あたしが助けた少女は最恐の魔女だった!? ~魔導師カラナと魔女の封印石~

KASHIMA3508

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第七章「別れの時」

7-4:終わる命

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「リリオさん!」

 ヴィオレッタの駆る馬から飛び降りて、サフィリアはあぜ道に倒れるリリオに走り寄った!
 
 昼夜を問わず馬を走らせ、戻り着いたカラナの故郷。
 出発前に見た緑豊かな農村は――炎の赤と、燃え落ちた残骸ざんがいの黒で染め上げられていた。

 見た覚えのある家々はことごとく焼け落ち、林の向こうにあるカラナの家の方角からも、もうもうとした黒煙が立ち上っている。

 そして今――目の前には、泥だらけになってち果てたリリオの姿。
 右腕の腕輪は魔導石ごと破壊され、無抵抗で攻められた様子がうかがえた。

 首を締め上げられたのだろう。
 大きく口を開き薄く目を開いたままの顔が、異様な方向にじ曲げられていた。
「……そんな……!」

 サフィリアはリリオの横にひざを着いて、彼女の腕を取る。
 り傷だらけの細い腕は、まだ暖かい。
 呼吸いきが止まってから、そこまで長い時間はっていない様だ。

 だが、それが分かったところで、どうしようもない……。
 サフィリアもヴィオレッタも、この傷から蘇生させる様なすべは持ち合わせていないのだ。

 いずれ、リリオの身体は温かみを失い、硬くなって行くだろう。
 うずくまってすすり泣くサフィリアの肩に、ヴィオレッタが優しく手をえる。
「サイザリス様、お気を確かに……」
「離せッ!」
 ヴィオレッタの腕を振り払う!

 彼女に向き直り、激しい剣幕で怒鳴どなりたてる!
「あんたの……あんたの教団が送り込んだ『ゴーレム』が……カラナの村をこんなに……!」
 ヴィオレッタに掴みかかるサフィリア!
 だが、その背後の半壊した民家の裏側から激しい炸裂音が響き、遅れて土煙が立ちのぼる!

「!」
 誰かがまだ闘っている!
 立ち上がり、民家の裏側へ走り込む!

 まだ逃げ遅れた人がいるならば助けなくてならない。
 土煙をき分けて行くと――おぼろげに見えて来る、見覚えのある後ろ姿。
「クラル!」
 少女の名を叫ぶ!

 サフィリアに気付き、くるりとこちらを向いたクラル。
 その顔は――すでにサフィリアの知る、あの少女ではなかった。

 他の『ゴーレム』同様、生気せいきのない表情がこちらを見つめる。
 一歩遅れて、ヴィオレッタが煙の中から姿を現す。
「お願いヴィオレッタ! クラルの感情抑制マインドコントロールを解いて!」
 サフィリアが掴みかかるが、ヴィオレッタはにこにこするだけで何の反応もしてくれない。
「ちくしょう!」

 ヴィオレッタを突き飛ばし、クラルに駆け寄る!
 両手を広げて声を張り上げた!
「お願いクラル、目を覚まして! リリオさんを助けて!」
 ちからいっぱい叫ぶ!

 しかし、そんなサフィリアの言葉もむなしく、クラルは新たな獲物を見つけたとばかりに、にたりとした笑みを浮かべる。
 手にしたかしの杖の先端に光弾を宿し、五月雨式さみだれしきに撃ち放つ!
「きゃあッ!?」

 錫杖しやくじようを振るい、"魔法障壁シールド"で防御する!
 杖を振りかざして、直接殴りかかってくるクラル!

 迎撃する事は容易たやすい――だが、彼女を傷つける訳にはいかない!

 繰り出された攻撃を錫杖で受け止め、杖を握るその腕を掴む!
「やめて! 貴女あなたと闘いたくない!」
 サフィリアの叫びを無視し、彼女の脇腹に蹴足けそくが叩き込まれる!
「がはッ!」

 腹をまともに蹴られ、両腕で押さえて後ろに下がる。
 自由になったクラルも後ろに飛び退きながら、再び"光弾キヤノン"の雨を降らせてくる!

「ちくしょうっ!」
 "魔法障壁シールド"で"光弾キヤノン"をさばきつつ、クラルと距離を詰め直す!
 しかし、いくら接近したところで、サフィリアにクラルを攻撃出来できハズがない。

 こうなれば手段はただひとつ。
 クラルの感情抑制マインドコントロールを解除するしかない!
 その為にはクラルの動きを封じ、錫杖の魔導石でクラルのひたいの魔導石に干渉かんしようする必要がある。
 しかも、あまり時間をかけてもいられない。
 早くしなければ、リリオを蘇生出来なくなる……!

