脅迫者は優しいご主人様

鳴神楓

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本編

7 犬 1☆

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「今日は君に犬になってもらいます」

例のホテルで待ち合わせて、別々にシャワーを浴びた後、男が告げたのはそんな言葉だった。

「はぁ? 犬?」
「ええ、そうです」

なんの冗談かと思ったが、男は真顔なので、どうやら本気らしい。

「まあ、基本的にはこの前のプレイとさほど変わりはありません。
 ただ、今日の君は奴隷ではなく犬で、私は君の飼い主だというだけです。
 犬ですから、言葉を話さないということと、四つ足で歩くということに気を付けてください」

要するに犬と飼い主ごっこということだろうか。
心底くだらないと思うが、こいつがそうしたいなら、俺は付き合うしかない。

「わかった」
「では始めましょう。
 まず、服を脱いでください。
 犬に服は必要ありませんから」

今日は風呂あがりで2人ともバスローブを着ていたので、俺は言われた通りにバスローブと下着を脱ぎ、四つん這いになった。

「おいで、みちる。
 首輪をつけてあげよう」

言葉を話せなくても、一応は返事をするべきかと思い、俺は「ワン」と答えてから四つ足で男のそばまで行く。
男は犬の首輪のような、茶色の革のベルトを取り出して俺の首に巻いた。
首輪の内側には柔らかい布が貼られているので擦れて痛いということはないが、どうしても首を軽く絞めつけられているような違和感がある。

「やはり既製品は今ひとつですね。
 時間があれば、もっとお前に似合うものをオーダーしてあげたのに」

心の中で男の言葉に「オーダーメイドの首輪とかありえないだろ!」とツッコミを入れながら、俺は次の命令を待つ。

「みちる、おすわり」

俺がおとなしくおすわりをすると、男は右手を差し出してきた。

「お手。おかわり。回れ」

内心うんざりしながら、一通り命令をこなして再び男の前でおすわりをすると、男は俺の頭をわしゃわしゃとなでた。

「よく出来たね。
 いい子だ」

本当の犬じゃないんだから、あんな簡単なこと出来て当然だろと馬鹿馬鹿しく思うのだが、それでもほめられて嫌な気はしなかった。

「よく出来たご褒美に、いいものをつけてあげよう。
 ほら、見てごらん。
 かわいい尻尾だろう?」

そう言いながら男が出してきたものを見て、俺は思わず「げっ」と声をあげそうになる。
犬の尻尾のようなふさふさした茶色の毛が付いているのは、まあいい。
問題はその尻尾の反対側についているものだ。

ケバケバしい赤色の樹脂で出来たそれは、明らかに男性器を模した形をしている。
その大きさが男のモノよりはかなり小さいのだけは救いだが、尻尾の付け根にスイッチらしきものが見えているのが嫌な予感しかしない。

男は俺に腰を上げさせると、後孔をローションで軽くほぐしてから尻尾バイブを入れてきた。
小さいせいか、バイブはすんなりと入って、特に痛みもない。
男は続けて細い鎖を取り出し、首輪の金具に付けた。

「さあ、みちる。散歩をしよう」

男は弾んだ声で宣言する。
散歩ってまさか外に出るのかとぎょっとしてしまったが、男もバスローブ姿なので多分それはないだろうと思い直す。

男が鎖を持って歩き出したので、俺も四つん這いでついて行く。
どうやら男は部屋の中をゆっくり歩くつもりらしい。

四つん這いで歩くと、尻尾バイブが躰の中のあちこちに当たってしまうし、しかもバイブを落とさないようにしようとすると、尻を高くあげてしっかり締めておかなければならないので、かなりつらい。

「…あっ」

足を踏み出した拍子に、バイブがイイところをぐりっとえぐって、俺は思わず声をあげた。
その途端、男から「みちる」と厳しい声が飛んでくる。

あっ、やばい。今の、犬の声じゃない。

慌てて「わん」と鳴き直したが、男は許してくれなかった。

「……うん、これはお仕置きだね」

男の言葉に叩かれることを想像した俺は、反射的に目を閉じたが、俺が痛みを感じることはなかった。
その代わりに後ろの方でカチッという小さな音がして、一瞬遅れて、俺の中のバイブが動き出した。

「…っっ!」

バイブが暴れ出したせいで、また声をあげてしまいそうになってしまったけれど、今度はどうにか我慢する。
けれども、バイブは不規則に動いて俺の中を刺激し続けていて、うっかりするとまた声をあげてしまいそうで、俺は口を開かないように、ぐっと歯を噛みしめる。

「さあ、散歩を続けよう」

男は俺をうながして、再び歩き始めた。
なんとかその後についていこうとするが、バイブは中で暴れまわっているし、それなのにバイブが動いているせいで尻をしっかり締めてないといけなくて余計に中を刺激されてしまうので、ゆっくりとしか歩くことしかできない。

こんなことではまた叱られてしまうのではないか、鎖を強く引っ張られて無理矢理歩かされるのではないかとビクビクしながら歩いていたが、男は俺を叱らなかった。
それどころかむしろ、歩くスピードをゆるめ、俺の隣に立って励ますように背中をなでてくれる。

「あの椅子まで行けたら休憩にするからね。
 もう少しだから、がんばりなさい」

男に励まされ、俺は中を抉られる快感にふらふらになりながらも、どうにかその椅子までたどりついた。
男は約束通りバイブのスイッチを切ると、優しく俺の頭をなでた。

「えらいぞ、みちる。
 よくがんばったね」

まるで芸をした犬をほめるようにそうほめられて、こんな大変な目にあわせたのはほめている男本人だというのにもかかわらず、やっぱりうれしいと思ってしまう。

……ごっこ遊びなのに、なに本気で飼い犬みたいな気分になってんだよ。

自分で自分にそうツッコミを入れてはみたが、それでもやっぱりうれしい気分は消えることはなかった。

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