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地下へ続く螺旋階段を降りていく。その階段の壁には無数の髑髏が埋め込まれており、エイルが見たのはこの光景だったと確認が取れた。
共同墓地と言われるだけあり、その数は測り知れない。数百、数万もの髑髏が静かに眠っている。今はインウィディアが根城にしているからなのか、外とはまた違った薄ら寒さと禍々しさを感じる場所に成り果てていた。
「ったく、いい趣味してるなぁ……あの女は」
「女性の趣味に口出しはしたくありませんが、この場所は流石に私もどうかと思いますよ」
珍しくジュリアスが苦言を呈する。女性には寛大なジュリアスにこう言わせるインウィディアは、やはり人間との感性は合わないのだろう。
「あぁ、でもルシードに目をつけるのは、なかなかに趣味が良いと言えますね」
「中身を知っている身としては、閣下以外にルシード様はオススメできないです」
これが敵の拠点に乗り込んでいる会話なのだから、皆とても心強い。こんなときにでも軽口を叩く余裕があるその強靭なメンタル、流石は将軍とその直属の部下と言ったところだ。
「私としても、ルシードが閣下にどうプロポーズを決めたのか気になるので……さっさとあのいけ好かん女から取り戻しましょう」
階段の先に続く長い廊下、その終着点には大きく重厚な扉がその存在を主張していた。
「これから先は、なにがあるかわからん。各自、自分の判断で動いてくれ。俺の命令など待たなくて良い」
「御意に」
「最悪の事態が起きれば、ジュリアス……お前さんの転移魔法で、抱えられるだけ抱えてクラトリアまで戻ってくれ」
「承知いたしました。そのような事態にならぬよう、全力で努めます」
元より将軍2人は、なにかあれば即座に判断を下して動けるだろう。そういう2人だ。
「エイル、お前さんもだ。自分の判断で好きに動いてくれ……あと、無理に一人称を直さんでいいぞ?」
「閣下……わかりました。俺も足手まといにならないよう、やれるだけのことはします」
「よし。じゃあ……開くぞ」
重々しい扉は、ズズズッと引きずる音と埃を立てながらゆっくりと開く。
カタコンベの奥には更に道が続いていたが、その先に見える開けた場所には案の定インウィディアのペットが配置されていた。
「あの周りに並んでいるのは全て堕天使か……おいおい、多すぎだろうが」
開けたホールにマネキンのように並んでいたのは、先日世話になった連中と同じ堕天使たちだ。今はこちらに攻撃を仕掛けてくる気配はない。やはりインウィディアの術に操られている傀儡にすぎないようで、哀れみの感情すら生まれてしまう。
「これを突破しろということですか……中々に過激なレディですね、インウィディアは」
「堕天使と、あの中央の鎧はデュラハンですか」
「あれがインテリアの鎧だったら良かったんだがなぁ」
男3人が敵勢力にげんなりしていると、紅一点のイザベラが前に出た。
「ちょうど良い肩慣らしじゃないですか」
そう言ったイザベラは口の端を上げ、実に不快だという感情を顕にして殺気立っている。普段はここまで激情を表立って現したりはしないのだが、インウィディア相手となるとどうにも感情の抑えが効かないようだ。メイナードがいれば宥めてくれるのだが、ジュリアスでは火に油を注ぐようなものだ。エイルに至っては、女性が苦手なためイザベラに近づくことも適わない。
「ここは私が引き受けましょう。閣下はその間に先へお進みください」
そうなると、選択肢は1つだけ。この場は彼女に任せるほかない。
「戦力を割くのは得策ではないが、この状態じゃそれが一番の最適案か……」
「閣下がよろしければ、いつでも突撃します」
「――頼んだぞ、イザベラ」
「御意」
それを合図に、イザベラが敵陣へ飛び込んでいく。今まで身動きひとつ取らなかった堕天使たちも、イザベラの襲撃に合わせて動きだした。
「俺たちも行くぞ!」
「はい!」
イザベラの剣から繰り出される斬撃は、赤く燃え盛る炎を纏いながら堕天使たちを薙ぎ払う。フランベルジェと呼ばれるその剣は、イザベラの髪と同じく赤く染まっており、持ち主によく似合う。
「閣下、その扉の先にルシードがいるはずです!」
「わかった!」
切り開かれた道を駆け抜けながら、ジュリアスがホールの先にある扉を指さした。途中堕天使から攻撃を受けそうになるが、イザベラの炎がそれを遮る。
「すまんな……先に行くぞ」
「この躾のなっていないクズどもを片付けたら、私もすぐに向かいます……ご武運を」
扉を開き先へ向かうリュージとエイル。その扉の前にイザベラとジュリアスが立つ。
「なぜお前が残る、ジュリアス」
「女性を1人残すわけにはいかないでしょう? それに、2人の方が早く片付く」
イザベラは納得いかないと言った様子ではあったが、動き出した堕天使とデュラハンの攻撃をかわしながら渋々ジュリアスとの共闘を受諾する。
「いいだろう。口先だけではなく、しっかり手を動かしてもらうぞジュリアス」
「えぇ、さっさと片付けてしまいましょう」
共同墓地と言われるだけあり、その数は測り知れない。数百、数万もの髑髏が静かに眠っている。今はインウィディアが根城にしているからなのか、外とはまた違った薄ら寒さと禍々しさを感じる場所に成り果てていた。
「ったく、いい趣味してるなぁ……あの女は」
「女性の趣味に口出しはしたくありませんが、この場所は流石に私もどうかと思いますよ」
珍しくジュリアスが苦言を呈する。女性には寛大なジュリアスにこう言わせるインウィディアは、やはり人間との感性は合わないのだろう。
「あぁ、でもルシードに目をつけるのは、なかなかに趣味が良いと言えますね」
「中身を知っている身としては、閣下以外にルシード様はオススメできないです」
これが敵の拠点に乗り込んでいる会話なのだから、皆とても心強い。こんなときにでも軽口を叩く余裕があるその強靭なメンタル、流石は将軍とその直属の部下と言ったところだ。
「私としても、ルシードが閣下にどうプロポーズを決めたのか気になるので……さっさとあのいけ好かん女から取り戻しましょう」
階段の先に続く長い廊下、その終着点には大きく重厚な扉がその存在を主張していた。
「これから先は、なにがあるかわからん。各自、自分の判断で動いてくれ。俺の命令など待たなくて良い」
「御意に」
「最悪の事態が起きれば、ジュリアス……お前さんの転移魔法で、抱えられるだけ抱えてクラトリアまで戻ってくれ」
「承知いたしました。そのような事態にならぬよう、全力で努めます」
元より将軍2人は、なにかあれば即座に判断を下して動けるだろう。そういう2人だ。
「エイル、お前さんもだ。自分の判断で好きに動いてくれ……あと、無理に一人称を直さんでいいぞ?」
「閣下……わかりました。俺も足手まといにならないよう、やれるだけのことはします」
「よし。じゃあ……開くぞ」
重々しい扉は、ズズズッと引きずる音と埃を立てながらゆっくりと開く。
カタコンベの奥には更に道が続いていたが、その先に見える開けた場所には案の定インウィディアのペットが配置されていた。
「あの周りに並んでいるのは全て堕天使か……おいおい、多すぎだろうが」
開けたホールにマネキンのように並んでいたのは、先日世話になった連中と同じ堕天使たちだ。今はこちらに攻撃を仕掛けてくる気配はない。やはりインウィディアの術に操られている傀儡にすぎないようで、哀れみの感情すら生まれてしまう。
「これを突破しろということですか……中々に過激なレディですね、インウィディアは」
「堕天使と、あの中央の鎧はデュラハンですか」
「あれがインテリアの鎧だったら良かったんだがなぁ」
男3人が敵勢力にげんなりしていると、紅一点のイザベラが前に出た。
「ちょうど良い肩慣らしじゃないですか」
そう言ったイザベラは口の端を上げ、実に不快だという感情を顕にして殺気立っている。普段はここまで激情を表立って現したりはしないのだが、インウィディア相手となるとどうにも感情の抑えが効かないようだ。メイナードがいれば宥めてくれるのだが、ジュリアスでは火に油を注ぐようなものだ。エイルに至っては、女性が苦手なためイザベラに近づくことも適わない。
「ここは私が引き受けましょう。閣下はその間に先へお進みください」
そうなると、選択肢は1つだけ。この場は彼女に任せるほかない。
「戦力を割くのは得策ではないが、この状態じゃそれが一番の最適案か……」
「閣下がよろしければ、いつでも突撃します」
「――頼んだぞ、イザベラ」
「御意」
それを合図に、イザベラが敵陣へ飛び込んでいく。今まで身動きひとつ取らなかった堕天使たちも、イザベラの襲撃に合わせて動きだした。
「俺たちも行くぞ!」
「はい!」
イザベラの剣から繰り出される斬撃は、赤く燃え盛る炎を纏いながら堕天使たちを薙ぎ払う。フランベルジェと呼ばれるその剣は、イザベラの髪と同じく赤く染まっており、持ち主によく似合う。
「閣下、その扉の先にルシードがいるはずです!」
「わかった!」
切り開かれた道を駆け抜けながら、ジュリアスがホールの先にある扉を指さした。途中堕天使から攻撃を受けそうになるが、イザベラの炎がそれを遮る。
「すまんな……先に行くぞ」
「この躾のなっていないクズどもを片付けたら、私もすぐに向かいます……ご武運を」
扉を開き先へ向かうリュージとエイル。その扉の前にイザベラとジュリアスが立つ。
「なぜお前が残る、ジュリアス」
「女性を1人残すわけにはいかないでしょう? それに、2人の方が早く片付く」
イザベラは納得いかないと言った様子ではあったが、動き出した堕天使とデュラハンの攻撃をかわしながら渋々ジュリアスとの共闘を受諾する。
「いいだろう。口先だけではなく、しっかり手を動かしてもらうぞジュリアス」
「えぇ、さっさと片付けてしまいましょう」
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