あたしが助けた少女は最恐の魔女だった!? ~魔導師カラナと魔女の封印石~

KASHIMA3508

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第六章「引き裂かれる者たち」

6-3:防戦

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「喰らえッ!」
 鋭い声とともに、サフィリアは再び、超低温の烈風を氷弾とともにり出す!

 だが、結果は同じ。
 手足を駆使くしし氷弾を叩き落とすヴィオレッタ!
 低温による裂傷のダメージを期待して超低温の風をまとわせてみたが、彼女はかすり傷ひとつ着いていない様だった。

「嘘でしょ……!」
 言葉を失うサフィリアに、うっすらとした笑みを浮かべるヴィオレッタ。
 その全身に散りばめられた魔導石が、一様いちように淡い光を放っている。

「……では、次はこちらから参ります」
 軽やかに指先をこちらに向ける。その先から、濃い紫色の雷撃が放たれる!

 不規則な動きで地面を走りながら、雷撃がサフィリアの身体をからめとった!
「サフィリア!」
 向こうでシスターたちと攻防を繰り広げるカラナが叫ぶ!

「大丈夫だよ!」
 身体にまとわりついた雷撃を、魔法障壁シールド退け、返答する。

 ヴィオレッタの攻撃自体は大した事はない。
 驚くべきはその防御能力だろう。
 見た目に反した身体能力もる事ながら、無数の氷弾をすべて叩き落した、彼女の”魔法障壁シールド”である。
 ヴィオレッタも素手で叩き落した訳ではない。
 そんなことをしたら人間の腕の方が砕ける。
 腕に、脚に、”魔法障壁シールド”を造り出して弾いたのだ。

 直径が大きくても数十センチメートルの魔法障壁シールドを造る術自体は、特別高度ではない。
 脅威は、複数の魔導石を同時に発動させて、全身を”魔法障壁シールド”で防御ガードした事だ。

 魔導石は、個体ごとに結晶構造が異なる為、同じ魔法でも組み立てる"マギコード"が異なる。複数の魔導石を同時に起動する事は難易度が高い。
 別々の本を同時に読むも同然の行為――とも表現される、極めて難しい技術わざだ。

 だが、目の前のヴィオレッタは、そんな常識を無視する様に、全身の魔導石を同時に起動させ、文字通り魔力の鎧を全身にまとって見せた。

 可能なのか、そんな事が?
 可能ならば、彼女はサイザリスをはるかに超える世紀の魔導師である。

 何か仕掛けがあるハズだが、どのみち、この条件でダメージを与えなければならない状況に変わりはない。

 答えは簡単だ。”魔法障壁シールド”では防御出来できない物理攻撃で直接殴れば良い。
 思った時が吉日きちじつとばかりに、サフィリアは走ってヴィオレッタと距離を詰める!

 “マギコード”を組み立て、周囲にいくつも生み出した氷塊をたずさえて突進!
 こちらの意図を察したか、レイピアを半身に構えて接近戦の意思を見せた!

「行けッ!」
 走りながら地面に錫杖しやくじようの先端を滑らせる!
 その動きに合わせ、逆さ氷柱つららの波が、ヴィオレッタの足元目掛けて地面を走る!

 かろやかなステップを踏んで、その攻撃を回避するヴィオレッタ。
 しかし、その時すでにサフィリアは空中に飛び上がり、彼女の頭目掛けて氷弾の雨を撃ち込んだ!
 氷弾を弾き飛ばし、回避するヴィオレッタの死角から錫杖を直接叩き込む!
 ――描いたそのイメージは、ヴィオレッタの背後から広がった魔法の構成文に搔き消された!
 空間に描かれた"マギコード"が、灼熱の炎に変わる!

「え!?」
 ヴィオレッタの背後から、身体を丸めてひそんでいた『ゴーレム』が一体!
 今の火炎は、こいつの起こしたものか!?

 強烈な熱に、氷弾がことごとく水となって溶け落ちる!
 皮膚にも軽い火傷ヤケドを負ったが、攻撃を中止する理由はない!
 そのまま錫杖をヴィオレッタの顔面目掛けて振り下ろした!

 ほぼ同時に――ヴィオレッタ背後から蜘蛛クモの巣の様な雷撃が広がる!
 死角になった左手から無造作に放たれた雷撃は、氷塊が溶けて軌跡となった水を伝い、サフィリアの全身を包み込んだ!
「ぎゃああッ!」

 直撃雷を全身に浴び、耐えられず悲鳴を上げる!
 振り下ろした錫杖はちからなく空振りし、空中で無防備になった少女の腹部を――ヴィオレッタのレイピアがつらぬいた!

 すっとレイピアが引き戻され、鮮血を吹き出すサフィリアの身体が空中に放り出される。
「くッ……!」
 何とか腕で地面を叩き、飛び退いて距離を取る!
 最後の着地は痛みをこらえ切れず、尻を付くかたちになった。

 錫杖を取り落とし、地面にうずくまる。
 地面に血だまりが広がり、背中の傷口からも血のしぶきが吹き上がる。

 サフィリアに迫ろうとするヴィオレッタの背後をカラナの”光鞭プロミネンス”が襲う!
「!」
 流石さすがに背後からの不意打ちは見切る事が出来できなかったか、大きく跳躍して安全にかわすヴィオレッタ。

「クラル、サフィリアを治療して!」
 開いた軌道にクラルが飛び込む。
 うずくまるサフィリアの横に走り込んで、傷口に手をあてがい、復元する。

「サフィリア、大丈夫!?」
 治療を終えたクラルがサフィリアを抱き起す。
「うん……! ありがと……!」
 まだ取れぬ痛みに耐えながら、サフィリアは笑顔をクラルに向けた。

