バスと痴漢とガムテープ

鳴神楓

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そういうことで☆

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 そんなことがあってから、僕と中村さんは時々互いのモノを擦り合うようになった。
 僕としてはどうしてこんなことになったのか理解できず、ずっと混乱が続いているのだが、それでも中村さんに「やるか?」と誘われればついうなずいてしまう。

 もしかしたら僕が中村さんに向ける恋愛感情を意識しているうちに、中村さんも僕のことを好きになってくれたとか?
 けど実際に好きだって言ってもらったわけでもないし、本当に擦り合ってるだけで抱きしめたりキスしたりするわけでもないから、恋人っていうよりはセフレっぽい気が……って、セックスまではしてないけど。

 そんなふうに一人であれこれ考えているよりは、中村さんに直接どういうつもりなのか一度きちんと確かめた方がいいのだろうけど、下手に尋ねると今の微妙な関係が壊れそうで、怖くて聞くことができず、僕は悶々もんもんとしていた。


 ──────────


「なあ、お前やっぱり俺に挿れたいとか思うわけ?
 それとも挿れられたいのか?」

 例によって中村さんに誘われ、互いに触れられる距離に移動してズボンのファスナーを下ろした辺りで、いきなり中村さんがそんなことを言い出したので、僕はぎょっとして中村さんの顔を凝視してしまった。

「なんだよ、その顔は」
「あ、いえ、あの、挿れたいです、挿れる方がいいです」
「あー、やっぱりお前はそうだよなあ」

 そう納得している中村さんはごく普通の顔つきで、ふざけているわけでも照れているわけでもなく、ごく真面目にそんな質問をしたようだ。

「な、中村さんはどうなんですか?
 僕に挿れたいとか挿れられたいとか……」
「あー、それなあ。
 俺は正直よくわかんないんだよな、自分がどうしたいのか」

 中村さんの返事を聞いて、僕はちょっとがっかりする。
 中村さんとしては擦り合いする程度には僕に好意を持ってくれているが、セックスしたいというほどの欲望は抱けないということなのだろう。

「まあ、お前が挿れたいなら一回やってみるか?」
「えっ、いいんですか?」

 中村さんの提案に反射的に喜んでしまったが、いやそれではいけないと思い直す。

「あ、いえ、その僕はもちろん挿れたいんですが、中村さんがその気じゃないのにするわけにはいきませんから」
「いや……俺も別にその気がないわけじゃない。
 挿れたいのか挿れられたいのかわからないっていうだけで」

 少しためらった後、うつむき気味で早口にそう言った中村さんは、耳が赤くなっていた。

 ええっ、何これ。
 これって脈ありってこと?

 これは今こそ中村さんの本心を聞く絶好のタイミングなのではと思い、「僕のこと好きになってくれたんですか?」と聞こうとしたのだが、その前に中村さんの方が先に口を開いた。

「そんなことより、やるのかやらないのかどっちだ」
「あ、やります、やらせてください!」

 そうして結局中村さんの本心を聞けないままに、僕は中村さんとセックスすることになってしまった。


 ──────────


 最近ではリビングではなく中村さんの部屋で遊ぶことが多くなっていたので、ベッドはすぐ目の前にある。
 驚いたことに中村さんはすでにコンドームとローションを用意していて、それらを紙袋から取り出しながらこう言った。

「一応やり方は調べてみたんだけど、説明読んだだけではいまいちピンと来なかったんだよな。
 お前はやり方わかるか?」
「えーと、俺もやったことはありませんけど、たぶん中村さんよりはわかると思います」

 僕はずっと中村さん一筋だったからセックスの経験はないけれど、中村さんにあんなことやこんなことをしたいという願望はあったから、そういう知識は十二分にあると思う。

「じゃあお前に任せる」

 そう言うと中村さんはズボンと下着を男らしくバッと脱ぐとベッドに上がってうつ伏せになった。

「よし、いいぞ」
「え……」

 据え膳と言わんばかりの下半身裸の中村さんに、僕は興奮というよりも戸惑ってしまう。

「あ、あの、上は脱がないんですか?」

 いつもの擦り合いじゃなくてセックスするのなら、まだ触ったことのない胸だって触ってみたいし、裸で抱き合って体温を分け合いたい。
 それにキスだってしてみたいのに、下半身だけ裸でうつ伏せになられたら、本当にただやるだけみたいではないか。
 それなのに中村さんは、ごく当たり前のことのようにこう言った。

「いや、別に上は脱ぐ必要ないだろ」
「え、けど……」

 中村さんの言葉に僕が反論しようとしかけた時、その耳が赤くなっていることに気付いた。

 あ、もしかしてこれ中村さん平気そうな態度だけど、実はめちゃめちゃ恥ずかしがってるんじゃ……。

 中村さんはうつぶせで顔は枕に押し付けているので実際にどんな表情をしているのかはわからないが、そうやって俺に顔を見せないようにしていることこそ、恥ずかしがっている証拠のように思える。