 意を結して、サフィリアは走り込む!
 迫りくる"光弾キヤノン"の雨を魔法障壁シールドで振り払い突進する!
 すべては防ぎきれず、肩に脚に直撃して皮膚を焼き、頬をかすめて行く!
「この……ッ!」
 "光弾キヤノン"を撃ち続ける腕をついに掴み、ひねり上げる!

 なおも止まらない連弾がまともにサフィリアの身体を撃ち続ける。
 口から血が逆流しても意にかいさず、サフィリアは手にした錫杖をクラルのひたいに突き付けた!
 ”マギコード”が、額の魔導石にからみつき、魔力の暗号プロテクトを解除して行く!!
 それは、以前に解いた時よりはるかに複雑で二重・三重に仕掛けられている。

 そうしているあいだにも、クラルの"光弾キヤノン"は、サフィリアの身体を撃ち付ける!
 皮膚を破り、肉を裂き、金色きんいろの髪を吹き飛ばし――
 ――耳のイヤリングが弾け飛ぶ!

 やがて―――

 二人のあいだで膨張した魔力が破裂し、相対そうたいして跳ね飛ばされた!
「きゃあッ!」
 二度三度と地面を転がる!

 頭を振って、サフィリアはゆっくりと立ち上がった。
 "光弾キヤノン"に撃たれ続けた身体はあちこちアザとなり、皮膚が破れ出血している。

 爆心の反対側では、クラルがゆっくりと上体を起こすところだった。
 感情抑制マインドコントロールは―――外せたか!?
 頭を軽く振って、こちらに顔を向けるクラルに――思わず身構える――!

「……サフィリア……!」
 感情のこもった、はかなげな声が、サフィリアを呼んだ。
「クラル! 良かった、感情抑制マインドコントロールが外れたんだね!」
「それよりも……! 村の人たちを治療しなければ!」

 ふらつきながら立ち上がり、青ざめた表情で辺りを見回すクラル。
 燃え盛る村を見回し、凍り付いた表情で立ちすくんでいる。

「他の人はほとんど逃げちゃった! 向こうの通りでリリオさんが倒れてる!」
 クラルを連れて、リリオの元に戻る。

 泥まみれで倒れたリリオの姿を見て、顔を手でおおって、そのかたわらに膝を着く。
「わたし……何て事を……ッ!」
「早く! まだ助けられるよ!」

 クラルは我に返って、回復魔法リカバリをリリオの首筋にかける。
 サフィリアが祈る様にリリオの手を握る。
 その手はすっかり冷たくなってしまっていた。

 肉体を復元しても、戻って来ないかも知れない……。
 やがて、首の骨折も含めたすべての傷がふさがると、リリオの胸がわずかながらも上下し始めた。
「……良かった……!」
 安堵あんどの言葉はサフィリア。
 そでで額の汗をぬぐい、大きく息をつく。
「ありがとね、クラル」

「何を……言っているの……!?」
 ぺたんと座り込み、両手に顔をうずめる。

「わたし……カラナの村を……焼いてしまった……!
 どうしよう……! 取り返しのつかない事を……!」
 肩を大きく震わせて、クラルは泣いた。
「サフィリアも……守れなかった……!
 『封印の間』で起きたこと……全部覚えてる……!」

 サフィリアは目を閉じた。
 ヴィオレッタへの激しい怒りがこみ上げる。
 カラナとの確執かくしつも、クラルの悲しみも、この村の惨状も、そして残り僅かな自分の命も……すべてアイツのせいだ!
「クラルが悪いんじゃないよ。ヴィオレッタのせいだ……!」
 そっと、クラルの肩に手を置く。

 涙でくしゃくしゃになった顔を、クラルが上げる。
「でも、クラルが"破壊の言葉エンバーコード"を教えてくれれば――逆転だ!」
 サフィリアの言葉に、クラルは微笑んで強くうなずいた!

「さあ、教えて! "破壊の言葉エンバーコード"を!」
「それは――」
 クラルの唇が、その"言葉"をつむぐ――
 そのすべてが終わらぬ内に――

 ――――クラルの背中から胸を、長大な刃がつらぬいた――――!

 赤い飛沫ひまつが宙を舞い――。

 サフィリアの顔に、クラルの胸から噴き出した真っ赤な血しぶきが飛び散る!
 頭から地面に崩れるクラル。

 見上げれば、そこに紅竜騎士団ドラゴンズナイツの騎士が、剣を構えて立っていた。
「おのれ……『ゴーレム』! よくも、村を焼いてくれたな!!」
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