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亜人 ラガーオーク

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「人間がなんでこんなところに倒れてるんだ?」
「まぁ理由があって川に身投げしたんだよ」
「・・・自殺か?」

 そんなわけないが理由をいちいち説明するのも面倒だしそれでいいか

「そんなもんだ。身投げで失敗したからもう自殺する気はないが」
「そうか。自殺志願者か。あの人間の女をずっと抱きしめてなかなか離さなかったからな」
「そうだ。ミワは無事なのか!怪我は!」
「安心しなよ人間。君が守っていたからこの人間の女は無事だよ」

 もう1人いたラガーオークの1人がミワをお姫様抱っこでこちらに連れてくる。
 ラガーオークの1人が近づくとキスキルが

「人間。行くあてがないなら私達の集落に来ないか?たいしたもてなしはできないが休むくらいは出来るぞ」

 キスキルが俺にいうとミワをお姫様抱っこしているラガーオークが

「待てキスキル。人間なんて連れて行けば長老様に何を言われるか。ただでさえ今は余計なことをしたら危ない時期なのに」
「構わないよ。もしそれで私が選ばれるようなら仕方のないことだ。とりあえず集落に連れていく。なぁ。お前さん名は?」

 キスキルが俺に聞き俺は

「俺はキナ・ドーマ。俺と妹を助けてくれたこと。礼を言う」

 俺は2人に頭を下げると2人はなぜか頭を傾げる。ん?なんで頭を傾げるんだ?普通に礼を言っただけなんだが?

「人間が私達に頭を下げているぞ」
「な。珍しいよな。人間らは俺たちラガーオークや亜人には暴言しか吐かないのにね。助けても何しても」

 なんと?この世界の人間はそんな亜人に対しての扱いが酷すぎるのか?俺は驚いた顔でキスキル達をみると2人とも

「何をそんな驚いた顔をしているの?私達に対する人間の対応なんてそんなものでしょ?とりあえず集落に行こう。私の家に連れていくから」

 俺とミワはキスキル達に連れられラガーオークの集落に向かうことにした。
 ラガーオークの集落は俺たちが倒れていたベルライト川という場所から数分で着くところにあるらしい。

「なぁ。キスキル。集落には同族が何人いるんだ?」
「ん?人間はいないよ。たまーに迷い込んだりはするけど。いつも助けても暴言吐いてそのあと同族に八つ当たりして帰るくらいだよ」

 そりゃひでぇな。よくキスキル達も文句も言わずに

「まぁ村から出ていけばどうせ魔獣や地龍様に食われてしまいだろうから気にはしないけどな!」

 キスキルとラガーオークは笑いながら言っていた。
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