 うわ、それなのに僕に挿れていいって言ってくれてるんだ……。
 どうしよう、めちゃめちゃうれしい。
 あ、ていうか、これもう、キスとか抱きしめたいとか贅沢を言っている場合じゃないよね。

「あ、いえ、すいませんでした。
 下だけで大丈夫です」
「おう」
「それじゃあ、失礼します」
「ん」

 中村さんが小さくうなずいたのを確認して、手のひらで軽く温めたローションで濡らした指で中村さんの後孔に触れる。
 出来るだけそっと指を入れると、中村さんが「うっ」と小さく呻いた。

「すみません、痛かったですか?」
「いや、平気だ。慣れない感覚で驚いただけ。
 大丈夫だから、もっと入れていいぞ」
「わかりました。
 痛かったら痛いって言ってくださいね」
「ああ」

 中村さんに言われた通り、指を奥まで入れていく。
 中村さんはこんなことは当然初めてだろうから中はきついのだが、それでも指を受け入れる柔軟さもあるようだ。
 痛がってもいないようだし、これだったら僕のモノを挿れても大丈夫のような気がする。

 っていうか、今からこの中に入れるんだよね。
 やばい、興奮してきた。

「そ、そろそろ大丈夫じゃないかと思うんですが」
「あー……うん、そうだな。
 いいと思う」

 興奮のせいで声がうわずるのを感じながら問いかけると、中村さんはいつもより少し熱っぽい声で答えた。

「じゃあ、一回指抜きます」

 声をかけて中村さんの中から指を抜き、ズボンと下着を脱いで完全に臨戦態勢の自分のモノを取り出す。
 上半身も脱ぐかどうか迷って、やっぱり中村さんに揃えておこうと思って脱がないことにする。

 僕が慣れないコンドームをつけるのに手間取っている間に、中村さんはもぞもぞと体を動かして腰だけを上げた姿勢になった。
 僕を受け入れるためのその体勢はすごく煽情的で、たまらなくなった僕は急いでベッドに上がる。

「挿れてもいいですか?」
「おう」
「じゃあ失礼します」

 中村さんがうなずいたので、僕は自分のモノを中村さんの後孔に押し当て、ゆっくりとその中に入っていく。

 はっきり言って中村さんの中はヤバかった。
 暖かくて気持ち良くてたまらない。
 肉体的な快感自体、手でしてもらう時とは比べ物にならないくらいに強い上に、好きな人と繋がっているのだという喜びが快感を何倍にも増幅していて本当にヤバい。

 あまりにも良すぎるせいで、ガツガツとむさぼりたくなるのを堪えて中村さんを傷つけないようにするのに必死で、中村さんが気持ちよくなれるところを探したりする余裕なんかない。

 結局僕は中村さんが達する前に中村さんの中で先にイッてしまい、慌てて中村さんのモノを手で愛撫して、しばらくして何とか中村さんにもイッてもらうことができた。
 挿れながら前も愛撫しなきゃいけなかったんだ、と気付いたが、後の祭りである。
 2人でそれぞれ後始末を済ませて、下着とズボンをはいた後、僕は改めて中村さんに頭を下げた。

「すいません……僕ばっかりよくなってしまって、中村さんに感じてもらうことができなくて……」
「んん? いや、そりゃまあ、イッたのはお前の方が先だったかもしれないけど、俺の方も悪くはなかったぞ。
 初めてなんだから、まあ、上出来なんじゃないの。
 それにお前のことだから、次はもっと感じさせてくれるだろ」
「えっ、次って、次もしていいんですか?」

 僕が思わず食い気味に尋ねると中村さんはちょっと視線を泳がせつつも答えてくれた。

「まあ、いいよ。お前がしたいんなら」
「僕はもちろんしたいですけど、その、中村さんは……」
「あー、うん、まあ、俺もどっちかっていえばしたい、かな。
 する前は自分が抱きたいのか抱かれたいのかよくわからなかったけど、実際してみたらお前に抱かれるの、いいなって思ったから」

 少し照れた様子で告げられた中村さんの言葉に、僕は胸の奥から喜びが湧いてくるのを感じる。
 僕のつたないセックスを中村さんが「いい」と感じてくれて、しかもその表情から肉体的な快感だけじゃなくて、気持ちの上でも「いい」と思ってくれたことがわかって。

 ……これは、今、勇気を出さないと。

「あ、あの、じゃあ、これからもしてもいいってことは、僕たち、付き合ってるって思ってもいいってことでしょうか?」

 一瞬、ストレートに『中村さんも僕のこと好きになってくれたんですか?』と聞きそうになったが、それだと中村さんは照れて答えてくれないかもと思い直し、なんだか微妙な質問になってしまったが、結局はその聞き方で正解だったらしい。

「あー……うん、まあ、そういうことでいいんじゃないの」

 中村さんは赤くなって僕から視線をそらしながら、早口でそう答えてくれたのだった。
 
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