。己が家族をこのように扱えること。曲がりなりにも客人の前でこのように振る舞えること。
サシャという女性は幸運だ。こんな世界の汚さを、見ることがないのだから。

そう思ってサシャの方を見たアラン。サシャは何事もないように、ただ普通に食事をとっていた。普通に・・・

「おや?どうしたかな冒険者殿、サシャを見つめて呆けているが」
サシャの父がアランに声をかけると、アランはサシャを見つめながら口を開いた。
「いや、食べ方が綺麗だなと」

サシャは目が見えない。なのにテーブルを汚すことなく、マナーを守って食事をしていた。
アランも今の今まで気づかなかった。食事をとる風景が当たり前すぎて、サシャの事情を知ってはいても頭が回らなかったのだ。

そしてそれに気づいたと同時に、アランはサシャに畏敬の念を抱いた。腐っても貴族であり使用人はいる。その使用人に手伝わせるという選択肢もあったはずだ。
だがそれをせず、サシャは1人で食事をとることを選んだのだ。

何より驚嘆すべきは、ここにいる目が見えているだけの豚どもよりも洗練された作法。見えないというハンデのなか、これを身につけることは想像を絶する努力をしたに違いない。
食器の形やパンの場所、グラスの取っ手の位置やナイフ・フォークの置かれた間隔など、全てを肌間隔で掴んだのだ。

ほんの一瞬アランはサシャを、勇者に選ばれず周りを見返すために努力をした自分と重ねた。
サシャを見つめるアランをみて、サシャの父親はニヤリと笑みを浮かべて茶化すように言う。
「これはこれは、ちょうど今サシャの縁談が無くなったところでしてな。よかったら冒険者殿が貰ってくれてもよいのですぞ?」

そうしてまた笑いだすアランとサシャ以外。
「あぁ、ぜひ前向きに考えておこう」
「ハッハッハッ・・・は?」
だがアランが満更でもない返事を返したことで、一同の笑いは止んだ。
代わりにサシャが、アランが座っている方へ驚いた顔を向けたのだった。

~~~

「ーーーそれで俺たちが座っている岩が動き出してな、拠点兼ベンチ代わりにしていたその岩こそが、報告にあったロックドラゴンだったんだ」
数日後、アランは同じ貴族の家の庭で、サシャに冒険の話をしていた。

あの食事を経て、サシャに興味が湧いたアランは今いる街をしばらく拠点にすることとした。
貧乏貴族と揶揄されるサシャの家が領主を務める、王都から遠く離れた小さな街だ。

そしてあれ以来アランは、毎日貴族の家に来てはサシャに話をしていた。
どんな話もサシャは、ニコニコと笑って楽しそうに聞いてくれた。
「それで相性が悪かったが間一髪、俺と弟両方のスキルが進化して勝ったんだ」
「まぁ!アラン様も弟様もまた勝ちました!お二人共凄いです!」

自分の事のように喜び興奮するサシャに、アランは目を細めて微笑みながら言う。
「・・・凄いのはサシャだよ。キミほど清廉な人を俺は見たことがない」
そう言うアランに対して、サシャは首を横に振る。
「いいえ、凄いのはアラン様です・・・正直私は、全てを諦めていました」

「あのときも、心の底ではようやく終わると思っていたのです。それでもアラン様が助け出してくれて、今では毎日会いに来てくれる。」
サシャは頬を赤く染めながら言葉を続ける。
「今はもう死にたくないと思えるほど。アラン様、これから先も、たまにでもいいので会いに来てくれますか?」

「・・・あぁ、もちろんだ」
アランがそう返事をして、2人は手を重ねた。
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