バスと痴漢とガムテープ

鳴神楓

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拘束されたまま★

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「こうやってると、初めてお前がうちに来た時のことを思い出すな」
「……そうですね。僕も今、同じことを思い出してました」

 中村さんに痴漢行為をしてしまい、悩んだ末にやはり謝ろうとこの家の前で中村さんの帰りを待っていた僕に、中村さんは家には上げるが信用出来ないからと言って、僕の両手首を布ガムテープで拘束した。
 両手首を拘束されている今の状態は、あの時と同じシチュエーションではあるけれど、あの時とは中村さんと僕の関係が大きく変わったことを考えると感慨深い。

 中村さんも同じようなことを考えているのか、なにか懐かしむような表情を浮かべていたが、やがてベッドのヘッドボードに手を伸ばして、ローションやコンドームが入った紙袋を手に取った。

「あ、すいません、準備は僕が」
「いいから、今日は俺がやるって」
「え、けど、中村さんやったことがないんじゃ」

 受け入れる方に自分で後孔で受け入れられるように準備させてそれを視姦するなんていうのは、エロ動画なんかではあるけれど、中村さんはそういうプレイをしてくれるタイプではないし、僕の方も視姦するよりは自分の指で中村さんの中を触って中村さんに快くなってもらう方が楽しい。
 それに中村さんはオナニーもイケれば良いというタイプで快感を追求する方じゃないから、自分でする時も中を触ったりはしないだろう。

「そりゃ、やったことはないけど出来るって。
 あんだけ何回もお前にやられてるんだから。
 ……って、とにかくすぐ終らせるからちょっと待ってろ」

 そう言って中村さんは袋からローションを取り出して指を濡らすと、その指を後孔へと伸ばした。

「あの、座ったままだとやりにくいと思うんで、横になった方が」
「あー、そうだな」
「僕、ずれますから、隣へ」

 そう言いながら、手が縛られているので足やひじを使ってベッドの上をずりずりと壁ぎわに移動すると、中村さんは「ん」と答えてちょっと迷った後で僕に背を向ける形で隣に横になった。

 あー、これ、たぶん自分でしてるところを僕に見られるのと、してる時の表情を見られるのと、どっちがマシか悩んだんだろうな。

 中村さんとしてはどっちも恥ずかしくはあるけれど、顔よりはしているところを見られる方がまだマシだと思ったんだろう。
 そういう独特の照れポイントが中村さんらしくて、愛おしく思ってしまう。

「…っ、……んっ……」

 中村さんの唇からわずかに漏れるのは喘ぎと呻きの中間のような声だ。
 そっとその横顔を見ると、頬は快感で紅潮しているのに眉間にはシワが寄っている。
 たぶん眉間のシワは肉体的な苦痛というよりは、恥ずかしさから来る精神的な苦痛だろう。
 それでも、自分で言い出したことだからという意地なのか、僕に交代しろと言わないのが中村さんらしい。

「んー、こんなもんでいいかな」

 しばらくしてそう呟くと、中村さんは起き上がって全く萎えてない僕のモノにコンドームを付け、寝ている僕の体をまたいで馬乗りになった。

「んっ、あー、くそっ、うまく入らないな……」

 右手で僕のモノを握って固定しつつ、左手で自分の後孔を広げて挿れようと悪戦苦闘している中村さんは初々しくて可愛いけど、正直今はそれを楽しむ余裕なんかないくらいに自分のモノが張り詰めているので、中村さんに手伝いを申し出ることにする。

