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第三章「魔女の封印石」
3-3:サフィリアの提案
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「どう見たって、関係なくないでしょ?」
サフィリアを床に座らせ、カラナは立ち上がってズボンの埃を振り払った。
二人の英雄に牽制の眼差しを送る。
「クラル、こっちに来て」
老兵と鋭い殺気の応酬を繰り広げている少女に促す。
「わたしは大丈夫です。カラナ様はサフィリアを――」
「いいから来なさい!」
カラナの張った鋭い声に、驚いた様子を見せるクラル。
焦った様にこちらへ小走りに駆け寄って来る。
ローザの横を通り過ぎる格好になるが、ローザはクラルの動きなど気にもせず、こちらを凝視している。
カラナの背後に回り込むクラル。その様子を眼で追っていたアコナイトは、ため息を付いてナイフを下ろした。
「カラナよ、気持ちは分かるが……ふむ、この後どうする?」
クラルにサフィリアを見るように小声で伝え、前へ一歩踏み出す。
「まず、あたしにちゃんと話すべきじゃない?
訳も分からない内に、いきなり二人を吹っ飛ばされそうになって、抵抗するな、は無理があると思うんだけれども……?」
「理解すべきことはただ一つです。その娘が滅ぼすべき魔女である。ただそれだけ――」
淡々と語るローザの言葉を遮る。
「いいえ、それは貴女たちが勝手に言っていることよ。あたしはサフィリアが魔女だと確信してない」
自分の言葉にちからを乗せる様に、さらに一歩踏み出す。
「――百歩譲って、サフィリアが魔女だとしましょう?
けれど、記憶も魔力も失っているこの娘が、問答無用で抹殺しなければならない脅威かしら?」
「………………」
沈黙するローザ。その指先は依然としてサフィリアに狙いを定めている。
女神の視線の先にいる少女の様子を肩越しに見る。
クラルに両肩を抱かれ、ペタンと床に座り込んでいる。
頭を下げ、前髪で隠れたその表情を伺うことは出来ない。
「確かに、今のサイザリスは、わたくしにとってまったく脅威ではありません」
ローザの声に視線をそちらに向ける。
「なら、どうしてサフィリアの命を奪う事に執着するの?
サフィリアが魔女の魔力を取り戻す事は、もうないんでしょ……?」
カラナの問いに、ローザは首を横に振った。
「サイザリスを斃さねばならぬ理由は正にそれなのです。
その者の魔力が封じられた魔導石は――未だ存在しているのです」
ローザは語った。
魔女の封印石"ヴェルデグリス"の存在を。
彼女によれば、サイザリスの魔力を封じた"封印石"は、このテユヴェローズの大聖堂に安置されていると言う。
「残念ながら、"ヴェルデグリス"を安全に破壊する"マギコード"は、サイザリスしか知りません。そのサイザリスが記憶を失っている以上、破壊する手立てがないのです」
語り尽くしたローザは再び、鋭い視線をサフィリアに向ける。
「分かりますか? "ヴェルデグリス"だけであれば、まだ危険は許容の範囲に収まっていました。ですが、ここに肉体と魔力が揃ってしまった。その二つが出会うことがあれば――」
「もはや今のワシらでは太刀打ちできぬであろう……!」
アコナイトが言葉を繋ぐ。
彼女たちの言葉がすべて真実ならば――カラナにサフィリアを救う術はない。
"ヴェルデグリス"が破壊できないのであれば、肉体の方を葬り去る。
至極、単純な理屈だ。
「……あたしがサフィリアの面倒を見る。絶対に"ヴェルデグリス"には近づけさせない――」
「万に一つとは正に今の状況を指す言葉です。
ほんの些細な間違いがあれば、共和国は滅びるのです」
「…………」
反論出来ず、言葉を失う。
ローザはそれを肯定と受け取った様だ。
「アコナイト。兵を呼んでサイザリスを拘束して下さい。今この場でサイザリスを―――」
「ちょっと待ってよ」
ローザの声を止めたのはサフィリアだった。
ゆっくりと立ち上がり、上を向く。
涙の溜まった碧い瞳を、ローブの袖で拭く。
「何か勝手に話が進んでいるけど…サフィリアの意見は聞いてくれないの……?」
「貴女に聞く事はありません。張本人に弁明の余地があるとでも……?」
「あるよ!」
はっきりとした回答が意外だったか、若干驚きの表情を見せるローザ。
「……貴女と問答をする気はありません。今すぐ―――」
「ローザ様のお話がホントなら、サフィリアの魔力と記憶を封印した"ヴェル……デグ……リス"? ……って魔導石が、この街にあるんだよね?」
ローザの言葉をきっぱり無視してまくし立てるサフィリア。流石にむっとした表情を見せるローザ。
構わずサフィリアは続ける。
「それで、その"ヴェルデグリス"を破壊する方法を、サフィリアは忘れてるって事だね?」
「…………その通りです」
観念したか、ローザがサフィリアの言葉を肯定する。
ローザの答えに、何を満足したのか、うんうんと大きく頷く。
「ならばさ――それならだよ?」
カラナの横まで、強く踏み出して、渦中の少女は強く言葉をつむいだ。
「サフィリアがその"ヴェルデグリス"をぶっ壊してあげるよ!」
サフィリアを床に座らせ、カラナは立ち上がってズボンの埃を振り払った。
二人の英雄に牽制の眼差しを送る。
「クラル、こっちに来て」
老兵と鋭い殺気の応酬を繰り広げている少女に促す。
「わたしは大丈夫です。カラナ様はサフィリアを――」
「いいから来なさい!」
カラナの張った鋭い声に、驚いた様子を見せるクラル。
焦った様にこちらへ小走りに駆け寄って来る。
ローザの横を通り過ぎる格好になるが、ローザはクラルの動きなど気にもせず、こちらを凝視している。
カラナの背後に回り込むクラル。その様子を眼で追っていたアコナイトは、ため息を付いてナイフを下ろした。
「カラナよ、気持ちは分かるが……ふむ、この後どうする?」
クラルにサフィリアを見るように小声で伝え、前へ一歩踏み出す。
「まず、あたしにちゃんと話すべきじゃない?
