あたしが助けた少女は最恐の魔女だった!? ~魔導師カラナと魔女の封印石~

KASHIMA3508

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第三章「魔女の封印石」

3-3:サフィリアの提案

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「どう見たって、関係なくないでしょ?」

 サフィリアを床に座らせ、カラナは立ち上がってズボンのほこりを振り払った。
 二人の英雄に牽制けんせいの眼差しを送る。

「クラル、こっちに来て」
 老兵と鋭い殺気の応酬おうしゆうを繰り広げている少女にうながす。
「わたしは大丈夫です。カラナ様はサフィリアを――」
「いいから来なさい!」
 カラナの張った鋭い声に、驚いた様子を見せるクラル。
 焦った様にこちらへ小走りに駆け寄って来る。
 ローザの横を通り過ぎる格好かつこうになるが、ローザはクラルの動きなど気にもせず、こちらを凝視ぎようししている。

 カラナの背後に回り込むクラル。その様子を眼で追っていたアコナイトは、ため息を付いてナイフを下ろした。
「カラナよ、気持ちは分かるが……ふむ、この後どうする?」

 クラルにサフィリアを見るように小声で伝え、前へ一歩踏み出す。
「まず、あたしにちゃんと話すべきじゃない? 
 訳も分からない内に、いきなり二人を吹っ飛ばされそうになって、抵抗するな、は無理があると思うんだけれども……?」
「理解すべきことはただ一つです。その娘が滅ぼすべき魔女である。ただそれだけ――」
 淡々と語るローザの言葉をさえぎる。

「いいえ、それは貴女たちが勝手に言っていることよ。あたしはサフィリアが魔女だと確信してない」
 自分の言葉にちからを乗せる様に、さらに一歩踏み出す。
「――百歩ゆずって、サフィリアが魔女だとしましょう?
 けれど、記憶も魔力ちからも失っているこのが、問答無用で抹殺まつさつしなければならない脅威きよういかしら?」

「………………」
 沈黙するローザ。その指先は依然いぜんとしてサフィリアに狙いを定めている。
 女神の視線の先にいる少女の様子を肩越しに見る。
 クラルに両肩をかれ、ペタンと床に座り込んでいる。
 頭を下げ、前髪で隠れたその表情をうかがうことは出来ない。

「確かに、今のサイザリスは、わたくしにとってまったく脅威ではありません」
 ローザの声に視線をそちらに向ける。
「なら、どうしてサフィリアの命を奪う事に執着するの?
 サフィリアが魔女の魔力ちからを取り戻す事は、もうないんでしょ……?」

 カラナの問いに、ローザは首を横に振った。
「サイザリスをたおさねばならぬ理由は正にそれなのです。
 その者の魔力ちからが封じられた魔導石は――いまだ存在しているのです」

 ローザは語った。
 魔女の封印石"ヴェルデグリス"の存在を。

 彼女によれば、サイザリスの魔力を封じた"封印石ヴェルデグリス"は、このテユヴェローズの大聖堂に安置されていると言う。
「残念ながら、"ヴェルデグリス"を安全に破壊する"マギコード"は、サイザリスしか知りません。そのサイザリスが記憶を失っている以上、破壊する手立てがないのです」

 語り尽くしたローザは再び、鋭い視線をサフィリアに向ける。
「分かりますか? "ヴェルデグリス"だけであれば、まだ危険は許容きよようの範囲に収まっていました。ですが、ここに肉体と魔力がそろってしまった。その二つが出会うことがあれば――」
「もはや今のワシらでは太刀打ちできぬであろう……!」
 アコナイトが言葉をつなぐ。

 彼女たちの言葉がすべて真実ならば――カラナにサフィリアを救うすべはない。

 "ヴェルデグリス"が破壊できないのであれば、肉体の方をほうむり去る。
 至極しごく、単純な理屈だ。

「……あたしがサフィリアの面倒を見る。絶対に"ヴェルデグリス"には近づけさせない――」
「万に一つとは正に今の状況をす言葉です。
 ほんの些細ささいな間違いがあれば、共和国は滅びるのです」
「…………」
 反論出来ず、言葉を失う。
 ローザはそれを肯定こうていと受け取った様だ。

「アコナイト。兵を呼んでサイザリスを拘束して下さい。今この場でサイザリスを―――」
「ちょっと待ってよ」
 ローザの声を止めたのはサフィリアだった。
 ゆっくりと立ち上がり、上を向く。
 涙の溜まったあおい瞳を、ローブのそでく。

「何か勝手に話が進んでいるけど…サフィリアの意見は聞いてくれないの……?」
「貴女に聞く事はありません。張本人ちようほんにん弁明べんめいの余地があるとでも……?」
「あるよ!」
 はっきりとした回答が意外だったか、若干じやつかん驚きの表情を見せるローザ。
「……貴女と問答をする気はありません。今すぐ―――」
「ローザ様のお話がホントなら、サフィリアの魔力ちからと記憶を封印した"ヴェル……デグ……リス"? ……って魔導石が、この街にあるんだよね?」
 ローザの言葉をきっぱり無視してまくし立てるサフィリア。流石にむっとした表情を見せるローザ。
 構わずサフィリアは続ける。
「それで、その"ヴェルデグリス"を破壊する方法を、サフィリアは忘れてるって事だね?」
「…………その通りです」
 観念したか、ローザがサフィリアの言葉を肯定する。

 ローザの答えに、何を満足したのか、うんうんと大きくうなずく。
「ならばさ――それならだよ?」
 カラナの横まで、強くみ出して、渦中かちゆうの少女は強く言葉をつむいだ。

「サフィリアがその"ヴェルデグリス"をぶっ壊してあげるよ!」
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