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番外小話
デート 1
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今日はテディと一緒に街に買い物にやって来た。
異世界人はうかつに出歩くと人買いにさらわれて他国の軍に売り払われる危険があるので、あまり外に出ないようには言われているが、 テディが一緒なら危険は少ないので、たまにはこうして2人で街に出ることができる。
異世界人と魔術師は国から食住は面倒をみてもらえるので、服や生活に必要な雑貨を買い足しつつ、面白そうな店があればのぞいてみる。
この国は芸術家と職人の国と言われているだけあって、街には様々なものがあふれていて見ているだけでも楽しい。
「前にいたところよりこっちの大陸の方が文明が進んでると思ったけど、この国は特にすごいよね」
「ああ。この国が職人を優遇しているからというところが大きいが、それ以外にも異世界人の知識が広く利用されているということもあるだろうな。
他の国では異世界人は異世界の歌を聞き出すことと魔術師の魔力を上げるために利用されているだけで、その知識は重要視されていないから」
「あー、そうか。
そう言えばシェアハウスの異世界人にも、この国の職人に異世界の知識を教えてる人がいるもんね」
異世界人の中には元の世界で専門的な職業についていた人もいて、そういう人たちは異世界の知識をこの国の人に教えることでお礼をもらっているらしい。
中にはこの国の技術者がしょっちゅう訪ねてきて図面を広げながら議論を交わしているような人もいるので、そんなふうにして異世界の技術とこちらの技術がうまく融合していれば、この国の技術が他の国よりも進んでいるのは当然とも言えるだろう。
他の国では異世界人とこの世界の人が議論を交わすどころか、異世界人は閉じ込められてごく少数の人としか会えない場合がほとんどなので、この国はかなり特殊だと思う。
ちなみに俺は専門的な知識は全くないが、異世界人の知識を必要としている人の中には異世界に伝わる物語を聞き書して本にしている人もいるので、俺もこの国の言葉をもっと勉強してうまく話せるようになったら、知っている小説やマンガのストーリーを買ってもらう約束をしている。
「ところで昼飯はどうする?」
「んー、屋台で何か買わない?
さっきの広場で大道芸やってたから、それ見ながら」
「ああ、そうしよう」
俺たちは広場へと向かいながら、途中でいい匂いをさせて焼いていた串焼きと、甘豆蒸しと言うものと、暖かいお茶を買った。
広場は円形の野外劇場っぽい造りで、周りが座れる階段状になっていて中央の下がったところで3組の大道芸人が芸をしていた。
観客は大道芸人の周りを囲んでいる人たちの他に、外側の階段に座って全体をのんびりと眺めている人も多かったので、俺たちも後者に混じって食べながら見ることにする。
「わ、これやっぱりあんまんだよ。
甘豆蒸しなんて言うからもしかしたらって思ったけど」
屋台で大きなセイロが湯気を立てていたのでテディに店の人に聞いてもらったら、豆を甘く煮た物を小麦の皮で包んで蒸したものと言うので買ってみたら思った通りだった。
「和生の国の料理だったのか?」
「うん、あ、けど元は日本じゃなくて中国の料理なんだ。
これ、あんこがこしあんだし、日本のあんまんっていうよりは中国のっぽいかも」
「ああ、だったら彼が教えたんじゃないか?
ほら、中国人の」
そう言ってテディはシェアハウスで一緒に暮らしている中国人の名前を挙げる。
「あ、そうかもね。
しかし、まさかこっちでもあんこが食べられるとは思わなかったなあ。
向こうでは別に好きでも嫌いでもないと思ってたけど、久しぶりに食べたからすごく美味しい気がする」
「だったら帰ったら作り方を聞いて作ってみようか」
「あ、いいね。
あんこができるんなら、ぜんざいとかどら焼きも食べたいし」
そんな話をしながら食事をし、大道芸を見るともなしに見ていると、にぎやかな音楽を奏でていた楽団が演奏を終え、代わりにひらひらした綺麗な衣装を着た女性と竪琴を持った男性、そして手ぶらの男性の3人が出てきた。
「あれ?
