35 / 51
第六章「引き裂かれる者たち」
6-3:防戦
しおりを挟む
「喰らえッ!」
鋭い声とともに、サフィリアは再び、超低温の烈風を氷弾とともに繰り出す!
だが、結果は同じ。
手足を駆使し氷弾を叩き落とすヴィオレッタ!
低温による裂傷のダメージを期待して超低温の風を纏わせてみたが、彼女はかすり傷ひとつ着いていない様だった。
「嘘でしょ……!」
言葉を失うサフィリアに、うっすらとした笑みを浮かべるヴィオレッタ。
その全身に散りばめられた魔導石が、一様に淡い光を放っている。
「……では、次はこちらから参ります」
軽やかに指先をこちらに向ける。その先から、濃い紫色の雷撃が放たれる!
不規則な動きで地面を走りながら、雷撃がサフィリアの身体をからめとった!
「サフィリア!」
向こうでシスターたちと攻防を繰り広げるカラナが叫ぶ!
「大丈夫だよ!」
身体にまとわりついた雷撃を、魔法障壁で撥ね退け、返答する。
ヴィオレッタの攻撃自体は大した事はない。
驚くべきはその防御能力だろう。
見た目に反した身体能力も然る事ながら、無数の氷弾をすべて叩き落した、彼女の”魔法障壁”である。
ヴィオレッタも素手で叩き落した訳ではない。
そんなことをしたら人間の腕の方が砕ける。
腕に、脚に、”魔法障壁”を造り出して弾いたのだ。
直径が大きくても数十センチメートルの魔法障壁を造る術自体は、特別高度ではない。
脅威は、複数の魔導石を同時に発動させて、全身を”魔法障壁”で防御した事だ。
魔導石は、個体ごとに結晶構造が異なる為、同じ魔法でも組み立てる"マギコード"が異なる。複数の魔導石を同時に起動する事は難易度が高い。
別々の本を同時に読むも同然の行為――とも表現される、極めて難しい技術だ。
だが、目の前のヴィオレッタは、そんな常識を無視する様に、全身の魔導石を同時に起動させ、文字通り魔力の鎧を全身に纏って見せた。
可能なのか、そんな事が?
可能ならば、彼女はサイザリスを遥かに超える世紀の魔導師である。
何か仕掛けがある筈だが、どの途、この条件でダメージを与えなければならない状況に変わりはない。
答えは簡単だ。”魔法障壁”では防御出来ない物理攻撃で直接殴れば良い。
思った時が吉日とばかりに、サフィリアは走ってヴィオレッタと距離を詰める!
“マギコード”を組み立て、周囲にいくつも生み出した氷塊を携えて突進!
こちらの意図を察したか、レイピアを半身に構えて接近戦の意思を見せた!
「行けッ!」
走りながら地面に錫杖の先端を滑らせる!
その動きに合わせ、逆さ氷柱の波が、ヴィオレッタの足元目掛けて地面を走る!
軽やかなステップを踏んで、その攻撃を回避するヴィオレッタ。
しかし、その時すでにサフィリアは空中に飛び上がり、彼女の頭目掛けて氷弾の雨を撃ち込んだ!
氷弾を弾き飛ばし、回避するヴィオレッタの死角から錫杖を直接叩き込む!
――描いたそのイメージは、ヴィオレッタの背後から広がった魔法の構成文に搔き消された!
空間に描かれた"マギコード"が、灼熱の炎に変わる!
「え!?」
ヴィオレッタの背後から、身体を丸めて潜んでいた『ゴーレム』が一体!
今の火炎は、こいつの起こしたものか!?
強烈な熱に、氷弾が悉く水となって溶け落ちる!
皮膚にも軽い火傷を負ったが、攻撃を中止する理由はない!
そのまま錫杖をヴィオレッタの顔面目掛けて振り下ろした!
ほぼ同時に――ヴィオレッタ背後から蜘蛛の巣の様な雷撃が広がる!
死角になった左手から無造作に放たれた雷撃は、氷塊が溶けて軌跡となった水を伝い、サフィリアの全身を包み込んだ!
「ぎゃああッ!」
直撃雷を全身に浴び、耐えられず悲鳴を上げる!
振り下ろした錫杖はちからなく空振りし、空中で無防備になった少女の腹部を――ヴィオレッタのレイピアが貫いた!
すっとレイピアが引き戻され、鮮血を吹き出すサフィリアの身体が空中に放り出される。
「くッ……!」
何とか腕で地面を叩き、飛び退いて距離を取る!
最後の着地は痛みをこらえ切れず、尻を付くかたちになった。
錫杖を取り落とし、地面にうずくまる。
地面に血だまりが広がり、背中の傷口からも血のしぶきが吹き上がる。
サフィリアに迫ろうとするヴィオレッタの背後をカラナの”光鞭”が襲う!
「!」
流石に背後からの不意打ちは見切る事が出来なかったか、大きく跳躍して安全にかわすヴィオレッタ。
「クラル、サフィリアを治療して!」
開いた軌道にクラルが飛び込む。
うずくまるサフィリアの横に走り込んで、傷口に手をあてがい、復元する。
「サフィリア、大丈夫!?」
治療を終えたクラルがサフィリアを抱き起す。
「うん……! ありがと……!」
まだ取れぬ痛みに耐えながら、サフィリアは笑顔をクラルに向けた。
「まだ続けますか、サイザリス様?」
悠然と、ヴィオレッタが二人を見下ろす。
その背後で、カラナは未だシスターと『ゴーレム』に囲まれている。
クラルがこちらに来た事で、防戦一方の様相を呈していた。
「当たり前でしょ! って言うか、教祖様にずいぶんな事するじゃない!」
腹部を押さえて立ち上がる。
「何度抵抗しても、同じ事だと思いますが……」
やや呆れた表情でレイピアを構え直す。
「……お気の済むまで、お相手しましょう?」
「その余裕を、凍らせてあげるよ!」
ヴィオレッタを睨み、クラルの顔をこちらに近づけて耳打ちする。
眉根を寄せて苦笑いするヴィオレッタ。
こちらが何か小細工をして来ると読んだのだろう。その通りなのだが……。
「行くよ!」
叫ぶと同時に、クラルを背後に守り、”マギコード”を詠唱して氷弾を生み出し、射出する!
数十発の氷弾がヴィオレッタを襲う!
「ワンパターンな!」
勝ち誇って、ヴィオレッタは身を翻し、予想通り直撃弾をすべて弾き飛ばす!
近くにいた『ゴーレム』はとてもかわしきれず、全身に氷塊を浴びて吹き飛ばされる。
その動作が終わる前に――背後のクラルが”光弾”を連射する!
「!」
地面に降り立ったばかりのヴィオレッタに、予備動作を取る余裕はない!
「飽和攻撃か!」
鋭く舌打ちして、大きく身をかわす!
サフィリアが距離を詰めながら、着地点に向けて地面に氷を走らせる!
ヴィオレッタの腕輪の魔導石が光り輝き、地面に付いた腕に”魔法障壁”を造り出して、氷の波を打ち砕く!
すかさずクラルの”光弾”がヴィオレッタの頭上を埋め尽くす!
全身の魔導石を共鳴させ、ヴィオレッタが”魔法障壁”を纏い、体裁きで”光弾”を叩き落すが……!
その右腕に狙いを澄まし――サフィリアは、全力を込めた氷弾を発射した!
迫りくる氷塊を、ヴィオレッタの眼は確実に捉え、”魔法障壁”で防ぐ!
――だが、”魔法障壁”の強度が足りまい!
彼女の右腕を、その”魔法障壁”ごと、氷塊が粉々に打ち砕いた!
「ぎゃああッ!」
らしくない悲鳴を上げて、ヴィオレッタが大きく飛び退く!
