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番外小話
デート 2
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テディがそう言うと同時に、踊り子らしき女性が手首の鈴をしゃらんと鳴らし、それを合図に竪琴の演奏が始まった。
徐々に激しくなっていく踊りと竪琴に、ふいに歌が加わる。
テノールの伸びやかな声の歌が始まった途端、踊り子の周りをたくさんの光る蝶が飛び始めた。
「綺麗だね。
魔術師って、ああいう仕事もするんだね。
テディもああいうのやるの?」
「いや、あれは芸術的なセンスがないと出来ないから、俺には無理だな。
ああやって人前に立つのも苦手だし」
言われてみれば確かに、テディが派手な衣装と化粧であんなふうに歌っている姿なんて想像もできない。
いつの間にか歌は変わっていて、今度は踊り子の周りにチラチラと粉雪が舞っている。
よく響く声と派手な演出は広場中の観客の目を集めていて、他の大道芸人はすでに芸をやめている。
「あ……」
雪の歌から自然な感じで切り替わった3曲目は、聞き覚えのある歌だった。
この国に来てからシェアハウスの魔術師たちに頼まれて教えた日本の歌のうちの一つで、桜の花を歌った曲だ。
本来の歌よりも早いテンポで歌われる歌に合わせて、ピンク色の花びらが激しく舞い散る。
終わりに近づくにつれて曲はゆっくりになり、花びらが舞い散る速度もゆっくりになる代わりに、広場全体に降り始める。
その光景は、俺にある記憶を呼び覚ます。
中学高校と自転車通学で毎日通った、あの桜並木。
確かに綺麗ではあったけれど、春になれば毎年見られる光景だったから無感動に眺めていたあの景色は、もう二度見ることができない。
俺がなんとなくナーバスなっていると、ふいに手に暖かいものが触れた。
大きくて少し固いその手は、俺の手をぎゅっと握る。
隣を見ると、テディが心配そうな顔で俺を見ていた。
それを見ていると、ナーバスな気分なんか吹っ飛んでしまう。
確かにもう、あそこには二度と帰れない。
でも、代わりにここにはテディがいる。
「大丈夫だよ」
そう言って大きくうなずいてみせると、テディはほっとした表情になって、それから笑顔になった。
大きい体に似合わずかわいらしい、俺の好きな笑顔に。
「やあ、デートかい?」
知らない間に歌は終わっていたらしい。
気付くと派手な衣装の魔術師が俺たちの前に立って、ニヤニヤと笑っていた。
「デ、デートっていうか、単に買い出しのついでに飯食ってただけで……」
慌てて握られたままだったテディの手をほどきながら答えたけれど、すでに見られた後だったので魔術師のニヤニヤ笑いは変わらなかった。
「それよりもさっきの魔法、すごく綺麗でした」
「ありがとう。
君が教えてくれた歌のおかげだよ。
綺麗な色の花だし、少ない魔力で広場中に降らせられるから観客にもウケがいいんだ。
ああ、そうだ、せっかくだからお礼におごるよ。
近くに美味しい菓子を売っている店があるんだ」
どうしよう、とテディの方を見ると、テディはうなずいたので、「それじゃあ遠慮なく」と答えて俺とテディは立ち上がった。
徐々に激しくなっていく踊りと竪琴に、ふいに歌が加わる。
テノールの伸びやかな声の歌が始まった途端、踊り子の周りをたくさんの光る蝶が飛び始めた。
「綺麗だね。
魔術師って、ああいう仕事もするんだね。
テディもああいうのやるの?」
「いや、あれは芸術的なセンスがないと出来ないから、俺には無理だな。
ああやって人前に立つのも苦手だし」
言われてみれば確かに、テディが派手な衣装と化粧であんなふうに歌っている姿なんて想像もできない。
いつの間にか歌は変わっていて、今度は踊り子の周りにチラチラと粉雪が舞っている。
よく響く声と派手な演出は広場中の観客の目を集めていて、他の大道芸人はすでに芸をやめている。
「あ……」
雪の歌から自然な感じで切り替わった3曲目は、聞き覚えのある歌だった。
この国に来てからシェアハウスの魔術師たちに頼まれて教えた日本の歌のうちの一つで、桜の花を歌った曲だ。
本来の歌よりも早いテンポで歌われる歌に合わせて、ピンク色の花びらが激しく舞い散る。
終わりに近づくにつれて曲はゆっくりになり、花びらが舞い散る速度もゆっくりになる代わりに、広場全体に降り始める。
その光景は、俺にある記憶を呼び覚ます。
中学高校と自転車通学で毎日通った、あの桜並木。
確かに綺麗ではあったけれど、春になれば毎年見られる光景だったから無感動に眺めていたあの景色は、もう二度見ることができない。
俺がなんとなくナーバスなっていると、ふいに手に暖かいものが触れた。
大きくて少し固いその手は、俺の手をぎゅっと握る。
隣を見ると、テディが心配そうな顔で俺を見ていた。
それを見ていると、ナーバスな気分なんか吹っ飛んでしまう。
確かにもう、あそこには二度と帰れない。
でも、代わりにここにはテディがいる。
「大丈夫だよ」
そう言って大きくうなずいてみせると、テディはほっとした表情になって、それから笑顔になった。
大きい体に似合わずかわいらしい、俺の好きな笑顔に。
「やあ、デートかい?」
知らない間に歌は終わっていたらしい。
気付くと派手な衣装の魔術師が俺たちの前に立って、ニヤニヤと笑っていた。
「デ、デートっていうか、単に買い出しのついでに飯食ってただけで……」
慌てて握られたままだったテディの手をほどきながら答えたけれど、すでに見られた後だったので魔術師のニヤニヤ笑いは変わらなかった。
「それよりもさっきの魔法、すごく綺麗でした」
「ありがとう。
君が教えてくれた歌のおかげだよ。
綺麗な色の花だし、少ない魔力で広場中に降らせられるから観客にもウケがいいんだ。
ああ、そうだ、せっかくだからお礼におごるよ。
近くに美味しい菓子を売っている店があるんだ」
どうしよう、とテディの方を見ると、テディはうなずいたので、「それじゃあ遠慮なく」と答えて俺とテディは立ち上がった。
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