「僕、自分のち◯こ支えてますから」
「あ、そうしてくれ。助かる」

 僕が縛られたままの両手で勃起したモノの先っぽを動かないように固定すると、中村さんはそこに指で広げた後孔を押し当ててゆっくりと腰を落としていった。

「…っ………、…ふぅ」

 苦労しつつもなんとか躰の中に僕のモノを全部収め切った中村さんは、ほっとした様子で息をはいた。

「ったく、お前、でっかくしすぎなんだよ。
 挿れにくいだろ」
「す、すみません」
「って、言ってる側からでかくすんなって」

 コツン、という感じで腹を軽くグーで殴られつつ叱られたが、こればっかりはどうしようもない。

「すいません、中村さんの中が良すぎて、どうしても……」

 僕が正直にそう言うと、中村さんの顔がぱっと赤く染まった。

「あ、あー、それじゃ、それ、早くなんとかしてやる」

 早口でそう言うと、中村さんは僕の上でぎこちなく動き出した。
 騎乗位が初めてで慣れてないとはいえ、ただ上下に動けばいいというものではない、ということは同じ男だからわかるのだろう、中村さんは腰を回したり前後に揺すったり中を締めたりしてくれて、僕がイけるようにすごくがんばってくれている。
 でも、慣れないその動きはどうしたって物足りなくてもどかしい。

 今日は中村さんがリードしてくれるんだから、我慢しなきゃ。

 頭ではそう思うものの、躰は快感を求めていて、ついに僕は我慢できず下から中村さんを突き上げてしまった。

「ちょ、今日は俺がやるって言って……」

 そう言いかけた中村さんは、僕の顔を見て色々察してくれたのか、申し訳なさそうな表情になった。

「あー、悪かった。そりゃ、こんなんじゃイけないよな。
 待ってろ、手、ほどいてやるから」
「あ、待ってください、そのままで。
 ……今頭沸いてるから、両手が自分になったら中村さんのことめちゃめちゃにしちゃいそうなんです。
 僕、中村さんが嫌がることしたくない……」

 もどかしくて物足りなくて、それなのに僕の上で腰を振る中村さんの姿は最高にエロくて、本当にもうどうしていいかわからないのだ。
 こんな状態で両手が自由になったら絶対に暴走してしまう。

「……ん、わかった」

 うなづいた中村さんが僕を見る眼差しは、僕の自惚れでなければ愛おしいものを見るもので。
 暴走しそうなくらいに中村さんを欲しがってしまう僕を、そして暴走することを恐れるほどに中村さんを大事にしたがっている僕を、ちゃんと受け止めてくれているようで、胸がきゅんとなる。

「じゃ、もうちょっとなんとかするから、お前も好きに動いていいから」

 そう言うと、中村さんは言葉通りにさっきより動きを早めてくれた。
 僕の方も遠慮なく下から突き上げさせてもらっているうちに、射精感が高まってきた。

「い、イきそうです」
「おう、いいぞ」

 答えた中村さんが中を締め付けながら大きく腰を動かして、ついに僕は中村さんの中で達した。

 ──────────

 僕が達したのを見届けると、中村さんは大きく息をはいてから、まだ勃ったままの自分のものを擦りだした。

「あっ、僕やります。やらせてください!」

 慌てて中村さんのモノに縛られたままの両手を伸ばしたけど、触れる前に中村さんは自分で達してしまった。

「ああー」
「あ、悪い。まあ、また今度な」

 残念そうな声をあげた僕に苦笑しつつも、中村さんは僕のモノを躰の中から抜いて、それから僕の両手を縛っているタオルをほどいてくれた。

「なんかぐだぐだだったな。悪かった」

 それぞれ自分が出したものの後始末をしていると、中村さんがそんなことを言い出した。

「いえ、その、新鮮でこれはこれで良かったので……」
「ふーん、そうか。
 だったら、これからも毎回お前の両手縛ってヤルか?」
「い、いえ、それはちょっと……」

 僕がうろたえると、中村さんはぷっと吹き出した。

「ま、俺の方もやってみてリードするのは向いてないなと思ったよ」

 そう言われて、僕は正直ほっとしてしまう。
 新鮮で良かったのは本当だけど、毎回あんなもどかしい思いをするのは勘弁して欲しい。

「ま、これに懲りたら、次からはあんまりしつこく触らないようにな」
「あ、そういえばそれがキッカケでこんなことになったんでした」
「お前、忘れてたのかよ。
 反省が足りないぞ」

 そう言われて「すみません」と謝ったけれど、色々と凄かった中村さんとのセックスの後では何もかも吹き飛んでしまっても仕方ないです、とか、またしても反省が足りないことを考えてしまった。


~終~
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