「……ふうッ!」
激しく動いて上がった息を整え直し、サフィリアはその様子を見守った。
状況の変化を察し、シスターたちが一斉にこちらを振り向く。
カラナもこちらを振り向くが、隙の出来たシスターひとりを蹴足で昏倒させることは忘れない。
うずくまっていたヴィオレッタがゆっくりと立ち上がる。
その右腕は、氷塊の直撃を受けて粉々に吹き飛んでいた。
手のひらは辛うじて原型を留めるが、指のいくつかは千切れ落ち、残った指もあらぬ方向に曲がり大きく変形している。
距離を取っていても、びちゃびちゃと血が地面を叩く音が聞こえる。
ヴィオレッタの防御は二種類ある。
魔法障壁を一点に集中させて攻撃を遮断する従来の使い方と、全身を包み込んで、攻撃を偏向させて弾き飛ばす――この二択である。
弾き飛ばす――と言う事は、全身を防御している時の”魔法障壁”に、攻撃を打ち消す程の強度が無い事を意味していた。
相手の攻撃に対応して、この二つの防御を使い分けるのが、ヴィオレッタの戦い方である。
その為、判断や切り替えの余裕がなくなる飽和攻撃には、対応し切れなくなったのだ。
もちろん、ヴィオレッタの失策は他にもある。
彼女はクラルの”光弾”を必死に回避していたが、クラルの攻撃力はそこまでする程高くない。
クラルは元々彼女の所有していた『ハイゴーレム』だが、流石に個々の戦闘能力までは把握していないのだろう。
クラルの攻撃は軽くいなし、サフィリアの攻撃に集中して防御すれば、防ぎきれた筈である。
戦った事のないクラルの攻撃をサフィリアと同等と見做して警戒したのだろうが、敵を過大評価した事が、彼女の防御を崩壊させた。
大量出血で意識が遠のいたか、一瞬ふらつく素振りを見せるヴィオレッタ。
「く……っ!」
しかし、頭を振って、”マギコード”を組み上げる。
左手に生み出した淡い光を吹き飛んだ右腕に押し当てた。
「!」
回復魔法まで使いこなすのか!?
出血がみるみるうちに収まって行き、弾けた皮膚が急速に縫合される。
だが、それは復元には程遠かった。
千切れた指は戻らず、折れ曲がった指もそのままの向きで癒着する。
傷口を塞ぎ、出血を止めるに留まっている。
流石にクラル並みの技量は無い様であった。
指と一緒に、腕輪も消し飛び、これで右側面の防御が格段に低下した筈だ。
「さぁ、続ける? 気の済むまでお相手するわよ?」
錫杖を振りかざし――サフィリアは皮肉たっぷりにヴィオレッタを見据えた。
鋭い声とともに、サフィリアは再び、超低温の烈風を氷弾とともに繰り出す!
だが、結果は同じ。
手足を駆使し氷弾を叩き落とすヴィオレッタ!
低温による裂傷のダメージを期待して超低温の風を纏わせてみたが、彼女はかすり傷ひとつ着いていない様だった。
「嘘でしょ……!」
言葉を失うサフィリアに、うっすらとした笑みを浮かべるヴィオレッタ。
その全身に散りばめられた魔導石が、一様に淡い光を放っている。
「……では、次はこちらから参ります」
軽やかに指先をこちらに向ける。その先から、濃い紫色の雷撃が放たれる!
不規則な動きで地面を走りながら、雷撃がサフィリアの身体をからめとった!
「サフィリア!」
向こうでシスターたちと攻防を繰り広げるカラナが叫ぶ!
「大丈夫だよ!」
身体にまとわりついた雷撃を、魔法障壁で撥ね退け、返答する。
ヴィオレッタの攻撃自体は大した事はない。
驚くべきはその防御能力だろう。
見た目に反した身体能力も然る事ながら、無数の氷弾をすべて叩き落した、彼女の”魔法障壁”である。
ヴィオレッタも素手で叩き落した訳ではない。
そんなことをしたら人間の腕の方が砕ける。
腕に、脚に、”魔法障壁”を造り出して弾いたのだ。
直径が大きくても数十センチメートルの魔法障壁を造る術自体は、特別高度ではない。
脅威は、複数の魔導石を同時に発動させて、全身を”魔法障壁”で防御した事だ。
魔導石は、個体ごとに結晶構造が異なる為、同じ魔法でも組み立てる"マギコード"が異なる。複数の魔導石を同時に起動する事は難易度が高い。
別々の本を同時に読むも同然の行為――とも表現される、極めて難しい技術だ。
だが、目の前のヴィオレッタは、そんな常識を無視する様に、全身の魔導石を同時に起動させ、文字通り魔力の鎧を全身に纏って見せた。
可能なのか、そんな事が?
