転生賢者の時代遅れ無双~五百年後に転生したら魔導器だけの魔法のない世界だった件~

柊彼方

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22話 反逆の狼煙

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 翌日。早速リーシアがDクラスへと編入することになった。
 当然、クラスメイト達は雲の上の存在だと思っていたAクラス、その中でもトップの実力者の編入に驚きを隠せていなかった。
 しかし、驚くだけで嫌がるような生徒は一人もいなかった。
 最初は貴族であることにプライドを持っていた者や平民であることに負い目を感じている者もいた。
 けれど一か月が経った今、そのような者は一人もいなかった。
 ゾルバ先生のスパルタ授業を乗り越えたことで一種の団結間のようなものが生まれたからかもしれない。
 最初のDクラスの生徒たちなら嫌悪したり、嫉妬したりする者もいただろう。
 けれど今は一緒に頑張ろうね、などと声をかける生徒がいるほどだ。
 ゾルバ先生も最初は生徒たちにゴミなどと言っていたがいいクラスづくりをしているのかもしれない。
 
「よろしく、ルミアさん」
「うん、よろしくね。リーシアさん」

 ルミアとリーシアが笑顔で言葉を交わす。
 笑顔で仲良さそうにしているはずなのに、どこかバチバチと聞こえるのは気のせいだろうか。

「一人減って一人増えたか。まぁこれ以上は生徒の増減はないから安心しろ」

 ゾルバ先生は教卓に立っていつものように話をする。
 ちなみにクラス編入は一年の一学期中間対抗戦までしか認められないらしい。
 よってこれから三年間はこのクラスメイト達と切磋琢磨していくことになる。
 例えばCクラスが急に成長し、Bクラスと一年で入れ替わったとしよう。
 Bクラスの生徒はCクラスになったわけだが、納得できないためBクラスに編入したい、なんて考える者もいる。
 これを防ぐためにクラスポイントの変動がない一学期中間対抗戦までしか編入は認められないのだ。

「さて、一週間後にはクラス対抗戦が始まるが、お前らには一つの課題を出す」

 ゾルバ先生はそう言うと、黒板にすらすらと何かを書いていく。
 書き終わるとゾルバ先生はバンッと黒板をたたいて高らかに宣言した。

「お前らにはCクラスのゴミどもを再起不能なまでにボコボコに叩きのめせ」
「「「え?」」」

 黒板には大きく打倒Cクラスと書かれていた。

「もちろん暴力じゃない。プライドをだ。落ちこぼれのDクラスと呼ばれ、魔法を使い始めた時代遅れの逆張りクラスと呼ばれた俺らがCクラスの生徒に勝ってみろ? 自分たちがCクラスだったらどう思う?」

 ゾルバ先生は不敵な笑みを浮かべて生徒たちに想像させる。

「俺なら死にたくなるね」
「私はもう学院に行けないかも……」
「普通に恥ずかしくて消えたくなるわね」

 Dクラスの生徒たちは各々がゾッとした様子だった。
 けれど俺たちはDクラスであってCクラスではない。

「だろ? ならやってやろうぜ。俺たちが今まで言われてきた陰口を何百倍にもして返してやるんだ」

 強く拳を握り締めるゾルバ先生。
 けれどこのクラスで誰も先生のように強気ではいられなかった。

「でも私たちがCクラスに勝てるんですかね……?」

 そんな弱気な声を漏らしたのは隣に座っているルミアだ。
 仕方がないと言えば仕方がない。
 なにせDクラスの生徒たちは学院に入学するまではエリートだと言われてきた者たちだ。
 しかしDクラスに所属させられたことで生まれて初めて底辺を味わった。生まれて初めて本物の天才を知った。
 入学当初はかなりの陰口をはかれ、家族からもがっかりとされた者も少なくはないだろう。
 だからこそその圧倒的な壁に自分たちが届くのか信じられなかった。
 まぁ入学当初なら自分がDクラスに所属させられたことが信じられずに、自分の実力や立ち位置を正しく判断できずCクラスには勝てると豪語する生徒もいたかもしれない。
 そう言った面では確実に成長しているだろう。

「そうですよ。魔導器を使うのを辞めて俺たちはゼロからスタートしたんですよ?」
「流石にたった一か月では勝てないんじゃないですかね?」
「私たちにも勝てる可能性はあるんですか?」

 生徒たちはゾルバ先生に、どこか縋るように尋ねた。
 そしてゾルバ先生ははっきりと口にする。

「あぁ、お前らなら余裕だ」
「「「っ!」」」

 クラスメイト達はゾルバ先生の言葉を聞いて胸が熱くなっているように見える。
 お世辞や忖度をしない先生だからこそ、この言葉はクラスメイトに響く。
 絶対にかなわないと思っていた希望が現実的なものとなる。

「……やってやる! Cクラスの奴らをぎゃふんと言わせてやる!」
「私たちは先生の授業を耐えたんだから勝てるわ!」
「そうだね、他のクラスが俺たちより努力してるわけないもんな!」

 生徒たちは先生の言葉に加えて、これまで必死に努力をしてきた。
 それがようやく自信につながってきたのだろう。
 俺の目から見ても確実にどのクラスよりも努力している。
 というかもし別のクラスでゾルバ先生が授業をすればクレームが大量に来ること間違いなしだ。

「まぁ俺としてはBクラスの奴らにも勝ってほしいんだが……」
「「「それは無理です!!」」」

 クラスメイト達は息ぴったりである。
 俺としては全然Bクラスの生徒にも勝てる可能性はあると思っている。それはゾルバ先生も同じなのだろう。
 けれど今回はCクラスの生徒に勝って自信をつけることが目的だ。先生も無理は言わない。

「ルミアとジンはもちろんBクラスにも勝てよ」
「え、えぇ~無理ですよ……」

 ルミアは涙目になりながら弱気な言葉を漏らす。
 彼女はDクラスの中でも魔法技術は群を抜いている。
 Bクラスにも通用するだろう。

「私はどうすればいいんですか?」

 話を聞いていたリーシアはゾルバ先生に尋ねる。
 彼女はこのクラスに編入してまだ一日も経っていない。
 今から一週間で魔法を扱えるようになるのは可能だろうが、流石に今の実力よりは下がる。

「リーシアはこれまで通り魔導器で戦っていいぞ。その結果を鑑みて今後の授業計画を立てる」
「分かりました」
「ちなみに良い結果を出せばジンとルミナグループに最初から入れてやる」
「……全生徒を片っ端から木端微塵にしましょう」

 ゾルバ先生の報酬の提案を聞いて、一瞬で彼女の目が変わる。
 そんなに先生の基本練習をするのが嫌なのだろうか。

「先生俺たちは?」
「私もジン君の魔法の授業受けてみたいんですけど」
「俺も早く先生の授業から逃げ……卒業したいです!」

 他の生徒たちもリーシアに続いて報酬を求める。
 しかし先生は少しいやらしい笑みを浮かべて言った。

「あっはっは、お前らは俺が卒業まできっちり面倒見てやる。感謝しろよ?」
「「「…………」」」

 これからも地獄が続くことが確定した発言を受けて一瞬で生徒たちの瞳から光が失われる。
 中には涙を流している物もいた。楽しそうで何よりだ。

「さて、課題の発表も終わったし、早速だが中間対抗戦の内容でも発表するか」

 中間対抗戦の内容は一週間前から発表される。
 その内容を受けてクラスで作戦を考えたり、対策を練ったりするのだ。

「まずはお前たちも知っている通り学科試験だ。授業でやった範囲が出るから復習しとけよ」
「それだけですか? コツとかないんですか?」
「全部覚えたら満点取れるだろ。コツなんかあるか」
「「「…………」」」

 生徒たちはそれが難しいんだよ、みたいな視線を送るがゾルバ先生は気にしない。

「それに正直言って学科試験なんて俺はどうでもいい」

 教師が絶対に言ってはいけないような発言だが、ゾルバ先生なので誰ももう気にしない。
 リーシアだけ目をぱちくりさせているが、すぐに慣れるだろう。

「この世は実力至上主義だ。俺は実技しか興味ない」
「それで実技の試験はなんなんですか?」
「実技の試験にも種類がいくつかある。まずは個人戦だ」

 中間対抗戦は個人戦と団体戦に分かれるのは前に先生から聞いた気がする。

「一つ目はトーナメント。一クラスから四人選び、全クラス混合でトーナメント戦を行う。最終順位によってクラスポイントが割り振られる」

 この試験に関してはいたって単純な実力試しだ。
 最初からAクラスの生徒と対戦することもあるだろう。その場合は仕方がない。

「二つ目は実技試験。課題で出された魔導器を生徒が使い、色々な観点から審査する」
「俺ら最近魔導器使ってないですけど?」
「俺が確認したがこの魔導器と同じ魔法なら魔法を使っても問題ないらしい。一学期だから初級魔法相当の魔導器だろう。安心していい」

 魔導器に比べ魔法は難しい分、精巧な調整が効く。
 俺たちDクラスにも勝算はかなりあるだろう。

「団体戦はクラスから三人グループを二つ作ってクラスごとで戦う総当たりだ」

 団体戦に関しては個人の実力に加えてチームワークも求められる。
 グループを組み終わったら早速グループごとに練習をしなければならない。

「説明は以上だ。気になることがあれば後で俺に聞きに来い」

 説明を終えたゾルバ先生は再び、黒板を強く叩く。
 そして生徒たちを見て、口角を吊り上げた。

「勝つぞ――Dクラス」
「「「おおおおおおおぉぉぉぉ!」」」
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