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「ん……」
首筋に何かが触れる感触で、沈んでいた意識がゆるゆると浮上してくる。どうやら寝落ちていたらしい。
「……んぅ?」
柔らかなものが首筋を伝い下へと降りる。
「痛っ! な、に?」
「おや、起きちゃったかい?」
チリっと走った痛みで意識が一気に覚醒する。薄暗い室内で、目を凝らしながら状況を把握しようと努めれば、律に馬乗りになっている紫藤の姿があった。
「紫藤、さん?」
「うん」
「なに、してるんですか」
「夜這い、かな」
暗い室内で表情までは確認できないが、きっと紫藤は良い笑顔で微笑んでいるに違いない。短い期間で学習した律は、そう確信した。
「夜這いって……なん、っ、ひぁ!」
会話に気を取られて無防備になっていた胸の頂をきゅっと抓まれ、律の口から甲高い声が上がる。紫藤の指は執拗にそこを攻め立て、思考の追いつかない律はされるがままになってしまっていた。
(なにがどうしてこうなってるの!)
いつの間にかシャツを脱がされて顕になっている肌に、紫藤の熱を帯びた手が這う。前回の性急な愛撫とは違い、そこだけを執拗に攻めてくる紫藤。その焦らされているような脳内が痺れる甘い刺激に、律は堪らず身体をくねらせた。
それと同時にあの甘い匂いが強く香り、律の頭の芯をくらくらとさせる。
「まったく。こんなにフェロモンを振りまいた上に、他のアルファの匂いまでさせて……いけない子だね、キミは」
「ふぇろ、もん?」
「気付いていなかったのかい? キミ、発情期を起こしてるんだよ」
耳元で囁かれ、その吐息が耳を掠める。ぬるっとした舌が耳朶を這う度に、下腹部がずくんと痛んだ。
発情期の兆候なんて来ていなかったのに。蕩けそうになる思考の中で、律は未だ把握できない自分のオメガ性に悪態を吐く。
「その様子だと、本当に気がついていなかったみたいだね」
「だっ、て……身体なんとも、なかったのに」
「何日か前から、うっすらと匂いはしていたんだよ?」
それならそうと、予め教えてくれれば良かったと思う。紫藤にそういったことを期待しても仕方がないと言う諦めの部分もあるが。
紫藤が興味を抱いているのは律個人ではなく、後天性のオメガという部分だけなのだから。わざわざ教えてやる義理もないのだろう。
「発情の匂いをさせながら外を歩いていたなんて、襲われても文句は言えないよ?」
その言葉に昼間の出来事が過り血の気が引く。その様子を見た紫藤は、意地悪そうに口元に笑みを浮かべて、律の腕を一括りにして枕へ縫い付ける。
「それとも、もう襲われた後なのかな?」
「襲われてなんか、ないです」
事実、襲われてはいない。それなのに、紫藤の視線から逃げるように顔を背けてしまった。
それが気に障ったのか、紫藤は律の腕を強く押さえ込む。痛みに顔を顰めるが、どうしてか身体は期待するように火照りだすのがわかった。
「匂いが濃くなったね」
まるでお見通しだと言わんばかりにくすりと笑われてしまい、律の身体は更に熱を帯びだした。自分の意思とは関係なく反応してしまう身体に律は戸惑う。
「襲われていないっていうのなら、どうしてそんなに他のアルファの匂いがするんだろうね」
「そ、れは」
やましいことなど何一つないはずなのに、言葉に詰まってしまう。恐る恐る紫藤と視線を合わせると、いつもの笑顔なのに、どこか萎縮してしまう雰囲気を感じた。
加えて紫藤から香る甘い匂いが一段と強くなり、律の身体から抵抗する力が抜けていく。
首筋に何かが触れる感触で、沈んでいた意識がゆるゆると浮上してくる。どうやら寝落ちていたらしい。
「……んぅ?」
柔らかなものが首筋を伝い下へと降りる。
「痛っ! な、に?」
「おや、起きちゃったかい?」
チリっと走った痛みで意識が一気に覚醒する。薄暗い室内で、目を凝らしながら状況を把握しようと努めれば、律に馬乗りになっている紫藤の姿があった。
「紫藤、さん?」
「うん」
「なに、してるんですか」
「夜這い、かな」
暗い室内で表情までは確認できないが、きっと紫藤は良い笑顔で微笑んでいるに違いない。短い期間で学習した律は、そう確信した。
「夜這いって……なん、っ、ひぁ!」
会話に気を取られて無防備になっていた胸の頂をきゅっと抓まれ、律の口から甲高い声が上がる。紫藤の指は執拗にそこを攻め立て、思考の追いつかない律はされるがままになってしまっていた。
(なにがどうしてこうなってるの!)
いつの間にかシャツを脱がされて顕になっている肌に、紫藤の熱を帯びた手が這う。前回の性急な愛撫とは違い、そこだけを執拗に攻めてくる紫藤。その焦らされているような脳内が痺れる甘い刺激に、律は堪らず身体をくねらせた。
それと同時にあの甘い匂いが強く香り、律の頭の芯をくらくらとさせる。
「まったく。こんなにフェロモンを振りまいた上に、他のアルファの匂いまでさせて……いけない子だね、キミは」
「ふぇろ、もん?」
「気付いていなかったのかい? キミ、発情期を起こしてるんだよ」
耳元で囁かれ、その吐息が耳を掠める。ぬるっとした舌が耳朶を這う度に、下腹部がずくんと痛んだ。
発情期の兆候なんて来ていなかったのに。蕩けそうになる思考の中で、律は未だ把握できない自分のオメガ性に悪態を吐く。
「その様子だと、本当に気がついていなかったみたいだね」
「だっ、て……身体なんとも、なかったのに」
「何日か前から、うっすらと匂いはしていたんだよ?」
それならそうと、予め教えてくれれば良かったと思う。紫藤にそういったことを期待しても仕方がないと言う諦めの部分もあるが。
紫藤が興味を抱いているのは律個人ではなく、後天性のオメガという部分だけなのだから。わざわざ教えてやる義理もないのだろう。
「発情の匂いをさせながら外を歩いていたなんて、襲われても文句は言えないよ?」
その言葉に昼間の出来事が過り血の気が引く。その様子を見た紫藤は、意地悪そうに口元に笑みを浮かべて、律の腕を一括りにして枕へ縫い付ける。
「それとも、もう襲われた後なのかな?」
「襲われてなんか、ないです」
事実、襲われてはいない。それなのに、紫藤の視線から逃げるように顔を背けてしまった。
それが気に障ったのか、紫藤は律の腕を強く押さえ込む。痛みに顔を顰めるが、どうしてか身体は期待するように火照りだすのがわかった。
「匂いが濃くなったね」
まるでお見通しだと言わんばかりにくすりと笑われてしまい、律の身体は更に熱を帯びだした。自分の意思とは関係なく反応してしまう身体に律は戸惑う。
「襲われていないっていうのなら、どうしてそんなに他のアルファの匂いがするんだろうね」
「そ、れは」
やましいことなど何一つないはずなのに、言葉に詰まってしまう。恐る恐る紫藤と視線を合わせると、いつもの笑顔なのに、どこか萎縮してしまう雰囲気を感じた。
加えて紫藤から香る甘い匂いが一段と強くなり、律の身体から抵抗する力が抜けていく。
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