あの手ぶらの人って魔術師の人だよね?」
派手な衣装を着ているし、ちょっと化粧もしているが、よく見ればシェアハウスに住んでいる魔術師の1人だ。
「ああ、そうだな。
彼はよく指名依頼を受けているようだから、多分これがその依頼なのだと思う」
異世界人はうかつに出歩くと人買いにさらわれて他国の軍に売り払われる危険があるので、あまり外に出ないようには言われているが、 テディが一緒なら危険は少ないので、たまにはこうして2人で街に出ることができる。
異世界人と魔術師は国から食住は面倒をみてもらえるので、服や生活に必要な雑貨を買い足しつつ、面白そうな店があればのぞいてみる。
この国は芸術家と職人の国と言われているだけあって、街には様々なものがあふれていて見ているだけでも楽しい。
「前にいたところよりこっちの大陸の方が文明が進んでると思ったけど、この国は特にすごいよね」
「ああ。この国が職人を優遇しているからというところが大きいが、それ以外にも異世界人の知識が広く利用されているということもあるだろうな。
他の国では異世界人は異世界の歌を聞き出すことと魔術師の魔力を上げるために利用されているだけで、その知識は重要視されていないから」
「あー、そうか。
そう言えばシェアハウスの異世界人にも、この国の職人に異世界の知識を教えてる人がいるもんね」
異世界人の中には元の世界で専門的な職業についていた人もいて、そういう人たちは異世界の知識をこの国の人に教えることでお礼をもらっているらしい。
中にはこの国の技術者がしょっちゅう訪ねてきて図面を広げながら議論を交わしているような人もいるので、そんなふうにして異世界の技術とこちらの技術がうまく融合していれば、この国の技術が他の国よりも進んでいるのは当然とも言えるだろう。
他の国では異世界人とこの世界の人が議論を交わすどころか、異世界人は閉じ込められてごく少数の人としか会えない場合がほとんどなので、この国はかなり特殊だと思う。
ちなみに俺は専門的な知識は全くないが、異世界人の知識を必要としている人の中には異世界に伝わる物語を聞き書して本にしている人もいるので、俺もこの国の言葉をもっと勉強してうまく話せるようになったら、知っている小説やマンガのストーリーを買ってもらう約束をしている。
「ところで昼飯はどうする?」
「んー、屋台で何か買わない?
さっきの広場で大道芸やってたから、それ見ながら」
「ああ、そうしよう」
俺たちは広場へと向かいながら、途中でいい匂いをさせて焼いていた串焼きと、甘豆蒸しと言うものと、暖かいお茶を買った。
広場は円形の野外劇場っぽい造りで、周りが座れる階段状になっていて中央の下がったところで3組の大道芸人が芸をしていた。
観客は大道芸人の周りを囲んでいる人たちの他に、外側の階段に座って全体をのんびりと眺めている人も多かったので、俺たちも後者に混じって食べながら見ることにする。
「わ、これやっぱりあんまんだよ。
甘豆蒸しなんて言うからもしかしたらって思ったけど」
屋台で大きなセイロが湯気を立てていたのでテディに店の人に聞いてもらったら、豆を甘く煮た物を小麦の皮で包んで蒸したものと言うので買ってみたら思った通りだった。
「和生の国の料理だったのか?」
「うん、あ、けど元は日本じゃなくて中国の料理なんだ。
これ、あんこがこしあんだし、日本のあんまんっていうよりは中国のっぽいかも」
「ああ、だったら彼が教えたんじゃないか?
ほら、中国人の」
そう言ってテディはシェアハウスで一緒に暮らしている中国人の名前を挙げる。
「あ、そうかもね。
しかし、まさかこっちでもあんこが食べられるとは思わなかったなあ。
向こうでは別に好きでも嫌いでもないと思ってたけど、久しぶりに食べたからすごく美味しい気がする」
「だったら帰ったら作り方を聞いて作ってみようか」
「あ、いいね。
あんこができるんなら、ぜんざいとかどら焼きも食べたいし」
そんな話をしながら食事をし、大道芸を見るともなしに見ていると、にぎやかな音楽を奏でていた楽団が演奏を終え、代わりにひらひらした綺麗な衣装を着た女性と竪琴を持った男性、そして手ぶらの男性の3人が出てきた。
「あれ?
あの手ぶらの人って魔術師の人だよね?」
派手な衣装を着ているし、ちょっと化粧もしているが、よく見ればシェアハウスに住んでいる魔術師の1人だ。
「ああ、そうだな。
彼はよく指名依頼を受けているようだから、多分これがその依頼なのだと思う」
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