可能ならば、彼女はサイザリスを遥かに超える世紀の魔導師である。
何か仕掛けがある筈だが、どの途、この条件でダメージを与えなければならない状況に変わりはない。
答えは簡単だ。”魔法障壁”では防御出来ない物理攻撃で直接殴れば良い。
思った時が吉日とばかりに、サフィリアは走ってヴィオレッタと距離を詰める!
“マギコード”を組み立て、周囲にいくつも生み出した氷塊を携えて突進!
こちらの意図を察したか、レイピアを半身に構えて接近戦の意思を見せた!
「行けッ!」
走りながら地面に錫杖の先端を滑らせる!
その動きに合わせ、逆さ氷柱の波が、ヴィオレッタの足元目掛けて地面を走る!
軽やかなステップを踏んで、その攻撃を回避するヴィオレッタ。
しかし、その時すでにサフィリアは空中に飛び上がり、彼女の頭目掛けて氷弾の雨を撃ち込んだ!
氷弾を弾き飛ばし、回避するヴィオレッタの死角から錫杖を直接叩き込む!
――描いたそのイメージは、ヴィオレッタの背後から広がった魔法の構成文に搔き消された!
空間に描かれた"マギコード"が、灼熱の炎に変わる!
「え!?」
ヴィオレッタの背後から、身体を丸めて潜んでいた『ゴーレム』が一体!
今の火炎は、こいつの起こしたものか!?
強烈な熱に、氷弾が悉く水となって溶け落ちる!
皮膚にも軽い火傷を負ったが、攻撃を中止する理由はない!
そのまま錫杖をヴィオレッタの顔面目掛けて振り下ろした!
ほぼ同時に――ヴィオレッタ背後から蜘蛛の巣の様な雷撃が広がる!
死角になった左手から無造作に放たれた雷撃は、氷塊が溶けて軌跡となった水を伝い、サフィリアの全身を包み込んだ!
「ぎゃああッ!」
直撃雷を全身に浴び、耐えられず悲鳴を上げる!
振り下ろした錫杖はちからなく空振りし、空中で無防備になった少女の腹部を――ヴィオレッタのレイピアが貫いた!
すっとレイピアが引き戻され、鮮血を吹き出すサフィリアの身体が空中に放り出される。
「くッ……!」
何とか腕で地面を叩き、飛び退いて距離を取る!
最後の着地は痛みをこらえ切れず、尻を付くかたちになった。
錫杖を取り落とし、地面にうずくまる。
地面に血だまりが広がり、背中の傷口からも血のしぶきが吹き上がる。
サフィリアに迫ろうとするヴィオレッタの背後をカラナの”光鞭”が襲う!
「!」
流石に背後からの不意打ちは見切る事が出来なかったか、大きく跳躍して安全にかわすヴィオレッタ。
「クラル、サフィリアを治療して!」
開いた軌道にクラルが飛び込む。
うずくまるサフィリアの横に走り込んで、傷口に手をあてがい、復元する。
「サフィリア、大丈夫!?」
治療を終えたクラルがサフィリアを抱き起す。
「うん……! ありがと……!」
まだ取れぬ痛みに耐えながら、サフィリアは笑顔をクラルに向けた。
「まだ続けますか、サイザリス様?」
悠然と、ヴィオレッタが二人を見下ろす。
その背後で、カラナは未だシスターと『ゴーレム』に囲まれている。
クラルがこちらに来た事で、防戦一方の様相を呈していた。
「当たり前でしょ! って言うか、教祖様にずいぶんな事するじゃない!」
腹部を押さえて立ち上がる。
「何度抵抗しても、同じ事だと思いますが……」
やや呆れた表情でレイピアを構え直す。
「……お気の済むまで、お相手しましょう?」
「その余裕を、凍らせてあげるよ!」
ヴィオレッタを睨み、クラルの顔をこちらに近づけて耳打ちする。
眉根を寄せて苦笑いするヴィオレッタ。
こちらが何か小細工をして来ると読んだのだろう。その通りなのだが……。
「行くよ!」
叫ぶと同時に、クラルを背後に守り、”マギコード”を詠唱して氷弾を生み出し、射出する!
数十発の氷弾がヴィオレッタを襲う!