「まだ続けますか、サイザリス様?」
 悠然ゆうぜんと、ヴィオレッタが二人を見下ろす。
 その背後で、カラナはいまだシスターと『ゴーレム』に囲まれている。
 クラルがこちらに来た事で、防戦一方の様相ようそうていしていた。

「当たり前でしょ! って言うか、教祖様にずいぶんな事するじゃない!」
 腹部を押さえて立ち上がる。

「何度抵抗ていこうしても、同じ事だと思いますが……」
 ややあきれた表情でレイピアを構え直す。
「……お気の済むまで、お相手しましょう?」

「その余裕を、こおらせてあげるよ!」
 ヴィオレッタをにらみ、クラルの顔をこちらに近づけて耳打ちする。
 眉根を寄せて苦笑いするヴィオレッタ。
 こちらが何か小細工をして来ると読んだのだろう。その通りなのだが……。

「行くよ!」
 叫ぶと同時に、クラルを背後に守り、”マギコード”を詠唱して氷弾を生み出し、射出しやしゆつする!
 数十発の氷弾がヴィオレッタを襲う!

「ワンパターンな!」
 勝ち誇って、ヴィオレッタは身をひるがえし、予想通り直撃弾をすべて弾き飛ばす!
 近くにいた『ゴーレム』はとてもかわしきれず、全身に氷塊を浴びて吹き飛ばされる。
 その動作が終わる前に――背後のクラルが”光弾キヤノン”を連射する!

「!」
 地面に降り立ったばかりのヴィオレッタに、予備動作を取る余裕はない!
飽和ほうわ攻撃か!」
 鋭く舌打ちして、大きく身をかわす!

 サフィリアが距離を詰めながら、着地点に向けて地面に氷を走らせる!
 ヴィオレッタの腕輪の魔導石が光り輝き、地面に付いた腕に”魔法障壁シールド”を造り出して、氷の波を打ち砕く!

 すかさずクラルの”光弾キヤノン”がヴィオレッタの頭上を埋め尽くす!
 全身の魔導石を共鳴させ、ヴィオレッタが”魔法障壁シールド”を纏い、体裁たいさばきで”光弾キヤノン”を叩き落すが……!

 その右腕に狙いを澄まし――サフィリアは、全力を込めた氷弾を発射した!
 迫りくる氷塊を、ヴィオレッタの眼は確実にとらえ、”魔法障壁シールド”で防ぐ!
 ――だが、”魔法障壁シールド”の強度が足りまい!

 彼女の右腕を、その”魔法障壁シールド”ごと、氷塊が粉々に打ち砕いた!
「ぎゃああッ!」
 らしくない悲鳴を上げて、ヴィオレッタが大きく飛び退く!

「……ふうッ!」
 激しく動いて上がった息を整え直し、サフィリアはその様子を見守った。

 状況の変化を察し、シスターたちが一斉にこちらを振り向く。
 カラナもこちらを振り向くが、スキ出来できたシスターひとりを蹴足けそく昏倒こんとうさせることは忘れない。

 うずくまっていたヴィオレッタがゆっくりと立ち上がる。
 その右腕は、氷塊の直撃を受けて粉々に吹き飛んでいた。
 手のひらはかろうじて原型をとどめるが、指のいくつかは千切れ落ち、残った指もあらぬ方向に曲がり大きく変形している。
 距離を取っていても、びちゃびちゃと血が地面を叩く音が聞こえる。

 ヴィオレッタの防御は二種類ある。
 魔法障壁シールドを一点に集中させて攻撃を遮断する従来じゆうらいの使い方と、全身を包み込んで、攻撃を偏向へんこうさせて弾き飛ばす――この二択である。
 弾き飛ばす――と言う事は、全身を防御している時の”魔法障壁シールド”に、攻撃を打ち消す程の強度が無い事を意味していた。

 相手の攻撃に対応して、この二つの防御を使い分けるのが、ヴィオレッタの戦い方である。
 その為、判断や切り替えの余裕がなくなる飽和攻撃には、対応し切れなくなったのだ。

 もちろん、ヴィオレッタの失策は他にもある。
 彼女はクラルの”光弾キヤノン”を必死に回避していたが、クラルの攻撃力はそこまでする程高くない。
 クラルは元々彼女の所有していた『ハイゴーレム』だが、流石さすがに個々の戦闘能力までは把握していないのだろう。
 クラルの攻撃は軽くいなし、サフィリアの攻撃に集中して防御すれば、防ぎきれた筈である。

 戦った事のないクラルの攻撃をサフィリアと同等と見做みなして警戒したのだろうが、敵を過大評価した事が、彼女の防御を崩壊させた。

 大量出血で意識が遠のいたか、一瞬ふらつく素振りを見せるヴィオレッタ。
「く……っ!」
 しかし、頭を振って、”マギコード”を組み上げる。
 左手に生み出した淡い光を吹き飛んだ右腕に押し当てた。

「!」
 回復魔法リカバリまで使いこなすのか!?

 出血がみるみるうちに収まって行き、弾けた皮膚が急速に縫合ほうごうされる。
 だが、それは復元には程遠かった。
 千切れた指は戻らず、折れ曲がった指もそのままの向きで癒着ゆちやくする。
 傷口をふさぎ、出血をめるに留まっている。

 流石さすがにクラル並みの技量は無い様であった。
 指と一緒に、腕輪も消し飛び、これで右側面の防御が格段に低下した筈だ。

「さぁ、続ける? 気の済むまでお相手するわよ?」
 錫杖を振りかざし――サフィリアは皮肉たっぷりにヴィオレッタを見据みすえた。
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