訳も分からない内に、いきなり二人を吹っ飛ばされそうになって、抵抗するな、は無理があると思うんだけれども……?」
「理解すべきことはただ一つです。その娘が滅ぼすべき魔女である。ただそれだけ――」
淡々と語るローザの言葉を遮る。
「いいえ、それは貴女たちが勝手に言っていることよ。あたしはサフィリアが魔女だと確信してない」
自分の言葉にちからを乗せる様に、さらに一歩踏み出す。
「――百歩譲って、サフィリアが魔女だとしましょう?
けれど、記憶も魔力も失っているこの娘が、問答無用で抹殺しなければならない脅威かしら?」
「………………」
沈黙するローザ。その指先は依然としてサフィリアに狙いを定めている。
女神の視線の先にいる少女の様子を肩越しに見る。
クラルに両肩を抱かれ、ペタンと床に座り込んでいる。
頭を下げ、前髪で隠れたその表情を伺うことは出来ない。
「確かに、今のサイザリスは、わたくしにとってまったく脅威ではありません」
ローザの声に視線をそちらに向ける。
「なら、どうしてサフィリアの命を奪う事に執着するの?
サフィリアが魔女の魔力を取り戻す事は、もうないんでしょ……?」
カラナの問いに、ローザは首を横に振った。
「サイザリスを斃さねばならぬ理由は正にそれなのです。
その者の魔力が封じられた魔導石は――未だ存在しているのです」
ローザは語った。
魔女の封印石"ヴェルデグリス"の存在を。
彼女によれば、サイザリスの魔力を封じた"封印石"は、このテユヴェローズの大聖堂に安置されていると言う。
「残念ながら、"ヴェルデグリス"を安全に破壊する"マギコード"は、サイザリスしか知りません。そのサイザリスが記憶を失っている以上、破壊する手立てがないのです」
語り尽くしたローザは再び、鋭い視線をサフィリアに向ける。
「分かりますか? "ヴェルデグリス"だけであれば、まだ危険は許容の範囲に収まっていました。ですが、ここに肉体と魔力が揃ってしまった。その二つが出会うことがあれば――」
「もはや今のワシらでは太刀打ちできぬであろう……!」
アコナイトが言葉を繋ぐ。
彼女たちの言葉がすべて真実ならば――カラナにサフィリアを救う術はない。
"ヴェルデグリス"が破壊できないのであれば、肉体の方を葬り去る。
至極、単純な理屈だ。
「……あたしがサフィリアの面倒を見る。絶対に"ヴェルデグリス"には近づけさせない――」
「万に一つとは正に今の状況を指す言葉です。
ほんの些細な間違いがあれば、共和国は滅びるのです」
「…………」
反論出来ず、言葉を失う。
ローザはそれを肯定と受け取った様だ。
「アコナイト。兵を呼んでサイザリスを拘束して下さい。今この場でサイザリスを―――」
「ちょっと待ってよ」
ローザの声を止めたのはサフィリアだった。
ゆっくりと立ち上がり、上を向く。
涙の溜まった碧い瞳を、ローブの袖で拭く。
「何か勝手に話が進んでいるけど…サフィリアの意見は聞いてくれないの……?」
「貴女に聞く事はありません。張本人に弁明の余地があるとでも……?」
「あるよ!」
はっきりとした回答が意外だったか、若干驚きの表情を見せるローザ。
「……貴女と問答をする気はありません。今すぐ―――」
「ローザ様のお話がホントなら、サフィリアの魔力と記憶を封印した"ヴェル……デグ……リス"? ……って魔導石が、この街にあるんだよね?」
ローザの言葉をきっぱり無視してまくし立てるサフィリア。流石にむっとした表情を見せるローザ。
構わずサフィリアは続ける。
「それで、その"ヴェルデグリス"を破壊する方法を、サフィリアは忘れてるって事だね?」
「…………その通りです」
観念したか、ローザがサフィリアの言葉を肯定する。
ローザの答えに、何を満足したのか、うんうんと大きく頷く。
「ならばさ――それならだよ?」
カラナの横まで、強く踏み出して、渦中の少女は強く言葉をつむいだ。
「サフィリアがその"ヴェルデグリス"をぶっ壊してあげるよ!」
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