「ワンパターンな!」
勝ち誇って、ヴィオレッタは身を翻し、予想通り直撃弾をすべて弾き飛ばす!
近くにいた『ゴーレム』はとてもかわしきれず、全身に氷塊を浴びて吹き飛ばされる。
その動作が終わる前に――背後のクラルが”光弾”を連射する!
「!」
地面に降り立ったばかりのヴィオレッタに、予備動作を取る余裕はない!
「飽和攻撃か!」
鋭く舌打ちして、大きく身をかわす!
サフィリアが距離を詰めながら、着地点に向けて地面に氷を走らせる!
ヴィオレッタの腕輪の魔導石が光り輝き、地面に付いた腕に”魔法障壁”を造り出して、氷の波を打ち砕く!
すかさずクラルの”光弾”がヴィオレッタの頭上を埋め尽くす!
全身の魔導石を共鳴させ、ヴィオレッタが”魔法障壁”を纏い、体裁きで”光弾”を叩き落すが……!
その右腕に狙いを澄まし――サフィリアは、全力を込めた氷弾を発射した!
迫りくる氷塊を、ヴィオレッタの眼は確実に捉え、”魔法障壁”で防ぐ!
――だが、”魔法障壁”の強度が足りまい!
彼女の右腕を、その”魔法障壁”ごと、氷塊が粉々に打ち砕いた!
「ぎゃああッ!」
らしくない悲鳴を上げて、ヴィオレッタが大きく飛び退く!
「……ふうッ!」
激しく動いて上がった息を整え直し、サフィリアはその様子を見守った。
状況の変化を察し、シスターたちが一斉にこちらを振り向く。
カラナもこちらを振り向くが、隙の出来たシスターひとりを蹴足で昏倒させることは忘れない。
うずくまっていたヴィオレッタがゆっくりと立ち上がる。
その右腕は、氷塊の直撃を受けて粉々に吹き飛んでいた。
手のひらは辛うじて原型を留めるが、指のいくつかは千切れ落ち、残った指もあらぬ方向に曲がり大きく変形している。
距離を取っていても、びちゃびちゃと血が地面を叩く音が聞こえる。
ヴィオレッタの防御は二種類ある。
魔法障壁を一点に集中させて攻撃を遮断する従来の使い方と、全身を包み込んで、攻撃を偏向させて弾き飛ばす――この二択である。
弾き飛ばす――と言う事は、全身を防御している時の”魔法障壁”に、攻撃を打ち消す程の強度が無い事を意味していた。
相手の攻撃に対応して、この二つの防御を使い分けるのが、ヴィオレッタの戦い方である。
その為、判断や切り替えの余裕がなくなる飽和攻撃には、対応し切れなくなったのだ。
もちろん、ヴィオレッタの失策は他にもある。
彼女はクラルの”光弾”を必死に回避していたが、クラルの攻撃力はそこまでする程高くない。
クラルは元々彼女の所有していた『ハイゴーレム』だが、流石に個々の戦闘能力までは把握していないのだろう。
クラルの攻撃は軽くいなし、サフィリアの攻撃に集中して防御すれば、防ぎきれた筈である。
戦った事のないクラルの攻撃をサフィリアと同等と見做して警戒したのだろうが、敵を過大評価した事が、彼女の防御を崩壊させた。
大量出血で意識が遠のいたか、一瞬ふらつく素振りを見せるヴィオレッタ。
「く……っ!」
しかし、頭を振って、”マギコード”を組み上げる。
左手に生み出した淡い光を吹き飛んだ右腕に押し当てた。
「!」
回復魔法まで使いこなすのか!?
出血がみるみるうちに収まって行き、弾けた皮膚が急速に縫合される。
だが、それは復元には程遠かった。
千切れた指は戻らず、折れ曲がった指もそのままの向きで癒着する。
傷口を塞ぎ、出血を止めるに留まっている。
流石にクラル並みの技量は無い様であった。
指と一緒に、腕輪も消し飛び、これで右側面の防御が格段に低下した筈だ。
「さぁ、続ける? 気の済むまでお相手するわよ?」
錫杖を振りかざし――サフィリアは皮肉たっぷりにヴィオレッタを見据えた。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
廃城の泣き虫アデリー
今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって…
表紙はフリー素材です
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる