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その4

4−3

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 これからおきるかも知れないいろんなことを想像して、ガクガクと身体を震わせていると、一番若い子がトントンと軽快に近づいてきて、私のお尻をペシッと叩いた。
「あ痛ッ!」
 子どもだけどやることは大人と同じだ、私は叩かれたあたりを手で擦ることしかできない。

「おばはん、あんたはわいらの相手っちゅうより、女らの看護や。香織はどうでもええけど、サヤだけは何とかしてくれ。さ、こっちに来るんや」
 そう言うと、私の乳房をぶるんと平手打ちのようなことをしてから、腕を掴んで工場の方に歩き出した。

「逃がすなよォ」
 背中から中野の声が聞こえる。

 悔しいけれどこの子に声を掛けるのも怖い。私は黙って抵抗せずについていった。

 工場の一角、トイレの横に大きな部屋があり、そのドアの前で少年は私の腕を離して、ズボンから鍵を取り出した。
「ここはな、工員たちの休憩室やったとこや。そやから割にでかい部屋やで。流しかてあるんや。水くらいならわしらに頼まんでも飲めるんや。ええ待遇やな」

 少年が鍵を回すと、ガチャンと解錠する音がした。
 中は薄暗かった。少年にお尻を押されて部屋に入ると、奥の事務机の上にあるスタンドライトがひとつ灯っているだけ。
 薄暗い室内をぐるりと見回した。リノリウムの床の窓側に畳が何枚か敷かれてあって、その上に人の寝ている気配がした。

「おい、看護婦を連れてきたで。看病してもらいや」
 少年は暗がりに向かってそう言った。だけど返事はない。
 次に少年は私に顔を向けた。
「殺すなや。死んだらおばはんのせいや。ここにな、」と突然、私のあそこに指を突っ込もうとしてみせて、
「手ぇ突っ込んで腸を引き出したるさかいな!」と凄んでみせた。

 数年前にインドで男たちが若い女性をレイプして、その後にあそこだか、もうひとつのあそこだかに手を突っ込んで腸を引き出して殺してしまった事件のことが頭に浮かんだ。残酷な人間ならやれば出来ることなのだ。

「わ、わかりました」私は震える声で答えた。

「薬はいろいろ置いてあるけど、他に何か必要なもんがあれば言いや。わいはもう行くけど、逃げようとしなや」

「その、もう少し部屋を明るくはできませんか?」と、私は思いきって聞いた。

「暗いのはあいつらが灯りを点けんからや。スタンドライトはあと二つあるから」
 そう言いながら、少年は部屋を出て、ドアを閉めた。
 ガチャン。

 私は寝ている二人より先に、スタンドライトを探した。


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