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「っ!」
瞬時に身体強化のスキルを使用し、ルシードの一撃を受け止める。強化していてもビリビリと腕から全身へと伝わる衝撃に、リュージは歯を食いしばりながら耐える。
「……」
「この数日で、随分と愛想がなくなったじゃないか……っ」
鍔迫り合いの状態が続く中、無表情のままのルシードに向かってリュージがひとりごちる。手加減など一切ないルシードの力に競り負けそうになるが、後ろで控えているエイルから上乗せで掛けられた強化魔法のおかげでどうにか距離を取ることに持ち込めた。
しかし、息つく間もなくルシードは追撃を仕掛けてくる。繰り出される剣技はどれも早く、防戦一方を強いられてしまう。
「リュージちゃん、また防戦しかしないのぉ? その子、リュージちゃんを殺す気でいるのよ? ほら、死んじゃうわよぉ」
インウィディアの茶化しなど、今は聞いている余裕もない。さすが若くして将軍まで登り詰めた男。実力だけならリュージより数段上なのではないかと、攻撃を刀でいなしながら反撃の機会を窺う。普段であればリュージの前で表情のよく変わるルシードだが、ここまで感情のない状態では表情の変化で隙を見つけることすら難しい。
(傷つけたくはないが、無理だな)
精神魔法で操られているルシードに非はない。だからこそ、傷つけたくはないと甘い考えを持っていた。だが、相手はクラトリア帝国軍の将軍。そんな甘い考えで戦えば、命を落とすのは間違いなくリュージの方だ。
攻撃を交わしては距離をとり、それを繰り返す中でリュージの体力は少しずつ削られていく。疲労の色すら見せないルシードに対して、リュージは徐々に息が上がってきている。
「年には勝てんな……」
「わたしからしてみれば、リュージちゃんなんてまだまだ子供よ? ほら、いっぱい遊びましょう」
けらけらと笑うインウィディア。その様子にリュージは舌打ちをする。どうにか隙を作らないことには、追い詰められる一方だ。
「光の槍よ! 貫け!」
再度鍔迫り合いを続けていたところへ、ルシードの背後から光の槍が降る。しかし、それは間一髪のところで避けられてしまい地面へと突き刺さった。ルシードはすぐさま術の使用者、エイルに向けて反撃の氷魔法を放つ。だが、それは隙を作るには十分な時間だった。リュージは瞬時に間合いを詰めてルシードに居合の一撃を入れた。
「……そんな手加減してたら倒せないの、リュージちゃんならわかるでしょう?」
攻撃は当たった。だが、リュージ自身が攻撃の瞬間に躊躇ったため、相手に与えた傷は浅い。
「……」
胸元から流れる血を気にもとめず、ルシードはガラス玉のような瞳でこちらを見据えている。
精神魔法は呪いのようなものだ。解くためには術者に解かせるか、術者本人が死ぬか……掛けられた本人が自力で解くかになる。最後の選択肢は限りなく可能性が低く、可能性が1番高い選択肢は術者……インウィディアを討伐することだろう。
(その選択肢も難易度が高すぎるんだがな!)
どの道選べるものはそれしかないのだ。インウィディアを倒すためにも、ルシードをどうにか足止めして動けないように持ち込むしかない。
(イザベラとジュリアスが合流すれば、それができる)
いくらルシードとはいえ、将軍2人とリュージを相手には分が悪い。チラリと扉の方に目をやるが、2人はまだこちらに来る気配は窺えなかった。
「ふふ、援軍を期待しているのかしらぁ? だったらまだ来られないんじゃないかしらねぇ」
「あの2人がお前の躾の行き届いていないペットに遅れを取るとでも?」
「リュージちゃん。ここはカタコンベ……リュージちゃんも見たでしょう? ここには骸がたぁくさんあるの」
足を組み替え頬杖をつくながら、インウィディアは妖艶に微笑む。
「操れる骸は、何千といるのよ」
「くそったれだな、本当に」
ギリッと歯ぎしりをしながらインウィディアを睨みつける。扉の向こうは今頃カタコンベで眠っていた数百、数千の骸たちで溢れているのだろう。個々の強さは大したことはないが、数では押されてしまう。あの場に残してきたのがイザベラだけなら危険だった可能性が高いが、神聖魔法の使えるジュリアスもいる。2人の無事を願いながら、リュージは刀を強く握り前を見据える。
「悪いが、あの2人もうちの精鋭なんでな……お前さんのおもちゃに負けたりはせんよ」
「今の状態じゃぁ、負け惜しみにしか聞こえないわよぉリュージちゃん」
「どうだかなっ!」
今度はリュージから攻撃の一手を仕掛ける。ルシードは反射的にリュージに向けて魔法を放つが、それは当たる前に発動する魔法陣によって打ち消された。
「らしくないぞ! いつものお前さんなら、俺に魔法が当たらんのは知っているだろう!」
魔法攻撃が打ち消されたことにも動揺することはなく、ルシードはリュージの攻撃を受け止める。が、その剣圧で飛ばされた剣撃はルシードの皮膚を裂く。
「閣下! 援護します! 突き上げろ――グランド・スピア!」
ルシードの足元からエイルの魔法が発動し、大地が鋭く突き上げ襲い掛かる。かわしきれなかった魔法に傷を負うが、足止めするにはまだまだ足りない。
「リュージちゃん、本当にその子が大事なのねぇ。だから、傷つけずに足止めする方法ばかり考えてる」
インウィディアには完全に見透かされており、それを指摘されてしまう。
「ニンゲンって本当に愚かねぇ。たかが100年しか生きられないのに、欲しいものを素直にほしいって言えないの。好きなものは奪ってでも欲しくなるでしょ? その欲に従えばいいのに」
呆れたと言わんばかりに、リュージに向けてそう呟くインウィディア。なおも続くルシードとの攻防の間に聞こえたそれは、リュージの心をざわつかせる。
「わたしなら、本当に欲しいものは殺してでも手に入れたくなっちゃうわ」
「人間ってのは、お前さんと違って理性的な生き物なんでな。……だが、そうだな。その素直さは見習ってもいいかもしれんな」
攻撃の手を止め、インウィディアへ向き直るリュージ。それをルシードが見過ごすはずもなく、攻撃を仕掛けた。
瞬時に身体強化のスキルを使用し、ルシードの一撃を受け止める。強化していてもビリビリと腕から全身へと伝わる衝撃に、リュージは歯を食いしばりながら耐える。
「……」
「この数日で、随分と愛想がなくなったじゃないか……っ」
鍔迫り合いの状態が続く中、無表情のままのルシードに向かってリュージがひとりごちる。手加減など一切ないルシードの力に競り負けそうになるが、後ろで控えているエイルから上乗せで掛けられた強化魔法のおかげでどうにか距離を取ることに持ち込めた。
しかし、息つく間もなくルシードは追撃を仕掛けてくる。繰り出される剣技はどれも早く、防戦一方を強いられてしまう。
「リュージちゃん、また防戦しかしないのぉ? その子、リュージちゃんを殺す気でいるのよ? ほら、死んじゃうわよぉ」
インウィディアの茶化しなど、今は聞いている余裕もない。さすが若くして将軍まで登り詰めた男。実力だけならリュージより数段上なのではないかと、攻撃を刀でいなしながら反撃の機会を窺う。普段であればリュージの前で表情のよく変わるルシードだが、ここまで感情のない状態では表情の変化で隙を見つけることすら難しい。
(傷つけたくはないが、無理だな)
精神魔法で操られているルシードに非はない。だからこそ、傷つけたくはないと甘い考えを持っていた。だが、相手はクラトリア帝国軍の将軍。そんな甘い考えで戦えば、命を落とすのは間違いなくリュージの方だ。
攻撃を交わしては距離をとり、それを繰り返す中でリュージの体力は少しずつ削られていく。疲労の色すら見せないルシードに対して、リュージは徐々に息が上がってきている。
「年には勝てんな……」
「わたしからしてみれば、リュージちゃんなんてまだまだ子供よ? ほら、いっぱい遊びましょう」
けらけらと笑うインウィディア。その様子にリュージは舌打ちをする。どうにか隙を作らないことには、追い詰められる一方だ。
「光の槍よ! 貫け!」
再度鍔迫り合いを続けていたところへ、ルシードの背後から光の槍が降る。しかし、それは間一髪のところで避けられてしまい地面へと突き刺さった。ルシードはすぐさま術の使用者、エイルに向けて反撃の氷魔法を放つ。だが、それは隙を作るには十分な時間だった。リュージは瞬時に間合いを詰めてルシードに居合の一撃を入れた。
「……そんな手加減してたら倒せないの、リュージちゃんならわかるでしょう?」
攻撃は当たった。だが、リュージ自身が攻撃の瞬間に躊躇ったため、相手に与えた傷は浅い。
「……」
胸元から流れる血を気にもとめず、ルシードはガラス玉のような瞳でこちらを見据えている。
精神魔法は呪いのようなものだ。解くためには術者に解かせるか、術者本人が死ぬか……掛けられた本人が自力で解くかになる。最後の選択肢は限りなく可能性が低く、可能性が1番高い選択肢は術者……インウィディアを討伐することだろう。
(その選択肢も難易度が高すぎるんだがな!)
どの道選べるものはそれしかないのだ。インウィディアを倒すためにも、ルシードをどうにか足止めして動けないように持ち込むしかない。
(イザベラとジュリアスが合流すれば、それができる)
いくらルシードとはいえ、将軍2人とリュージを相手には分が悪い。チラリと扉の方に目をやるが、2人はまだこちらに来る気配は窺えなかった。
「ふふ、援軍を期待しているのかしらぁ? だったらまだ来られないんじゃないかしらねぇ」
「あの2人がお前の躾の行き届いていないペットに遅れを取るとでも?」
「リュージちゃん。ここはカタコンベ……リュージちゃんも見たでしょう? ここには骸がたぁくさんあるの」
足を組み替え頬杖をつくながら、インウィディアは妖艶に微笑む。
「操れる骸は、何千といるのよ」
「くそったれだな、本当に」
ギリッと歯ぎしりをしながらインウィディアを睨みつける。扉の向こうは今頃カタコンベで眠っていた数百、数千の骸たちで溢れているのだろう。個々の強さは大したことはないが、数では押されてしまう。あの場に残してきたのがイザベラだけなら危険だった可能性が高いが、神聖魔法の使えるジュリアスもいる。2人の無事を願いながら、リュージは刀を強く握り前を見据える。
「悪いが、あの2人もうちの精鋭なんでな……お前さんのおもちゃに負けたりはせんよ」
「今の状態じゃぁ、負け惜しみにしか聞こえないわよぉリュージちゃん」
「どうだかなっ!」
今度はリュージから攻撃の一手を仕掛ける。ルシードは反射的にリュージに向けて魔法を放つが、それは当たる前に発動する魔法陣によって打ち消された。
「らしくないぞ! いつものお前さんなら、俺に魔法が当たらんのは知っているだろう!」
魔法攻撃が打ち消されたことにも動揺することはなく、ルシードはリュージの攻撃を受け止める。が、その剣圧で飛ばされた剣撃はルシードの皮膚を裂く。
「閣下! 援護します! 突き上げろ――グランド・スピア!」
ルシードの足元からエイルの魔法が発動し、大地が鋭く突き上げ襲い掛かる。かわしきれなかった魔法に傷を負うが、足止めするにはまだまだ足りない。
「リュージちゃん、本当にその子が大事なのねぇ。だから、傷つけずに足止めする方法ばかり考えてる」
インウィディアには完全に見透かされており、それを指摘されてしまう。
「ニンゲンって本当に愚かねぇ。たかが100年しか生きられないのに、欲しいものを素直にほしいって言えないの。好きなものは奪ってでも欲しくなるでしょ? その欲に従えばいいのに」
呆れたと言わんばかりに、リュージに向けてそう呟くインウィディア。なおも続くルシードとの攻防の間に聞こえたそれは、リュージの心をざわつかせる。
「わたしなら、本当に欲しいものは殺してでも手に入れたくなっちゃうわ」
「人間ってのは、お前さんと違って理性的な生き物なんでな。……だが、そうだな。その素直さは見習ってもいいかもしれんな」
攻撃の手を止め、インウィディアへ向き直るリュージ。それをルシードが見過ごすはずもなく、攻撃を仕掛けた。
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