23 / 24
第二章
必死の抵抗
しおりを挟む「ホント?じゃ、やろうシュナウザー!」
レオは俺の言葉に嬉しそうな表情を浮かべて、俺の胸から飛び降りた。その際、顔面を思い切り踏みつけられたがあまり気にならなかった。
きっと極度の恐怖のせいだろう、正常な判断が出来なくなっている。
その証拠に、俺はこの期に及んでまだ正々堂々と戦おうとは思えなかった。
次は、武器を使おう。
恐らくだがレオは、俺が正々堂々と戦えば骨を折ったりはしないと思う。絶え間なく殴られはするだろうが、俺が卑怯な真似をしない限り骨は折らないでいてくれるだろう。
しかし俺は体力的にも精神的にも限界だった。
今すぐにもこの特訓と称したリンチをやめさせたかった。
そうするにはレオの動きか息を止めるしかなかった。
ここに銃があればまた穴だらけにしてやるのにとさえ思った。
俺は立ち上がり、辺りを見渡した。
なにか武器になりそうなものは無いだろうか。
この小さな人間一人殺せるような武器は。
その時、小さな砂場に小さなスコップがあるのが見えた。
持ち手の所が鮮やかな赤色で、それは砂場に雑に刺さっていた。きっとこの公園で遊んでいた子供が忘れて帰ったのだろう。
俺は精一杯、あの小さなスコップでレオの頭をぶっ刺し頭蓋骨を割るイメージをした。
角度を間違えなければ大丈夫だ、いける。
レオの身体は紛れもなく八歳児の身体で、大人の頭より数段柔らかいはず。
躊躇なく一点に集中し全力で振り落とせば、頭に刺さるはずだ。
さすがのレオも脳を攻撃されれば動けなくなるだろう。
と言うよりも、死ぬだろう。
俺はレオに距離を取りつつ、ゆっくりと気付かれないように砂場に近付く。
「ほらほら、いつでも来ていいよ!ボクは準備万端だ!かかってこ~い!」
レオはぴょんぴよん飛び跳ねながら俺に笑いかけた。
まるで父親に遊んでもらっている子供のようだった。
殺意が薄れてしまわないように、俺はあまりレオの顔を直視しないようにした。
全然距離を詰めない俺に痺れを切らしたのか、レオはこちらに走って向かってきた。
俺の身体に拳を出してくるが、寸前のところで後方に避けた。レオはまた拳を出してくる、俺はまた後方に避ける。こうしてる間に徐々に砂場へ近付いて行く。
緊張で額から流れる汗が、顎先から落ちた。
殺す、絶対に殺してやる。
俺はレオの動きをよく見て寸前の所で拳を避けていく。そんな俺を見て、レオは顔を輝かせて笑っている。
「シュナウザー!凄いよ!ボクの攻撃、避けれているよ!その調子だ!シュナウザーも遠慮なくボクに攻撃してきいいんだよ!さぁ!」
レオは興奮した様子で俺に言う。
そうは言っても俺はレオの攻撃を避けるので精一杯だった。息もかなり上がっている。酸欠になりそうだ。
その時、レオは急に拳を出すのをやめ、その代わり俺の膝を思いっきり蹴った。
突然の変化球の技に当然避けられる筈もなく、レオの蹴りをもろに食らった俺は、喉奥から声にならない音を出しそのまま後ろへと倒れてしまった。
硬い地面とは違う柔らかい感触が身体を包む。
俺が倒れた先は目的としていた砂場だった。
「惜しい!今の避けれたら完璧だったねシュナウザー!でもね、ホントすごくいいよ!よくなってきたじゃんか!」
レオに蹴られた膝辺りの脈が波打っていて、ハーフパンツからは徐々に赤黒く変色していっている膝が見えた。
俺は恐怖で自分の膝から目を背けた。
その代わり、すぐそばに落ちている赤いスコップに目を向けた。手を伸ばせばすぐ届くところにある。
「さ、シュナウザー立って!もう避けるのは完璧と言っていい程だよ!次はボクに攻撃してくるんだ!おもいっきりパンチしていいよ!」
レオはまた俺の胸の上に飛び乗り、鼻先と鼻先が付きそうなくらいに顔を近づけて言った。
その瞬間、俺は手を伸ばしスコップを取り、レオの頭部に目掛けて力の限りスコップをふり落とした。
わずかに尖っていたスコップの先端が、レオの頭に少しだけ埋まった。
想像していたよりも手応えがなく、俺が期待していた程、スコップ自体には威力が無いのだと思い知らされた。
数秒遅れてレオの額に一筋の血が流れた。
流れる血はどんどん増えていき、
俺の顔にも滴り落ちてきた。
レオは笑顔のまま動かない。石にでもなったみたいだ。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
真実の愛は水晶の中に
立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。
しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。
※AIイラスト使用
※「なろう」にも重複投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる