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出会い
本当の気持ち
しおりを挟む「お前、ふざけてんの?なにがクリステルだよ。調子乗ってると殺すぞ。」
周りの連中の肩が小刻みに揺れる中、凶器のような表情で凄む稲葉だが、その人は稲葉の肩に手を置き笑顔で言った。
「いやぁ、驚いたな!あまりにも装いが違うから分からなかったよ!髪も随分短くしてるんだな!あっちのクリステルに言ったらきっと驚くだろう!」
「触んじゃねぇ!」
稲葉は自身の肩に置かれたその人の手を思い切り振り払った。
ここにいる全員、その人の言っている事がまるっきり理解出来ない様子だった。
俺や稲葉を全く違う名前で呼び、まるで知り合いかのように振舞っている。それに〝あっちの〟とは何のことだろうか。
きっと俺達を他の誰かと勘違いしているのだと思っていたが、その人の次の発言で空気が変わった。
「相変わらずクリステルはシュナウザーが大好きなんだな!その一途な恋心には本当に感心するよ。しかしあまりに好きだからと言って暴力はいけない。きちんと言葉で伝えるべきだよ、好きだとね。」
稲葉の動きが石のように固まったのが分かった。
そしてみるみるうちに顔が赤く染まっていき、あっという間に顔全体が真っ赤になった。
俺は目を疑った。
シュナウザーは俺で、クリステルは稲葉だとすると、稲葉が俺の事を好きだということになる。それに稲葉のこの反応。信じたくなかったが、その人が適当な事を言っているようには思えなかった。
全員の視線が稲葉に集まる。
稲葉は赤い顔のまま何も言わない。
そんな姿を見て、俺は今までの稲葉の気味悪い目つきの正体が分かった気がした。
「稲葉、俺の事好きなの?」
沈黙を破ったのは俺だった。
周りの連中が、何も言わず顔を真っ赤にさせている稲葉に、冷ややかな眼差しを向けている。
そんな冷たい空気にこれ以上耐えられないと思った。
その冷ややかな眼差しが、少なからず自分にも向いていると感じたからだ。
稲葉の俺に対する気持ちが真実かどうかなんてどうでもいい。俺の挑発に乗り、今すぐ俺を殴ってこの空気を変えてくれ。
そんな切実な願いは届き、俺の言葉に怒りを露わにし顔を赤くしたまま殴りかかってきた稲葉だが、すぐにその手は制される。
「こらこら、やめないか!クリステルいい加減にしてくれよ、頼むからシュナウザーに傷を付けないでくれ。綺麗な状態を保っておきたいんだ。」
稲葉の手を掴みながら穏やかに言うその人は、守るように背を向けて俺の前に立った。
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